勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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奇妙な生活の始まり

目が覚めた・・・・というのには少々足りないかもしれない。正確には薄っすらと開いた目に映った天井がぼんやりと見えた程度だ。

 

目を開けるのさえ億劫で、その上首を回して現状確認をしようとしたら死んじゃう気がするけれど!そこは頑張れ私!!!

 

 

ゆっくりと、本当に亀の歩みの様にノロノロと左側を見たら・・・・

 

 

「・・・・起きたか・・」

 

いっやぁ!!!!会ったら気不味い人其の二のミストが居るじゃ無いのよ!!

一番は全部の謀の八割を台無しにしてやったバーンで、三番目は答え出ない時は自分のものになれとか勝手に賭けをしてきたキルだけど・・・って今は其れはどうでもいい!

どうして私牢屋にいないの?少し見ただけでもこの部屋超が付くほど豪奢な場所だって分かるくらいの部屋のベッドで寝てるし、そもそもなんでこの御人がいるの!!こういう見張りは悪魔の目玉とかがやるもんじゃないの⁉もうこの際ちょっと変質的な所があってもかっこいいキルにチェンジでお願いします!!

ミストだって最終決戦前でやる事会う山積みだろうし忌々しい私の見張りなんてチェンジの方が嬉しいよね!嬉しいって賛同して欲しい!!

 

気不味い事もさることながら、内心で必死にチェンジを望むほどにティファはミストにした事に対して後ろめたいところがあったりする。

 

ハドラーの黒の核晶を起動し、謀略の片棒担いだ瞬時にぶちぎれて罵倒しちゃったけれど!この人にも守りたいものがあるからああしたわけで。

 

どういう時でも相手の気持ちが透けて見え、大抵それが正解であるので察して気遣う心がポロリと出てしまい、。戦う者にとっては其れこそ命取りになる欠点。

其れが一緒に居るのが居た堪れない理由。

何と声を掛ければいいのか分からず、まじまじと見ていて大事な事に気が付いた。

 

 

あれ?・・・・ミストが本体でなくて白い衣被ってる。新しい肉体に入ったのかな?そうであっても主たるバーンの本体消しちゃった私を殺したいだろうけれどとりあえず・・・沈黙は失礼すぎるよね。ここは思い切って!

 

「あの・・・・・おはようございます・・」

 

目が覚めたからとりあえず挨拶が無難かな?

まぁ、返事されるわけないけれど、礼儀は大事だってじいちゃん言ってたし。

 

何かあっても、相手がだれであっても、何処までもブラスの教えを貫こうとするティファであった。

 

 

 

・・・・・・この小娘の精神は本当にどうなっている?

 

ベッドにいるだけならば兎も角!私がいた時点で状況がどうなっているのか分からん愚か者では無かろうに、何故私に挨拶をしてこれるのだ!!!

 

こんな状況であっても挨拶してくるティファは、自分の中でバケモノから-理解不能な生き物-にまで昇格を果たした。

 

やっている事は凄まじく、味方の為にも殺すべきだと思い-続けたい-のにこうやって毒気を抜かされて脱力してしまうと敵対意識を保つ事自体が難しい生き物など冗談ではない!!

本来であればこれの-世話係-は・・・

 

「ただいまミスト!!!僕勝って・・・あああああ!!!」

 

バガンと開いた扉からは姦しいキルが入ってきた。

主からティファお世話係に任命されたのはキルであり、-とある事-を賭けて主に賭けチェスをしに行ったキルの不在で一時自分がいたに過ぎない。

・・・・戻ってきたのだからもうここに居なくとも・・・

 

さっさと外に出ようとしたミストをキルが逃がすはずが無かった。

 

がっしりとミストを捕獲したキルはそのままティファの枕元まで親友を引きずっていき、目を開けているティファの顔を覗き込む。

 

「あ・・・・おはようございますキルバー・・」

「はい、おはようお嬢ちゃん。それとストップだ。」

「・・・ストップ?」

「そうだよ、今お嬢ちゃんは僕の事を-キルバーン-って呼ぼうとしたよね。」

「はい。そうですが・・」

「それじゃぁダメダメ。僕の事は-キルーって呼ばないと。」

「は⁉」

 

ハイテンションなルンルン声でキルバーンを愛称呼びしろと言われたティファの目は点になり、何言っているんだこいつという胡乱な視線を浴びせてもキルは一向に堪えず、捕獲している親友のあがきも抑え込んで涼しい顔で-理由-を滔々と話し出す。

 

「君が今捕虜なのは分かっているよね。」

「あ!はい・・・」

「フッフ、バーン様の捕虜になった者はね、バーン様に-様-をおつけして呼ばないと殺されちゃうんだよ。」

「え!!」

「バーン様が捕虜後の敵に呼び捨てにされているのを放って置いたら、バーン様が捕虜に舐められる位、低き者と誹られて周りが勘違いして助長して歯向かってもいいかなとか考える馬鹿者共が出ないとも限らない。自分に負けても反抗的な者を見極める為と、冷徹さの演出も兼ねているんだよ。」

「それは・・・確かに合理的ですね・・」

「でしょう!けれどね、君の命の使いどころはもう決められているから特例としてバーン様にも-様-を付けづにすむ呼び方を考えておいてね。」

「はぁ、それでしたら、次会う時には-大魔王-と呼べばいいですか?」

「うん、其れで行こうか。それでね、そこでどうして僕の事をキルって呼んでと言ったか分かるかい?」

「あ・・・そちらは全く・・」

「分からないか~残念だな。」

 

何だろう、自分が物凄く馬鹿になった気がする。キルの今の言葉のどこかに、キルバーン呼びがいけない理由がある気がするんだけど・・

 

目線をしたにし落ち込むティファに、キルはにっこりと笑って-正解-を教える。

 

「僕はバーン様と同じ-バーン-の名を名乗る事を許された大幹部だ。つまりバーン様と同じく舐められたらいけない位置にいるんだよ。けれど君は僕に様つけて呼ぶ気ないでしょう。」

「あ!!・・・確かに・・」

「だからね、今回は本当に-特例-のオンパレードで、愛称呼びでいいようにバーン様のお許しを貰えたんだよ。」

「そう・・・なのですか・・・すみません、何やらお手を煩わせてしまって・・・」

「いいのいいの、君は気にせず僕の事をキルって呼べばいいだけなんだから。」

「分かりました。」

 

ティファの言葉と態度に満足したキルは、空いている右手でティファの頭をゆったりと撫でるが、キルにがっしりと捕まって動けないミストは、今手を放されても逃げない程のフリーズを起こしていたりする。

 

この小娘、この馬鹿の言った事を丸ごと信じ切ったのか!!!

あり得ん!!

 

そもそもが今まで主は捕虜を取ったことなど一度としてない!その前に敵対したが最後!!命乞いも丸無視で殲滅してきたので取れる捕虜など存在して来なかった。

ティファが唯一の生け捕られた捕虜である。

それがなくともそんな馬鹿げた決まりがこの世の中の何処にあるのだと疑問を持たずに相手の言葉を鵜呑みにするのはどうなのだ⁉

 

ミストにしてはあり得ないが、こいつ少しは危機意識持った方がいいとか老婆心を働かせてしまう程ティファは天然であった。

 

だがキルとしては今の話で十分通じるだろうと確信があった。ティファは相手が強いて来たものであっても-決まり-や約束事に弱い。

それは篩の塔で証明されている。

あれはティファが様々な事にぶちぎれて単身乗り込んでもよかったのだが、そうはせずに律儀に決まり事を果たしていたところから推測が容易に出来た。

 

この決まりがあるのだとバーンにも口裏を合わせて貰うべく、キルは賭けチェスをして魔界の神相手に見事勝利をもぎ取ってきた。

 

お嬢ちゃんにキルって呼んで欲しい!!!

 

その異常ともいえる執念の思考にバーンが面白がって手を抜いたのにも気づいていたが、勝ちは勝ちであり堂々と如何なく-嘘ルール-が言えるのでどうでもいい。

 

「ミストも同じ理由で-ミスト-って呼ぶんだよ。ちなみに今日から僕は君のお世話係だからよろしくね。」

「世話?見張り役ではなく?」

「そうだよ、君は現状戦えない体だ。歯向かえない君の日常を見て楽しみたいバーン様は、君に-日常-を送らせるそうだからその積りでいてね・・・・・とはいえできる事は多寡が知れてるだろうけど・・・」

「そうですね~。」

 

キルの説明にティファは色々と思うところがあるが、強者の余裕なのではなく、本当に戦えず、それどころか自力での逃亡も不可能な自分を娯楽にすると言うバーンの酔狂さに苦笑が浮かぶ。

まぁその酔狂さに自分の命が助けられたのだから文句はない。

そもそもこの砦も本来のバーンパレスの姿を晒して敵が来ても近づけない結界を張りながら飛んでいるのだから動けても逃げられないだろうが、其れは兎も角として

 

「分かりました。よろしくお願いします。キル・・・ミスト・・・」

 

 

疑う事よりも敵であっても相手にも善意があると考えるティファは早速世話になる者達に出来得る限りの笑顔で挨拶をし、これが奇妙な捕虜生活の幕開けになった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・こいつよく今まで他者に食い物にされずに無事であったものだとミストが本気で感心した瞬間でもあったりする。




今宵ここまで・・・
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