勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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勇者達にお話が返ります。


駆け抜けろチウ①

チウはひたすらに走っている。

王城の長い廊下を駆け、途中階段を上ってまた長い廊下を駆けて行く。幾人かが自分に驚いて声を掛けてくるが、こちらにも急ぐ理由があり申し訳ないが立ち止まっていられない。

今が大戦という非常事態であるとはいえ、本来であればモンスターの自分が人間の王城に入れて貰える事自体がおかしい。

 

其れはひとえに自分が勇者ダイの一行メンバーだと認識してもらえているからであって、もしかしたら町中に入る事さえ許されないかもしれない身なれども、急いで行かないといけない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイ達が大魔王達に敗れて五日目の朝に、破邪の洞窟でミナカトールを習得し終えたレオナ達が帰還した。

たったの二日という驚異のスピードに、洞窟の難易度を本当の意味で知っているマトリフが目を剥いたのは言うまでもない。

 

「・・・・どんな魔法使ったんだよ・・」

 

一階から十五階はさほどでなくとも、ある階層を境に兇悪モンスターの巣が一つ二つは済まないだろうし、洞窟の一番目玉と呼べそうな太古の秘儀、ミナカトールを習得する二十五階層前あたりからはそれ以上だろうに。

 

レオナ達がマァムの持っていたキメラの翼で戻ってきた時砦は歓声に包まれ、特訓でへとへとであったダイ達も飛び出してそれぞれの恋人と仲間を出迎え、レオナとメルルは恋人からの抱擁と口付けに顔を赤らめながらも疲れは吹き飛び、チウとマトリフに労われているマァムも砦を出る前の暗い表情は欠片も無いのが見て取れ、妹弟子のその様子に安心したヒュンケルに頭を撫でられるという微笑ましいほっこりとした一場面であった。

 

砦を出る前のマァムは、己の心理状態から輝聖石を光らせられずに最悪な面持ちであったが、ラーハルトと思いがけず自分の深い所迄話せたことにより己の中の葛藤を全て吹き飛ばせ、本来の慈愛の心を取り戻すに至り石は光万事上手くいったのだ。

 

「もうね!後半は全部ラーハルトがね!!」

「そうです!私達はもう本当に後を付いて行くだけでよくて、私の邪気察知なんていらない程でした。」

「あの時の頼もしさったらなかったわよね!あ、でも私が好きなのはダイ君だから安心して頂戴ね。」

「本当に、許される事ならば復興したカール王国の騎士団長ホルキンスの副団長に押したい位でした。」

 

出発込みで、実質は一日半で破邪の洞窟という極悪難易度の迷宮を走破出来た理由を問われれば、女性陣全員がきゃいきゃいとラーハルトの勇姿を口にする。フローラなどは本気でスカウトできないかバランに後で聞いてみようと機を窺っている程の働きぶりであった。

 

あの時のラーハルトこそ鬼神の如くと言えようと、マァムが我が事の様に嬉しそうに言うのを、ラーハルトは照れ臭くなる。

 

 

「もうよせマァム、俺は自分に出来ることをしたまでだ。そう余り持ち上げてくれるな。」

「でもラーハルト!貴方のおかげで洞窟をこんな短い時間で往復できたのよ。」

 

言い過ぎてはいないとマァムはさらに言い募ろうとするのを、ラーハルトはマァムの頭をポンポンと叩いて落ち着かせる。

 

「あまり言ってくれるな。」

「もう、でも嘘は言ってないのよ。」

 

これはマァムの言う通りで、レオナはミナカトールを習得した後は無理にミナカトールの不完全版を使う事無く、ラーハルトとマァムの護衛の下歩きで出口に向かった。

 

-原作-ではそのレオナの無駄ともいえる動きが時間ロスを生み出し、無茶を敢行していたが、ラーハルトがいるというたった一つの違いで文字通り楽に帰還を果たしたと言えよう。

帰りは行きとは全く違いモンスター達が出る事は無かったのが不思議だが、破邪の洞窟が古文書に書かれている通り、邪から人々を守るに足る相応しい者かを見極める所であるならば、力を示した者達の前には出ないのかもしれないとフローラは考察したが真偽は人間などの理解の及ぶべくも無いとの結論の下、さっさと帰ってきた。

マトリフやザムザ等研究に生きがいを見出す者達であれば時間があるのだからと何かしらを試して本当にモンスター達は出ないかなどという実験をしそうだが、フローラ達にはそんな趣味も生き甲斐も無い。

 

フローラ達の帰還を聞いて、少し遠くで朝の鍛錬をしていたハドラー達も砦に戻り、砦の大広間にてまたもや-出られる者出たいもの全員参加型-の会議が行われる。

 

この際砦全員の結束を固めるべく、広間と廊下の壁は全て取り払われ大黒柱以外の柱も同じ運命を辿り、数百名の有志達が一堂揃い踏む。

 

「姫さん達が出立した後、俺達も地下トンネル使って遠い森に出て各国巡りしてきたぜ。」

 

先ずは互いの現状報告から始まり、口火を切ったのはご存知勇者ダイ一行の頼れる魔法使いポップ。

 

一番近いロモスから時計回りにベンガーナ、テラン、リンガイア、パプニカの順で巡ってきた。

自分達は健在であり、まだ戦える事を各国の王達と戦える全ての者達に示す為に。

 

どの国も自分達の姿を見ただけで涙を流さんばかりに喜んでくれたが、大袈裟だとはとても思えなかった。

無理もない話で、ダイ達がバーンに負けた直後に死の大地から大型の浮遊建造物が突如としてロモス王国の西北の町を消滅する破壊行動をしたのだから。

 

その脅威がいつ自分達の落ちてくるか分からない現状に怯えていた者達にとって、勇者一行は希望の星なのだからと自覚をしているポップ達は激励を受ける食べに力強く頷き、時には悄然とし俯いている者達を勇気づけ、共に戦おうと励まし合いの巡回となった。

 

しかしここでもティファを案じられる悲痛な声にはダイ達も泣きたくなった。

 

ロモス王国のシナナ王などは、一行全員が逃げおおせられた理由をポップから聞いた時、ティファちゃんがといいながら泣き崩れていた。

人情家で優しさをもって民達に慕われているロモス王にとって、小さき女の子が自らを犠牲にしてこの世界を守らんとする姿に耐え切れずに。

 

シナナ王程で無くとも各国の王達もその事に心を痛め沈痛な面持ちであった。

 

賢く強く、それ以上に優しいティファを知る王達の、心深くまで入り込んでしまった影響は計り知れない。

 

だが、各国の王達以上の悲嘆に暮れても立ち上がったダイ達はそんな王達に力強く宣した。

 

「俺達は負けません!必ず妹を救って共に大魔王を倒します!!」

「そうです!俺達は生きてます!生きている限り勝てる迄何度でも立ち向かいます!!」

 

普段はティファやポップに弁を任せているダイが堂々と表に立ち、呼応するようにポップが続き、ヒュンケルとクロコダインが力強く頷き、ティファさんならきっと大丈夫ですと太鼓判をチウが押す。

その力強い言葉に、態度に、王達もまたダイ達に励まされた騎士達の様に希望の光をそこに見た。

 

暗い雲を斬り裂く一条の雷鳴を、闇を駆逐せんとする業火を、若き勇者と魔法使い、そしてその二人を支える仲間達の中に。

 

後の史実書でも二人の逸話は多々あり、二つ名も他の一行に比べて多かった。

ダイは竜の勇者、希望の勇者とそして雷鳴の勇者と称号が、ポップは二代目大魔導士が最も有名となるが、音速の魔導士、知略の士の他に炎の魔法使いが贈られる。

 

これは二人の得手の魔法でもある事もさることながら、各国の王達の前で見せた勇士が、その称号となるのだがそれは先の話。

 

 

「そうですか、皆さんのおかげで各国の王達も民達も勇気づけられましたか。何よりです。」

 

一国を預かる身のフローラとしては、王達の心情と国の現状が手に取る様に分かっていただけに、希望を与えられたことが何よりも嬉しい。

ただ戦う力を取り戻せたからではない。それも無論大切だが、人間にはいつでも生きていく上では希望は大切なのだ。今日が苦しくとも、必ず明日があると信じることが出来なければ心弱り死んでしまうのだから。

 

その息を吹き返させたダイ達には感謝してもし足りないが、懸念材料はまだある。

 

「各国の王達はハドラーの事は何と?」

 

フローラの最大の懸念はここにある。

この砦の者達はハドラーの決意とダイ達の真摯な思いの言葉によって、ハドラーも受け入れた上で結束する事になり、安心して破邪の洞窟に行くことが出来た。しかしここで矢張り魔王を受け入れられないと王がいえば、その国の兵は動揺し、折角固まった結束にひびが入るのが一番怖い。

 

その言葉を聞いた時、それまでは良い顔で報告していたダイとポップが顔を見合わせ、クロコダインは頭を掻き、ヒュンケルも微妙な顔をする。

 

その様子に、自分の危惧が当たってしまったかとフローラは血の気が引く思いがする。せっかくマァムの輝聖石が光大魔王を倒す光明が見えてきた矢先の出来事を如何にして対処すべきか早急に対策すべきだと言いかけたフローラに、予想外の言葉が掛けられた。

 

「いやさ・・・・魔王の事はいいってさ・・」

「・・・・は?・・・いい・・とは。」

 

ポップに掛けられた言葉にフローラは素で驚いてしまい普段成りを顰めさせている少々おてんばな言葉で返事をしてしまった。

 

「それは・・・大戦終わった後に考えると?」

「いやそれも違くてその・・・・これもティファ影響なんすよ。」

「はい⁉」

 

ティファ影響

 

その言葉にフローラは目を剥く。何せ事は魔王である!!先の大戦では各国とも尋常でない被害を出し、あわや攻め落とされかけたパプニカも他の国の王達と同じだとでもいうのだろうか!!

 

料理人ティファの命惜しくば今から三日後に以下の者達をパプニカ王城に集めよという敵からの脅迫を飲むことにしたフローラが一番頭を痛めたのが、パプニカ王城に集める者に魔王ハドラーの名が挙がった事だ。

ハドラーは手元にいるからいいが!問題はどうやってパプニカ王城に入れられるかが、マァムの輝聖石が光る前のミナカトールと同じくらいの懸案事項。

 

魔王ハドラーは処刑してやりたいか、百歩どころか千歩・万歩譲って地上存亡の為の戦力としての存在を許すが、自国の領内、其れも王城に入れるなどもってのほかだと言われないか、ダイ達と魔王殿の複雑な関係を事細かく親書にしたためながら胃に穴が開きかけたフローラとしては、ポップの説明を聞けば聞くほど泣きたくなってきた。

 

曰くティファが助けたのであればそこには途轍もない深謀遠慮がありこちらとしてはいう事は無い、深い思慮あっての事であろう、大恩あるティファが救った者をとやかく言う資格が自分達にはない、過去の遺恨よりも世界の為に料理人が救ったハドラーとその親衛隊達を存分に使い潰せというお達しの下、ハドラーがいても口出ししないという確約迄一筆入りで貰って来たとか。

 

順にロモス、テラン、ベンガーナ、リンガイア王達からの言葉であり、其れも懸念していたパプニカのレオール王などは病床の寝室にても、

 

「過去の遺恨は今も忘れず今この瞬間にも殺してやりたいが!その事とこの度の事は別!!ハドラーが罪悪感からパプニカに来ずティファが殺された日には、私自らがハドラーのそっ首を落とすぞ!!」

 

とまで言い切っていたとか・・・・・・自分のあの葛藤と苦悩は一体何だったのか!!

本当に一体彼女は何なのだと心中で憤ったフローラは悪くないと思う。

 

何となく、初手からまだ会ってもいない妹に振り回されて精神的ダメージを食っているフローラに対し、申し訳なくなり同情すべきだろうかとダイ達もだが、意外と常識を重んじるマトリフ達も、受け入れて貰えたハドラー達すらもが溜め息を吐きながら思ってしまったのだから。

 

とんでもない娘の影響力はどうなっているのだと。

 

 

 

 

またティファ効果かと溜め息を吐く者達の中でただ一人、チウだけが頭を痛めている周囲を不思議そうな顔で見ている。

 

どうしてティファさんが素晴らしい事に溜め息を吐くんだろうか?

お陰でハドラーさん達は受け入れて貰えていいことずくめなのに。

 

早くティファさんを取り戻してあの笑顔が見たいと、チウは難しく考えずにティファを思うだけなのだから、大人や常識の思惑は理解の外であった。




今宵ここまで

ちょっとチウ君に色々と頑張ってもらいます。
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