「お前の気持ちも分からんでもないがな、チウに扱いきれねえような代物渡してどうしろってんだよ。」
「あのなマトリフ、そいつはチウに失礼すぎるぞ。闘気量だの技量だのを全部差し引ても、あいつは間違いなくダイ達の仲間でいる資格があるだろうが。」
「・・・・確かに器がでかい奴で、ここ数日でまた配下のモンスター増やして面倒見てるけどよ。」
「そっちじゃねぇ、てかそれはそれで凄いけどな。あいつの頑丈さは自分は強いだとかこのくらい平気だとかの思い込みで成り立ってるもんじゃねぇ。あいつの体は間違いなくあの籠手に付けたバギ系の技撃っても耐えられる体だ。」
全部の武具を短期間で作り上げたロン・ベルクは気力体力尽き果て広間でチウの目の前で崩れ落ち、目を丸くしたチウが有無を言わさず俺様系の名工様を、お姫様抱っこして廊下を爆走して自分のあてがわれているベッドに寝かしつけた。
その頃には多少体力も戻ったロン・ベルクはもう大丈夫だと起きようとしたが、チウのジト目とそれ以上に、チウの後ろで般若の形相をしているザムザの顔を見て血の気が引いた。
「一体何をしているのですかロン・ベルク殿?私はティファさんから-皆さん-をお預かりしたと言いましたよね?そして誰一人体調を崩させないと、えぇえぇ宣しましたとも。
そして二時間おきほどに一度は体調はどうですかとしつこいくらいに聞いて、貴方何と答えてましたか?」
この砦に来る前からティファの依頼品を製作し、ここにも窯を速攻で作らせて寝食はそこそこ取りながら、文字通り心血を注いで武具作りに励んだロン・ベルク自身としては悔いはないが、ティファからの預かり者の健康管理阻止損ねた事にご立腹を通り越して激おこなザムザの表情に、俺様を貫いて数百年のロン・ベルクがあっさりと謝った。
「・・・・・すまん・・」
大変不本意ではあるが、寝食をそこそこ取れて過労死しなかったのは間違いなくザムザのおかげ。
ザムザも昼夜問わずに二時間おきほどに一度は体調を聞いてきて、時には飯も持ってきてくれて、数時間は仮眠を強制的に取らされた。
脅し文句が凄かった。
「貴方が寝ないのであれば私は更に寝るのやめます。貴方がいつ倒れても善処できるように。
あぁしかし貴方はお気になされずやりたいようにどうぞ。私が勝手にやるだけですので。」
それを実行した日には自分は他者の思いを踏みにじる最低野郎になるだろう・・・降参して数時間仮眠をとる間ザムザも寝る事で話を付けたのだが倒れてりゃぁ世話無いわな。
チウのうる目懇願に癒されながら、ザムザの鬼説教を大人しく受けつつ今日半日は爆睡する事にして、起きたら枕元に椅子を置いて座っている、あきれ顔のマトリフに別口で説教された。
あの武器の性能はチウには高すぎて扱えないだろうと。
そんな事は無い、あいつは本当にタフだと、不本意ながらも抱き抱えられた俺自身の感覚が告げている。
あいつの頑丈さはクロコダインに通じるものがあると。
「そうかよ、お前さんがそこまで言うんだったら後は言う事はねえ。」
「あいつらが心配なのは分かるが、信用してやれよ。」
「そうかも知んねぇがな、俺にとっちゃ全員が-いい子-で無用な怪我して欲しくねぇんだよ。お前だってその辺は一緒だろう。」
「あぁ、だからこそチウにあれをやったんだ。」
ダイ達の武器の面倒だけでも死にかけたが、実はチウに渡した武器が一番手間取った。
ダイ達の武器の作り方には培ってきたノウハウを使えばいいのだが、バギ系の魔石の威力を指向性にするには、籠手にどれ程の溝を彫り、何処までであれば耐久値が割れないかを模索しながらの作業は本当にきつかった。
そもそもがオリハルコンを精製する事自体が自分の生命力を燃やさなければならない事であり、其れがヒュンケルのも合わせて計五人分の武器なのだから、マトリフとザムザから体力回復の万能薬を貰っていなければ過労死していたレベルだ。
そん中、戦力と数えるには心許ないチウにどうしてもあの武器が必要だった。
戦力にするのではない、戦力になれない弱い者だからこそ必要な武器を。
あれならば死神の腕が伸びて来ても切り払い、狙った効果が出なくとも驚いた死神から例の体当たりで窮地を抜け出ててくれさえすればいい。
後は自分でもあの坊やでも対処できる。その時間さえ稼ぎ出せれば。
「お前は・・・・そんな理由であんなぶっ飛んだ破壊力の武器をチウに渡したのかよ。」
「まぁな、あいつを斬らないと-魔法使い達-が安心して魔法撃てんだろう。」
「あん?そいつはどういう意味だよ。」
「言葉通りの意味だ。いいか。」
ロン・ベルクは自分が感じたキルバーンの脅威をきちんと話すべく身を起こす。
あれの変態気質だけで、ここまで執拗に討とうとしているのではない。
「あいつの空間は-ノーモーション-で、何処にでも自在に開けられるとポップが言っていただろう。」
「あったな。」
「仮にだぞ、ポップがブラックロッドを使いこなしてあいつを串刺しにして、止めを自分の魔法で刺そうとして、特大の魔法撃ったとするぞ。その魔法を防ぐ為に空間を開けて、ポップの直ぐ後ろに出口を作ったらどうなる?」
「!!そいつは・・・」
「そうだ、俺がその発想に辿り着いたんだ。魔法使いポップの脅威を知った空間使いのあいつだったら、間違いなくそういう類の罠か空間の使い方をしてくると俺は睨んでる。」
「・・・・確かにそうなるとキルバーンは厄介なのにもほどがあるな。」
其れが出来たとしたら間違いなく魔法使い殺しもいいところだ。
魔法使いの誰も彼もがマホカンタが使える訳ではなく、仮に使えたとしても四六時中は張っていられない。
自身の魔法も撃てず、討った後に張るにしても魔力切れですぐに戦えなくなるので現実的ではない。
それを言ってしまえば、放出系の闘気技も同じ憂き目にあうのは自明の理。
「だからこそ俺は戦場ではあいつを真っ先に討つ。あいつのせいで仲間を好き勝手にされるのは俺は我慢ならん。」
その言葉を言いながら、ロン・ベルクの両手は強く握りしめられ薄っすらと血が滲んでいる。
其れはロン・ベルクの静かな怒り。
自分が人生の中で一番大切に思う仲間達を窮地に追い詰め殺し掛けた、ミストバーンよりも厄介な大魔王の死神に対する深い怒り。
「ったく、やっこさんが動いてる限り俺も魔法はウカウカ撃てねぇわな。」
その激情を冷ますようなマトリフの気楽な口調の内容に、ロン・ベルクは怪訝な顔を向ける。
「・・・・・・お前人間の中では超高齢だろ?なのに決戦場に来て戦う気かよ?」
しわくちゃで、吹けば飛びそうな御老体の身で。
魔族からすれば百年しか生きていないのにと思う程、人の寿命は短すぎる。瞬く間に、自分は置いていかれる寂しさを埋める術を今から探している程に。
そんな短い生を生きている奴が、無茶をしてくれるなと遠回しに止めたのだが、マトリフはその言葉を馬鹿馬鹿しいと蹴っ飛ばして見せた。
「七千歳のジジィが地上と天界相手取って立ち回ってやがんだ。たかだか百前の俺がへたばってられっかよ。」
にやりと笑い、図太く言い切るマトリフの暴論にさしものロン・ベルクが目をぱちくりとさせた。
ジジィと言った、魔界の神を、今地上の全ての民達を震撼させている敵の首領を臆面もなく・・・ミストバーンが聞きつければ間違いなくマトリフを抹殺しようととびかかる発言を易々と。
「クックック・・・」
「あん!立ち聞きすんの飽きたのかよハドラー。笑いてぇんなら堂々と目の前で笑えや。」
「すまんな、明日の日程が決まったのをお前達に伝えてくると買って出たら、入っていい雰囲気ではなくな。悪気はない。」
気配を消していた訳で名はいハドラーの事は、二人とも気が付いていたが入って来るか来ないかはハドラーの勝手だと放置していた。
しかし、自分の発言を笑うのならば堂々としろと、マトリフが痺れを切らして入れと促す。
「魔界の神を、ジジィ呼ばわりするのはお前くらいなものだな-妖怪ジジィ-。」
「抜かせ、そんで明日はいつごろ此処を発つんだ?」
「夕日が沈むころ辺りだ。その時呼ばれた者以外は置いていく事にした。」
「それが一番だな。使者は間違いなくあいつだろうよ。」
「斬ったらダメか?」
トントン
ハドラーのもたらした明日の予定に、物騒なコメントを出したロン・ベルクを諫める前に、扉がノックされ返事も聞かずに入ってきた者がいた。
「いるか師匠?加減はどうよロン・ベルク。」
「ポップ、お前は返事されてからは入れよ。」
「別にいいじゃねぇかよ師匠。それよりもさ、明日俺魔力ほぼゼロにしてから行くからさ、回復薬くれようとしなくていいから。」
「はぁ⁉」
「いやだってよ、其れくれぇしないと俺-使者-撃ち殺さねぇ自信ねえんだわ。ダイ達も同じようにするからって一致してる。
理性的なノヴァが満タンで行くから余程でない限り大丈夫だろう。」
「・・・・・・好戦的になっちまいやがって・・・分かった、その代わりいざという時すぐ回復できるように持っておけ。」
「そうする。師匠の許可出てよかったわ。」
ポップ達の心情を察したマトリフは、無茶をするダイ達を止める事はせずに許可を出す。
自分が後十歳若ければ似たようなことを仕出かしているだろうと断言出来てしまうからだ。
魔法使いはいつだって冷静にの、己に課した不問律を破りたくなる程に憎い奴が使者としてくるだろうから。
「んで、-置いていかれる奴等-は全員納得したのかよ。」
「あぁ・・・メルルは直ぐに、ただ姫さん達はパプニカ王城に顔出しも兼ねるからこっちは帰還する。
フローラ女王はカールに拠点があるって絞られないように顔を見せないでそのままの案でいくけど・・・・チウの奴がな~。」
「戦力外にした積りはねぇんだが、やっこさんと話してくらぁ。」
言葉を濁したポップの言いたい事を察したマトリフは腰を上げ、チウの居所を訪ねて部屋を後にする。
「俺もあいつと話してみるか。」
チウには恩があるハドラーも、チウの心情を察して慰めるべくマトリフの後を追う。
砦で受け入れる話になっても、打ち解ける事は無いだろうとハドラー達は思い、敵意を見蹴られなければそれでいいと考えていた。
その自分達に、ダイ達も距離感を掴めずどうしたものかと考えあぐねているのを尻目に、チウは普通に挨拶をし、普通にハドラーを食事に誘い、己の足りない格闘術を、普通にヒムに教えを乞いたいと頭を下げて来た。
同門のマァムは破邪の洞窟に、他の仲間も各自の特訓で忙しく、自分と、配下になったモンスター達を鍛えて欲しいと真面目な顔をして。
その様子を砦の者達は当然見ている。
チウが挨拶をすればハドラー達も自然と返し、共に食堂に行き、弱いなりにも戦う方法を必死に身に付けんとするチウを厳しくも励ましながら教えるヒム達の姿を。
そして四日目の朝に変化の兆しが見えた。砦の者達の自然とハドラーと行きかう時挨拶をし、騎士団達も恐る恐るだが剣士として強そうなフェンブレンと打ち合い稽古を所望して来た。
敵意どころか幽かな敬意さえ向けられるようになったのは、ダイ達、特に分け隔てなく自分達に接してくれたチウのおかげ・・・だけではないが。
下地としてアポロが大局的な話をし、恨みつらみを捨てるのではなくハドラー達を戦力の道具くらいで見る様にしてはどうかと話していたのも功を奏していた。
カール兵達とアポロの心情は一致している。
ー料理人ーの傲慢で独善的な偽善に振り回され、さりとてそれが今の状況ではそうしなければならないという、個人の思惑や感傷など度外視された理不尽な正しさを思い知らされ、どうすることもできない悔しさに共感し、ハドラー達に対しての敵としての憎悪を一旦胸にしまっていたのが、チウの自然な行動が本当の意味でハドラー達とカール騎士達の垣根を低くできたのだ。
そんなチウは今配下にした獣王遊撃隊メンバーと共に、ノヴァの指導の下-リンガイア救命団-と共に怪我人を運ぶ訓練をしている。
チウが組織した獣王遊撃隊というのはなかなかの大所帯になっている。
飛行モンスターでは、パピラス・ドラキー・ハンターフライと割といる。
其れならば空中から負傷した見方がいないかを探してもらい、深手を負っているものがあればすぐに知らせて駆け付けられる様にする特訓を。
発見後、報告の間に敵の目を引き付け混乱させて時間稼ぎが出来る様、パピラスのパピィの背に大王ガマのだいごと一角ウサギのアルミラージのラミたを乗せさせ、投入する事を検討している。
その三体がいる辺りは何があろうと近くの騎士・兵士たちは駆け付け援護させる手はずにして。
救護所を作るにあたり、隊長をしているチウと、グリズリーのクマチャと大アリクイのアリババに守りを固めて貰おうか?
物理系警護に彼等を付け、スライムのスラは見張りに、ドロルのドルやすはラリホーマが使えるとの事なので手当ての手伝いを頼みたい。
これもティファ影響で、本来はダイ大にない救護団がリンガイアに誕生し、その団長はなんとノヴァ。
若き天才は騎士団の団長と救護団団長を兼任している。
その彼の頭脳をもってすれば、予想以上鵜の戦力を押し出してくる魔王軍を相手にも、獣王遊撃隊の活躍の場が作られて行く。
配置は決まり、隊長のチウの許可も取りていざ特訓の最中にマトリフ達が訪れる。
「マトリフ様、見にいらしたのですか?」
マトリフ大好きなノヴァは、休憩中だったことも相まっていそいそとマトリフの下に駆け寄る。
その顔は本当に子犬みたいで可愛い事この上なく、ジジィを悶絶死させる気かと内心でぐぬぬものであるが、表面は努めて冷静に。
「なに、ちょっくら様子を見に・・・・・」
ノヴァの頭に手を伸ばして撫でてやりながらチウ達も見ようと首を伸ばしたマトリフは、そのままフリーズを起こした。
そして後から来たハドラーも、ティファに出会ってから一度もした事が無い阿保面をしてノヴァの背後から見える人物を凝視した!
マトリフとハドラーに気が付いたチウが手を振ってきたのは可愛い!!
しかしだ!その隣で同じように-フラフラ-と手を上げて振っているあいつは!!
最早マトリフとハドラーの心情は一致した
なんでお前が今ここに!!それもそんな姿でいるんだ!!!!!
今宵ここまで
筆者も空間使えたら、魔法は上記に書いた通りの対処するなぁ~と考えて出しました。
また今作では獣王遊撃隊では手も足も出ない戦力戦になるので、活躍の場を作ってみました。