勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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ご注文の品入ります''`ィ(´∀`∩


駆け抜けろチウ➁

ダイ達の報告で外の現状も分かったフローラは、最後の懸案事項を確認する。

 

「-昨日-の夕刻に落とされた柱で出た被害の程は?」

 

レオナがミナカトールを習得して少しした後に、メルルが託宣を受け取った。

 

内容はバルジ島に落ちると。

 

フラメルが砦に置いてきた通信で知らせた直後、主力不在の砦を預かるバウスンの命でノヴァが単身でバルジ島に飛び、人が誰もいない事を確認した後は精霊達に頼み、モンスター達の救助をして帰ってきた。

 

原因は一切不明だが、今大戦では陸のモンスター達は邪気に侵されておらず海のモンスター達は影響を受けている。

更に言えば、陸から海に入ったモンスターも矢張り凶暴化してしまう。

 

人族以外とは言え、精霊・モンスターを友に持つノヴァとしては大勢のモンスターの命を見過ごせないと、精霊達に異界を通して逃がしてほしいと頼み、当然彼等はその望みを叶える。美しく優しい彼の望みを。

 

全てを逃がし終えたノヴァは敵の監視に引っかかるのを厭い、どのような攻撃方法かを実際に見たかったが諦めて撤退した。その十分後に、大地は二本目の柱を落とされクレーターを穿たれた。

其れは奇しくもダイ達が敗れ、柱を落とされた刻限と同じ-黄昏時-であった。

 

「被害は出ていません、しかしあそこが無人なのはあちらも知っている筈なのですが・・」

 

実際バルジ島に行ったノヴァが発言途中で言葉を濁す。

あそこはレオナを人質にしたフレイザードとの決戦の地跡で、その後見張り等の再建設はされずに人員の再配置も無く無人島と化していた。

 

そのような所を攻撃する意図が読めない。

 

何か重要拠点や、ポルトスの様に人口が多い場所でもないのだがと、敵からの攻撃糸を知るには手掛かりが皆無でハドラーとしても意図が読めずに頭を悩ませてみたが、ここでい考え込んでも仕方がない。

 

「現状で敵からの攻撃の意図を調べる手掛かりがない以上他の事をしましょう。マァムの輝聖石も光ったのでミナカトールには問題なく、仮に明日来る敵からの使者が、最終決戦は明後日といってきても問題ないようにしましょう。」

 

フローラは立ち止まって考えている暇は無いとばかりに次々に指示を出す。

最終決戦で死者が出ないように万能薬の増産を主眼に置き、各自の特訓と、それ以上に自己完治を徹底する事や武器の手入れまでと、やる事は山積みである。

 

戦とは始まるまでの準備段階が一番重要で、それを怠る事はすなわち敗北に結びつく。

 

ダイ達もその言葉に気を引き締め頷こ闘志たその瞬間、

 

「はっはっはっはっは!!遂に完成したぞお前達!!!!」

 

 

 

大広間に一つだけある扉がバカンと左右に吹き飛ばし、テンションマックスの高笑いをしながら押し入ってきたのは

 

「おいロン・ベルク!!!扉壊して入って来る奴がどこにいるんだよ!!」

 

魔界にその人ありと謳われている名工ロン・ベルクであった。

 

「細かい事は気にするなポップ!!俺はな!お嬢さんから依頼された品物-全部-完成させたんだぞ!お前らも喜べ!!」

「え!ティファが頼んだって奴!俺見たい!!」

「あ、俺も見てぇ!どこにあんだよ!!」

「確か俺の破壊されたアックスもいたから作ってくれるとか。」

「ティファの依頼品全部・・・この短期間で⁉」

 

反応は様々だが、ダイ達にも自分の喜びが共有できたとロン・ベルクは更にほくほく顔になり、気をよくして扉の脇に置いた木箱を持ってきて広間の中央において取り出し始める。

 

「まずはポップ、お前さんだ。こいつはブラックロッド。原理は大魔王の光魔の杖と同じだって言えば分かるか?」

「俺の魔力を吸って、武器になってくれんのか?」

「その通りだ。お前さんの魔力を吸ってロッドが伸びて打撃戦も出来れば、投げつければ投擲武器にもなる。どちらも込めた魔力の量で威力が比例する。

其れと投擲武器にもなる穂先ともいえる先端部分はオリハルコンを使ってある。」

「!!ってことは!これであの疫病神貫いても、腐食こそすれ・・」

「その通りだ、先端は使えずとも打撃戦と通常のロッドとしての機能は保たれたままだから安心してあの変態野郎を刺し貫けるぞ。」

「へっ、一番有難い機能だ。串刺しにしたところをメドローアぶち込めるってもんだぜ。ありがとよロン・ベルク!」

「おう!是非そうしろ、まぁその前に俺がぶった切る予定ではあるがな。」

「あのさあのさロン・ベルクさん!!俺の折れた剣は⁉」

「おっと悪かったなダイ、あの変態を始末できる算段が付いて付いたかが外れたが、他のもきちんと仕上げたぞ。

折れたのはそのまま鍛錬して治したが、剣からは並々ならぬ意志を感じたぞ。」

「意志?剣から?」

「あぁ、次は折れてたまるかとばかりな強い意志を感じた。俺もその思いに応えたくてバージョンアップを図りたかったんだがこれ以上剣自体は上げられなかった。

その代わりに、-鞘-の方に細工をした。」

 

ダイにせっつかれたロン・ベルクは、木箱から二つ目の武器を取り出す。

 

其れは黒光りする鞘に包まれた新しいダイの武器であった。

 

「この鞘に施した細工は、魔法剣をこの中に入れれば、剣に付与した魔法のランクが上がって威力も比例して上がる。」

「い・・・」

「あぁ、分かりやすく言うとだな。」

 

自分の言葉を聞いてフリーズを起こしたダイに、どう言えば分かりやすいかかみ砕いて説明せなばなるまい。

 

「お前がよく使うのはメラかライデインだろう。」

「うん、それを剣に付けて火炎大地斬とライデインストラッシュだ。」

「そのライデインを纏わした剣を鞘に再度入れれば、ライデインはギガデインにチャージアップ出来るんだ。」

「えぇ!!そしたら俺ギガデイン使える事になるの⁉」

「そいつはすげぃや・・・・」

「うむ、ディーノの戦力がさらに飛躍する!良かったなディーノ。」

「うん!俺父さんと同じ魔法が自分でも使えるってすごく嬉しいよ!!ありがとうロン・ベルクさん!!!」

 

ダイの、その純粋な喜びようと言葉に、偏屈ロン・ベルクの顔も緩んで思わず大の頭をわしゃわしゃと撫でて思いに応える。

これ程の言葉を貰えて鍛冶屋冥利に尽きるとはこの事であろう。

 

ダイの戦闘センスがあれば、この途轍もない付与を付けた剣を十全に使ってくれよう。

それに追加機能は其れだではない。

 

「チャージには十秒かかるが戦闘継続できるように鞘はさっきのポップのロッドと同じでオリハルコン製だ。

試しに構えて鎧化と言ってみな。」

「うん!鎧化!!」

 

ロン・ベルクの言葉で、帰ってきた相棒ともいえる自分の剣を、鞘に入ったまま正眼に構えて鎧化を唱えれば、

 

鞘の外部分がパプニカのナイフを少したくらいの短剣となり、外部分が取れた鞘自体が鋭い剣の様になっていた。

 

「チャージの間も其れで戦えるようにしておいた。短剣で戦ってもいいし、鞘で戦っても、出来るなら二刀流でも好きに使ってくれ。」

 

魔法チャージの着想までは良かったが、十秒という時間が弱点となる。敵がそんな時間を待ってくれるはずが無く、当然撃たせまいと襲ってこよう。

その弱点を埋めるべく鞘に二段構えの細工を施した。

 

先に使っていた鞘の材質では、強敵たちの打ち合いに耐えられる事は出来ないと、弱点自体をカバーする方法を考えておけとダイに丸投げしていただろうが、こちらにはティファから受け取ったオリハルコンがある。

優先順位としてヒュンケルの剣の魔装、ポップのロッドとマァムとクロコダインの武器を作っても余ったのでこれが作れた。

 

至れり尽くせりの武器のバージョンアップにダイは思わずロン・ベルクに抱き着いて何度も何度もお礼の言葉を言い続ける。

 

剣が折れてしまった時、ティファの教えが無ければその時自分の心も折れていた。それ程剣に全幅の信頼を置き、最早自分の相棒ともいえる剣のレベルアップしてくれたロン・ベルクには、何度お礼を言っても足りないとばかりにしがみ付く。

 

その直情的な行動に、ロン・ベルクは驚きはしたが嫌だという気持ちが少しもわかず、寧ろ片膝を付いてダイの思いと言葉を受留める。

自身も、己の求める武器が完成したならば今のダイと同じほどの喜びを抱くのが目に見えるからだ。

ダイ達の武器作りで、近頃は自分の剣作りを置き去りにしたが悔いはない。

 

「今度こそ壊さずに戦い抜いてくれよ。」

 

優しく抱きしめエールを送れば

 

「うん!うん!!俺約束する!!!勝ってこの剣をみんなの前で掲げるんだ!」

 

鬼岩城を倒したあの時の様に。

 

その言葉は力強く、誰もがその姿を見たいと、見るために勝つのだと胸に新たな炎を宿す。

 

勝って味方全員で勝鬨を上げ、平和な世を謳歌する為にも。

 

 

 

ダイのお礼を受け取ったロン・ベルクは、他の武器もあるとダイを諭して離れさせ、マァムとクロコダインにも渡す。

 

マァムは腕に嵌めるタイプでクロコダインはアックスの柄が長くなり、己の部分の先端にも刃が付けられていた。

 

名はグレイトアックス。

 

「こいつは斧の部分がオリハルコンで、それに埋め込んだ魔石は二つの効果がある。一つは轟火といえばメラ系の力を、爆音といえばイオ系の技が出る。威力は初級呪文を強くした以上は出るはずだ。」

 

その言葉と共に、ずしりと受け立ったクロコダインのダイ同様に感極まる。

 

真空の斧は、先の戦いのカラミティウォールに砕かれていただけに、新たな武器のすばらしさに感動して、受け取ったままの姿でジンとする。

 

その姿は剣の魔装を受け取った時のヒュンケルと同じだが、今度は急かして正気付ける必要も無いだろうとそっとしておき、マァムの腕に嵌めさせた武器の説明をしする。

 

「こいつも鎧化できる。とはいえ武闘家の動きの邪魔をしないように上半身は額と両肩と左腕と心臓部分を、下半身は左脚と右膝を鎧で包み込む。」

「ふふ、そしたら右で攻撃して左で防御すればいいのね。」

「そうだ、こいつも言わずと知れたオリハルコンだ。大魔王のカイザーフェニックスという出鱈目なメラ系にも対処できるぞ。」

「ありがとうロン・ベルク!十全に使わせてもらうわ!!」

 

これで威力が大きすぎて反動を怖れて使えなかった猛虎破砕拳も、自身の防御力が上がった事で使える!

 

鎧化はしなかったが、マァムは戦いの幅が広がったと喜び、何故かラーハルトに嬉しそうに見せに行き、良かったなとラーハルトに頭を撫でて貰いご満悦であった。

 

それが最後の武器化と思えば、ロン・ベルクはチウの名を呼んだ。

 

「チウ、お前にもあるから来い。」

「ええ!!!・・・・ぼくに・・・ですか?」

 

まさか一行どころか砦の中でも支援サポートのそのお手伝いをするくらいだと思っていたチウは、呼ばれるとは思わずあたふたとロン・ベルクの下へと向かった。

 

何だろう?もしかして僕にも使いやすい初級武器でもくれるかと思えば、見るからに立派な籠手が渡された。

 

「こいつに鎧化と言ってみな。」

「え⁉」

「早くしろ。」

 

チウに手づから装備しながらロン・ベルクは早速使ってみろと促し、まさか味噌っかすの自分にそんな立派なものが来ると思っていなかったチウは、装備後戸惑いながら鎧化を唱えれば。

 

籠手は手首の先が鋭い刃となり、チウの両肩口と背中の部分をスパイクの突いた鎧が覆う。

 

「お前さんは自分の体を弾丸にして敵に体当たりする必殺技があるんだろう。これで威力も上がる。それよりも肝心なのは。」

 

ロン・ベルクはダイにしたように片膝を付いてチウと目線を同じにして大事な説明をする。

チウの両手を包んであげさせ、チウに籠手に埋めた魔石を見せる。

 

「こいつはクロコダインの真空の斧と同じ真空系の魔石だ。籠手の溝が見えるだろう。これはバギ系の技の威力を指向性にする。-誰か-に籠手を掴まれたら

躊躇わずに真空よと言えば、-オリハルコン-や上級モンスター出ない限りは斬り裂く!」

 

真剣なロン・ベルクの瞳に、チウはロン・ベルクの言わんとしている事が分かり青褪める。

 

「それってもしかして!!」

「そうだ、お前さんもお嬢さん同様あの変態に捕まる対象にされちまったんだ。あいつの腕だろうが首だろうが容赦なく落とす気でいけ!!それが出来なければ捕まるぞ。」

「それは・・・」

「あいつがいる限りお前さんをどこにいさせても空間で連れて行かれちまう。いいか、迷うんじゃないぞ!!」

 

これ以上俺の仲間を、あいつの好き勝手にされてたまるか!!

 

キル憎しの一念で作った籠手を握りしめ、鬼気迫る思いをチウに託す。

 

余りにも鋭く、真剣な面持ちのロン・ベルクの言葉に押されるように、チウは無言ではあるが首を一つ縦に振った。

 

「いい子だ、俺もなるたけ早くあの野郎を始末するが、油断するなよ。」

 

チウの返答に満足したロン・ベルクは、ダイにしたようにチウの頭を撫でるが、チウの心の中はもやもやとした。

 

 

 

マトリフさんの洞穴に押し入ってきたキルバーンさんに向かって、僕も戦い抜くとは言ったけど・・・

 

あの人は優しくい言葉をかけてくれても、どこまでいっても敵で・・・その敵を撃ち倒せる凄い武器も貰えて・・・

なのにどうしてだろう?こんな凄い武器を僕も貰ったのにちっとも嬉しくないなんて・・・・




今宵ここまで


漸く武器が完成しました。

それぞれがオリハルコン製と原作よりもバージョンアップしている中、チウ君にも物凄いスペックの武器が授けられました。

この武器に託したロン・ベルクの思いは半端ではありません。

某死神さんくらいの腕と胴と首くらいは指向性で放たれたバギ系で斬り落とせる威力搭載ですが、果たして今作のチウ君は使い切ることが出来るか・・・

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