勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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来るのはお爺ちゃん達だけではない(`・ω・´)


近況

キルの優しい気配に絆され掛けるが、チウは全身の力を解かないようにぐっと我慢する。

 

内心ではどうしてこの人は僕に対してこんなに優しくしてくれるんだと絶叫していてもだ。

 

キルバーンさんは、あまり人を知らない僕から見てもとても素敵に見えるから困るのだ!!

 

先程までの敵の使者の気配とまるで違う事に、ブロキーナは師として来てしまった弟子の近くで、正体ばれるの覚悟で護衛をした方がいいのか、それともここは下手に動かず推移を見た方がいいのか決めかねる。そんな中、ダイ達は真っ先に動こうとした。

 

これ以上キルに仲間を好き勝手されてたまるかと、二人の間に入ろうとしたその時、またしても大広間の扉はノックをされずに物凄い勢いで開けられた。

 

入ってきたのは・・・

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・こんばんわ敵の使者殿・・・・・」

 

髪を振り乱し、普段からは想像もつかない鬼の形相をしているメルルの乱入。

急いで掛けて来たのが振り乱した髪と、靴が片方脱げて片足の裸足が物語っている。

 

「ええええ!!メルル!!何でお前迄きちま・・・・」

「ポップさんは黙ってそこにいてください!!!!」

 

叫びながら自分の側に来ようとしたポップに対してぴしゃりと言い放ち、言葉をぶつけられたポップは灰と化しその場に崩れ落ちた。

 

「ポップしっかり!!」

「ダイ・・・・俺もう駄目かも・・・」

 

親友の慰めに、ポップは力なく笑って益々崩れた。

 

俺の可愛い可憐なメルルが!!!あんな言葉を俺に!!

 

まさかのメルルの出現に、ポップはおろか、大人しい娘だというのがメルルに対しての、キルを入れた大広間にいる全員の見解だか、それを卓袱台返しの様にひっくり返してみせたメルルはキルに挨拶をした後、チウに近づき説教を口にしようとしたまさにその時!!

 

「おお見よお前達!!矢張り使者はキルバーン殿であったぞ!!!」

「お久しぶりですぞキルバーン殿!!!」

「こんばんわですじゃぞ!!キルバーン殿!」

「「「ティファ殿はどうしておられる!!泣いておりませぬか!きちんと食べておりますか!!虐められてはおりませぬか!!!」」」

 

 

メルルの開けた扉を怒涛の勢いで入ってきたご老人三人組が、チウとメルルとは違いワラワラとキルに近づいて取り囲み、ティファは無事なのかと物凄い怒涛の勢いでキルを押し倒さん勢いで迫りながら聞き出そうとする。

 

先程ハドラーを大歓迎したインス・フォス・ワイズ三兄弟は、高齢の為に身長は縮み、キルの身長の半分くらいしかないので子供が大人にしがみ付くように、キルの服をがっしりと掴んで逃がしませぬぞの構えである。

 

本人達は大真面目で必死の思いであるが、キルは気配を出さないように必死に耐お爺ちゃんズの可愛さに脳内で悶え苦しみながら耐えている。

 

本当になんでどうしてこのお爺ちゃん達はこんなに可愛いの!!!

 

何この小さな体!!ふさふさの御鬚に、同じ毛の眉に目が隠されているけど、今は滂沱の涙を流しながらしっかりと僕の服握りしめちゃってくれて!!なにこれ!もう僕このお爺ちゃん達とチウ君お持ち帰りしちゃってのいいかな!!良いよね!!!

 

脳内大暴走させているキルとは露知らず、危機感ゼロのお爺ちゃんズは益々泣いてプルプル震えながらキルバーン殿を連呼してくる。

 

これって僕何かを試されちゃってる訳!!もう勘弁してよ!!!!

 

幸せながらも使者の役目を全うしなければならないキルは、ある意味地獄を味わった。

 

 

数分後

 

少し落ち着いたキルは、一旦お爺ちゃんズを引き離して態勢を整える為にコホンと空咳をする。

誰がどう見ても悶えていたのはしっかりと見られていただけに、貴族然としても少々様にならない。

 

だがキルにも言い分がある!

 

お爺ちゃんズの中に、どさくさに紛れてチウもキルの所に走って服を握ってティファの情報を引き出そうと必死になったものだから、可愛いもの全員大集合された自分の脳内ダメージのゲージが降り切れポンコツ化したのだと・・・・どう聞いても言い分にならない言い訳でダメージ回復を図ったキルは、チウの頭に手を置いて優しくそしてあっさりと聞きたかった事を教える。

 

「心配しなくてもお嬢ちゃんは-今の所-無事だよ。」

 

ダイ達がどれほど脅そうが煽ろうが口を開かなかったキルのその態度に、今まで事の成り行きを見守って押し黙っていたハドラーがとうとう口を開いた。

 

「いやにあっさりと教えるが、あ奴の近況ををこうも簡単に教えていいのか?」

 

ティファが無事だと知られるだけでも勇者サイドの士気は跳ね上がるのが目に見えているだろうに。

 

「うん?あの子が無事でもそうでなくても君達死ぬ気で強くなろうとするでしょう。それにね、きちんと挨拶をする-良い子達-にはご褒美を上げないと。

さっきのお爺ちゃん達の質問にも答えてあげるね。お嬢ちゃんは泣いていないし、ご飯も三食食べてるし、虐めようとする馬鹿は僕が潰す気満々だから安心してね。

さて、占い師さんは僕に何か聞きたいことは無いかな?」

 

良い子にはご褒美を

 

これこそが自分の中でしていた賭け。もしも敵の使者の自分に、きちんと挨拶をしてくる者達がいたら、一つだけ質問を受け付けて差し支えない範囲で答える。

誰も居なければ料理人のティファの処刑日時と場所を告げて帰る積りであった。

 

ダイ達だけであれば後者で終わっていたが、存外良い子達が沢山いたのでティファの近況は思ったよりも知られる事になったがまぁいいだろう。

 

チウ君達と同じく挨拶をしてくれたあの女の子の質問も受け付けないとね。

 

 

「あ・・・・えっと!!」

 

これはティファの近況を知れ千載一遇のチャンス!!!泣いていないのは分かった、ご飯ももらえていて捕虜虐めにもあっておらず、おそらくキルが守ると言えば、処刑寸前までティファの安全は確保されていると信じられる。

 

変態で疫病神だが、少なくともティファに関わる事で嘘もいい加減な事も言わないだろうというのが、ポップが出したキルに対する評価で、仲間全員で共有されている認識。

だからこそ先程ポップはキルの口を開かせようと躍起になったのだ。敵からの使者だからとティファに関しての事ならば嘘の情報は言うまいと。

 

・・・・・ある意味でキルバーンを信頼していると第三者から突っ込まれれば、ダイ達は憤死しているであろう。

 

其れは兎も角、メルルは何をどう聞けばよりティファの近況を知れるか頭を悩ませる。

 

ティファさん・・・・・ティファさんが元気だったら真っ先にしているのは・・・・

 

「あの・・・・」

「ん?」

 

砦を抜け出たチウを叱ろうと鬼の形相で追って来た時の勢いは何処へやらと吹き飛んでしまい、いつもの可憐な乙女に戻ってしまったメルルのか細い声を、キルは馬鹿にせず急かしもせずに辛抱強くメルルの言葉を待つ。

 

戦わない者で、特に老人・女性・子供には基本柔らかく当たるキルの、其れは本領発揮であった。

その姿もまた絵になり、思わずかっこいいと思ってしまったメルルは益々赤くなり、その様子を歯噛みしてその場で見ていいなければならないポップは、あらゆる意味でキルを呪い殺したくなっている。

 

今動いて折角の情報を逃がすわけにもいかずにじっと我慢の子だが!!あいつ戦場で一番に叩き壊すと戦意に加えて嫉妬の炎がメラメラと焦がす・・・・・悔しいが自分にはあの大人の優雅さが出せるとは到底思えない!!

 

様々な炎が渦巻く中、メルルの問いはとうとう決まった。

 

「あの!ティファさんは-笑って-歌を歌っていますか?」




今宵ここまで


チウ君とお爺ちゃんズのファインプレーで、主人公の近況をきちんと知れた回となりました。

主人公と気にいった者達以外にも、素で紳士的な変態さんが書けていればと思います。
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