よろしくお願いします。
「ネイ焼き菓子もっと食べて。中身のジャムはそれぞれ違うよ。」
「うむ、リンガイアの名物の一つだ。遠慮せずに沢山食べなさい。」「はーい。」
・・焼き菓子美味しい・・されど状況不味し!!
詩の韻ぽくなったけど何この状況!!ノヴァとバウスンさんだけならともかく!何故にマトリフさん⁉
ただいま一緒にリンガイアの名物菓子を一緒に食べてます。
-焼き菓子-はマドレーヌの中に様々なジャムが入ったお菓子で、リンゴ、オレンジ、様々な味が楽しめる。
ノヴァたちに勧められて笑顔のまま食べつつ、内心超焦ってます!・・気配の修行しててよかった。
目の前のマトリフさんはお茶を飲みつつ食堂にいる女の人を目で追いかけつつ・・私の事も探ってるっぽい・・。
本当~にこの人何しにリンガイアに来たの?
「ねえ父さん。」
「どうしたノヴァ。」
「この方どなたですか?」
おっ、ナイスノヴァ!!
「ああ済まない。マトリフ様もすみません紹介もせずに・・」
「いいよ堅苦しいのは嫌いだ。だがな・・坊や!!」
「・・はい!」
「人の事知りたきゃ先ず手前が名乗れ!礼儀だろ!!」
・・正しいけど・・この人が言うか・・。
「・・ごめんなさい。僕はリンガイア将軍バウスンの息子のノヴァです。」
ノヴァって素直だ。
「俺はマトリフだ。」
「・・マトリフって・・あの勇者アバン様の大魔法使いの!!」
ああ~ノヴァの目がキラキラしてる。男の子って冒険奇譚話すきだな~。
ウォーリアさん達に話聞かせてもらってるダイ兄と同じ目の輝きだ。
でもノヴァの方がお父さんからもっと具体的な話聞いて勇者アバン一行のフルメンバーの名くらい知ってるか。
その功績も実力も全て・・そして勇者目指してる分、兄よりも勇者道を一歩先んじてるのかな?
どっちも頑張っていい勇者になってほしいな~。
「どうしてマトリフ様がリンガイアに?」
「お前さんに会いに来たんだよ。」
「僕にですか?」
「ああ、お前の親父さんが精霊と話が出来るっていう坊やを心配して俺を呼んだんだよ。」
「何故ですか?」
「ま・・精霊にも良いのと悪いのがいるからな。親父さんには見えねえから心配して見える俺を呼んだんだよ。」
「僕の友達はみんな良い子達です!!」
「-その通り!-」
「-失礼な!!-」
・・嘘ね・・ていうか半分嘘か。
きっと精霊が見えてお友達になりましたって言うノヴァの言った事が本当かどうか真偽を確かめたっかったんだろうなバウスンさん。
普段人間のお友達が一人もいないノヴァがそんな事言いだしたら親としては心配か。
「悪かったな坊やと精霊達。どうやら悪い奴はいねえみたいだぞバウスン。」
「・・良かったです。」
真偽が分かってもバウスンさんの顔微妙な表情だ。親って気苦労絶えないな~ノヴァみたいな特殊な子はなおさらか。
(・・この嬢ちゃん・・俺が見ているのに気が付いてるんだか・・。
普通子供ってのは勇者の話が出れば食いつくもんじゃねえのか?)
勇者アバンの名前は今でも子供達に大人気でどこの国に行っても知らない子はいない程だ。
一行のものと知れば大概はノヴァのように食いついてくるのに、目の前の少女は焼き菓子にぱくついて自分の方は見向きもせず、時折精霊たちに小さく千切ってお裾分けをしている。
マトリフは心の中で―ネイ-を訝しげにし、ティファは心の中でマトリフにはよ帰れコールをしている。
かくして狐と狸の化かし合いお茶会は表面上穏やかに続く。
「そういえば、さっき坊やと嬢ちゃんが中庭で話していた事なんだがな。」
「何でしょう?」
「・・何か」
・・どれ・・どの話?
ベホイミ草・ホイミ系への疑問・・精霊達に聞いた万能薬の配合率・・どれ一つとっても一般の子供のする話じゃない!!どれですかマトリフさん⁉・・腹括ろう・・。
「ホイミ系が体内の機能までちゃんと効くかどうかってやつだが、なんだってそんなことを思いついたんだ?普通はホイミで治っちまえばそれ以上はどうかなんて考えねえもんだぞ。」
ああそれか。まあ―普通-の人ならそうだけどあいにく私は普通じゃない・・さてどうしよう?
「あのですね、以前旅の途中で・・申し遅れましたが私は旅回り孤児です。」
でっち上げよう。
「パプニカの山間部の小さな村で医者と僧侶さんが揉めていたんです。薬とホイミ、どっちが本当の意味で体をきちんと治せるかで。
医者は効きは遅いけど薬は塗るだけじゃなくて飲んで体の隅々まで効くって言って、僧侶さんはホイミは体内まで浸透するからきちんと治せて早いから魔法の方が便利で上だって、お互いに譲ってませんでした。」
(旅回りの孤児って・・この嬢ちゃん・・もっとましな嘘吐けねえのか?)
ティファの身分詐称のお粗末な内容にマトリフはとても呆れた。
十歳以上の子供が言えば多少は信じようもんだが・・どう見ても大人の庇護がいりそうなこんな子供がウロウロしてたらどこかで必ず保護されてるだろう・・バウスンの顔も呆れている。
息子の唯一の人の友達がこんな怪しい奴でいいのかとも悩み始めてそうだが・・それでも
「で?」
「・・で・・。」
「お前さんと坊やはどっちが効くと思う?」
呆れて怪しい以上に、この二人の答えの方がもっと気になる!果たして
「「分かりません」」
二人は正直に答えてくれた。
「薬草ではちょとずつ効く分過程が分かりますが」
「ホイミはあっという間に表面を治してしまうので」
「「だから体内まで怪我をして治った兵士さんから話を聞きたかったんです」」
(・・本当になんて子供達だ。その辺にいる僧侶や賢者の卵どもに聞かせてやりたい話だ。そんじょそこらの学者たちも真っ青になるだろよ。
ネイって言ったか・・話の発端は兎も角、中身は面白え!!)
マトリフはパプニカを出奔し、世捨て人になって以来の愉快さを感じる。
なにせ今までホイミ系の魔法に疑義を呈した者はおらず治ってお終いが通常だが、少女の言う通り、内臓機能まで治ったかどうかまでは確かめられていない。
治ったものを切ってみるわけにもいかないからだ。
しかし重傷者がホイミで治った後突然死をする者がいるのも事実だ。
今までは深く考えたことも無いが、もしかしたら体内の奥深くまで届かずに傷が残ったのが元かもしれない。
これを解き明かし、対処する方法を考え着けば世間がひっくり返る新常識の誕生だ!! 今まで昔の仲間以外の人間に嫌気がさしていたが!
「俺も混ぜてくんねか?」
この子供達と共に研究したいと、研究者魂に火が付いた!!
「はい⁉」
「・・え?」
「マトリフ様⁉」
ティファ・ノヴァ・バウスンの三人はマトリフの申し出に面食らった。
「マトリフ様・・この様な子供の遊びに・・」
「いや!こいつは遊びなんかじゃねえ!!立派な研究だ!」
(・・マトリフさん・・マジですかい・・目がマジだ・・どうしよう?)
ノヴァは単純に大喜びをし、ティファは心の中で途方に暮れ、結局マトリフの熱意に負けて受け入れることとなり研究仲間が増えることとなった。
マトリフさんが研究仲間になって早一月・・私は徹底的に逃げ回ってます!
当たり前の話でついうっかっりぼろ出すか分かんないのに・・会ったらまずいトップ・スリーに、立て続けに会うなんて私どんだけ運が無いのよ!
ノヴァには悪いけれども、式鳩飛ばして周辺見て近づいて、精霊達に確実にマトリフさん居ないか聞いてから会うことにして、五・六回しか会えてない。
でもこの位しないと、どうも近頃私はついていない。
神のご加護が・・減ってる訳ないか。いざという時、相談する相手は神様だし。
島に引きこもってもいられない。まだカールに細工してないし、お宝洞窟制覇してないし何より万能薬研究を完成させたい。
原作ではヒュンケルはホイミ系で表面治っても骨のヒビはついに治らず、最終戦で全身粉々になってる。
その後は分かんないけど、私の考えではあそこまでいったら骨は再起不能の方だ。
それでも薬だけではあの三か月のスピーディーな戦いの傷には追い付かない。
だから薬とホイミ系を合わせての治療で、ホイミ系を増幅させられる万能薬を考案中だ。
しかしだ・・私はもとよりノヴァも回復魔法は出来ない。
よしんば出来るとしても、人においそれとは試せない。
私が傷つくって薬塗って島のホイミスライム達に頼んでやっても、体内深くまでは傷つけられないから実験になってない。
・・これってよく考えたら国家プロジェクトもんだ。
倫理に基づいて被験者に薬の効能を説明して同意して貰った上でやるなんて・・子供二人じゃ無理でしょ・・私バカ?今更気が付いた事実に自分蹴飛ばしたくなった。
本当の子供のノヴァは兎も角私は気が付きなさいよって・・偶然にもマトリフさんが入った事によって、バウスンさんが王様の耳に入れたところ、小規模ながら研究チームが立ち上がったとの ノヴァ情報でホッとしたが・・私の考えの甘さが嫌になった。
そんなすごいプロジェクト子供二人でやろうだなんて・・絶対頓挫してる。
だからと言ってマトリフさんと机並べてなんてしたくない。
なにせ前回会った時は二・三ノヴァから私の話を聞いただけで私の事疑って見てたくらいだ。
名前の件も偽名だってバレてる気がする。これ以上ぼろが出ない様にと気を付けているけどノヴァはマトリフさんに懐いてる。
「こないだマトリフ様と一緒に兵士さんの話聞けたよ!そしたらね・・」
「マトリフ様ってベホイミもできるんだって!!」
ノヴァに会う度、ノヴァはマトリフさんの話をして・・必ずいう言葉がある。
「ティファも会いなよ!」
・・凄いのは知ってる・・むしろ知りすぎてるから会うのが怖い。
何かしらバレるのが面倒よりも・・怖い方が大きい。
今私もこの世界の住人だが・・一部は違う・・異世界人だ。
それを知られることは全く無くても・・世間の子供と私は全然違う・・それを他の人達に知られるのが・・今はなぜか怖い・・どうしてだろう?
大切な人が増え始めた主人公は、他者から奇異の目を向けれれることに無意識ながら
怖れ始めました。
少しずつ心の成長に繋がる大事なお話です。
次回は大切な友達の大ピンチとなります。