只今冥竜王と相対しています・・・・・・言っている意味が分からないと?
私だって何言ってるのか自分で意味不明だ!バーンのパレスで冥竜王ヴェルザーと!何が悲しくって相対せにゃならんのだ!!
私の平穏は何処いった!!家出なんてしてないで帰っておいで!!
「頼むからお嬢ちゃん・・お口閉じてやり過ごしてね・・・・」
「うぅ・・・キル・・・・・あいつ消したい。」
最終決戦前の最後の晩餐時に、何が悲しくて父さんと天界と因縁深すぎるこいつがくんのよ!
バーンなんて不機嫌通り越して激おこで、袖を両手に入れて余裕ムーブしてるけど視線が絶対零度で怖いよ!!
ミストも双子さんも戦闘態勢で尖兵として送られて来たヴェルザー配下屠って返り血浴びて・・・・どうしてこうなったんだろう・・・この竜何しに来たのよ!!
最終決戦の前日のティファは、傍目から見ても分かる程どんよりとしていた。キルに世話され朝食をのパン粥とロースと少々食べた後はもういいと顔を背けてキルの胸に凭れて食べないと意思表示をする。
ティファの肉体は完全に回復したが、-昨日-見せつけられた光景が脳裏から離れず、食べる意思がないのでキルが膝に乗せてせっせと食べさせているのだが芳しくない。
昨日、ティファはキルに連れられて魔界の最深部をその目で見てしまった。
-悲惨である-
その一言以外言える事は無く、行って直ぐにティファの心が悲鳴を上げた。
滅びゆく者に手を伸ばそうとし、さしものキルも半時は見せよというバーンの命令を聞かずにすぐさまティファを地上のパレスへと連れ帰った。
数分でもティファに魔界の最深部の現状を知らしめたのだから。
「キル!戻して!!あの人達が!!!」
「あの子達だけ救って、他はどうするんだい?」
「・・・・でも!けど!!」
「救う方法はたった一つだ。どうしてバーン様やミストたちが躍起になって地上を消そうとしたか分かるだろう?
魔界を浮上させる為だ。」
「あ・・あぁ・・うわぁぁぁぁぁぁぁ!!ああああ!!!!」
泣いて、叫ぶほど泣いて、目玉が溶ける程にティファは泣き叫ぶ。
酷すぎる現実に、どうしようもできない現状に、-今-はどうしてあげる事も出来ない無力な自分の不甲斐無さに、この瞬間にも死に逝く者を助けることが出来ない事に、キルの服を握りしめて、声の出る限り泣きつくし、その日一日ティファは全てから逃げる様に眠りの底へと落ちていった。
「壊れはしなかったが、疲弊したか。」
「はい、これを機にこちらに来てくれれば僕としては嬉しいんですが。」
最終決戦前に、ティファがこちらに来ることは無いかと試しに魔界の最深部に行かせてみたのだが、眠ってしまってはどうするか選ばすことは出来ない。
ティファは死の大地の様子から、キルの話から、ハドラーの話から魔界の凄惨さは-それなりに-に知っていただろうが、魔界の最深部の悲惨を目の当たりにさせれば、魔界側に心傾ける事をバーンは望み、見せてみたのだがその返答は明日となるか。
「ちょっとキルバーン!」
「ちょっと死神!!」
「「ティファちゃんが目を覚ましたら教えなさいよね!!」」
「・・・・なんで僕がお前達にお嬢ちゃんの情報くれてやらないといけないのさ・・」
「「美味しいものをうんと食べて元気になってほしいからに決まっているでしょう!!」」
双子はティファが大好きだ。それもただの好きではない。隙あらば食べてしまいたいそちらの好きで、そんな思いをティファに抱いている双子をキルは消してやりたいと算段している。
其れは双子も同じであり、今も両者バチバチと火花を散らしている程仲がすこぶる悪い。
共通しているのはミストとティファの迷惑にならない範囲で嫌悪し合うというアクロバティック的なややこしい事をしてでも争う事をやめない筋金入りだが、もう一つは二人を喜ばしてあげたいと常々思っている事。
双子はティファが泣き叫んだ理由は知らないが、泣いているのならば慰めてあげたい。起きた時に自分達の作った美味しいお菓子を食べて元気になってほしい・・・たとえ明後日公開処刑される捕虜のティファであっても、今はまだ自分達の捕虜。
虜にして魔王軍に寝返らせることを諦めていない。
そのティファ自身は、精神世界でも泣いていた。
誰も知る事は無く、一人丸まって泣いている。
ごめんね・・・・ごめんね!!絶対に-何とかする-から・・・・・
翌日のティファは、鈍痛の頭を抱えて起き上がる事すらできなかった。
原因は精神的な物と、現実的に水分不足。診たてたザボエラ指示で、その場で水差し一本分の果実水を一気に飲み干させて一息つくと同時に双子にお風呂に拉致られた。
キルの腕からどうやって埒れたんだろうと、双子に体と頭を同時に洗われながらティファはぼんやりと思う。
「難しくて!!」
「悲しい事なんて!!」
「「ティファちゃんは考えなくていいんですわよ!!!」」
自分の為に泣いてくれる双子に、ティファの心はほんの少しだが浮上し小声でお礼をする。
「・・・・・ありがとう・・・」
素のままのあどけない声で。
食べて寝て、起きたらバーンが夕餉に何を食べたいか聞いてきた。
最後の晩餐にするつもりはないけど、食べたい物・・・
「う~ん・・・・プティング美味しい、フルーツタルトもチーズケーキも捨てがたい・・」
そんなに沢山食べられないが、出来れば今言ったのは全部食べたいな~。
「・・・・・・メイン料理はどこ行った・・」
主料理聞いて、デザートしか上げないティファにミストが痺れを切らした。
「あ!えっと・・・・オムレツ・・・」
一度だけ出されたふわふわでとろとろのプレーンオムレツ。あれをできれば最後にもう一度食べたいと言えば、ミストは主に一礼して直ぐに作りに向かった。
待っている間にティファはバーンの足元に置かれ、座っているのも億劫で、其のままバーンの膝に凭れ掛かった。
バーンもいつもの事と気にもせず、ティファの髪を梳き始める。
「魔界の現状をその目で見たか?」
「・・・・・見ました・・・・」
「あれが魔界を覆いつくすまで後数百年ぞ。」
「どうして・・・・今まで・・」
「放って置いたのかと?我等の祖先も浄化装置をあちこちにおいてもみた。魔法除去は精霊達にしか出来ず、魔界では精霊は生きられん。そもそも魔界に来るという酔狂な精霊もおらん。」
「・・・・助けを・・」
「どこにだ?神が沈めたのに天界に?それとも地上にか。」
「・・・・・地上に穴を開ける事を赦してもらって散らせば・・・」
「許すのか?」
「・・・・・」
「そなたの沈黙が答えぞ。地上からすれば魔界なぞ滅んでもいい、寧ろ自分達に対する害悪が減ると喜んで見ていようよ。」
「・・・・そんな事ない・・」
バーンの言葉を、ティファは膝に顔を埋めながら訴える。
「地上の人だって酷い事に会っている人達を助けたいって言ってくれる人が必ずいる。世界は弱すぎも酷すぎもしない!心優しい人達も大勢いるんだよ!!」
「そなた・・・・」
「お願いだからもう地上を消そうだなんて言わないで!地上の人達に魔界の現状訴えてみて!!!
あの柱の下には-地霊-は一体もいなかった!!今ならまだ間に合うんだよ!」
一度だけ、リンガイアに落とされる前にティファは偶然柱が落ちるのを見た。その時、地霊は一体もいなかったのをバーン達にも話している。
人もモンスターも精霊も死ねば地霊となって天へと還っていく。それは精霊を見るよりも希少な力だが、見る方としては堪ったものでは無い。死者の霊を見ているに他ならないのだから。
其れがいないという事は、文字通り誰も死んでいない証。今大戦も死者は少なく、今ならば魔界の現状を地上側に訴えればまだ双方の激突を避けられるのではないかと訴えるティファを、バーンは憐れみの眼差しをティファに向ける。
「世界が、其方の様なものばかりであれば可能であろうよ。」
何処までも限りなく優しいティファ。自身を殺し掛けた者とても許してしまえる者など希少であり、大半は憎悪の目を自分達に向けている。
甘い考えのティファ。それでも自分に降らない事を再確認したバーンは、ティファを膝の上に抱きしめる。
「明日其方を殺す。」
「・・・・」
「だが、明日の朝食も摂っていけ。」
「・・・・・はい・・・」
寸前まで一緒にご飯しろって、バーンは我が儘な人だ。
なんだかんだと落ち着いたティファは、一人で座れるのでキルに給仕をして貰いながらだが久しぶりに自分で食べている。
フワフワのオムレツが美味しいとミストにお礼を言えば、バーンにワインを注いでいたミストの手がブレ、初めてクロスにこぼすという失態をしてしまった事も相まってギンと睨みつけられたのを笑って受ける。
その様子を双子も端の方でミスト様可愛いとクスクスと笑い、キルもにっこり笑って見ている。
この時間がいつまでも続かないかな?
誰も争う事をしない穏やかな時間がいつまでも・・・・・しかし、ティファのその願いはいつも叶った試しがない。
バーンとティファの頭上に、突如として黒い空間が開いたのだ。
其れはキルの開けた空間とは違い禍々しい気配を放ち、開いた瞬間その場にいる者達に分かり、キルがティファを抱き上げると同時に後ろに飛び退り距離を取ると同時に大量の魔界の飛行モンスター達があふれ出た。
「闘魔傀儡掌!!」
「無礼者ども!!!ヒャダイン!!」
「砕けなさい!イオナズン!!」
「失礼な奴らだね~スペードのセブン!!」
魔界において不意打ちは日常茶飯事であり、驚いたのはティファ一人でバーンは椅子に座ったまま、シルバーデビルが目の前に迫っても平然としてミスト達に任せている。
主に近づく者を片端から部屋の隅に投げ捨て、アンリが凍らせセシルが爆撃で粉々にし、キルが剣戟のトラップでズタズタに斬り裂いて行く。
だが、いつまでも途切れない事に苛立ったのか、バーンは左手で頬杖をつき右手を軽く火捻り、炎の鳥をその手に留らせ空間へと解き放った。
「カイザーフェニックス」
さしてやる気のない声とは裏腹に、その威力は空間内に待機していたモンスター達を全て焼き尽くし、断末魔を上げることすら許さず灰にする。
その圧倒的な力を行使したバーンは、油断せずに空間を見据えている。
この気配に覚えがある。
かつて幾度も自分と死闘を繰り広げた竜の気配。
バーンが誰何を発する前に、其れは姿を現した。
「久しぶりだが、相も変わらず元気そうで何よりだ。」
空間がこごえるように固まり、現れたのは石像姿の竜。
それは封印されているのが一目で分かるが、余りにも禍々しい気配に、ティファは怯えてキルの服を握りしめた。
今宵ここまで
魔界フラグ立てる為に前後編としました。
魔界の悲惨さ書いてると、魔界の勝ちにしても良いのかと気の迷い起こし掛けるては主人公に怒られそうな筆者です。
ヴェルザーは出るには出ますが、この作品で滅ぼすかそれとも封印を増し増しにして終わらせるか考えどころです。