勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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駆け抜けろチウ④

「これが僕がここにいる理由だよ。」

 

 

ブロキーナのその-真っ当-な理由を、別室に連行して聞いたマトリフとハドラーは揃って溜め息を吐く。

 

 

確かにマァムは先日まではブロキーナの心配が的中していたし、弟子を慮ってきた事自体は立派なのだがそれにしてもこれは無いだろうと、マトリフは真っ当に説教しようと試みる。

 

「そしたら堂々と姿現せってんだよ。白い布被って何なんだよビースト君ってのはよ!!」

 

マトリフの抗議もごもっとも。

 

チウを探してノヴァの下に行き、探していた本人の横にどう見てもシーツを被ったとしか見えない不審者迄発見。しかも気配から二人は直ぐにブロキーナだと分かった。

 

マトリフは戦友として、ハドラーはアバンとこの妖怪じぃじ共々自分に幾度も煮え湯を飲ませた敵として忘れられる筈も無く。

 

しかもその白いシーツの胸元に、-隊員バッチ-が付いていた!!

 

少し前にクマチャが連れて来たんです。行くところ無いようで他の皆ともすぐに仲良くなっていたのでそのまま隊員にならないかって誘ったら頷いてくれたので。

 

このどっから見ても不審者な奴を保護したとにこやかにいうチアが本気で心配になる。

二人は少し話をすると言って老師を借り受けて別室で事情聴取したら、存外まともな理由だっただけにがっくりとしながら不審者カッコを何とかしろと説教した断られた。

 

「僕の姿見てチウとマァムちゃん安心して油断生まれちゃわない?」

 

拳聖とまで呼ばれた自分を頼りにして。

そう言われては二人は頷くほかない。頼りにすると頼みにするのでは意味合いが違う。

 

前者が、意外と強く動きがいいビースト君を頼りにして動く。後者は拳聖ブロキーナがいるのだから大丈夫と、心の何処かで変に余裕を持たれては困るのだが・・・

 

「チウは兎も角マァムは絶対お前に気が付くぞ。」

「あぁ~駄目かな。、この完璧な変装にマァムちゃん気が付くかな?」

 

・・・・・・絶対気が付く

 

二人の無言の言いたい事に、ブロキーナは思案し名案を思い付いた。

 

「よし!マァムちゃんが気が付いたらその時はマァムちゃんとだけお話あいしよう。」

 

手を打ってとってもいい事思いついたというブロキーナに、こんなひょうきんじぃじに煮え湯飲まされていたのかと思うと頭痛がするハドラーに、うって変わった様なひやりとする気配がブロキーナから向けられた。

 

「ときにマトリフ、僕も聞きたい。どうして敵の魔王、其れもアバンを倒したハドラーがこの砦に平然といて君と仲良くしてるんだい?」

 

先程まで朗らかで茶目っ気の会った声音はひやりとする冷たさを孕み、返答次第では戦闘も辞さない気配に、マトリフがハドラーとブロキーナの間に立った。

 

「物凄く複雑で、途轍もない話しすんぞ。」

 

それは天高く昇っていた日が、山の葉に傾くまで続けられた長い話の始まりであった。

 

「・・・・・君迄が・・・・その子のせいで有り得ない事態が、次々と起きている訳なんだ。」

「ああそうだよ・・俺も耄碌したと、なんだあの子の事でおもったかしんねぇが・・それでも俺は・・嬢ちゃんが愛しいんだ。」

 

前回の大戦でも仲間を大勢失い、今大戦でもかつて全身全霊をもって支えてやりたいと願った勇者アバンの死を前にしても崩れなかった自分がと、マトリフは自嘲する。

ー死ーなど身近な者である筈なのにそれでもと。

 

ブロキーナとしては何処から反応すればいいのか分からない。

山奥にいたとはいえど、其れなりの情報網が今でも生きているブロキーナは、リアルタイムよりは遅くはなるが、今世界で起きている事の大半の出来事を、市井レベルの内容ではあるが掴んで知っている。

 

ダイ達の活躍も、魔王軍の動きも、そして巨大な飛行物体が巨大な柱を落として回っている事も。

その尖兵で魔軍司令官であったハドラーが、隠し砦で見つけ、あまつ自分の一番弟子が気さくに話している時は魂消たもんだが、-世の中こんなものだ-を信条にしている身としては、こういう事もあるのだろうと今の話で納得をする。

 

良い事も悪い事も、どちらもあり得ない事が起きるのがこの世の中なのだと、酸いも甘いも嚙み分け、世の不条理を見て来たブロキーナならではの思考はブレなかった。

昨日の敵は今日の味方になるのもあるのだと。

 

もう少し言えば、マトリフの話の中にあった地上消滅目前の時に、味方と言い切るかどうかは別にして、大魔王を討たんとする者と敵対していい事など何一つとしてないのだからと怜悧な思考も手伝い時間が少しかかったが飲み込んで見せた。

 

この近くで寝起きしている-彼-も、今この場に居て説明を聞けば納得するだろうしまぁいいかなのだが・・ティファという子の話には不安しか感じない。

自分と同じくらい冷静沈着が服着て歩いていた筈のマトリフにここまで言わしめる者なぞ、いられるだけでも諸刃の剣を抱えている様で厄介な匂いしかしない。

その者一人の為に自陣が瓦解するものなど昔のマトリフならば周囲と本人を力づくでも矯正させるか、元凶のままならば追い出していただろに・・

 

 

「その人質になった子の為に、君達は明日パプニカ王城に行くんだね。」

「あぁ、許可はもうレオール王が出してくれた。こいつ来ない時は自分がこいつの首堕とすとまで言ってな。」

「そう、マァムちゃんは兎も角、チウは呼ばれていないから行かなくてもいいんだよね。」

「そうだ、置いて行く。」

 

チアを無用な危険に近づける理由が無い。

 

「そう、そしたら僕は敵の様子も知りたいし付いて行っていいかな?」

「行く意味あんのかよ?」

「いやぁ、僕が引きこもっている間に敵の強さが物凄く上がっているみたいだからね。ハドラーなんてその典型じゃないか。ロモス王国で実際にハドラーの雛形と戦っているんだけど、どうもあの時の相手は戦いの素人だったみたいだし。それでは敵の一端を知ったとは言えないからね。」

「ふん、だったら今の俺とさしで勝負するか?」

「やめておくよ、ひざがしらむずむず病が悪化したら困るからね。」

 

ブロキーナとしては、先の大戦など児戯にも等しく映ってしまう敵を知る為に見ておきたいのであって、間違っても戦いたい訳ではないのでお断りである。

 

チウは納得いかないながらもお留守番は決定している。

 

その晩、特訓から戻ってきたマァムは師の気配で直ぐに分かりすぐさま種が明かされ、チウには秘密だと約束をした。

 

「明日・・・・ポップ、昼間でガンガン力使っておかないといけないんだよね・・」

「私も・・・腕一本とは言えやらない自信がないのでそうしておこう・・」

「バラン様とディーノ様を護衛する俺もそうしないとか・・・」

 

 

ダイの言葉に端を発し、夕食の席はまるで通夜。明日パプニカ王城に来る使者とは絶対にあの疫病神である事は確定しているだろう。

 

もし万が一暴走したものが出て使者を殺そうとしても、キルバーンであれば空間を使い自在に逃げられるからだ。

 

今回の呼び出しに、戦力外になったバランとそれに付き従う竜騎衆三人組は呼ばれなかった。

 

バランも竜騎衆も、呼ばなくともティファの為ならばどのような事も仕出かすのは分かっているので確かめる必要は無い。

 

殲滅の騎士団長ノヴァとティファの個人的な仲は知られておらず、引き摺り出せる範疇かを知る為に、またハドラーが黒の核晶を抜いても無事であるのかを確認する為に呼びつけられた。

 

そしてロン・ベルクは、武器を供給するだけの間柄なのか、それとも人間達と共に抵抗する者なのかを見極める為に。

 

 

 

 

明日の話を聞くチウの心はどんよりとする。

 

僕だって、ティファさんが無事かどうか直接聞きたいのに・・・・




今宵ここまで

次回でチウ君は駆け抜けます
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