(だから余計に質が悪い・・・・)
「私の処刑方法はどうなっているんですかミスト?」
自分の処刑内容を自分で聞くとはいささか常軌を逸しているとは自分でも思うんだよ、うん。
流石にね、お前をこれから処刑すると言われ続けても平然としている子供ってのも可愛げが無いどころのレベルでないのも分かるんだよちゃんと。
其れでも生き残るには-多少-は変わっていても多めに見て欲しいんだよ。
だからさミスト、そんなに呆れた盛大な溜息ついて頭を押さえないで欲しいんだよ。
割と私でも傷つくよ?
始めよう
その一言で上空のパレス内と隠れ潜んでいた者達の間に緊張感が奔ったのを、ぶっ壊したのは矢張りティファである。
こいつは自分の命が無くなる心配していないのかとミストだって頭を痛めて溜息ついても文句は出ない筈が、ティファにとってそれは不満であり心の中で反論するが、目は真剣な表情でミストをじっと見つめ、見つめられているミストもティファの考えている事は分かっている。
これは状況の読めていない馬鹿などでは決してない。もしも今のこれのふるまいだけでそう侮る馬鹿こそ魔王軍には不要だと早々に追放物だ。
誰よりも分かりすぎているが故に、どう動くのが生き延びるのに最善なのか早く組み立てたいからこその質問であるとは分かっているのだが・・・・もう少し緊迫感や悲壮感を持って言ってくれればこちらだとて頭痛くならずに済むのだが・・・・今朝の朝食何ですか並みの気軽さで聞かれると本当に色々と思うところが出てしまうのは仕方がないだろう。
・・・・勿体ない。何故この者が魔界の、其れもバーン様の直轄地に生まれなんだか・・・
ミストはティファの本当の所を知ってどれ程その事を思ったか数え切れないでいる。
最初は少しばかり知恵が回る腕に覚えあるものであったが、とんでもないバケモノであった。
何が怖いと言えば、バーンしか見ていなかった自分の目を真剣に向けさせるその存在感そのものが怖ろしい。
そして同時に惜しみもする。ティファのような者がいたなれば、主はもっと早くに大願成就を楽に出来たであろうと。
主は実力主義を重んじ、名が聞こえれば奴隷の子であろうと登城させて使えると判断すれば魔界とパレスのゲートを守護するガーゴイルのガァグランスの様に重用する事を躊躇わない。
貴族が居らず、いるのは主とそれに使える者達で、其れなりの地位差はあるが他国よりも分かりやすいシステムな国を慕い、移住してきた者達でさらに国力が上がり今に至る。
まさに強者こそが正義を地で行っているのがバーンの国であり、最早ヴェルザーとその傘下の国以外の魔界の地はバーンの傘下。
その中のどこかにでも生まれてくれたのであったれば・・・・
感傷を、あえて切り捨てるようにミストはティファを見据えて質問に答えた。
「お前を処刑するのは私だ。」
「うわぁ・・・・死亡率がこれで跳ね上がり・・・方法は?」
「お前が死ぬか、私が死ぬかのどちらかの決着がつくまでこの地に張られた結界は解かれん。」
「はりゃ、結界の事言ってもいいんですか?」
「戯けた事を、先程の闘気を発しいた時に察しはついているだろう。」
「確かに。あの結界の作用は私だけで貴方には?」
「バーン様がお張りになった結界が私を害すると?」
「で~す~よね。つまり私には作用して貴方は出入り自由と。ちなみに・・・やっぱり自分で試してみてもいいですか?」
「構わん。」
「では遠慮なく。」
サクサクと話を進めているティファは、ミストに断りを入れて再び舞台から降りて地面をけり上げ大きめの土塊を作り出し、まずは真っ直ぐに投げれば、ある所を境に土が一瞬にして消失した。
それを残った三方と上空にも順番に投げれば結果は同じ。
「成る程、結界に触れた物を消し去る・・・・逃げる距離間違えたら確実に死にますね。」
広さは大体百メートル四方で高さも大分あるな。これなら-立体機動戦-が可能か。
ミストには作用せず私だ・・・・・あ、これ聞いておかないと。
「ちなみに-外-から-誰か-が入ってこようとした時はどうなりますか?」
ここ重要
「お前と同じだ。」
「・・・・・・さいですか・・」
平然と怖い事言ったよこの御人!!つまり結界で見えないのか、原作では周りに居る筈であろうダイ兄達の姿どころか気配を感じないのもこれのせいで、私を助けに来ようとした人たち即死かい!
これはあれだ、○キホイホイならぬ、勇者ホイホイ・・・・私はホウ酸団子か何かか・・・囮の時点でそうなるのね。
等と暢気にどうでもいい事を気にするティファと違い、勇者ダイ一行の頭脳たるポップは慄然としていた。
・・・あっぶねぇ・・・ティファがきちんと情報引き出してくれてなかったら俺達バーンに会う前に全滅してらぁ・・・
ポップの立てた作戦はシンプルなものであった。
ティファが処刑されるその寸前、イオラの嵐を魔法部隊と共に打ち上げて爆炎で煙を立てる。
無論ミストを狙ってだが、これであればティファが何かに繋がれ殺されるだけであっても有効な手段であり、混戦部隊であっても即座に臨機応変が取れるこの作戦をマトリフも支持しフローラに奏上されて通ったのだが、やっていたら魔法は分からないがイオラの爆炎に紛れて突撃を駆ける予定だったダイ達は確実に死んでいた!
これでティファを助けに行く望みは潰えたが、ティファが端から結界の存在を露呈していてくれたからこそあの参謀も結界の事を話したのが不幸中の幸いであった。
そうでなけらば何も知らずに自滅するところであったのだから。
周りを見渡せば、自分と同じ結論に達したのかどこもかしこも青い顔に冷や汗を流している顔しかない。
そして焦りの色も浮かんでいる。
当然だ、此処で大魔王の張った結界を無効にする虎の子のミナカトールを使うわけにもいかず、ティファには自力でどうにかしてもらうしか手が無くなったのだから!!
ドッガ!!
ポップの思考を、鈍い音が遮る。見ればダイが、そしてヒュンケルもが拳を岩肌に叩き付け無念だと呻いている。
どうして自分達はティファに助けられてばかりいるのに、ティファを一度として助けることが出来ないのだ!!
周囲の思惑を他所に、ティファの思考はいつも通りに忙しなく働き、そして算段が付いたのかふんわりと落ち着いた笑みをミストに向けながら再び舞台の上に自ら上がる。
これから何が起こるのかを承知しているのに穏やかに。
そのティファに、ミストは思い出したように右手を宙に差し出せば、親友のキルの手が現れ、キルが持っていたゴブレットを受け取りティファに持てと押し付ける。
「-これ-を飲め。」
「なんですかこれは?・・・・私は今生別れの酒を嗜める歳では・・」
どう見ても大人がお酒を飲むのに使うゴブレットをミストから差し出されたティファは、この場所に来て初めて困惑する。
お酒は二十歳とまでいかなくともせめて十五までは待つべきだけど・・・心尽くしとして受け取って方がいいのかな?
この場で出されるゴブレットの中身をすかんと忘れているティファは、てっきり酒だと思っていたのでミストに言葉にぶっ飛んだ。
「中身は酒ではないから安心しろ。」
「へ?・・・・・別れの水杯ですか?」
確か大戦前には味方同士でそれをするところもあるってノヴァが教えてくれたけど、私の事惜しんでくれてるのならって・・・・この色どう見ても水では・・・
「暗黒闘気を濃縮してゴブレットに入るようにしたものだ。」
「・・・・・・・・は?」
「これも処刑の一環だ。」
「・・・・・はい⁉」
ちょっと待ってミスト!!酒なんて及びじゃない程やばい物を人様に差し出して安心しろって何よ其れ!!
どう考えても安心出来ない物ナンバーワンじゃないのよ!!!
拝啓お父様、私は暗黒闘気を飲んで亡くなりました・・・なんて絶対に嫌だ!!!
今宵ここまで
原作の大半を覚えていた主人公ですが、やる事が多すぎて大きな時系列の事は覚えていますが、ちょこちょこと忘れている事も出て来ています。
転生して早十二年ですので、忘れている事もあるのだと思っていただければ幸いです。
少しずつミストも主人公影響で-そっち側-にあしをつっこみはじめているかいでもあります。
すなわち周囲と多少ずれたお人になりつつ・・・・