勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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処刑演目の行方

処刑演目が佳境を迎え始める。

ティファの動きが少しずつ鈍り、、斬りつけられないまでも徐々に押されて後ろに弾き飛ばされ、あわやという場面が増えた。

 

 

そろそろスタミナ切れか・・・・癪だがザボエラの言う通り偏食が祟ったか?

 

お肉好きじゃない、畑のお肉大豆は余りないこの世界で野菜と魚料理と海産物で誤魔化してたのがいけなかったか?

・・・・料理人の不栄養とかって真面目にお話になってないな。

 

ミストの蹴りを腹部に諸に受け朦朧とする意識を無理やり奮い起こす為に馬鹿馬鹿しい事を考えて脳を無理やり活性化させたが、体が動いてくれない!

 

数瞬前なら無理やりにでも体を反転させて結界の足場を作って上空に飛びながら結界の壁を作ってミストを足止めしていたがこれは!!

 

 

ティファが吹き飛ばされながら思考をめぐらす中で冷や汗が止まらない。

案の定ミストが迫り、左手の剣状の手が元に戻され滔々ティファの首根っこを捉えるのに成功した。

 

漸くか、長く保った方だ。

 

たった一人で武器も無く素手で万全とは程遠いとはいえ、自分を相手に三十分近く戦っていたのは見事というほかあるまい。

 

上手くやってねミスト

 

分かっているキル、私はもうこれに恨みはない。あるのはよくぞ戦ったという畏敬の念のみ。苦します事はせん!!

 

親友が望んだのはティファを苦しませずにひと思いに殺してやる事。遺体を辱めようとも思わん。

 

ティファの細い首を締め上げたミストはそのまま高々と宙に持ち上げる。結界の外にいるダイ達に見せつける為に。

 

「ここに張り巡らされた結界にはマホカンタ系の効果もある。これを助ける為に自滅したき者はするがいい。

地の底まで届いているがな。」

 

言外に過日の戦いでポップがメドローアを地面深くに打ち込みその威力をもって捕えたティファを助けた手は使えぬと通告をして。

 

その言葉に、ティファを助けようとした者達全ての動きが止まった。文字通り-全て-が。

 

助けんと飛び出そうとした者達は出来る手立てが浮かばず座り込み、叫んでいた者達の声はやみはて、ロロイの谷は普段通りの静寂が支配した。

 

 

この結界内ではティファだけが外の様子が分からない仕掛けとなっている。それは当然ミストには外の様子が逐一分かるという事。

 

これの影響は凄まじい。

たった一人の死が、あれ程の者達を一瞬にして沈黙させている。本人は抵抗する気満々のようだが!バーン様の、魔界の悲願の為にも!!

 

高々と掲げるティファは、最後まで自分に抵抗する事を示す様に入らぬ力の手でパシパシと叩き睨んでくる。

 

その瞳の、何と美しい事か・・・命の横溢溢れた瞳を!閉ざさせて貰おう!!

 

右手剣を斜め下から刺し貫く!狙うは心の臓ただ一つ!!せめて楽に・・・

 

 

 

 

ミスト!パン粥美味しいです

 

 

不意に、本当に何の脈略も無くティファが初めて自分のパン粥を食べた時の無邪気な感想の言葉が脳裏をよぎった。

媚びて命永らえようとも、世辞でもないキルの手を借りていたが本当に美味しそうに笑って食べていたあの顔は・・

 

だからどうした!!

 

ミストはその顔を振り払うように自らの思考を叱咤する。

 

キルが言っていたではないか!これを殺しても手に入る方法があると!!死してバーン様に仕えるがいい!!!

 

あの十日は、地上・パレスにとっても凄まじい激動の時であった。

ダイ達は宿敵てある魔王と共闘すべくフローラを筆頭に纏まりを見せた。ティファの願いゆえに地上の王達の執り成しもあって。

 

パレスもまた平穏でいられるはずが無かった。ティファという温かい太陽に照らされ、何の影響を受けない者は良くも悪くもなく、ミストもまた知らずティファの温もりを知ってしまった一人。

知らなければ生じるはずのない幽かな躊躇い。

 

 

「ック・・バイ=ラック!!!!」

 

バァン!

 

 

幽かな葛藤を、ティファは見逃さず移動型ハイ=エント、ラック=バイ=ラックを発動させ、結界内ではあるがミストを自分から一番遠い場所に強制移動させ難を逃れるのに成功した。

 

結界の外に力及ばず、技が不発になっては目も当てられないと結界内に留めたがそれで充分!

 

ミストを急に跳ばした事で受け身を十分とれず地面にぶつかりえずいて咳をしながらでも、その顔は決してミストから逸らさなかった。

 

「・・・・楽になればいいものを・・」

「御冗談を、今死んだら化けて出る自信があるくらい未練しかないですよ。」

 

白かった服は最早ズタズタで土塗れで髪も酷い事になっているがそれでもティファの魅力を損なっていないのが不思議だ。

 

しっかりと両の足で立ち上がり、唇を手の甲で拭いながらも不敵に笑う顔には負ける気はないという勝気な色が見て取れるせいだろうか?

 

「最後に問おう。」

 

あの覚悟を決めたティファを相手に躊躇いを出したのは失礼であろうと数瞬で己の覚悟も決めたミストは最後の一撃を決めに行く前に問いかける。

ティファをきちんと殺す覚悟を決めたが故に。

 

自分も甘くなったものだと己に苦笑したくなるが、何も考えず道具の如く命を殺している自分に戻れる気がしないので仕方がない。

あれの言う命の重みを知ってしまったのだから。

其れでも殺すという覚悟を定めた。最早揺らがんが、せめて最後に一つだけ残った疑問を解いて貰おう。

 

「何故暗黒闘気を飲むのを躊躇った?」

 

その奇妙な問いに、ティファが何か言う前にダイ達が怒声を発っした

 

「そんな毒薬紛い誰が飲むか!!」

「手前ぇこそ常識習って出直しやがれってんだよ!!」

 

普通はそう考える。

だがティファは普通ではない。

 

「・・・・あれ飲んで舌が馬鹿になってしまったら料理作れないじゃぁないですか。貴方だって嫌でしょう?せっかくできた味覚で大魔王に自分の味見だけで料理作れるようになったのが不意になったら。」

 

何処まで言っても料理人だった。

 

「ふっくくっくっく、確かに嫌だな。」

「でしょう。」

「だが、もう今生で作る機会は無い!!」

 

闘魔最終掌!!

 

 

叫ぶと同時にミストは己の使える中で一番の物理的破壊力を有する、暗黒闘気を己の掌に凝縮させ敵を握りつぶす必殺の技を出しティファに迫る。

 

これはオリハルコンをも砕く!

 

ラック=バイ=ラック封じに、ミストは左手で闘魔傀儡掌をティファ目掛けて投げつける。

 

当たらぬでも技を出させない為の一手・・・の筈だった。

暗黒闘気の糸を見たティファの口角が吊り上がるまでは。

 

なんだ・・・・一体になにがおかしい!!

 

怖気が奔る感覚を覚えながらも、ミストはもはや止められない速度でティファに迫るしかなかった。

 

これを待っていた!!

 

ミストが茶苦戦距離で突進技に出てくるこの時を!それも闘気の糸を出してくれたのは尚結構だ!!

 

ミストの怖気は的を射ていた。ティファはこの瞬間をずっと待っていたのだから。

この処刑演目を自分が生きて終わらせる為に。

 

「シュガー=アンド=スパイス!!!」

 

ティファもまたミストに突っ込みながらも詠唱と共に左手を一閃させる。

 

指先から出てきた火花の様な者が糸にあたると同時に、大量の煙がミストとティファを覆いつくし、結界内が黒一色となった。

 

どよめくダイ達の声を聞きながら、ティファは何処だと速度を緩めて探す前に、左右両方の腕が-何者か達-にとられ!その速度を殺される事無く前方斜め上に放り投げられた!!

 

何だ!!この結界内には自分とティファしかいない・・・・

 

 

ドガ!!!

 

何が起きたのかを理解しようとする前に、ミストは崖山に当たり外に放り出された事だけを理解した。

前方を見れば、投げ出された自分をぽかんと見つめているダイと目が合ってしまった!

ダイ達も一体何事が起きたのか理解の外らしいが!ティファは何処に!!

 

幸いにも崖山の棚に当たったらしく、座ったまま身を起こし結界を見つめてみれば、煙がはれた結界内にいたのは・・・・・何だあれは!!!

 

いたのはティファではなく、奇妙な・・・・物体としか言いようがない者達がいた。

手と足はきちんとあるのに、頭からつま先まで真っ白でのっぺりとした自分と同じ背の高さほどの人型をした何かが二体居るのみで、ティファの姿が見当たらない!

地に深く潜った形跡は地面には無く、諦めて自ら消失するような者では絶対ない!

 

「どこだ!!どこにいる!!」

 

そのままの姿で怒鳴るミストにつられるように、敵の大幹部が一人でいるのは討つ最大の機会であるという事をダイ達は忘れ果て・・・そもそも思い浮かばずだが、ティファが結界内にいないと騒ぎだしたその時、世にも奇妙な事が起きた。

 

ミストの白い衣が、モコモコと動き始め・・・・・・なんだとミストが顔を向ければ

 

 

 

「プッハ!!!」

 

 

・・・ひょっこりと顔を出し盛大に息継ぎしたティファと目が合ってしまったではないか・・・




今宵ここまで


主人公のハイ=エントの最後の技、シュガー=アンド=スパイスの出番でした。

これは火花が-何か-に触れた場合、その何かが主人公のハイ=エントの魔力より弱い場合は消失させながら煙幕に転じさせる技です。

例として、一般魔法使いの最大魔法は消失させられても、大魔王のカイザーフェニックスに当たった場合は消失させられず火花だけが薄い煙幕になるという技です。

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