勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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男同士、其れも父親同士(片方は父親的存在)の話し合いは果たして!!


最終決戦への序曲-竜の騎士と海の男と村の子供達-

自分は学のない男だ。生まれたのが船の上ならば、育ったのも船の上。

覚えている最初の光景は、縄を作りながら空模様があれているのを発見し、親父である船長に急いで伝えに言った事だ。

 

代々が船乗り。俺の祖父もその前もずっと前から船上で生まれて船上で育つ。

勉強はお袋が、船と海での生き方は親父が、そんな余のカノの渡り方は船員たちが全部教えてくれた。

厄介なモンスター海域の場所も難なく乗り越える為聖水を切らさないように、教会とのパイプを途切れさせないように周りへの配慮を欠かさない方法も。

 

俺が知っているのは其れだけだ。全ては海で陸の上で、俺と船員達を死なせない方法だけだ。それは引いては自分達の家族も守る事に繋がっている。俺達が死ねば、家族はたちまち路頭に迷う事になる。

家族は大事だ、誰の家族であっても其れは変わらない。

俺のだろうが船員のだろうが知り合いの家族だろうが関係ない。

 

-家族-というものを本当の意味で大事にしてこなかった奴は屑だ。例え心の中で愛していたと言われようが、疎かにして自分の復讐優先した奴は間違いなく屑だと・・・言ったらダイ君が悲しむか。

 

さて、目の前で狼狽しているこの隻腕の男になんと声かければ正解なんだ?

こんな時ティファちゃんいてくれたらうまい具合に仲介してくれて、場を荒らさずに済むんだが、ここには言い子でよくしゃべるがその辺の要領の良さをティファちゃんに任せていたダイ君しかいない。

 

他の子達も俺と目の前の男の立ち位置きちんと知っているのか下手に口出してこないし、きっかけ作りになんねぇな。しわくちゃの爺さんは俺達だけで蹴りつけろって顔して見物してやがる。

はてさて、相手の出方を待ってみるか。

 

 

 

 

人間の中に、こんな男がいたとは

 

切り取られた右腕がうずき、微熱を出してザムザより絶対安静を申し付けられていたバランは、砦内に支援物資を持ってきた男が息子と娘の知り合いの船長だと廊下より聞こえてきた話で知り、是が非でも会いたいと痛む右腕を無視して着替え、途中でラーハルト達に見つかったが事情を話して大広間に連れて来てもらった。

 

その自分の目に飛び込んできたのは、自分に甘える時と同じ安らいだ瞳で偉丈夫の男に抱き着く愛息子の姿であった。

 

そしてそれを柔らかく笑いながら包み込んでいる男の姿が。

 

ディーノは、ティファは、幼い時よりあの男にああして抱き着いていたのだろうか?

父たる自分ではなくあの男に・・・

 

羨む視線に気が付いたのか、男はディーノを抱きしめながら視線をを私に向けて来た。

目が合った瞬間、その男の瞳が鋭く光り、私に対して怒りを覗かせて。

 

ウォーリアーは瞬時に隻腕の男が誰だかを察知した。情報で得た隻腕だからではない。どことなくダイが大きくなり一人前の戦士となればああなるのではないのかと直感で分かった。

顔はどうやら二人共会った事は無いが母親に似たのだろうが、それでも自分の前の男がダイとティファの父親だと分かり、自分にはそれで十分。

 

抱きしめていたダイをそっと離した後はウォーリアーもバランも無言で相手を見ていたが、均衡を崩したのはウォーリアーの方であった。

 

やれやれ、どうやらこの男では埒があかんな。

 

じっと見ているというのに狼狽こそすれ逃げようとはせず、とは言えどう口火を切ればいいのか分からないらしい。

世間にはこういう男はざらにいる。すなわち強いだけで日常の類がてんで駄目な奴。

仕方ない。

 

「私としては、一度はあんたを殴ってから名乗ろうと思ったがやめておこう。そんな事をしてもダイ君もティファちゃんも喜ばん。二人を幼少期より見て来たウォーリアーだ。」

 

史上最強の生物、竜の騎士相手に堂々と啖呵を切った。

 

「・・・・殴られても、殺されても私は文句は言えぬ。ダイとティファの父、バランだ。」

「・・・あんた、俺が何で怒っているのか理解できてんのか?」

「せ・・船長さん・・」

 

二人に間に発された不穏な空気に、ダイは泣きそうになりながら割り込もうと多が、いつの間にか広間に入ってきたフラメルによって止められる。

今二人の男達の大事な話を邪魔させないように。

 

ウォーリアーの問いに、バランは悲しい顔で笑って応える。

 

「無論だ、私が世界相手になした非道はこの身でもつぐ・・・・・」

 

バキン!!!

 

「あんたは!一体何を勘違いしてやがる!!!」

 

その答えに、ウォーリアーは止めにしておいた拳で持って返答をする。世界に非道をなした事で俺が怒っていると思っているのかこの馬鹿親父は!!

 

「バラン様!!」

「いい!お前達も来るなガルダンディー、ボラホーン。貴殿が怒っているのはそうではないのか?」

「・・・あんた本気で分かんねぇのかよ。」

 

体が弱っているとはいえ、本気で吹き飛んだバランを案じて駆け寄ろうとしたラーハルト達を止めたバランはふらつきながらも一人で立ち上がり、再度ウォーリアーに問い、その事がウォーリアーを苛つかせる。

 

「俺とこの子達の関係は?」

「知っている。息子たちが余すことなく話してくれた。優しく逞しい海の男で、自分達の親を熱心に探してくれていたと。」

「あぁそうだ!俺はな、俺達はずっとあんたを探していた!!港町だけじゃねぇ!国々の掲示板がある所全部に!ダイ君とティファちゃんの年齢と特徴を捉えた似顔絵を掲示して、心当たりのあるものは俺の商会に連絡を入れて欲しいと大戦始まるまでずっと更新していたんだ!!!」

「な!!」

「あんたが少しでも人間の町の中で探していれば、その情報は直ぐに知れたんだ!!だのに!あんたは子供達よりも魔王軍としての動きを優先したんだろう!そうでなければとっくに二人はあんたの目に留まっていたんだよ!!あんた父親なんだろう!!何故自分の復讐よりも子供探しに一生を費やそうと思わなかったんだよ!!!!!世界滅ぼした中に自分の子供がいると何故考えなかった!!!!!」

 

ずっと自分はその事を怒っていた。この砦にいる竜の騎士にして元魔王軍でダイとティファの父親であるこの男に対して。

 

重罪を侵した経緯も情報で手に入れて知っている。愛した女性の死で暴走した事も。

そこまではまだ自分が怒る筋合いではなかった。滅んだアルキードには縁が無いと言えば薄情と誹られようが、自分が正義の味方だと思った事は一度としてない。

他人を断罪するほど偉い者でもない。

問題はそこではない!その後の生き方には怒りしかない。

 

自分の復讐心を優先して!大切な女性との間に出来た子供達の行方探しをおざなりにした事が許せない!!

親ならば、まして母親がいない家族の父親ならば、何を投げ打って出も最愛の我が子達を探す事を優先するべきではないのか?

其れが蓋を開けてみればどうだ?魔王軍の大部隊の隊長だと⁉ふざけるのも大概にしろってんだよ!

他人の俺達がそれこそ持てる伝手を総動員して貴族連中の中まで探りを入れ、年間其れなりにかかる掲示板の一角を独占し、心当たりのある情報提供者に莫大な賞金迄用意していたというのに当の父親が子供探しを片手間でやっていたのを許せるわけがねぇ!

かかった費用などどうでもいい!これは俺達が勝手にやった事だ。ブラスさんから頼まれた訳でも、ダイとティファに請われた訳でもない。

二人がいい子だったからだ。そんな頑是ない子供達が父親と母親の温もりを知らないさまが哀れで仕方がなかったからだ!

生きているのであれば併せてやろうと思った俺達の勝手な思いだが、あの当時は見つけられなくて正解だったなとこの場で罵ってやりたい!!

 

怒りに震えながらバランの首筋をぎりぎりと絞めるバランの心にウォーリアーの言葉が全て突き刺さる。

 

私は、本当に必死にディーノとティファを探していたのだろうか?

 

この男の言う通り、本当に二人を愛していたのであれば、復讐を優先するはずが無いではないか!

 

ずっと探していたのは本当だ。しかしそれは超竜軍団を育成しながらであり、時には魔界の反大魔王サイドとの戦いもして地上を不在にする事も多々有り、本気で探す気があったのか問われても、今は本気で探していたのだとは恥ずかしくて言えようはずもない!!

 

「わ・・・私は・・・・本当に何という事を・・・・・」

 

もしも子等がデルムリン島ではなく、他の激戦地区にいたのであれば、私は子供達を見殺しにしたも同然ではないか!!

私は一体・・・・ソアラを喪ってしまってから何をしていたのだ・・・・

 

 

ウォーリアーの手を振り払う事無く、はらはらと涙を流すバランに、ダイがフラメルを振りほどき二人の間に割って入り、ウォーリアーを突き飛ばして父を背に庇った。

 

「やめてよウォーリアーさん!!父さんは確かに沢山酷い事をしちゃった!世界にも人にもモンスター達にも!!でもね!辛くても生きて償うって言ってくれたんだよ!!もう俺達の側を何があっても離れないって!!だからお願いだから!父さんに酷い事言わないで!!!」

 

叫ぶダイの瞳からも涙が溢れ出ている。島にいた時の時分とは違い、父がなした非道が許される事の方がほぼ無いのだという事も知っている。

 

それでも、大好きな父と船長さんが悲しい顔をしてほしくはなかった。

言われているバランもだが、怒りながらも自分達兄妹の事を思って悲しんでくれているウォーリアーも大好きで・・・だから・・・・もうこれ以上は・・・・・

 

 

パンパン

 

 

「そこまでにした方がいいですよ船長さん。次の運搬先も物資が欲しいと待っている筈ですよ。」

 

 

重く澱んだ空気を、可憐な少女の声が斬り裂き

 

「そうだぜ船長さん。テランでせっせと摘んで採ってきた薬草を、早く砦の人達に上げないと。」

「昨今何処も薬草は品薄とは言え、まさか自生しているのをそのまま運ぶ日が来るだなんてね。」

「まさに薬草宝庫のテランでしか出来ない手だ。」

「しかもうちの-リュート村-の側の森に、この時期なのに大量自生していたなんて本当に何御偶然だろう>」

「これあれだ、俺達に-三人-に会えっていうマザードラゴン様のお告げだ。」

「神様も粋な事をするね~。」

 

少女の声よりもずっと大人びながらもまだ子供の域にいる少年達の声と、少女の挨拶が広間の空気を一変させる。

 

「お久しぶりガルダンディー。ルード君は元気かしら?」




今宵ここまで・・・・・・


父親邂逅出来ましたが次の邂逅まで書き切れなかったです!!
最近はだらだら書かないように、五千文字以内に収めようとして話数の方が増えてる筆者です。

プロットではここまで船長が怒っていませんでしたが、書いているうちに勝手に怒っていた船長さんです(なんじゃそりゃ)

筆者が子供の頃に思っていた事を、船長さんに代弁してもらいました。
すなわち大戦までに我が子見つけられなかったらそれは見殺しにするのとどう違うのだろうか?
バランとは本当に子供達を愛していたのだろうかと。
其れとも愛したソアラ王女に似ていたから愛しただけなのか?

原作では息子を庇って逝きましたが、其れだけで償えると思うのも、バランとは人の心も自分の心も分かっていない人だったのではないかともやもやしていたのでこちらでは生きて子供達に償って貰っています。

次で!次こそでこの章の終了を!!!
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