誰もが驚き目を剥いた。
其れはティファの事を熟知していると自称であっても自負していたキルも唖然とし、必殺の結界を張った大魔王バーンとても、一体何が起きたのか理解できずに、水鏡をまじまじと見る。
何度もみても目の錯覚ではなく!ミストの白い衣からティファの顔だけが出ているこの異常事態は何事だ!!
何がどうしたらああなるのだ!?
周囲を唖然茫然とさせている当の本人は、どこ吹く風で思考の海を漂っていたりする。
ふぇ~上手くいった。結界私が越えられるかどうか肝が冷えたよ~。あんな大博打もうしたくない!全部終わって私も生き残れたら絶対にグータラしてやる!
その思考は、ーとある震えーで中断された。
プルプルプル
ん?
「この非常識娘が!!!」
あぁ!ミスト酷い!!またそんな酷い言い方してる!!!
ミストの体が震え怒声がまき散らされ首根っこ掴まれそうになったのでティファはさっさか衣から脱出し、張られていた触れたものは絶対死ぬ結界の上に何故か着地している!・・ミストが非常識だと詰ったのはある意味当然かもしれないが!!怒り心頭に発しているミストはそんなことはどうでもいい!そんな事よりもだ!!
「ティファ貴様!!どうやってあの結界から脱出した!!」
「み!!」
「・・・・なんだ?」
「ミストもっかい!もう一度何と言ったか言って下さい!!」
「・・・どうやって・・」
「違う!その前!前!!」
なんだ?私が一体何を言ったと言いたいのだあれは?
「・・・ティファきさ・・・・・・!!」
「ふへへ。ミストがとうとう私の事名前で呼んでくれました~。」
今まで小娘・化け物・非常識・良識無しとか言っていた人がとうとう私の名前きちんと呼んでくれたよ。
そうだよ、私はティファなんだよ!父さんと母さんが一生懸命付けてくれた名前はティファなんだよ。
「こほん、別にさして難しい事は・・」
「前置きは良い!!そもあのみょうちきりんな物体はなんだ!!」
「む!五ッ君と六ッ君に何の文句があるんですか!あの子達は私の闘気で作った式神の子達で五番目と六番目の子達です!
あの子達が突進してくる貴方の腕を片方ずつ掴んで投げ飛ばしている間に私が貴方の衣の内側に入って貴方の胴体にしがみついて脱出したんです。
煙幕はその目晦ましです。」
「・・・・そんな馬鹿げたことを・・・一歩間違えればお前は結界の餌食になって・・」
「賭けとしては成立しますよ。鬼岩城が壊れても貴方の確保を優先した大魔王が、こんなところで貴方の身を損ねる事は無いと踏んでいるので。」
本当にこの世界の大魔王とミストとキルは仲良しで強い絆で結ばれている。
その大魔王が、ミストを自分の結界で傷をつけるはずが無いと賭けてミストを表に叩き出して一緒に出させてもらったんだよね。
それにしても、ミストはあの子達の可愛さ分からんのかな?あんなに可愛いのに分からないだなんて勿体ない。
「ほら見て上げて下さい!自分達頑張りましたよと一生懸命腕を折り曲げて、出ない力こぶ作ろうとしてアピールしている所が可愛いでしょう。」
ティファの言葉につられるように、誰もが結界内に取り残される二つの物体を見れば、確かにティファの方に何度も腕を振ったり力こぶ作ろうとしてアピールしている。
だがあれが可愛いのかと、流石のダイも頬を掻いて困ってしまう。妹の感性が時折分からない。
「ポップ・・・あれって可愛いのかな?」
「・・・・自分で作ったから可愛さ一押しとか?」
「そうかしら?」
はい⁉
ダイとポップの言葉に異議を唱えたのは何とマァムであった!
「私もあの子達可愛いと思うけど・・・駄目?」
女子の感性が分からない!
さしもの娘の全てを全肯定しているバランパパも、あれが可愛いと思うのはいかがなものかと思っていた矢先にマァムが賛同するとは思ってもみなかった!
女子率の高いフローラの方を見れば、レオナとメルルも何かいいもの見ている目で見て時折あの二つに手を振っている・・・・・女子って変かも。
・・・・そもそもこの状況ダイ達含め誰も動かず変にまったりしている事態が変だと誰も突っ込まない事事態が異常であろう。
ティファが脱出した時点で保護しようと動くべきであったが、そこは矢張りティファ自身が自分で動く。
「さて、-この演目-に出るのにも少々飽きました故、幕引きとさせていただきましょう。
大魔王バーンに忠告を!捕虜となりても無下に扱われずに三食出して頂いた恩をただ今すぐに返しましょう!!
私は先程四度聖炎を-地面-に打ち込みました。
その場所はこの結界の丁度四隅!その聖炎の力は死んでおらずに地の底に潜り込み満遍なくこの結界内に浸食させてある!最後に私が頂点のこの位置より聖炎を最大限に打ち込めば呼応して破邪の力で持ってこの結界を破壊しましょう!
もしこの結界と貴方がリンクしているのであれば、結界を壊した時の威力がダイレクトにそちらに行くはず!!傷つくのがお嫌なら、直ぐに解くかダメージ覚悟で意地を通すかご随意に!!」
ゴォウ!!!
ミストを警戒しつつ忠告をしながらパンと両手を併せたティファの手から、黄金の聖炎が燃え上がる。
そんな暴挙を誰が許すかとミストが動こうとするが、身動きが叶わない!
結界の外はティファの見方が大勢いる。それは目に見える者達だけではなく、ミストが今いる崖の土の中から大勢の土の精霊達が一生懸命にミストの衣を押さえつけていた。
「ティファ頑張って!!」
「やっちゃえ!!!」
「抑えていられる今の内に!!!」
ピンチを脱して直ぐに友達が助けてくれるのは本当にありがたい。
ティファは友達に感謝しつつ黄金の炎をそのまま振り下ろそうとしたその時、パキィーンと何かが壊れるような金属音が鳴り響いた。
まさか
ティファが自分の髪の毛を一つ引っこ抜き、落としてみればそのまま髪の毛は何事も無く地面に着いた。
其れは、大魔王バーンが結界を解いた事に他ならない。
ティファは満面の笑みでそのまま自身も地面に降り立つ。
「ティファ貴様!!!」
その様子をミストは憎々し気に見る。主が万座の中で、其れも敵の目の前で譲歩させたように仕向けたティファが憎い。
おそらくダメージよりも、結界を張る意味が最早なくなり無駄を嫌う主がただ解いただけでもこの状況であれば解かざるおえなかったなどという判断を向こうにくれてやることになる!敵の士気が上がる要因を!!
なぜ貴様は主の好意を知ろうとしない!その身がいかに欲されていたかを知ろうとしない!!
矢張りあれは生かしては・・・・
「大魔王!!お詫びと謝罪です!」
・・・・・今度はなんだ?なんだというのだ!!
「実はですね!先程言った事は嘘です!!聖炎は確かに破邪の効果でこの結界を壊せたかもしれませんが、聖炎の力はそこまで長い事保つことは出来ません!この協力結界破壊しようとしたら物凄い労力使う事になったのでちょっとひっかけさせていただきました!
畏れ入って騙されてくれてありがとうございます!!」
・・・・・何とんでもない腹黒い事を物凄く良い笑顔で言っているのだあいつは!!
其れもパレスに直接自分の声が届けよとばかりに両手で口を覆って全力の声を上げて!!!
「このペテン師が!!!」
ミストの憎しみはティファの告白で霧散し、いつもの怒声に切り替わる。非常識娘がペテン師にクラスチェンジし怒り心頭に発したのだ。
見ろ!!お前の味方もお前のした事で全員どう対応していいのか分からず唖然として誰もお前を迎えに来ようとしていないぞ!!
・・・・おそらくそんな事をティファに言ってもそうなんですか、困りましねと頭を掻いて終わらせるのだろうと思うと頭が痛くなる。
その様子にダイも泣きたくなってきた。
ティファ、お願いだからあんまり奇行に走ったらだめだよとほろりと涙を流したくなる。
「さて、お嬢ちゃんが言った事は本当だと思いますかバーン様。」
「ふむ、先程の言葉が嘘であるという方か?それとも-本当-に聖炎の力はが結界に浸食していた方か?」
「どちらだと?」
「余にも本当の所は分からん。」
ティファが言った事のどちらが嘘か本当かバーンも測りかねる。別に自分で結界を解いたのはミスとの考えた通り張る意味合いが無いのでそうしただけ。
そしてミストとは違い敵の前で恥をかいたとも思っていない。羽虫にどう思われようが気にする事は無いのと一緒で、恥にもならない。
問題は、ティファの有している力がまだ隠されていた事の方が重要。
「聖炎の力に天族が古に持っていたという式神をも扱えたとは・・・あれは-先祖帰り-の見本よな。」
聖炎の力は太古の昔、神の加護を授けられた人間が扱っていた力であり、式神は天族の者。
ティファは正しく三界の調停者・竜の騎士が、連綿と繋がれる血脈の中で絶えてしまった力を有していた。
初代の竜の騎士は、ティファの使っていた力をも使っていた形跡があり、数代の後に絶え果てているのが古文書に記載されていた。
その詳細までは書かれておらず、故にティファが聖炎の力は嘘だと言った事自体も
其れすらがこちらを惑わし、いざという時の切り札に使う為の嘘である可能性もある。
あれはここが怖い。
-分からない-という事が一番恐ろしいとバーンは常々考えている。分からなければ対処する事が困難となる。
どちらが嘘なのかと悩まされる事もまた然りだ。
しかしティファよ。-分からない事-が敵を混乱させるように、それは-味方-と思っていた者達も牙を剥く事になると何故分からんのだ?
其方は本当に可愛い、賢い愚か者ぞ。
バーンの深い思惑を知らず、ティファは己が生きて戻れることで少々浮かれた。
ティファはキルから返された金のマジックリングから伊達眼鏡をかける。
此処よりは戦うティファは不要。これより先は料理人としての力を存分に振るいましょう。
己自身で自分の処刑演目に幕を引いたティファは、眼鏡を落とす事なく優雅にお辞儀をする。
この世界の命運をかけた戦いの開幕ベルの代わりとして。
それがどれほどー恐ろしい者ーとして他者に威として映るか、考えが及ばずに
今宵ここまで
主人公が聖炎の力を結界に浸食させたというのが嘘か本当か、出来ていたのかいないのかは読み手の皆様のご想像にお任せさせていただきます( ´艸`)
様々な思惑が絡み合いながらもこれにて処刑の章は終わりとなり、いよいよ両軍の大激突となります。