勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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あぁよもやよもや!!約束一つ果たせないとは!!


最終決戦の序曲ーエピローグー中編

惜しくもあらんこの命、怨敵どもを滅せるのであれば

惜しくもあらんこの命、我の恨みを鬱屈を何物にもぶつけられるのであれば

 

魔界を救う為ならば

俺のこの恨みをはらせるのであれば

 

何をも引き換えにしよう

 

 

 

 

 

ひ~ふ~・・・・ふむ、影はいつもの如くいるが、羽虫が二匹に余の人形に・・・あれはなんだ?

これしきの事で何を怯えているのだあれは?たかだか虫が数百焼かれた程度で。

 

 

空中に浮いている彫像の竜・・・・間違いなく・・・

 

 

「何しにまいったヴェルザー。」

 

やっぱり、冥竜王ヴェルザーだ!!

 

「ふむ、お前が決戦前に地上のぬるま湯でふやけていないか心配でな。明日当たり決戦なのであろう?お前の領地が大分騒がしいから余も激励に来てやったまでだ。

たかだか数百の虫の-挨拶-では足りなんだか?」

「・・・・・・悪趣味が。」

 

堂々とパレスの結界をすり抜け乱暴狼藉を尽くしたヴェルザーの口上に、バーンは不快を示す。

 

この二人はそもそもが根本的にそりが合わない。

 

バーンもヴェルザーも魔界の将来を憂えて行動しているのは間違いないが、バーンは魔界の民達全ての為に、対してヴェルザーは魔界というよりは魔界を荒らした天界を滅ぼし、鬱積を周りにぶつけている節が目立つ。

地上進行に対しての姿勢からしても違う。

 

ヴェルザーは-従来通り-に地上は無傷で残し、魔界の深部から移住させようと画策させた。

その際地上の命をそのままにして。別にそれは慈悲が働いている訳ではない。長く地上の命を嬲り者にして、食い尽くし数百年を掛けて狩り尽くすという残虐な計画によるものであり、それを掴んだ天界は、魔界の神よりも尚暴虐性を内包したヴェルザーを討たんと当代の竜の騎士バランを派遣したのだ。

 

バーンはそれを忌まわしく苦々しく思っていた。

例え自分達の長年の仇であろうと苦しめて喜ぶ趣味は持ち合わせていない。

滅するのであれば素早く一瞬で、苦痛も無く逝かせてやる事こそ慈悲であろうと、壮大で馬鹿馬鹿しいとヴェルザーから言われた大仕掛けを整えたのだ。

 

そもそもがヴェルザーは魔界にも自国にも己の眷属すらに対しても愛着が無いとバーンはヴェルザー本人に面と向かって幾度も言い放っている。

 

バランとの長年の戦い方一つ見ても其れは窺い知れる。ほぼ無策で数を向かわせ、領内に入り込んだからと黒の核晶を無造作に使ったのがその証。おかげでヴェルザーは親衛隊の大半と領土の半分を喪っても痛痒を感じてもいなかった。

 

自分なれば、そんな愚を犯すまいと苦い思いでバランとヴェルザーの抗争を見ていたのを思い出すだけで不快である。

 

「お前は真面目だな。雑兵にもなりえぬ奴らを案じるとはお優しい事だ。余も見習わねばならんか?

・・・例えばそうよな~。-捕虜-を厚遇するところから始めてみるか?」

 

ピクン

 

「さて何処だ?お前が厚遇せし・・・・あぁ、もしやしてあそこで-人形-の腕に抱かれ震えているのがあの獰猛な竜の騎士バランのご息女ではあるまいな。」

 

・・・・こ奴の目当ては!!

 

 

ヴェルザーはバーンの地上制覇を注視している。

地上を消した暁には、天界を殲滅させられる前に-キルバーン-を自爆させ諸共にバーンを消す為に。

 

地上でのお楽しみは、邪魔ものを消す為にはくれてやる。

 

ヴェルザーの耳にも、勇者ダイ達のあり得ない成長速度とその活躍が届いている。

一行は皆若く、なればこそ何事をも吸収できるが故に脅威であるとヴェルザーは長年の抗争の果てにその恐ろしさを熟知している。

未熟なのは伸びしろがあり、才あればそれは己を滅ぼす災厄となる事も。

 

故にバーンに火中の栗を拾わせ自身は最後の美味しいところだけを貰う手筈が、-ピロロ-から思わぬ報告が入った。

 

近頃人形がヴェルザー様の命を果たそうとしません

 

何のバグが生じたのか、生じて数十年で少しずつ疑似自律思考機能以上の事を話しだし、遂には自分の命令を平然と無視したと。

 

先の死の大地でハドラーを黒の核晶で敵諸共葬り去る命をバーンから出された時-キル-が危うく拒否しようとしたので意識抹消を目論んで主導権を乗っ取ったのが、弾かれてしまったのだ。

 

このままでは最終的にあれはバーンの持ち物になる恐れがあります。

 

その報告通信を最後に-ピロロ-からの音信は途絶えた。

 

別に一つ目の心配をした訳ではない。

その前に-面白い-情報が入ったからだ。

バーンが自分にとって今一番忌々しく憎らしい竜の騎士バランの娘を捕らえ捕虜にした事だ。

 

自分が封印されている間にバーンに水をあけられ、動けず指を咥えて黙ってみているほかない事が業腹である。

 

そのバランが、たった数年で魔王軍に闇落ちした時にはもっと腹が立った。自分がさんざん人間の醜さを教えてやった時は-人間は素晴らしく守るに値する!-などといっていた男が数年で趣旨替えした。自分はそんな簡単に趣旨替えするような軽薄なものに敗れたかと思うと惨めになり、嫌になって数年精神奥に引きこもっていたら、何やら面白い事になっているようで出て来てみた。

 

あの冷酷な魔界の神が、捕虜に対してあり得ない対応をしています

 

一つ目曰く、捕虜にまるで貴族の子弟達が着るようなドレス・スーツを与えて共に食事を摂り、お茶会まで共にさせている。

捕虜が眠っている間でも手放さず、評定の間においても膝に乗せてまるで寵姫の如く扱っていると。

 

・・・・あいつがか?寵姫どころか正室も持たずに寝床に呼ぶ女は伽の相手としか見ていなかったあいつがか⁉信じられん!

 

確かにバーンは民達を思いその為に行動しているが、其れは深層心理であって実際のバーンもヴェルザーに負けず劣らず謀略戦を幾度も仕掛け、数多の血を流してその地位を手にしている。

間違っても敵対した者をそんな扱いをする男ではなかった。

 

その捕虜の何かが、バーンの琴線に触れたかと見に来てみたのだ。いざとなればその捕虜を奪い取ってバーンに対して質にならぬかと見定めにきて落胆を味わった。

 

・・・来た甲斐の無い事だ。

 

実際を見てみれば、人形の腕の中で震えながら自分を見ているしか能の無い、哀れな羽虫と大差ない小娘ではないか。

 

 

 

いや・・・・あいつは嫌!!嫌だ!!!

 

 

ティファはいつになく大人しかった。

普段のティファであれば、バーンと話していたヴェルザーの内容に激怒し、会話に割り込んでヴェルザーの考えを怒鳴りつけている。

 

命を何だと思っているのだと

 

無論相手は甘い考えだと小馬鹿にしてこようが、否定されようが何だろうが、ティファは怒りを乗せて吠え上げる。たとえ相手に届かなくとも、届かないから怒らないという考えはティファにはない。

 

ではなぜそうしないのか?ティファは厭うたのだ。ヴェルザーの内から発せられる怨嗟と恨みとそれをぶつける事を躊躇いもしない暴虐で禍々しいヴェルザーの本質を肌で感じ嫌悪感に、ヴェルザーからすれば怯えていると映る程に震えが止まらないのだ。

 

「お嬢ちゃん・・・・お口閉じてこのままやり過ごして・・」

「うぅ・・・・キル・・・・・あいつ消したい・・・」

 

キルもティファの状態を察している。伊達にティファに執着している訳ではなく、ティファが命の火が消えるのを悲しむこそすれ怯える事は無いのを知っている。これは嫌悪に震えているのだと。

自分も久方ぶりにある-アレ-の気配に辟易とする。同じ魔界の一大勢力の頭だというのにバーン様と何と違う事かと唾棄したくなくる。

 

ティファを守る様に、キルはティファを抱く腕に力を籠めて一歩後ろに下がったが、その行動が仇になった。

 

一つ目からの報告は様々な情報があったが、その中でも傑作だったのが人形がまるで自分は本物の生き物だと勘違いしている様に、捕虜を愛していると公言しているとか。

 

何があったか知らんが余の手元を離れて勝手をし、疑似思考が勘違いしているとは問題だが、遊ぶにはよさそうだ。

 

捕虜も何故かあの人形に懐いているという、好都合だ!

 

 

ズッ

 

 

あ!!・・・・こいつは・・・・・ぼく・・・・をつかって・・・・にげ・・・

 

 

ふむ、意外と抵抗したが-乗っ取った-のだから何の問題も無かろう。

 

キルの疑似思考回路はヴェルザーの魔力を含んだ回路が基盤で作られたのもであり、時たまヴェルザーがキルを乗っ取りバーンに戯れてみようかとお遊びも含めて作られた代物。

その基盤を使われては、キルは為す術無くヴェルザーに容易くその身を乗っ取られ意識を落とされた。

これを機に、自分の自我を消すために。

 

 

 

この体になっても-感触-はあるか。

 

本体のキルと違い、キルに入ったヴェルザーは全身の感触が味わえる。

腕の中に居る少女の何と軽き事か。その身は柔らかく、まるで姫君の様ではないか・・・・バーンはこの娘を飼う積りだろうか?

ならば納得だ。地上を消し、天界を滅ぼした後にも三界の調停者を自称した者の末裔を魔界の神が飼い慣らすとは其れもまた一興。

 

バーンの命を獲れず、長き抗争になった時にもこの娘だけは貸し出してはくれまいだろうか?

お互いの疲弊を嫌って停戦する事はしばしばあり、停戦条件をこの娘にすればいいだろうか?

 

父親がした事を、子に支払って貰おう。その身をもってして・・・・さて、確か人形はこの娘をこう呼ぶのであったな・・・

 

 

 

キル・・・・どうしたんだろう?突然黙って・・・

 

まさかティファも、キルの中身がヴェルザーに乗っ取られたとはすぐに思い浮かぶ筈も無く、きゅにどうしたのだろうと心配になって-キル-を見上げれば、-ニッコリ-と笑うキルの瞳と目が合った。

 

「どうしたのさお嬢ちゃん。」

「え?」

 

-キル-は優しく甘い声をティファの耳に近づけ流し込む。

 

「あのお方は僕のもう一人の-大切な主様-なんだよ。あのお方に挨拶をしてほしいな~。

してくれないのかいお嬢ちゃん?」

 

 

 

これは・・・・こいつは・・・・・・

 

 

「・・・なせ・・」

「ん?なんだいお嬢ち・・・」

「黙れ!!放せと言ったんだ!!!」

 

バチン!!!

 

「・・・・ほぅ?」

「誰だお前は!!即刻キルの中から出ていけ!!!」

 

甘ったるい声に這いずり回るような手つきで自分を撫でまわした、こいつがキルであろうはずがない!!!

キルの声は甘くて心地よいのだ!!

キルの手は戦う時以外は優しい!!

断じてこんな嫌悪感を感じさせる者では無い!!!

 

耳に近づく顔を張り飛ばし、出来るならば体を吹き飛ばしてやりたい!!こんな奴の手の中に居る事自体が気持ち悪い!

出来ないこの身を、今ほど恨めしく思った事は無い・・

 

「っふっふっふっ、成る程、確かにあの男の娘であるあお前は。」

「ッツ!!!」

 

余の事を知らずとも、人形と違うと直ぐに見抜くか。

 

先程までの震えが嘘のように消え果て、自分を睨みつけるその瞳の奥にある獣性が見て取れる。

戦闘時のバランと瓜二つの瞳は確かにあの男の子供だが。

 

「余はヴェルザーだ。冥竜王ヴェルザー。この名に覚えがあろう?」

「・・・っカッハ・・・お前が・・・・・太古の世より死をまき散らす冥竜王・・・」

「そうだ、頭が高いとは思わぬか小娘?」

 

正体を知られたヴェルザーは其れすらも面白いと嗤い、ティファの細く首を締め上げぬたりと笑い瞳を覗き込む。

 

穢れを知らぬこの竜の娘をどう穢そう




今宵ここまで・・・


ヴェルザーの業が深すぎて中編になってしまいました!
どれだけ鬱屈溜めてんですかこの竜王は!!

・・コホン、出だしの思いは、最初がバーン様でその後がヴェルザーの行動理念となります。

最終決戦時のヴェルザーの扱いをどう扱ってもいいように、いかにこの二人の考えが違っているかの差異が出るか書いていたらこんな長文に(ーー;)
(権力あれど片や黄門様で、片や悪代官の如く違いが出ていればいいな〜)

次回こそは終わりますのでご容赦を!!
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