「闘魔傀儡掌!!」
「甘いよミスト!!ほ~ら!これはどう躱す?」
「っ!ビュートデストリンガー!!」
ミストの闘魔傀儡掌を空中でバク転しながら避けてみせたキルは、その時に生じたミストの隙をつくように、ミストの真横に大量の剣戟を出現させる。
体をひねって避けても隣からも仕掛けた同様のトラップを同時に撥ね退けるべく、ミストは得意技の一つ、ビュートデストリンガーを鞭のようにしならせ反対にキルへと叩き返し、とんできた剣を大鎌で捌いているキルに、爪を剣にしたデストリンガー・ブレイドで襲いかかる。
無論キルも乱打戦に持ち込まれては不利と後方に空間を開けつつ後ろに飛ぶが、逃がさぬ構えのミストはリリルーラを応用してキルの真後ろに立ち、剣と化した右手をキルの首筋にピタリと押し付ける。
「おや、僕のチェックメイトだねミスト。」
「ふん・・・・・ようやくだ。」
二人は死の大地の決戦後からずっと戦っている。主にティファと主が寝静まった深夜帯に。
ミストが新しい肉体を完璧に使いこなせるようにとキルは毎晩付き合う。
新しい肉体であっても自身の暗黒闘気を纏わせた闇の衣を羽織っていれば、ビュートデストリンガーとデストリンガー・ブレイドは使用可能だと確認できたことが大きい。あれは主の若い肉体で出来たのではなく、闇の衣の手先部分の鋼鉄の爪部分に魔力を流し込んで出来ていたという理論が裏打ちされたので、ミストは表に出さずとも内心はかなりほくほくしている。
主の若い肉体由来の最強のマホカンタ系フェニックスウィングは最早使えず、ならばどう魔法から主を守るか試行錯誤もしている。
幸いキルが見繕ってきたこの体は魔力も暗黒闘気も使えると判断に足る程の量を有しており、デストリンガー・ブレイドなればメドローアでない限りは爆裂系や火炎系は斬り裂けるとキルのトラップとアークデーモン達も特訓に付き合わせ実践済み。
「う~ん・・・・魔法使い君のあのメドローアっていうのはどうすればいいかねぇ~。」
キルの言葉に、ミストもそこが悩みどころであった。はっきり言えばあれは反則だろう。
威力は絶大な上に、使い手の微調整次第で小型化も大型化も自由自在な上に、パーティー戦で乱戦をされポップを見失ったが最後、何時仕掛けられるか分からない魔法とは厄介な事この上ない。
主もマホカンタを使えるとは言え、その時ダイやハドラーと切結んでいる時にしかけられれば百万が一お体に傷でもつけられたと思っただけでゾッとする。
キルとしても自分の空間を開けて反対に返す方法を考えて見てはいるものの、ミストと同じく乱打戦になった時はどうすべきかが悩ましい。
向こうには先の大戦から鳴らした大魔導士がマトリフが居り、自分の空間の使い方の恐ろしさを弟子のポップ等と想定してるだろうし、初見殺しが出来るという甘い考えはしていない。
自分のトラップの最大の目玉のマグマ系はほぼ地面から噴出させるものであり、中でもダイヤのセブンはその最たるものだが、地面を抉り取るあの魔法が邪魔をしよう。
もっとも、トラップはバリエーション豊富であり、そこまで火炎・マグマ系のダイヤシリーズには拘ってはいないので深刻に悩む事でもない。
決戦当日のパレスはキルトラップで主要部分で固める方針で勧められている。
無いとは思いたいが相手もパレスの結界を無効化する大技を持ってこないとも限らず、念には念を入れる・・・と言う訳でもない。
来たならばきたで、先の決戦時の様に一網打尽すればいい。
地上でティファの処刑敢行と、勇者達を迎えうつ部隊もガルヴァス達を筆頭に魔界のモンスター部隊をもう編制している。
人数も千を越し、前日にはさらに呼び集めスペース確保と逐次投入できるようにモンスター筒に入れて待機をさせる。
地上のあのロロイの谷は、広間のような部分は広いが、切り立った崖部分が邪魔をしてダイ達サイドは大人数で来るにしても百数名がいいところだろうとミストは読んでいる。
それ以上となればあのたにの狭さがネックになり、固まって待機している所を打ち取られる事は向こうも予想してこよう。
-魔の六芒星-の為と、戦術的意味においてあのロロイの谷は何かと魔王軍に有利に働く。
敵にはモンスターを入れておける様な筒も、逐次兵を別の所から来させる悪魔の目玉の様な通信手段も、ルーラを使っての伝令をさせる人材も不足してよう。
大戦始まってから、ミストは当初カールを攻めて頑強な抵抗に-手を焼いていた-ように見えたが実は裏で行っていた事に注力していたので、表のカール攻めはほぼどうでもよかったのだ。
裏でしていた事、其れは各国のルーラを使える者達をシャドー・ゴースト達に暗殺させていた。
国のトップではない、大戦で一番目障りだと感じたのは各国で支援し合える力を発揮できるであろう人材のルーラの使い手を早々に葬っておく事の方が大事。
その策は当たり、各国も余力はあれど他国の情勢を随時知れる手段を喪い、連携は取れずダイ達がいなければ時間をかけてでも各個撃破できたはずであったが、其れはあえなく潰え、各国は今協力し合い連携しているが矢張りルーラの使い手不足がここで響いている。
キメラの翼にも限度があろうし、道具を使おうとすれば魔法よりも動作が増えて監視していれば直ぐに見つけるに至り、すぐさま攻撃して妨害すればいい。
「ミスト~、悪い気配が漂ってるよ~。策がうまくいきそうなんだね~。」
もしもミストの表情筋が豊かに動くのであれば、悪党が策を弄してうまくいきそうなにんまりとした顔になるであろう気配を漂わせているとキルはミストの背後から手を伸ばしてそのまま軽くのしかかる。
親友の策が上手くいくと良いな~。
「ふん、全てはバーン様の勝利の為に・・・」
「同感だねミスト。勝つのは僕達だ。地上を消して天界を滅ぼして太陽とあの子を手に入れるのは僕達だ。」
「・・・・・幽体でも欲しいのか?」
「うん?ふっふっふ、そこはね~ミスト、ナ・イ・ショ・だよ。当日その時御覧じろってね。」
「・・・・・・なんだそれは?」
「んふふ、あの子を完璧に手に入れる方法見つけただけだよ。あ、でもね、あの子を殺してもその策はうまくいくから、処刑する時あの子が叛意しないままだったらそのまま殺して大丈夫だから安心して処刑してあげてね~♪」
「・・・私はお前のその辺が理解できん・・・」
愛しいものを殺してどうぞとはどういった了見してるんだこいつは。
「いいのいいの、君はストレートのままでいてね。僕みたいに歪んじゃぁいけないよ。」
・・・一応こいつも変態は認めずとも歪んでいる事は自覚しているらしい。それも振りなのか本心なのかは知れんが、どのみちこいつの愛情とやらが屈折しているのは確かだな。
何だろうか、この件に関してはティファに同情してやりたくなる。
重苦しい溜息を吐きながらも、ミストは親友を振りほどかないでいる甘さがある。
なんだかんだ言いながらもキルを最終的に受け入れてしまう。
「ミスト~、夜食-食べなくて-いいのかい?」
振りほどかれない事を良い事に、キルは白い衣のタイ部分を弄って遊びながらミストに-食事-を勧める。
この体で不便だと思うのは、-生きた肉体-を維持する為に食事をしなければならない事だ。
主の肉体は凍れる時の秘法で肉体時間を静止していたので食事等は不要であったが、寝なくとも食事は不可欠であり、清潔を保たなければ細菌感染もあり得るので入浴の必要も出てきたのが不便だが、神経は通わせていない筈なのに何故か-味-は分かる。
これまでは主の好みの味付けになるまで大勢の者達に味見をさせて計量で味を調えていたのが、味わえる事で-味見-を自分で出来る事になったのがメリットなのだろうか?
何の奇跡が起きたのかは分からんが、食事を摂る行為も含めるとメリット・デメリット半々ではあろうか?
食事を終えればやる事は次々とある。
兵士達の装備点検のチェックと、-回復薬-の一覧作り。
ティファのしている事を見て、こちらも随時傷ついた者達を回復させるように態勢を整えている。
魔界は強さこそすべて、自己防衛も己の力量の内と言えようが、それでも犠牲少なく最終的に大勢で押し切れる味方の数を残せるのであればやってみる価値はある。
最終決戦への様々な手筈を、大魔王の最側近たるミストは着々と進めている。
全ては敬愛する主に勝利の花を贈るべく
今宵ここまで
さて、キルが言った主人公を完璧に手に入れる策は果たして本当にあるのだろうか
ミストバーンがビュートとブレイドと、バーンの若い肉体を預かっていた頃の技を使っていますが、上記の通り[闇の衣]由来の技ではないかというのが筆者愛用の[辞典を作ろう]様に掲載されていたので採用させていただきました。
次回は同魔王軍のガルヴァス達と周辺をチラホラと出します。