勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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フラグ立て其の二です


歌の余韻 あるいは余波-影と料理人とその周辺と-

「いんやぁ~おらみたいな戦いしか能のねぇ奴が嬢ちゃまみてぇな綺麗な人と口を利けるだなんてな~。

地上ってところはいいとこだ。」

「いや、魔王軍においては戦える人は・・・」

「いんや、おらみたいな戦闘ガンガンタイプの中には頭も働いて動ける・・・・シャドーサタンやホラービーストみたいなのもいれば、ミストバーン様配下のシャドーゴーストなんちゅうのもいてるでよ。

おらがもっと頭良ければ色々と立ち回れて配下達も肩身の狭い思いさせんですむんだけんどな~。」

 

 

うん、とりあえずこのアークデーモンさんはいるだけで助かっている。主に私とミストが。

この人いなかったら私もミストも寝室行くだけでも苦行の道のりだったよね。

 

キルに放られても私の事で待ちしてくれていたみたいで、歌をもっと聞かせて欲しいと言われたのを皮切りに、こうして世間話の様な・・・・魔王軍あるあるの様な苦労を聞けている訳で。

 

どうも魔界から来た人たちも目的の為に結集しても、それぞれの能力ややり方の優劣をつける人がいるらしくてアークデーモンさんみたいな脳筋タイプは少し馬鹿にされているそうな。

別に直接被害無くともこそこそ言われるって地味に嫌だろうな。

 

クイクイ

 

いじめ蔓延寸前で、これでいいのか魔王軍と、思わずミストの服引っ張って視線向けさせて目でがっつり聞いてみたら、存外ミストも思うところあるのか視線逸らさなかったよ。

 

「おらも配下も大魔王様と魔界の為に死力惜しまねぇけんどよ、もうちっとこう・・お互い助け合えるような事できねぇもんかな?」

 

・・・・・この人魔界では異端な人だ。

 

魔界においては強さこそが全て。はいかを作れば守るのは対象として当然の務めであって、他勢力と本気で絆を結ぼうだなんて随分と-人間臭い-人だよ。

この考えは私でも分かるくらい魔界では随分と異端児扱いになる人だろうな。

ひょっとして、脳筋では無くてこちらの考え方の方が・・・

 

「したら地上の蟻んこどもをガンガンに屠れるじゃねぇか。」

 

 

・・・・うん!!この辺はとっても魔界の魔王軍らしい考え方だね!口調が某農家のおっちゃんで、ニコニコしながら言うところが更に怖さ倍増だよ!

 

「・・・・・・お前達は等しく大魔王様の配下だ。」

「いぃぃ!!・・・ミスト・・・バーン様?」

「大魔王様の下で戦っていればいい。」

「おら・・・おらみたいな奴に・・・・・おら頑張りますだ!!配下の者達にも今のお言葉伝えてきますだ!!!!!」

 

見た目の巨体の通り地響きを立てながらも、あっという間に見えなくなったアークデーモンに、ティファとミストはしばしポカンとする。

 

「・・・・貴方が-他の方-に口を開くのは珍しいですね・・」

「・・・・・・ふん・・」

 

大魔王に使えて数千年。自分の配下のシャドー・ゴースト以外の魔王軍以外の者達とは口を開いた事も無いミストは、自分としても珍しい事だと自覚している。

しかし、あのアークデーモンのひたむきさに、何かを言ってやりたかったのでさして拘らず口を利けた。

 

 

「げっ!!!」

 

再び歩き出しつらつら考えていたら、ティファの方こそ途轍もなく珍しい声を上げたではないか。

 

あの馬鹿な親友にも嫌な顔をせず付き合い、双子のセクハラをも許したティファの視線の先にいたのは・・

 

「・・・・・それはこちらの台詞じゃよ小娘。」

 

妖魔司教ザボエラの姿があった。

 

 

 

 

ガルヴァス達の肉体調整が順調であり、最終決戦において最高のパフォーマンスを発揮できる旨を報告に行こうとした矢先に、まさかにっくきティファに会おうとは運が無い。

 

深夜帯であっても、研究している者達の時間は不規則であり、動ける時に動くのを基本としている所があり、戦力に関する事であればいつでも単身で来るようにとバーンに言われているのでいそいそときてみれば・・・

 

「良い御身分じゃの~、地上があれ程蹂躙されている最中であるのに、おぬしはぬくぬくとしていて。」

「・・・・・戦場で会ったら真っ先にバラバラにしてやる。」

「おぉ怖いの~。それまでにお主が生きていればじゃがの。」

「殺されてもゴースト化して祟り殺してやる。」

「な!!」

「私は貴方嫌いだ、あの馬鹿マキシマム以外で殺したい奴は貴方だけ。誰が逃がすか。」

「お・・・お主は・・・」

 

自分から嫌味と皮肉を浴びせたが、思わぬティファの返しに怖気づいてしまう。

ティファの瞳から発せられる殺気が、ティファの本気度合いを表している。

 

「何故じゃ!お主と儂は一度としてまともに戦い合った事も無いというのになぜ儂をそこまで憎む!!」

 

ザボエラとしては訳が分からない。

初対面であった自分を殺そうとしたティファに自分が憎むのが当然だが、ティファの方が自分を憎む理由はない筈だ!

 

「私が地底魔城で言った事を覚えていないと?」

「う!!・・・しかしだ!策謀に乗る事を選んだのはクロコダイン自身であろう!儂は強制しとらん!選んだのはあ奴自身じゃ!!それが罪だとでも言いたいのか!」

「ハドラーの件は?」

「それとて!!」

「確かに仕掛けたのは大魔王で実行したのはミストであっても、貴方は命の恩人のハドラーに対して恩をあだで返しても平然としてる。」

「ハドラーが・・・」

「様だろう。私はテランでお前が兄達を襲って返り討ちに会うところをハドラーに助けられているのも知っている。その命の恩人に何してんです?」

「うう・・・」

「貴方は恩という言葉ご存知か?」

 

冷ややかに正論を言い放つティファに、とうとうザボエラが切れた。

 

「黙らぬか小娘!!!!」

「ん?」

「恩がなんじゃ?そんなものを後生大事にすればよい事でもあるとでもいうのか!!」

「・・・・貴方は・・」

「ふん!!軽蔑するか?どこに行っても強者として物おじしない事でちやほやされているお前なぞに儂の何が分かる!!ハドラーとても!儂の長年心血注いで完成した超魔生物に改造したのを恩にも感じず!!何をしても高き方々に認めて貰えない儂のの気持ちが!!!名誉を欲して何が悪い!権力こそ!!己が認められたという証ではないか!ハドラーは其れを儂に与えなかった!!儂を正当評価しようとしてくれる主を選んで何が悪いか!!」

 

ザボエラの半生は、不遇の一言に尽きている。

 

矮小な体を馬鹿にされ、生まれついての猜疑心の強さが周りとの軋轢を更に生み出し、悪循環の中どうにか上に這い上がる為に媚びる事が身に沁み、何時しか他人は自分の満足度を高める為だけの道具に思うようになっていった。

 

自分の能力と、研究を認めて高評価してくれる強者であれば誰でもいい。ただ認められたい、名声が欲しい、それに伴った地位が権力を欲して何が悪いか!!

 

「名誉や権力ね~。」

 

そんなザボエラの考えは、ティファからすれば何を言っているんだこいつにしか映らない。

ちやほやというが、最終決戦では激突する相手だぞ?

 

「はぁ~・・・」

「なんじゃ、いつも言っている様な綺麗ごとのお題目でも言う積りか小娘!!」

 

いや、大魔王配下であっても、未だにハドラーへの高評価をやめないミストを前にしてこうも赤裸々に自分の欲望をぶちまける所は凄いと思うよ、うん。

 

タダな~

 

「その先に待っているのはなんだと思う?」

「は?先じゃと?」

「そう、誰も彼を利用しつくして仮に望みの頂についた場所がどんなところ?」

「ふん!!決まっておる!輝く儂・・・」

「きっと一人ぼっちで死ぬ羽目になるよ?」

「・・・何じゃと?」

 

どうして分かんないかな、この人物凄く頭脳明晰なはずなのに。他者を利用するだけの者について行く者など同じく碌なもんじゃ無かろう。

そんな者達がいたとしても、死の間際はこいつ一人で孤独死しそうだ。

 

「役に立たなくなったと誰も顧みらず、死なないで欲しいと泣く者もいないだろう。そんな人生の終わり迎えるような生き方でいいの?」

「馬鹿馬鹿しい!生まれた時から人は一人じゃろう!死ぬ時のことなぞ・・」

「悲しいよ。」

「なに?」

「一人で死んで逝くのは悲しいよ。状況で敵の只中で一人で死んでいく事もあるだろうけど、大切な者が一人も思い浮かばず死んで逝くのは悲しい事だよ。」

 

だって–前の人生–では私の大切な人達皆んな先に逝っちゃったもんだから本当に一人で悲しかったよ。

 

「それは・・・そんな事は!!」

 

ティファの言葉を、ザボエラは躍起になって否定しようとする。

生きてこその人生、死んでしまっては元も子もない。しかしだ、いつか死ぬ時の事を考えて何になるというのだと。

だが、その言葉が口から出ない。

ティファの瞳が悲しみの色を浮かべて自分をじっと見据える。

 

「過日、ロモス王国の武闘大会に貴方のご子息が来て兄達がそれを討った。」

「そうじゃ!その時の戦闘データを元に超魔生物は完成したのじゃ!!あ奴も・・渡した小型の黒の核晶を使って己だけルーラで逃げればよかったものを!!」

「・・・・・ご子息が死んだのは無念か?」

「ふん!アレは甘い愚息であったよ。そして愚図な奴じゃった。死に際で泣きでもしながら灰に・・・」

 

「それでも、あの人は私の父だ。」

 

ザボエラの言葉を、ティファは強い言葉で遮る。

 

「・・・・・何じゃと?」

「超魔生物としては灰になる前の、貴方のご子息の言葉だ。死ぬ寸前であってもデータを空に放り投げ貴方に届けられたのを満足そうに笑ったそうだ。

ポップ兄が、そんなご子息に対して、なぜあんな屑野郎の為にここまでして満足そうにしているんだと言った問いに対する言葉が先程の言葉だ。」

「それは!!っ・・」

「少なくとも親子の情で貴方の望みを叶えんとした者を、貴方は自分で切って捨てたんだ。

その時点では一人だけであっても、貴方を慕っていた者を貴方は自ら切り捨てた。

その価値に気づかず、見もしない者に付いてくる者などたかが知れている。

そんな-どうでもいい他人-に評価されて喜べるというのなら別に私がいうことなど何もないしどうでもいい。

だがな、もう一度聞くぞ。貴方は死ぬ間際に思い浮かべられる人はいるのか?」

 

ティファは淡々とザボエラに言い放つ。

ロモスでの出来事を兄から聞いて実際に助けてもいるだけに、ザムザをも切り捨てたザボエラは本当に一人になったのだと実感している。

そんな者の死に際は、きっと碌なものでは無かろうと。

 

その言葉に、ザボエラは何も言えず黙って俯いていると、コツコツと足音がした。

 

これ以上言い合いをさせる気はないとばかりに、ミストが無言で歩を進める。

実際にミストもザボエラに対して思うところはあるが、今は主の為に働く-便利な道具-であり、それを損なう事は今の時点でする積りはない。

・・そもそもが、自分だとて主人の勝利の為にハドラーを駒にした時点で、ザボエラと同罪なのだから、自分に何が言えようか・・

 

ティファもザボエラからまともな返答は期待しておらず、興味を喪ったようにミストの首に抱き着きそのまま体を預ける。

 

小さくなる後ろ姿の二人に、呪詛の様などす黒い念を込められた言葉がぶつけられた。

 

「お前にはいるというのか!!一人で死ぬ時も頭に思い描ける等という者が!!!」

 

そんなの

 

「大勢いすぎて走馬灯が追いつくかどうか。」

 

軽やかに答えるティファに、ザボエラは憎しみに加えどす黒い嫉妬心をティファに抱く。

 

何故あ奴ばかりがちやほやされる!!何故誰も彼もが儂を顧みぬ!!!-アレ-じゃ。アレさえ完成すれば、儂の力を大魔王様がきっとお認めになる筈じゃ!!!

 

 

 

コツコツ

 

 

「・・・・・ミスト、眠いです。」

「部屋で寝ろ。」

「・・・・やすみ・・・」

「・・・・おい!!」

 

部屋に着く寸前で寝息を立て始めたティファに、こいつは本当に何なのだと呆れたくなる。

危機意識の欠片も無く、敵しかいない中であんな事を言い放つとんでもない娘だが・・・・・先程のは自分でもティファの、言わんとした事は分かる。

 

きっとこの娘なれば、一人ぼっちで死ぬことは無かろう。

私も、その時がくれば思い浮かぼうか?

 

敬愛する主を 無二の親友を 自分を慕う双子を・・・敵になっても私が尊敬した戦士の姿を




今宵ここまで

魔王軍にも朴訥なオッチャンキャラ欲しいと思い登場したアークデーモンさんでした。
大きな組織には様々な者がいると思い、中身しっかりと戦士ですが、普段は朴訥なキャラになりました。

あぁしかし!!本当にザボエラは生かすか殺すか!!孝行息子に免じてと思うも、最終戦で超魔ゾンビ作るためにやらかした事を思えば原作のザボエラ死すのあのシーンはすっきりとした筆者ですが、有能さも好きなので本気でどうすべきか・・

この人の最後はどうするかもう少し熟慮うしてみます。

次回でフラグ立ては終了します
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