よろしくお願いします。
ぶっ倒れてから目が覚めたら夕方で、なんとノヴァのおうちに泊まる事になった。
近頃は一泊の外泊許可が出ているので今回は野宿するつもりで出てきたからいいんだけどマトリフさんも一緒だったりする。
「ネイ、これ食べて!」
「遠慮せずに食べなさい。」
「痩せた女はもてねぞ嬢ちゃん。」
男三人に構いつけられて沢山食べても勧めてくるのは私が痩せすぎて見えるらしいけど仕方ない。
日々修行でカロリー消費をしているので肉はそこそこで筋肉になっていくので着痩せしているので細っこく見えてしまうだけだけど、料理がおいしいので文句なく沢山食べよう。
「ネイには心配をかけたが、見ての通りノヴァはもう大丈夫だ。ノヴァも沢山食べてネイを安心させてあげなさい。」
「はい、父さん。」
どうやらバウスンさんは私が気絶するように眠ったのはノヴァの事が心配し過ぎての事だと思っているらしい。
まあ心配はしたけど疲れが原因なんだけど・・バジリスク達を倒したのはマトリフさんという事になっているようで、バウスンさんが話の端々でマトリフさんに何度もお礼を言ってる。
・・マトリフさんは本当の事知ってるはずなのに言わなかったか。
でも当然だ。冒険者でも何でもない小さな私がバジリスクの群れ狩りつくしましたと言って誰が信じるんだろう。
信じられたとしても私が魔物並みの扱い受けかねないから黙っててくれたのかな?
だとしたら優しい人だ。
沢山の料理に優しい給仕のおばちゃん達とノヴァ達で楽しい夕食会になったのはマトリフさんの優しさのお陰。
皆本当の事を知らないで私にも優しくしてくれる・・怖がらないで。
「ネイ!デザート焼き菓子だって!!」
「本当!あれ大好き!!」
皆でお腹いっぱい食べて、マトリフさんも楽しそうにお酒飲みながら取り留めない話を沢山して、夕食会はお開きになって、客間の寝室に案内されて就寝する事になった。
寝間着を持ってきてないので下着一枚で寝ようかな~と考えてたら扉をノックされ、開けてみたらさっき給仕をしてくれたおばちゃんがノヴァの小さくなった寝間着を貸しに来てくれた。
「女の子が普段着で寝るもんじゃないからね。バウスン様には許可をいただいているから安心してお着替え。」
「ありがとうございます。・・でも、どうしてバウスン様に許可を?」
古着とはいえ館の主の息子の物を勝手に貸し出せないのは分かるけど、普通は主人ではなくそういった館内での日常を取り仕切る奥方が・・しまった・・。
そういえば奥方らしき人を全く見かけてない・・ここに連れてこられた時も夕食時にも。
考えてみればノヴァからお父さんの話を沢山聞いても、お母さんの話は一度もない!
家族愛の強いノヴァが話さないという事は・・
「ごめんなさい・・立ち入った事を言ってしまって。」
既に亡くなって居ないという事だ。
-ポンポン-よそ様の悲しい事情に踏み入った事を申し訳ないと謝ったら、おばちゃんが下げた私の頭を優しくたたいて撫ぜ始めた。
「いいんだよ。子供がそんな顔をするんじゃないよ。人はね、いつか亡くなるのは誰にも止められない。あんたが気に病んだって仕方がない事さね。」
「・・でも・・」
「・・仕方がないね~。あんたはどうやら優しすぎるようだ。
奥様は確かにお亡くなりになられた。でもね、その代わりにノヴァ様をこの世に残されたんだよ。奥様は大切な御子をお産みになられて天国に迎えられてる・・だからあんたが悲しんだら、天国の奥様が坊ちゃんの友達を悲しませてしまったと上でやきもきしてしまうよ。」
「・・優しい奥方様だったんですね。」
「そうだよ。あんたと同じ優しいお方だった。」
・・優しい・・私が・・。
「さ、もう着替えて寝な・・って坊ちゃん。」
おばちゃんと話し込んでたらノヴァが来た。
「坊ちゃんはやめてよナタリー。」
「私からしたら坊ちゃんですよ。」
どうやらこのおばちゃんの名前はナタリーさんというらしい。
普段なら礼儀として名乗りあうけど偽名言うの嫌でスルーしたけど分かってよかった。
「ナタリーさん、寝間着ありがとうございます。」
きちんとお礼が出来た。
「ノヴァも寝間着借りるね。」
「いいよ。それよりもさ、部屋に入っていい?話があるんだけど。」
「何?べつにいい・・」
「いけませんよ坊ちゃん!!」
「「ナタリー・さん?」」
いいと言おうとしたらナタリーさんがおっかない顔して止めるので、ノヴァとハモって、名前呼んでしまった。
「いいですか坊ちゃん!それとお嬢ちゃんも!ご家族でない男女が同じ寝室で二人っきりで夜遅くまでいるのは好ましくはありません!覚えておいてくださいね。」
成る程、男女七つにしてってやつか。貴族の館に仕えてるナタリーさんが正しい。
「ノヴァ、お話ここじゃダメ?」
「う・・ん、ナタリー部屋に入らないですぐ済ますから、ちょっと外れてほしい。」
「かしこまりました坊ちゃん。おやすみなさいお嬢ちゃん。」
「おやすみなさいナタリーさん。」
ナタリーさんが居なくなって少ししてから話が始まった。
「ティファ、心配かけてご免ね。」
本当の私の名前を呼んでノヴァに謝られた。
「ううん、ノヴァ助かったんだしもういいよ。そういえば助けた精霊は?」
「無事だった。今他の子達と僕の部屋で休んでる。」
「そっか良かった。守れてえよかったね、ノヴァ。」
ノヴァが命懸けで助けた子が無事でホッとする。
命かけて守れなかったじゃノヴァの心に傷を負いかねないことだけど、そうならなくてよかった。
「・・ティファの・・おかげだよ。」
「・・ノヴァ?」
「ティファ、僕強くなる!!今度は僕が君を守る!!大好きな人達も!!!」
「・・ノヴァ・・」
「おやすみなさいティファ。」
「あ!ちょ・・。」
言いたい事だけを言ってノヴァは行ってしまった。多分ナタリーさんとの約束を守るために。
・・ノヴァ・・なんであんな事を。助けたのは・・マトリフさんだって事になっているはずなのに。
着替えてベットに入っても眠れない。
ナタリーさんとノヴァの言った事が気になって。
優しすぎるって・・数年後の大惨事を知っていても黙ってる私は優しくない。
ナタリーさんの思い違いだ。
それに・・ノヴァの言った事はまるで・・それに・・本当の事を知っているマトリフさんは私の事をどう思ったか・・
「ああ!もう!!」
眠れない・・少し外行こう。
「・・綺麗だ~。」
中庭に出てみれば雲一つない星空が瞬いていた。
今は初夏で、暑くも寒くもなく、夏の夜空は星が降ってきそうで心のざわめきをかき消してしまうほど美しい。
あまりにも綺麗で、ガルーダで空中散歩したいと思ってたら不意をつかれた。
「黙って帰るのは礼儀知らずだぞ。」
・・マトリフさんが近づいてきたのに全く気が付かずに声を掛けられてようやく気が付いた。
「おじさん、私寝間着着てるんだよ。これで帰る人いないよ。」
「そうか・・。」
「うん・・。」
そういったきり・・何となしに二人で星を見始めたけど・・
「あのさ・・おじさん。」
聞くの怖いけどきちんと聞こう。
(何だ?俺を警戒でもしてんのか・・いきなりおっかない顔になって。力ばらすなか?)
中庭に出たのを見かけて後追いかけてみれば、ボケっと星空を見上げていたので声をかけてみれば、びっくりした顔を向けてきた子供が突然険しい顔になって・・なにを・・。
「おじさん・・私の事怖くないの?」
「・・はぁ⁉・・なんでだよ・・」
「だって・・おじさんバラバラになったバシリスク達見たでしょ!!・・だから・・。」
(ああ、そういう事か。こいつは俺を警戒してるんじゃねえ。俺に怖がられる事を怯えてるのか・・)
なら・・
「俺を舐めるなよ嬢ちゃん。」
頭に手を置いてぐしゃぐしゃにかき回してマトリフは答える。
力が強くても、心はまだ弱そうなこの子供の心を守るために。
「俺くらいの年になりゃもっと凄え事を山ほど見て来てんだよ。あんな事屁でもねえよ。
いちいち怖がるかよ。お前さんは立派に坊やを守ったんだ。誇れ!」
果たして自分の言った言葉が心の中まで届いたのか、険しい顔がうって変わってボロボロと大粒の涙をこぼして泣き始める。
やはりどんなにすごくてもまだこいつは子供・・大人が守るべき幼子だ。
私はボロボロと泣き始めた。でもノヴァを守れなかった無力感で泣いた時とは全く違う。
何故か・・安心をした・・この力を持ったまま・・皆の側にいていいと・・許された気がして。
「私・・このままで・・いいの?」
声に出した確かめたい!!
「ああ。」
「気味・・悪くないの?」
ぐしゃぐしゃ泣きながら馬鹿みたいに何度も・・
「そういってんだろ。」
言い方はぶっきらぼうでも、言葉に温もりを感じる。温かくて、余計に泣ける。
気が付けば・・マトリフさんに抱き上げられてた。
「嬢ちゃん。」
耳元で声がする。とても古くて深みのある魔法のような声が。
「確かにこの世界には嬢ちゃんの力を知って怖がる奴も沢山いる。」はっきりと言うな。
「うん・・。」
分かってる。いつかダイ兄もおなじめに・・。
「けどな・・。」
「なに?」
「少なくとも俺と-ノヴァ-はお前さんを怖がらねよ。」
「・・ノヴァ?」
「ああ、あいつには全部話した。」
「・・全部って・・どうして!!」
話したって・・だから・・さっきノヴァあんな事を・・・。
「なんで話したの⁉もしノヴァが!!」
・・ノヴァが・・怖がったら・・。
「お前さんたちは友達なんだろ。」
「けど!!」
「なら何で友達を信じねえ!!」つ!!
「ノヴァは良い子だ。それにそんじょそこらの奴等よりも心が強い。全部話した後にあいつは強くなって今度は自分が守る側になるって言いきったぞ。お前を守るんだってな。」
十歳で城の騎士見習のノヴァならばバジリスクの強さを良く知っているはずだ。
それを倒したのが小さな親友だと分かっても、ノヴァは親友を怖がらずに守ると誓いを立てていたのだ。
「嬢ちゃん、この世の中は弱い奴らっばかりじゃねえ。坊やみてえに強い奴も沢山いる。
お前が思うよりも強くてしぶてえんだよ。お前さんが今までどんなでこの世界を見てきたのか俺は知らねえ。
けどな、お前さんが思う程には弱くも酷過ぎもしねえんだ、分かったか?」
いつの間に・・私はこの世界の人達を見下して・・勝手に憶病になってたんだろう・・。
力がついて・・知識が付いた分・・侮って・・勝手に怖がられるときめつけてしまって。
知らない人達には怖がられても別にいい、でも知って好きになった人達にはなんて・・それは世界中の人達を低く見積もっている最低な考えだ。
なんて・・愚かな考えなんだろう。はっきりといえば馬鹿だ。
ラ―ハルトに自分で言ったのに。‐優しい人も沢山いるよ‐と。
こんなんじゃああの人達にも友達にも顔向けできない奴になるところだった。
不思議な人だマトリフさんは。たった二言三言話しただけなのに、錆びついて汚れの付いた心を綺麗にしてもらえたのを感じる。
この古木のような老人は・・本当にすごい人だ。
痩せていて。中身はすっかりおじいちゃんで普段はちゃらんぽらんでちょっと女の人大好きで・・
なのに、大地に根差した大樹のような素晴らしい人だ。
そんな-素晴らしいおじさん-の首にしがみついてきちんと答える。
「この世界が大好きだよ。ノヴァもおじさんも・・今まで出会った人もみんな・・大好きだよ。」
「そうか。」
答えれば、優しく頭を撫ぜてくれる。答えを受け止めてくれるように何度も。
この力を使って知識フル活用して、大切な人たち守れるように突っ走る!!
以降主人公はマトリフさんの事をおじさんと呼んで慕いまくります。
この物語で―おじさん-はマトリフさんだけの表記としていきます。
次回でノヴァ・マトリフ編及び原作前のお話は終わりです。