主様には困った事だ。凄い方であるのは間違いないのだが物凄く抜けていると言おうかご自身の御立場を軽視されている節がおありになる。
その最たるものが兄君達を命懸けで逃がした事である。あそこで自分が死んでも後の事は兄君達がお思いであろうが冗談ではない。
主様が死んでいればその時点で-この世界-は終わっている。
我等式達は、兄君様達が知りようもない主様の出生の秘を知らされている。
即ちこの世界を-漫画-なる書物にてバーン大戦の始まりから終わりまでご存知であったとの事。
この世界の神々に呼ばれて、其れであるならば少しでも多くの方達に幸せになって終わってほしいと数々の事をされている事を。
異世界とやらに興味はないが、我等は親・兄君様達が知らぬことを知っている優越感がない訳ではない。
特別な事を主様と共にしており、この世界をより良い形に導いていくという自負もまたあるのだが、当の主様にはその気が全くない。
-少しだけ-良くするだけだと小さくお考えになられる。
そして自分はさして凄い事もしておらず、知り合われた方と-程良い-関係を築けていると思うのが精々・・・・なんとも歯痒い事ぞ。
そしてご自身が表に出すぎないように腐心もされている・・・・物凄く目立ちたがりのように前に出るが、主様が今までしてきた事の一つでも表沙汰になればこの世界は引っくり返ろう。
敵の前で・王達の前で様々な事を言ったことなぞそれに比べれば些事に過ぎんと。
だが、主様が低き者に見られるのは我慢ならん!そして理解できぬからと奇異の目で見る事も自分達にとっては許し難い!
なればこそ、アメも主様の希望よりも少なく作ってきた。
最初から溢れるほど作ったとて、策の一つとして作ってくれたのですね。ありがとうございますの一言で終わらされるのが精々で、どれ程のありがたみを感じられようか。
其れよりも五百という数で驚かせ、感心される前に主様が少ないとご不満を持って私にこの場で作るように命じさせる。
貴重な砂糖を五百のアメでも消費しきれないほど持たせている財力を、そしていざとなれば主様は優しいだけではなく、配下にも厳しく当たる事がお出来になる指導力がおありなのだと見せする。
勇者の妹御という事で決して弱い立場ではないが、主様がこれより意見を通さねばならないのはカール女王フローラ陛下。
騎士王国として先の大戦でも活躍し、今またこの戦場の総指揮者であるフローラ陛下に物申して円滑に通すには主様を知らぬ者相手では主様の今の御立場では低すぎる。
仮に主様をよく知られるバウスン将軍が良い意見で御座いましょうとお口添えいただこうとも、其れでは意見のごり押しと周囲には映り、特に側近のカール騎士達が収まるまい。
人とは実に不合理で厄介この上ない。
目先の危機を前にしても、時に己の心情で動く輩がいる事を見せつけられてきた自分としてはうんざりとする生き物だ。
其れは魔族もそうであろうし、知恵を多少持つ者たちは皆同じか。
主様の力を認めさせる事こそが、この戦場を混乱なく戦わせるには一番。
理解は出来ぬが少なくとも戦いには有益だと思わせる事こそが肝要。
主様と自分の遣り取りを見て、不満顔をした主様のお顔をご覧になった時のフローラ陛下は何処かホッとした表情になられた。
それまでは自分達が分からないような事しかしなかったのが、案外年相応の所があるのだと理解しやすい面を見て安心されたところか。
本当に人とは厄介で面倒な。うちの主様の合理的・・・・でもないな。
あのお方は良くも悪くも大らかに過ぎる。
御味方相手にそれはいいのだが、敵相手には・・せめてお味方の前ではお控えいただきたいのだが・・・・無理であろうか。
忠臣フラメルの思いティファ知らずの当人は、今物凄い頭痛を感じている。
何でザムザさんがザムザさんのまんまでこの戦場に居ちゃっているのよ!!
意味分かんないって?この人モシャスしないでノヴァの救護部隊手伝ってるんだもん!!おかげでミストからの視線が痛いわ!!
「ミスト!言っておきますが私この人にこんな事してくださいと強要した覚えはないですからね!!気にせず目の前のロン・ベルクさんと存分に打ち合って敗けて下さい!!!」
「訳の分からんことを!ザムザ!貴様父のいる魔王軍に堂々と反旗を翻しおって!!」
もう全てのあり得ない事は自分のせいにされると、ある意味において自業自得なティファであるが、この件だけは違うとミストに反論するも矢張りミストに受け付けてもらえるはずもなく、更にはザムザ自身がとんでもない爆弾発言を高らかに発した。
「申し訳ございませんミストバーン様!私も魔界の現状を-よく知っている-一人ですが!一度は死んだ身!!非道と没義道と誹られようとも私を救ってくれた勇者一行の皆様の御味方を致します!!
戦場の隅で呆然とされているであろう父上!私の事はあの時死んで此処にいるのは別人と御諦めを!
でかした!よくぞ地上の者達の内部に潜り込んだと調略しようとされても無駄に御座います!
私の心は唯一つ!地上も魔界もどうでもよろしい!!只々勇者様達とティファさんの行く道のお供をするのみ!!」
その発言に、周囲とミストは凍りつき、とんでもない娘と評されたティファをもゲンナリとさせる。
・・・・・・何か魔界軍も地上軍が聞いても超微妙で物騒な決別宣言してるし・・
どっちもお互いの生き残り掛けて生存競争闘争真っただ中で、そんな事知らんとぶった切る人いるとは誰も思わんだろう・・・おかげでミストも絶句して動き止まって、相手してるロン・ベルクさんも察して仕方ないと他の敵相手し始めてら。
戦士の情け、一度は見逃すといったところかな。
・・・・これ聞いてるザボエラパパどう思うってるんだろう。あいつまだ姿見せてない・・・超魔ゾンビの前に首すっ飛ばしたかった・・・
「なんでよ!!!」
あり、私も物騒な事考えてる暇なく緊急事態発生か。
「どうしたのかちょっと見てくるねノヴァ!!」
「気を付けて!!」
ティファが戦場の真ん中に出れば、一斉に魔界の軍たちがティファ目掛けて撃ちかかる。
それも敵意ではなく、攻撃してくる全員が憂いを秘めた悲壮感を漂わせながら。
「ティファ様!!ご再考の程を!!」
「地上に心寄せたとて!最早大勢は決しているのですよ!」
「これ以上バーン様の心に背いては!我等本当に貴方様を!!!」
その気配と言われている内容に、さしものティファも困惑するしかなく、いっそ腹正しさを感じて内心でブチ切れた。
・・・・・だ!か!ら!!なんで敵の私に様つけたままなのこの人達!!見てよ!味方の人達も訝しんで!!中には疑惑の目を私に向けているじゃないのよ!!!
一体どうなってるのよ状況!!
ティファが腹正しく感じるこの状況を生み出した人物たちは、パレスの玉座の間にて満足げに成り行きを見守っている。
状況を生み出しているのはバーンの策謀、実行者はキル
決戦の朝方、パレスには震撼が奔った。
「成して嬢ちゃまを殺すのですだ!!」
「あのお方が何をしたというのです!」
「地上消滅のこの良き日に!!訳をお話しくださいキルバーン様!!!」
パレスの大広間にてティファの処刑演目が伝えられた時、その場にいたもの全員が騒いだ。
無理もない話で、ティファはずっと最初に会った時の挨拶は捕虜ですと言っているので通じていたと思っていたが、ガーゴイルのガァグランス同様誰も其れが本当だとは受けとっておらず、その後のティファの穏やかな接し方で矢張り高貴なるお方のお遊びだと笑っていたのだ。
バーンもミストもキルもパレスの魔王軍の心情を熟知しており、故にキルはこう伝えた。
「あの子は優しい。地上の命をも大事にするいい子なんだよ。でもね、バーン様のする事に刃向かう者は誰であっても許して置けないんだよ。分かってほしい。」
キルは何一つ-嘘-を言わずにティファの心の優しさが地上の者達を消す事を反対しているのだと言ってのけた。
ティファの本当の立場も言われない事で、その場にいた魔王軍全員が決意した。
早々に地上を潰す傍らで、ティファ様を反意させねばと。
キルにとっては策とはいえず、勘違いを助長させただけだがそれで充分。
魔王軍が敵であるはずの料理人に様を付けさせるだけでそれだけで。
その思惑を知ることなく、ティファは攻撃はせずに全てをスピードに振り分ける事でハイスピードて敵をすり抜け、舞台にいるダイ達の中に飛び込んでレオナに近づく。
レオナの顔が、可哀そうな程の青褪めている。
「・・・姫様・・」
「ティファ・・・どうしよう・・・・ミナカトールの力が!飛行物体に届かないの!!」
ミナカトールは神々が人間に与えたもうた破邪の中でも特別なもの。その力はすさまじく、故にこそミナカトールの破邪の柱は直ぐに大魔王の結界を突破し、五芒星を直ぐに完成すると思っていたレオナは打ちのめされた。
レオナのミナカトールの光の柱は、拒まれるように空中の中ほどで止まりそれ以上上げようにもとんでもない圧力が掛けられてくる!
「落ち着いて姫様。敵もそれほど死に物狂いなのです。時間はこちらで稼ぎます。
姫様もみんなも突破する事だけを第一に。姫様お口開けて、そう良い子です。飴食べて落ち着いて行き・・・・ヒュンケルにもあります!いいから姫の応援でもしなさい!!
ダイ兄達の分もあるから・・」
パニックになりかけたが、ティファのいつも通りの落ち着いている雰囲気と、塩飴の優しい味で落ち着いたレオナは結界突破に集中し、程なくしてあと一歩のところまで来れた。
落ち着いて行こう
レオナ達は落ち着いたが、ティファはそっと溜め息を飲み込む。
これは、長丁場になる。今の内に準備をしないといけない。
フラメルの以外の子達も出して手伝わせよう。即興で食べられるものを作らねば
今宵ここまで・・・
えぇ、何処にドラクエ要素どころかダイの大冒険らしい話があるのだという謀略合戦の態を要した回となりました(;^_^A