勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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時間系列としてはキルが使者としてパプニカ城に来た其の日の真夜中になります。


幕間-魂となりても・・-

会いたい、逢いたいどうしても・・・・夢の中でもいい、僕はどうしてもあいたいんだ・・・

 

 

パプニカ王城に使者としてきた死神キルバーンが帰る時、あの男の詫びだという思いでティファの歌を聞けた・・・・聞いてしまった。

 

・・・・・ティファ・・・僕は声が聞きたいんじゃない!君をこの手で抱きしめたいんだ!!

抱きしめて二度と手放したくないんだよ。

 

 

砦近くの深い森に一人古木の根元に蹲るノヴァは、後から後からあふれ出る負の思いを持て余し泣き崩れる。

 

自分が生涯で泣いたのを覚えているのはこれで二度だけ。

一度目はティファが死んでしまったと思った四日前のあの時。ティファのいない世界になど居たくないと自ら死んでもいいとあの時は心からの思いをしながら泣くしか出来なかった。

 

今もそう、自分は強いと言われても泣く事しか出来ないでいる。

 

ティファが絡むと自分は強くもなり反対に無力にもなる。ティファを守ろうとすればどんなことだってしてのけらる自信はある。オリハルコンを斬り裂き大地を海を凍てつかせ、空を掛けてあらゆる敵を屠りに行ける。

それもこれもティファがいるのが前提で、ティファのいない世界はきっと色褪せてどうでもよくなる。

 

今は・・・ティファを感じられないが式神のフラメルがいる事で辛うじてティファの生存が確認できているの-まだ-自分の目に映る世界に色が残っている。

味気ないが、ティファを取り戻せばまた世界は輝きだそう・・・・それまでの間ティファとの心の繋がりを断たれているのが辛い。

 

これまでは会えずともティファを感じていたのが当たり前で!断ち切られた時がこれほど辛いだなんて・・・

 

それでもティファの兄達と父達も耐えている。それを知っているのに僕だけが嘆き悲しんでもいられない。マトリフ様だとてティファを掌中の珠・大事な宝としておられるんだから・・・

 

 

我慢しようとした、前を向いて歩こうと歯を食いしばって歩こうと、己の心の痛みを気取られない程誤魔化していたが、ティファのあの歌が・・・・

 

「・・・・会いたいんだよティファ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・ティファ・・・・

 

 

だれ・・・・・誰かが私を・・・・悲しい、とても悲しい声が・・・・行きたい・・私はあの声の下に行きたい!

あぁでも体は動く事すらままならず!そしてこのパレスには結界が・・・・自分がこの部屋を出れば結界が察知して直ぐに捕まる・・・・構わない!!行かないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パレスの与えられた寝室で深く眠っているティファは、深層意識の中で強く願う。

悲しみに暮れている自分の-半身-に逢いたいと、逢いに行かねばならないと。

 

 

ふわりと体は軽やかに宙に浮いている・・・・自分は空飛ぶ靴は手元になく、魔法も使えないのに・・・だがこれで!!

 

試しに居室の窓に手を掛ければ、開けるどころかするりと一気に表に出てしまったではないか。

これは・・・・もしかして・・・・・

 

自分の考えが正しければきっと・・・・

 

ティファはパレスの結界を-すり抜け-そのまま会いたい者の下へと飛んでいく。

星がきれいな事にも気にも留めず。

 

 

 

「・・・・ノヴァ、ティファはきっと無事よ。パックの馬鹿には文句言いたいけど、あの子達のおかげでティファの事知れたんだから良しとしましょう。」

「決戦まで・・・・あと四日も・・・・・」

 

大勢の小さき友達に慰められてもノヴァの気持ちは一向に晴れる事は無い。自分が本当の意味で愛しているのは・・・・・それは・・・

 

 

「・・・ヴぁ・・」

 

・・・・・え!

 

「ノ・・・・ヴァ・・・・・」

「・・・・ティファ?」

 

俯いた自分の耳に幽かに届くこの声は・・・・・・間違いない!!

 

周りの精霊達も気が付いたようでざわつき始める。ティファはあの大魔王バーンの捕虜となり、パレスの強固な結界内の奥深くに隠されているのを精霊達も知っている。

大魔王と魔界の事を、ある意味地上の者達よりもよく知っている精霊達からすれば、此処でティファの声がするのはあり得ない!!それでも・・

 

「ノヴァ!!!」

 

今度こそ!確かに聞こえた!!

 

ノヴァは立ち上がり東の方角をひたりと見据える。その先にいたのは・・・・

 

「ノヴァー!!!!」

「ティファ!!!」

 

何故あ一糸纏わないティファの姿が自分を目掛けて飛んでくるではないか!

姿もだが何故飛んでこられたのか、なぜ逃げられたのかなどという疑問は今のノヴァに思い浮かぶ筈も無く、自分に飛び込んでこようとするティファを抱き留めようとしたその瞬間、体はお互いをすり抜けた。

 

「・・・・ティファ?」

「え・・・どうして・・・」

 

ティファもノヴァも、お互いが触れられないことに驚き何度も何度も体を重ね合わさんとしてもすり抜けてしまい、遂には互いにボロボロと泣き崩れる。

 

 

どうして触れられないのだ

 

たったの一度でもいい、ただお互い抱きしめ合いたいだけなのに・・・・

 

 

その光景は純粋で美しく、そして哀れで悲しい。

精霊達は一目で分かっていた。

今この場にいるティファは-魂-だけの状態であり、生者と魂が触れ合えることなぞ金輪際ないのを。

二人の子等を友としている精霊達も、その光景は悲しくてほろほろと泣き崩れる。

好いた二人が、目の前にいても触れないのが哀れで・・・

 

ノヴァとティファの共通の友達であるティンクの説明で、ティファは己の現状を知り落ち着きを取り戻し、ノヴァもそんな状態になってまで自分に会いに来てくれたと心が温かくなるのを感じている。

 

「・・・・泣いていたのはノヴァだったんだね・・」

「・・-皆-だよ。僕達は皆君の事で泣いて沈んで!!」

「ノヴァ・・・・」

「どうして僕すらも置いて行ったんだ!!ティファの為ならどんな事でもして上げるのに!!!どうして!」

 

今までずっと溜め込んでいた思いを、ノヴァはティファ本人にぶつける。

ダイ達に遺された手紙は優しい言葉と、立ち上がれる言葉が溢れていたようだ。それはハドラーにもマトリフにも同じで・・・・だが自分への手紙はたったの一言であった。

 

御免ねノヴァ

 

なぜこんな事をしたのかも、この後どうなるかどうすべきかの言葉も何処にもないたった一言が、自分をきちんと知っているのだから今更言わなくとも分かるだろうという信頼の証なのは承知している。

 

だが心が納得できない!自分は・・・ティファの傍らに入れればそれでいい。例え底が地獄であろうとて基地の中であろうとそれは変わらないのに!置いていかれて心が痛いのだと・・・

 

「・・・・・ノヴァ・・・」

 

 

触れらない・・・・それでも、ノヴァを慰めてあげたい。

自分はノヴァの優しさに甘えてきた。何を言わなくとも自分のする事全てを受け止めてくれるノヴァに。

 

自分もノヴァも、互いで一人前なのかもしれない・・・・

 

その思いが愛しく・・・・

 

 

「ノヴァ」

「ティファ・・」

 

気が付けばティファの方からノヴァの口に口を重ね合わせていた。

無論触れられない・・・それでも・・・

 

「ティファ・・・・・好きだよティファ。誰よりも何よりも君が好きなんだよ。」

「ノヴァ・・きっと・・絶対に戻る。迎えに・・」

「行くよ・・・どんな事をしてでも君を取り戻す!!!」

 

ノヴァの心に、再び火を灯すには十分であった。

 

 

 

 

魂だけの状態というのは非常に危険であるとティンク達に諭された二人は、精霊魔法の詠唱でティファの魂が返される事になった。

 

「ティファきっと・・」

「ノヴァ絶対・・・」

 

会おうと約束をして・・・・

 

 

精霊達の詠唱が終わると同時にティファの姿が消える寸前にノヴァからティファの唇に唇を押し当てる。

 

・・・・・柔らかい感触がしたと思うのは気のせいだろうか・・・

 

勘違いでもいい。ティファを一瞬であってもこの身で味わえたのならば・・

 

「皆付き合ってくれてありがとう・・・もう大丈夫だ。」

「そう、そしたら寝ましょうノヴァ。」

「明日は早いんだろう。」

 

あぁそうとも。沢山寝てうんと鍛えて今度こそティファの側でティファを助けるのだと、清々しい笑顔を取り戻したノヴァの宣言に、精霊達も微笑み砦へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りお嬢ちゃん、-夜遊び-とは感心しないね?」

「ん・・・・キル?」

 

精霊達の手助けでパレスの中の本体の戻った自分を待ち構えていたのは・・・

 

「どうやって-魂抜け-なんて覚えたんだい?それとももともと出来たのかな?」

 

言葉遣いは優しくとも声も気配も冷たいキルが、自分が寝ているベッドの枕元に腰を掛けて覆い被さっている。

 

瞳はいつもの綺麗な赤ではなく、一度見た怖い赤黒い色をして熾火が燃えている様だ。

 

捕虜の自分が逃げたと思っているのか・・・・

 

「キル・・・・ティファね・・・・・どうしても行かなくちゃいけなかったんだよ・・」

 

眠いのも手伝い、慣れぬ魂抜けをして疲労困憊なティファはたどたどしく話す。

 

どうしても悲しみに暮れた心を慰めたくて

 

 

・・・・・この子は・・

 

「初回だから今回は僕の胸に納めておくけど、二度目は相応の罰を下すからね。」

「うん・・・・・ふぁ~・・」

「もうお眠りお嬢ちゃん。このベッドでぐっすりと、夢も見ずに。」

「・・・・・・・」

 

理由を知って落ち着いたキルは、ティファから少し体を離し優しく髪を梳いて寝かしつける。

 

この優しさが厄介でありそして最大の魅力である。

 

 

自分も、この優しさに魅かれてティファを欲している。

 

だからこそ一度目の逃亡には目を瞑る。

 

ティファの様子を見に来た時、ティファの体が半分透けていた時は愕然としたが、すぐさま魂が戻ってきた。

 

まさかティファが魂抜けを使えるとは。

 

奪魂魔術でもないのに、ときたま自分の力で魂を自在に出入りさせられる者が極まれにいる。

ティファは本当に何事も極まれの少数に入る者で、そこが厄介事に繋がり自分でも頭が痛くなる。

 

とは言えティファの現状を話せばさしもの主も、ティファを罰せないといけなくなるので内緒にしておく。

 

主もティファを殺す気でいても罰するのはしたくはないだろうから。

 

様々な者達の思惑を外に、ティファは眠りの底に落ちていく。

 

キル言った通り夢も見ず深い底へと




今宵ここまで・・・・


つなぎと言いましょうか、完全フラグ立てようのお話なので何か漠然としていますが、主人公が魂を自力で出入りする事と、魂が抜けた体はどう変化するのかを書きたかった回でした。

これも最終の最後の大詰めの為のフラグですので、漠然としたお話ですがご容赦を。


これで現時点で書けるフラグは全て出揃い、いよいよ最終決戦へと突入します。
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