種族がなんだというのだろう?血の色?肌の色?見た目?寿命?
最後の物言うの中身が大切なんだよ
そう思って大きくなったティファが己の青い血に狼狽し、戦場においてはじめて醜態を晒している。
嘘だ!だって私の血は赤だ・・・母さんの血を色濃く受け継いだ人間よりの竜の騎士・・・そのはずだ!!
十二の年月の全てがひっくり返りそうなことに、ティファが恐慌をきたしたのだ。
其れもティファを宥めて包める者達はミナカトールの柱の維持と、敵からの総攻撃で全員が身動きを取れない状態であり、ティファはたった一人で恐怖に震え更なる恐怖を募らせる。
そして先程から自分の体の奥から異常な感覚が襲い掛かる。
やっと・・・
得体の知れない感覚が言葉を発せられるなら、歓喜の言葉を迸らせたろう。
漸く-生来の体-完全になれる。
生まれいづる時、竜の紋章を通しマザードラゴンに-封印-されていた本来の力と共に!!
ずっとずっとその時を待っていた!!
竜の紋章に魂を覆われ表に出る事を許されなかったティファの力が、本来あるべき姿に戻りたいとティファの体を駆け巡る。
どれ程本人が否定しようとも赦すことなく。
「あぁぁぁぁぁ!!!!」
空中で座り込み泣きながら否定の言葉を繰り返していたティファの声が悲鳴に代わり、-暗黒闘気-の柱が立ち昇る!
バーンとキルがずっと待ち焦がれ、ミストが願った光景は、ダイ達の魂の底まで震撼させる!
「ティファ!!!放してレオナ!!!」
「ダイ君駄目!!今は耐えて!!お願いだから耐えて頂戴!!!ミナカトールの柱の為にティファがどれほどの事をしてくれたのか忘れないで!!」
「けど姫さん・・・・」
「・・・・私達が動けば、マトリフ様と同じ通告されるわ・・・それにこれまでの事が水泡に帰すの!みんなも動かないで!!」
ミナカトールの柱を討ち捨てでも妹の下に、ティファの下に駆け付けようとしたダイ達の手綱をレオナは取り乱すことなく制御せんと奮闘する。
幾人の兵達の身がこの柱の為に犠牲になったか・・・中には死兵に恐怖しまともな生活を送れない程のトラウマを植え付けられてしまったか知れない。
そんな中で、ティファ一人の為に全てを台無しにする事は、勇者一行の者としても、全ての民達の上に立ち彼等を守らんとする王族の者としても許すわけにはいかないのだ!
ダイ・ポップ・ヒュンケル・マァムは今すぐにでもティファの下に駆け付けたいが、レオナの言い分が正しいだけに、死ぬほどの葛藤の果てに緩めかけた手をお互いに力強く握り締めなおす。
そうでもしなければかけたくなるこの身を抑える為に!
レオナは自分が言った言葉の残酷性を誰よりも熟知しているだけに心の中で泣いて謝るしか出来ない己の無力さを憎みすらした。
ティファ御免なさい・・・・いつだって私達を助けてくれているのに・・・ごめんなさい・・
ノヴァ達もまた駆け付けたいが敵の層の厚さに阻まれ上空に行けず、声を掛ける余力すらも奪われ屈辱の下、早く駆け付けたい時ばかりが焦る。
不意にティファの悲鳴が止まった
長く響いていた悲鳴の終止符が、戦闘中断の合図であるかのように敵味方両陣の誰もが、上空のティファを見上げさせた。
そこにいたのは-ティファ-であったが、自分達の知るティファではなかった。
真っ白い肌は人間にもいる。だが、雪花石膏の様、あるいは陶器の白磁の様に滑らかな白い肌を持つ者は人間にはいない。
銀色の髪を持つ者も人間にいる。だが、金色の瞳を持ちし人間は誰一人としていない。
金の瞳に生気無く、銀の髪をたなびくに任せ、白い肌をより青白くさせた顔で俯き座っているティファの姿に、叫び上げたのは父バランであった。
「ティファ!!!」
竜騎衆三人の力で一早く戦場をトベルーラで抜け出たバランは直ぐにティファを包もうと左腕を差し伸べたが、ミストがそれを赦す筈も無く蹴りの一つでバランを地に叩き返す。
かつてのバランであったれば、この身であれば瞬殺されていようが、右腕なく竜魔人化になれるかすら怪しいバランに討ち書く事は造作も無いと見せつける。
だが、落とされたとてバランは全身から力をかき集め、ミストに吠え上げた。
「ミストバーン!!貴様等魔王軍は娘に一体何をした!!!!ザボエラの人体実験の贄としたか!!!!」
返答次第では、息子を置いていく事になろうとも!自己犠牲呪文を使い、ミストバーンだけでも道連れにしてくれる!!!
吠え上げるバランの身の内に、久しく忘れていた、最愛の子供達のおかげで捨てられた憎しみの業火が駆け巡る。
あの時よりも強い憎しみに駆られた瞳でミストバーンを食い殺さんとするかのごとき咆哮に、ミストは笑止と嘲笑う。
「愚かな事を!小娘が・・・ティファがあの時点で死にかけていたのは貴様ら全員の知る所であろう!!その瀕死の者が!何故生きて捕虜の身になれたのかを誰一人として考えもしなかったのかうつけ共が!!」
「ッ!!それは・・・その子の生命力が!!」
「そうだ!いかにバーン様がティファを助けよとザボエラに命じたとて!!人間に近しい竜の騎士もどきであったれば死んでいただろう!!」
「助けた・・・死に瀕していたティファ様を貴様らが助けたとでも戯言を言う積りか貴様は!!!!」
ハーケンディストール!!
「・・・・愚かな・・」
ミストの言葉に偽りを言うなと激昂して乱れた心で放たれたラーハルトの渾身の必殺技をミストは易々と避け、憐みの目を向ける。
何も知らぬ無知なる事が、哀れと思うは初めてだが、教えてやろう!
「ティファよ・・」
「ふ!!」
敵意も戦意も無い、優しいと思えるほどのミストの声音に、ティファはびくりと体を震わせ目の前に来たミストを見上げる。
昨日の夕餉に、キルは-仕事-でティファの下を離れていたのである時のいる食堂と帰りの往復をしたのは自分であった。
不思議なものだ、殺してやりたいと思っていたこの娘を、ティファの事を憐れと思う日が来ようとは。
ラーハルトと同じく、いや、それ以上に自分の事に対して無知であることが更に憐れに思うのかもしれない。
「ティファ、お前は-ハイ=エントは-何者-が使えるのかを知っていたか?」
「あ・・・ハイ=エント・・・は・・古代精霊のハイ=・・・」
「そうではない。どうやれば取得するのかではなく、-誰-が習得できるかと聞いている。」
「誰って・・・・・-素養-あるものが・・・」
聞かれているティファも、周りもミストバーンが一体何を言いたいのかが分からず困惑をする。
ティファの分からないという態度に声も気配も荒げる事無く-教える-ようにゆっくりと説明をする。
其れは今までティファが、周囲にしてきた事。-分からない事の無い料理人のティファ -がしてきた事を、奇しくも敵の大幹部にされている不思議さに、ティファの狼狽が静まる結果となり、次に聞こえる言葉がより一層頭の中に染み渡った。
「ハイ=エントを使えるのは魔族のみだ。」
「・・・・・え?」
「魔族、其れもただの魔族ではない。お前は自分の力を疑問に思った事は無いのか?何故お前に出会うモンスター達が一様にお前に懐き、はてはお前に付き従うようになるのか、一度として考えたことがあるか?」
「それは・・・・ノヴァだって!ダイ兄だってみんなと仲良く・・」
「では今はこの場にはいない神獣ガルーダが、お前の許可なく二人を乗せた事はあるのか!」
「・・・・あ・・・・」
「ハイ=エントは人間も精霊も、まして天族には決して扱えん!!使えるのは魔族の、それもただの魔族にも使えん!!」
「そんなの!!そんなことどうしてあなたが断言できる!ハイ=エントを授けてくれた古代精霊のお爺ちゃんが教えてくれた!!
ハイ=エントを使えるものは最早私以外この世界にはいないって!私の前に契約を結べたのは数千・・・数千年も・・・・・」
ハイ=エントを使えもしないミストが何を知った様な事を言おうとしたティファの言葉が止まった。
ティファが契約した時、ハイ=エントを授けてくれた古代精霊がしみじみと言っていた。
最早この世の中でハイ=エントを授けれるとは。
最後に授けたのは、儂等にとっても随分と長い時の彼方・・・・・数千年以上も前の話であったとか。
精霊達の寿命をもってしても長いと言われる月日・・・・ハイ=エントを知っているようなミスト・・・・ミスト自身は魔法する使えない暗黒闘気の集合体だが・・その主は秘儀を使いて七千年の年月を渡っている・・・・まさか・・・そんな!!
「・・・・バーンが・・・・ハイティーン?」
「そうだ、漸く分かったか!ハイ=エントを使える魂を有した者をハイティーンと呼ばれる所以は、古い、其れこそ死滅した古代魔族語で位階高き魔族!魔王、大魔王級の方達を指し示す言葉だ!!」
「・・・・・・・・」
「分かるかティファ?お前は生まれながらにして魔王・大魔王になれる魂を有してこの世界に生まれたのだ。」
「嘘・・・ティファの・・・血は・・・・・」
「・・・お前の血は確かに赤かった。バーン様は其れは竜の紋章が、竜の騎士として天地魔界の三界者を体現させる為に、魔族の力を押し込めていたと推察成された。
お前が瀕死の身でダイ達を逃す寸前までは赤かった血が、ダイの左手にお前の紋章を譲渡瞬間に流れ出る血の色が青くなるのを確認されての推察だ。」
「あ・・・・あ・・・・」
「そうだ、-枷-の無くなったお前の生来の姿が元に戻っただけだ。」
血は青くなり、容姿すらも様変わりしたが、これが生来のティファの姿。
ティファの闘気がこれまで-白-であったのも、暗黒闘気を放出させんと阻んだ竜の紋章が干渉をし、結果黄金の闘気でもなく、世にも奇妙な、ティファ唯一人にしか出せない白い闘気と成り果てていただけの事。
今までの一つ一つの事象を指折る様に数えながら教えるミストの言葉こそが、真なる狙いと気が付かずにティファは聞き入ってしまった。
常なるティファであれば、敵から情報を教わる事は大半が何かしらの悪意ないし策略が潜んでいると瞬時に黙らせているのを、黙って聞いてしまった。
「お前が使いしラック=バイ=ラックは、ハイ=エントの中では最上位の禁術にも近しい力。
それを易々と扱えるティファ、お前は・・・」
ミストは一度言葉をきりティファと周囲を見回す。
誰一人として自分の言葉を遮ろうとしていない。
魔王軍はティファと自分の邪魔をする事をしないのは当然だが、ティファの味方すらがだ。
あるものは事態に追いつけず、そして自分がこれから何を言うのか見極めようとして。
これを聞いて、-お前達-は正気でいられるか?
慕いし者の本当の身分を知って尚これを慕えるか
己の本性を知った上で尚我等と戦えるか
「お前の魂は我が主、魔界の神たる大魔王バーン様と同等なのだ。」
今宵ここまで
ダイの大冒険の原作で、金色の瞳をした人が出なかったので-金色の瞳=魔族の証-という独自設定を書かせていただきました。
プロットではティファの魂は魔王クラス、其れも超一流魔王になった時のハドラーと同等で止めましたが、グラビ屯様の、封神演義ネタで闇ティファの分裂するのではと頂き、分裂は無理でももっと主人公の出生の秘密を驚くべきものにするべく大魔王バーン様と同等の位置に付ける事にしました。
次回は竜の騎士と人間の間に生まれた主人公が大魔王の魂を有して生まれたのか、それによりどのような混沌が巻き起こるのかの回です。