「この馬鹿!!俺達がどんだけ心配したと思ってんだよ!!!」
「娘に続いてお前までもがと!我等の心臓は止まりかけたぞ!!!」
「チウ殿!貴方は確かにティファさんのようにお心広く素晴らしい方だが!敵の力を跳ねのける力は貴方には無いのですよ!!」
キルも去り、王達とも処刑場所にどれ程の兵力と支援物資を回すかの話を終え、もう少し細かい調整の為にレオナ達は城に残ったが、ダイ達は砦に戻ってきて、一番最初に掛けられたのは出迎えの言葉ではなくチウへの説教の嵐。
必ず留守番するので一人にしてくださいと信じた自分達が馬鹿であったと。
戦力外のように扱われたのが矢張り堪えたのだからそっと見守っておこうと思っていた自分達が甘く、そして!!
「そうですよチウさん!!もう二度と・・・」
「貴女も同罪ですよメルル殿!!」
「え・・・ええええ!!!」
砦に戻ってきて最初の飛び出してきたのがガルダンディーとボラホーンとアキームであり、チウの姿を認めた瞬間大広間に掻っ攫い三人がかりで説教し、其れに乗っかってきたメルルも同罪だとアポロが断罪する。
パックとかいう精霊だか悪霊だか分からん奴が、いきなりチウが何かを決意して砦を飛び出し、その対価に自分が水鏡でその様子見して上げるとかふざけた言葉抜かした瞬間、竜騎衆の良心・ボラホーンおじさんがぶちぎれて凍てつく息で氷漬けにしようとして逃がしたのが無念!!
言いつけ守ろうとしたチウを唆したのは絶対にあの悪霊であろうとボラホーンは睨んでいる。
だが!それを無断で追いかけて鉄火場に行ったメルルもメルルである!
チウを止めに行くのが間に合わないのであれば、キメラの翼を使えば直ぐに王城に入れてチウの護衛にもなるアポロが行くべきであったろうに!!
戦場では何が起こるか分からないのを骨身に沁みている歴戦の戦士達からの説教を受けた二人がしゅんとなったあたりでバランがとりなす。
「確かに二人の行動は無謀であり、軍であれば軍規違反で重罪にもなるだろうが、二人のおかげでティファの現状が知れたのもまた事実だ。」
「それは・・・・確かにガキンチョの事知れて・・」
「しかしバラン様、其れは敵の気紛れのおかげであって・・・・まぁ実際二人のおかげですがな。」
その言葉に大体は力強く頷き二人を援護する。
「俺達だけだったら絶対にあの情報手に入らなかったよ。」
「そうだぜ、あの場には俺達も師匠も居たし、いざとなったらあの野郎取り押さえる手筈もハドラー達とは事前にしてたしよ。」
ダイは結果論で、ポップは万が一の過程も含めて二人を擁護する。
あの時、キルバーンに一番突撃を掛けたのはチウではなく三人の学者のお爺ちゃんずだったのも功を奏して二人は説教から解放されたが、フローラからもきちんとお小言を受けた上での解散となった。
「ガルダンディー達も聞こえた?ティファのあれ。」
「ああ聞こえてましたぜディーノ様。ガキンチョのあれは・・・へ、五年振りっすかね。」
「あれを平和になった世で聞きたいものだ。」
「きっと聞けますバラン様。我等一同も其れを励みに戦い抜きますれば。」
「その願い叶いましょう。」
「今日きちんと寝てまた明日から特訓ね。ダイの方は何か進展あった?」
「う~ん、もう少しで何か掴めそうなんだよ。・・・・左手の紋章も明日重点的にやってみる。
ティファ元気そうだしやってみるよ。」
「おう、俺もロッドの使い方を・・・ハドラー、シグマ借りていいか?ランスとロッドの使い方似てると思うから付き合って欲しいんだけど。」
「僕もヒムさんともう少し格闘戦教わって、籠手を使えるように・・」
「ラーハルトにも教わったらどうだポップ?」
「いんやヒュンケル、お前さんと戦った方が双方実りある特訓になるだろう?機会奪ったら悪いって。」
「皆さんが怪我しても大丈夫うなようにしておきますが、無理はしないでくださいね。」
「あいよメルル。無理しないで無茶でやめておくわ。」
「もう!!またそんな分からない事を!!」
明日に向けての活力を得た一行は、早速それを原動力に動き出す。
特訓にサポートにと次から次気と明るい声で話し合われ、礼によってポップの意味不明な言葉を返されたメルルは憤慨すると、ダイ達は大声で笑う。
メルルの心配しての言葉が嬉しく、ポップのいつものずれている所がホッとする。
「ポップ、魔力回復薬も用意しておく?」
「頼めるかノヴァ?」
「一度リンガイアに報告に戻るから帰りに寄ってくる。いいかな父さん?」
「行ってこいノヴァ。王にご報告する事は書式にしたためておく。」
ノヴァも落ち着いてようでいつもの優しい顔と雰囲気に戻り、将軍にお伺いを立て明日早く行く事になり、見回り当番を代わってもらいダイ達と共に早々に部屋へと向かう。
「帰ってきたら俺の相手に・・・」
「・い・よ・・・」
ダイ達は誰一人として広間や砦に充満している微妙な空気に気が付く事無くそれぞれの部屋へと立ち去るが。
「どうしたフローラ、何かあったか?」
気が付いていたハドラー達を代表し、ダイ達に声が聞こえないように無音の結界を張ったマトリフがそっと尋ねる。
帰ってきてもそうだったが、ティファの歌が話題に上った時確かに兵士たちの空気がピりついた。
ダイ達はティファ恋しさに気が付いていなかったが、あの空気は見逃していいもんではない。
その空気と言おうか気配は、ブロキーナからも感じられたのだから。
「僕・・・女王様達の気持ちわかるよマトリフ。」
「あん?」
「一体-ティファ-っていう子はなんなんだい?神様か何かのかい?」
「・・・・お前・・」
ブロキーナとしてはダイ達よりもフローラ達の気持ちの方がはるかに理解できる。
怖ろしくなったのだティファという存在が。
これまでなした事、言ってきた事全てを総合し、その上であの使者来る場に行ったのだが、-ティファ-という存在がその場に居なくとも途轍もない影響力を行使していた!
なぜあの気概はあれども戦力が低いと自分で自覚しているチウが!キルバーンというあの敵にああも近づき無茶な事を平然としたのか!!それもこれもティファという子の情報を知ろうとした為にだ。
あのキルバーンという男は危険だ!優雅に立ち回りながらも隙は一つも無く、それどころか気配を押さえていた自分を鋭い視線で観察していた。その視線するも怖ろしく、冷や汗が止まらなかったというのに、チウもメルルもパプニカのあの三人の老人たちもティファの事を聞くのに夢中なためか何なのか詰め寄ってすらいたのだ!
そして・・・歌っていたのだ姿見えない少女は・・
捕虜で周りが敵しかいなくとも胆力ある者というレベルを遥かに逸した-穏やかな歌声-を紡いで。
敵の使者があれ程の者であれば、大魔王の怖ろしさは自分の考えでは推し量れない程だと算出した中でのあの歌声の衝撃が凄まじかった。
まるで味方しかいないという穏やかなあの歌声は一体どうすれば出せるというのだ!!
その歌声を聞いただけでダイ達の心を揺り動かし、様々なものたちの感情を乱してのけた。
最早ティファという少女自身をきちんと知っていなければ、何か得体の知れない者に映ってもおかしくはない。
「・・・そうなのかフローラ・・・・・お前さん達も・・・」
ティファの凄さに怖気づいたというブロキーナの正直な言葉を聞き終えたマトリフは、悲しい声でフローラ達もそうなのかと問う。
「・・・・申し訳ありません。指揮官としても王としても味方を怖れるなど未熟の一言でしょうが、兵達も私も・・・」
「そうか・・・・・だがなそいつは仕方がねぇ事だ。あの子は並外れてる、知識も強さもそして感性も、あの子は世間並じゃあねえ。」
「マトリフ様・・・」
昔自分が嬢ちゃんに言った事がこんなところでこのタイミングで現実化するなんて最悪だ・・・
マトリフの胸中はほろ苦いもので満たされる。
いつかティファの凄さに怖がる者が出てくると予言のように言ってしまった。
それでも自分とノヴァは怖がることは決してないと言いたくて、ティファの何もかもを受け止める決意と共に言ったのだが、まさか最大の味方の中で怖れるものが出てくるとは想定外もいいところだが、仕方がないと頭のどこかで納得する。
自分達だとて、ティファをきちんと知っていなければティファの言動に怖れをなしていると思ってしまう事がティファという少女の不幸な所であろう。
あの子供は唯優しくて、どこにいても、誰といてもその優しさで過ごしているだけなのだと、いないティファの事を言ってみても仕方がない。
人は誰しも自分の目で見て接してみなければ、相手の本当の所は・・・・いや、其れでも分かるかどうか怪しいのだから、会った事も無い奴等にティファの良さを伝えるのは無理があろう。
ただそれでも
「ティファは、あの子は力も知識も断トツだがよ、人から怖がられる事を恐れる、まだかわいい女の子なんだよ。そこだけは信じてくれねぇか?」
マトリフの懇願の様な言葉に、残っていたハドラーも同意するように頷く。
あれは、まだまだ可愛い子供なのだと。
「・・・・分かりました。今一度兵達にその事を伝えましょう。それでよろしいでしょうかブロキーナ様?」
「そうだね・・・会ってもいないのに怖がるだなんて酷い事しちゃったね僕。
これじゃあチウとマァムちゃんに合わす顔無いよ。」
「仕方がねぇよ、嬢ちゃんは本当に並外れた事しかしてねぇんだからよ。」
話は終わったとマトリフは結界を解き、ジジィも寝るかとブロキーナを慰めながら寝室に向かうのを、ハドラーとロン・ベルクは難しい顔で見送る。
「・・・・・話すだけでお嬢さんの事を受け入れるなんてできんのか?」
「無理だろうな、実際のあ奴を見れば大抵の人間は怖れかねんぞ。」
「それは・・・・しかし彼女がダイ達の心の支えであるのは間違いは無いのです。士気の為にも、先程言ったように彼女の脆さも含めて兵士達に話します。」
マトリフもブロキーナの手前簡単に引き下がってみたが、胸中では二人の様に、人が一度怖れを抱いた者を受け入れられるとは思っていない。
しかし現実問題それを表面化すれば、戦う勇者達と支援するカールの者達の間に亀裂が奔るのは容易に想像がつく。
ティファに恐れを抱いた者は全員がカールの者達であり、他の者達はサババ砦でティファに命を救われるか予め知っていた者達。
ロモス王国武闘大会出場者は魔王軍の脅威を身をもって知り、そのまま義勇兵となったゴメス達もサババ砦の勇者達の活躍でティファにぞっこんとなり、歌を聞いていた時はティファの無事を知って涙を浮かべていたのをカールの者達は理解できない目を向けいたのが知られずに本当に助かった。
怖れても仕方がない、せめて表面化させないようにしなければならないというのがフローラの偽らざる本音。
もう一つ、浮かんでしまった途轍もない疑惑の方も含めて。
考えたくはない、最悪のシナリオがフローラの脳裏に浮かんだ時、この世界の為には、最悪自分達の手で、ティファを-殺さなければならない-事を覚悟した。
ティファという者は身も心も魔界の者となったのではなかろうか?
今宵ここまで・・・・
主人公を本格的に怖れる疑う者が、集団で出てきました。