・・・ここの人達の私に対する扱いと呼び方がおかしい・・・・
ども、捕まって四日目のティファです。
魔界側の魔王軍支部・双子の料理長、アンリさんとセシルさんが私が捕虜と知ってもティファちゃん呼びをしてきて、こっそりとお肉料理やらプティングやら美味しくて栄養満点なものを差し入れて貰ってからの半日で、体の半分は治ってら。
ちょっとだけ・・・・お散歩しても良いよねと、キルとミストの不在狙って居室区域の外出て最近できた-お友達-の部屋の前でへたばった。
「・・・・何してるんだム~ン?」
「いや・・・・お散歩?」
「なんでそこで疑問形なんだよ?本当にお前さんって奴は・・」
「う!これキルとかにばれたら不味い!!-ガァちゃん-!!今からお部屋に-ゲート-・・」
「もうアウトに決まってるでしょお嬢ちゃん。」
「ひぎゃ!!!」
「-逃亡罪-付けられたいの?」
来ちゃったよ!こっそり戻ろうとしたら、キルってば私の真後ろに空間あけて、瞬間で捕獲されてしまった!!
あう!!一昨日知りあって-お友達-になった、このパレスの魔力装置を制御しているモンスター・ドラム―ンを、バーンが鬼眼の瞳の力で進化したゴロア君と、魔界とこのパレスを繋げる-ゲート-の番人をしているガーゴイルの-ガァちゃん-こと・・・本名はガァグラウンスさんなのですが!言おうとすると口が回らないか舌を噛んじゃうのでガァちゃんで許して・・・・貰ったのかあれは?
な~んて現実逃避してたら、怒りの気配振りまいてるミストも来ちゃったよ。
「・・・・・・!!!!!」
うん、無言だけど何をどう怒っているのかは伝わるレベルの御怒り具合だ。
「あ~、ちなみにどのあたりで無断外出ばれました?」
言ってはなんだがここから私が置いて貰っている部屋からは十分、移動する距離はある。ちなみに普通に歩ければ二、三分だが、居室には確か結界張ってあったような気もするのだが・・・
「あれね、双子が君の部屋に突撃して無理やり結界突破してるせいで緩みまくって用をなさなくなったから、今バーン様自ら張りなおしてたよ・・・・あいつ等の首堕としておくか・・」
あ~あ、いつでも冷静で優雅さを忘れないキルが遠い目をしながら殺気立つほどあの二人とそりが合わない!!
私が一昨日あった時もそんな感じだったっけ。
その時の事をミストも思い出したのか、重たい溜め息を吐く。ちなみに逃亡がばれていたのは、へたばった私を心配したゴロア君が大魔王に念話でお知らせしたせいだとか。
後で大魔王からも罰喰らうかね。
一昨日の双子みたいに苦笑で済んでくれたら嬉しいのだが。
一昨日
パレスに備蓄している主の食材が切れた。
これまでの食べる量に、プラスして一ヶ月分もストックしていたのが底を尽きかけた。
原因はダイ達との激闘で弱った体を直す為に普段の倍ずつ取られていたのだから無理はないと思いたいが!原因というか要因はもう一つある。
捕虜にしたティファと食事を摂っている事も挙げられるのが癪に障る。
ティファが食べている訳ではない。ティファは今パン粥をスープ皿一杯で終わらせている。瀕死の後で体に障る事もさることながら、回復されてちょこまかとパレスをうろつかれるのは不都合であり、ならば手足の腱を切ればいいと言う者がいようが、主は初の捕虜にそんな無粋な真似をする気はなく、代案で体の回復力を阻害する方法がとられている。
つまり実質食料を食い尽くしたのは主なのだが、その原因がティファと話して食べていると普段よりもおいしく感じるのでついたくさん食べてしまうとか。
今まで数多の上級貴族や、属国にした王族達との会食でもそんな事は無かった主が、食事が楽しいと、楽しみだと言われて喜ばぬ料理人など居るまい。
何を命じられた訳ではないが、私も自然と多く作っていたのだから食材が尽きかけて当たり前か。
「キル、魔界に行く。」
「分かった、不在時のバーン様の身辺は任せてよ。」
こいつのこういうところは本当に助かる。私の一言で十を知り、更に今主に手を出せる者がいる訳ないなどと言う寝とぼけた慢心など皆無なのだから。
主の周りを守るものは、常に最悪を想定して動いて然るべきだ。例えば天界からの刺客、あるいはヴェルザーが突如封印を破り直接ここに乗り込まないとも限らん。
様々な想定をしてキルも私もバーン様にお仕えしているのだ。
「直ぐに戻ると思うけど見送るね~。」
キルは転移装置-ゲート-まで付いてきた。胸に目が覚めている小娘付きで・・・
「・・・・・・おい・・」
「あ!御免なさいミストバ・・じゃなくてミスト。魔界に行き来できるゲートを見てみたくてキルにその・・・」
「いやぁ~、可愛いお嬢ちゃんが、更に可愛い顔になってお強請りしてくれたらね~。」
何をとんでもない機密を敵に晒しているのに相好を崩しているのだこの馬鹿は!!!
前言撤回だ!!こいつはほぼ困った奴だ!!
「ちなみに動かし方も仕組みもお嬢ちゃんには分からないし使えないし、最終戦ではゲート自体を転移させるって言っていたから今見られても困らないって言うバーン様のお墨付きは貰っておいたよ♪」
どうして小娘の事で馬鹿になるのに他の事は有能なのだこいつは!!!
ミストが内心でむしゃくしゃしながらゲートに近づけば、何処からともなく一体のガーゴイルが飛来しゲートの上にとまった。
「これはミストバーン様。行先はバーン様の直轄地でよろしいでしょうか?」
ガーゴイルは大魔王の側近で宰相の地位にもいるミストに対して慣れた容姿で少ししゃがれたような声を軋ませながら行先を気軽に尋ねる。
このガーゴイルもまた古参であり、キルより少し古い頃からバーンに仕えているので今更畏れ入る事は無い。
「おんや珍しいですねキルバーン様もお見えとは。普段はご自前の空間使って、あっしの守るゲート来ることなんてないで・・・・・・」
キルの姿に物珍しそうに見ていたガーゴイルは、珍客のキルよりもその腕の中に居る生き物に驚いた。
パレスが死の大地に埋まっている時もゲートは稼働され、必然ゲートキーパーのガーゴイルもハドラー達に知られずにひっそりと地上にいた訳だが、キルの腕の中に居る-女の子-・・のようなものの存在は知らされていないので面食らった。
「あ!すみませんご挨拶もせず。初めまして、私は-捕虜-のティファです。近々起こる大決戦の日までお世話になりますのでよろしくお願いします。」
「は⁉捕虜!・・・お前さんがかい?」
ティファの馬鹿ッ正直な身分明かした挨拶内容にさしものキルも苦笑し、ミストは胃痛になるが、ガーゴイルは違う意味で馬鹿なのかこいつはと思った。
その時ティファが身に付けていたのは、シルクの半そでブラウスにチェック柄が入った深緑のベスト、下も同じ布でこさえたキュロットに、黒の絹の靴下を優美な靴下留めで留められており、靴は少しかかとの高い黒革が輝くハーフブーツ。
高く結われている髪に付けられているリボンもシルクで、どう見ても貴族の子女だろう。
だが、話し方はしっかりとしているので馬鹿ではなさそうだ・・・・そうすると、奇人変人なキル様の新しいお遊びに付き合わされているのかこの子は・・・可哀そうに、捕虜ごっことか馬鹿らしい事に付き合わされているんなら仕方がねぇな。
「あっしはガーゴイルのガァグラウンスだ。よろしくな。」
「ガグラウンスさんですか。」
「ちげぇ!ガァグラウンスだ!!」
「ガァ・・・った!」
「・・・・もいい好きに呼べや。」
少し崩した話し方をするガァグラウンスには、キルの行動は奇人変人に映る。主にミストにべったりとして揶揄って遊んで怒られて馬鹿だろこいつと見ているのだから、-被害者其の二-のティファに同情し、名前を教えて上げたのだ。
ほぼ自分と主にしか口を開かないガァグラウンスを見ても、ティファが相手になるとこんなものだと学習したミストは見ない事にしてさっさとゲートを通り、食材ついでに-魔界支部・魔王軍の料理長-をしている双子も連れ帰った。
二人は同じ赤毛に白い白磁のような肌の色をした、魔界でも美貌の双子として名高いが、キルとは違う意味で難物であったりする。すなわち自分以外に興味なく、主にはそこそこに敬意を示してくれるがそれ以外の事はせず、自分が与えた仕事以外は基本断ってくるという問題児。
その偏屈さを却って面白がった主の寵を受けているのも知ったうえで興味が無いという振る舞いを仕出かす・・・・・主は少しばかり趣味を見直してほしいのだが。
久方ぶりに会った二人に案の定絡まれた。文字どり前後から抱き着き、何が楽しいのか、自分の衣に口付けを降らして次第に興奮し、自らの興奮で極まり崩れ落ちる所迄がいつも通りだ。
「あぁ、久方ぶりのミスト様の気配が・・・」
「ええ、今日は冷たくなく-熱い-とは・・」
「「それもそれでそそられます!!」」
興奮しながらも、私の変化に気が付くとは流石だと思えるが・・・・・私の周りにまともな奴が欲しいと思うのは贅沢なのだろうか?
今後のバーン様の予定と、それに伴い魔界に温存していた魔王軍を地上に呼ぶ事、その者達を飢えさせない為に来ることを命じれば二人はいそいそと乱れた服を直して早くいきましょうと笑いながら袖を引っ張ってきた・・・・遠慮もへったくれも無い。
溜め息を堪えてゲートを出た瞬間、一瞬だけ出口間違えたかと踵返そうかと思ったわ!!
ゲートの先に広がっていた光景は
「うっし、合ってました!次は-ガァちゃん-の番ですよ!!さぁ早くひいてください。」
「ティファ・・・そのな、ガァちゃんは・・・」
「だってさっきポーカーで三回勝ったら好きな呼び方していいってガァちゃん自身が言ってくれたんですよ。」
「そうだムーン。お前が言って、負けたんだから約束は守るんだムーン。」
「ゴロア君とお嬢ちゃんの言う通りだね。観念してその呼び方を・・・おやミストおかえり。」
足を組んで椅子に座り膝の上にティファを乗せて支えているキルが、ミストの帰還に気が付き振り返りにっこりと声を掛けて来たという・・・パレスにそぐわぬのほほんさ!!!
テーブルを囲んでどう見ても-ジョーカー抜き-に興じているキルとティファと・・・ゲートキーパーのガァグラウンスと、何故魔力装置の番人のゴロア迄もがいて遊んでいるのだ!!!
「いやぁ~待つだけってのも手持無沙汰でしょ。もしかしたらと思ってゴロア君見に行ったら暇そうだったからカードゲームして待ってたんだよ。」
・・・・・この馬鹿!なにをしれっと!!捕虜と遊ぶ馬鹿が・・・
「あら。」
「あらあら」
「「あらあらお邪魔な死神が。」」
ミストの怒りの思考は、双子の険悪な声音で停止した。そうだった・・この二人と
「・・・・ちょっとミスト・・なんでその二人連れて来たのさ。邪魔だから送り返してよ。何だったら今直ぐ-抹消-しようか?」
双子とキルは自分を巡って険悪な中で、其の日から双子がティファに一目惚れして更に悪化したのを思い出し、ミストの胃が爆発のカウントダウンを起こし掛けた。
ちなみにその日はティファも死にたくなった。
双子はどんな魔法を使ったのか、ティファ絶対死守のキルの腕からティファを掻っ攫って撫で回しながらバーンのもとへ行くという奇行を果たし、あらゆる意味で嫌になったティファは、人生初の悲鳴をあげてしまった。すなわち
「助けてください大魔王!!!」
双子の様々なヤバさに負けたティファが人生初に助けを求めたのが大魔王となり、その様を愉快げに見たバーンは、双子の奇行を苦笑程度で許したのであった。
ちなみにティファはその直後にキルが空間から腕を伸ばして保護され、美味しいもの攻撃3回分は双子に毛を逆立て抵抗したが、四度めで、そこまで嫌わないでほしいという嘘泣きにものの見事に騙され絆され許してしまったというオチもある。
ミストはそのことを振り返りながらも、キルに抱きかかえられてバーンの下にティファを連行している道すがら、双子の視線はばっちりと感じている。それどころか自分達に会釈する者の中には
「これはティファ様、お部屋から出られるとは珍しい。今日の昼食前の歌はどのようなものを?」
「よろしければ手前と合奏を。」
「お顔の色がよくなられて・・・」
等と親し気に話しかける者が続出している。
主と自分達の接し方と、ティファの柔らかい雰囲気と着ている物を見て、捕虜だと思う者がいないのは当然と言えば当然なのだが中には
「これは-おひぃ様-、ご機嫌麗しく。」
ティファを堂々と姫呼ばわりする者が出る始末。一部の者達は、ティファを主の御落胤などととんでもない勘違いをしている者がいるが、主も考えがありその噂を放って置かれているのでどうしようもない。
普通の挨拶には挨拶を返すティファは、おひぃ様の意味が分からず困惑するが、その度にキルが答える。
「君は-お日様-のような子だからじゃないの。」と
-その時-が来るまで、ティファには己の本性を知らせない方針もあり、キルはその辺を上手に誤魔化し隠せてしまう。
成る程、ティファの世話係にはキルが一番か。
ミストは-色々-と納得しているが、ティファも馬鹿ではない。
自分に向けられている視線が、どことなくリンガイアの、其れも騎士団と魔法師団と同じ敬意を払われて向けられる視線だとは気が付いている。
何故?敵の捕虜だとお達しが無くとも、何故子供の自分に?
・・・・自分は一体、何か見落としているのだろうか・・・・こんな訳の分からない事態を引き起こす程の何かを・・・・
今宵ここまで
着々と進む地上消滅への準備と、主人公を取り囲む包囲網
次の回を最後に勇者達に返します。