許せない!許さない!殺して肉体を灰にしてもなお飽き足らない!!幽体を壊し!魂を粉々にし、輪廻の輪から外すその時まであの男に対する怒りを治めてなぞやるものか!!
自分の言葉と気配をぶつけられても飄々とした気配をやめない上に、力強い視線で僕の宣告を受けて立ってきたあのいけ好かない男は必ず殺してやる!!
「さほどに許せぬか?」
怒りと憎悪に塗れ戻ってた荒れた気配を治めないキルに、バーンは静かに声を掛ける。
許せない?許せるはずが無い!!ミストと共に練りに練った罠を!あんな乱入者にお釈迦にされ!!お嬢ちゃんを手中に収めていた先代を刺し違えてでも取りたい!!
バーン様は何故そんな冷静に・・・・おやおや・・・
「許せないのは-全員-でしたか。」
見れば主は両腕を袖に仕舞い座っている。これは主が自分の激昂を内に納めておく為の癖。
魔界の神たる主が怒鳴ろうものならば、配下の不安の直結に繋がってしまう。
周りの混乱を避け、配下を不安にさせない為の配慮だが、相当激怒している時でなければ見られない光景。
ミストも気配が冷たかったし、他の子達も怒りに満ちていたな~。
「もしもあの男がパレスに一歩でも足を踏み入れて来たら、即座に首にして余の下に持ってまいれ。」
馬鹿な男だ。魔界の神様の逆鱗に触れて怒りを招いてしまったね。
念入りに素早く殺してやる!!
「先生!!!」
「アバン先生!!!」
「生きて・・・生きてたんなら俺達の前にさっさと来てくれよ先生!!!」
「先生!!!」
生きていたアバンを、ダイ達が囲むと同時に四方を囲む味方の円陣も組み上がる。
「有志兵全軍に告げる!!アバンの使徒達が帰還せし先代勇者との邂逅を、敵の手で邪魔などさせるな!!
我等が盾となり剣となりて、一切の雑音も彼らの耳に届けさせるな!!」
「「「「「「おう!!!!」」」」」
もう一人の若き勇者・殲滅の騎士団長ノヴァの号令一下の下、有志兵達は素早く隊伍を組みなおし迫りくるて来たとと大激突を食い止めに走り出す。
ティファ・・・・君と君達の邪魔などさせない。-誰-であろうと!!
隊伍を組み直す前に、ノヴァはフローラの下に集まったカール騎士達の下へと素早く足を運び、釘を刺しに行っている。
「あの子を嫌おうが何を思おうがそれは貴方方の自由だが、それを行動に移した瞬間凍らせる。」
冷たい瞳でたった一言を言い放ち立ち去るノヴァの背を、カール騎士達は先程の勢いを失い沈黙で答える。
格が違いすぎる。
長く軍務に仕えていたとはいえ、ハドラー大戦以降戦わなかったカール騎士達と、この大戦で激戦を繰り広げ常勝無敗を誇るノヴァとでは段どころではなく格すらが違っていた。
彼と料理人ティファが幼馴染だという情報を得ていたが、まさかここまでの感情を、ノヴァに表させるほどの深き仲とは知らなかった・・・知らない、分からない・・・・これこそが一番のお互いの相互不理解の原因であるのかもしれない。
凄まじい・・・・特にヒュンケルがべったりになってる。
「先生!ティファ!!もう俺の側を離れないでくれ!!!」
「そうだぜ!二人はもう俺達の側から一メートル以上離れたら駄目だ!!」
・・・ヒュンケルに続いて何言っちゃってるのでしょうポップ迄?
ダイ君?監禁しながら連れ歩く方法を真剣に討議して・・・・マァム?ひもで体縛ればとかレオナ姫・・・・其れに賛同しないでくださいね?
ティファを抱き抱えたままのアバンは些か困惑をしている。
黄泉路から戻ってきた時、冒険に向かって舟をこぐ三人を見送った後、破邪の洞窟で再修業しながら、百五十階層まで潜り込んで手当たり次第に契約をし、あの洞窟の目玉ともいうべき破邪の秘法を手に入れそろそろ上に行こうかと考え出てみればあ・・・・フローラ女王陛下の後姿を見て思わず隠れてしまった・・・・情けないですね~私は。
マァムもレオナ姫もいたのだから、死んでいた事に関してマァムに責められてでもそのまま彼女の前に出て一切を説明していれば・・・・言っても詮無い事ですが。
その後をこっそりと付けて秘密砦の外で-彼ら二人-に見つかって一人に物凄く殴られとっちめられて説教されて・・・・・まさかあの男からそんな事される日が来るとは思わなかったが、話を聞けば納得するしかない。
ティファさんがとんでも無い事を引き起こす傍らで、とんでもない重荷を自身に課し、雁字搦めの中で己を殺しながらダイ達を守ってきたと言われては。
戦場は真っ二つに割れている。
アバン達は戦闘の邪魔にならないように端により、ついでにカール騎士達とフローラにも目線で付いてくるように示し、ノヴァ達の盾を突破遷都する魔王軍との激突が続いている。
「さて、長話をしているわけにもいきませんので単刀直入に。そして詳細は全てが終わった後で話すので質問も無しです。」
アバンの言葉に、落ち着いたダイ達はコクリと頷く。
この素直さがまたいいのだと笑いたくなるのをアバンは必死に抑えながら、生きていた理由とその後の自信を鍛え直す修行をしていた事、そして破邪の洞窟で秘法を手に入れる事に成功したので参戦しに来たのだと。
「ティファさんにはカールのお守りの事を知っていたので、生きていたら鍛え直して帰って来て欲しいと言われたのですよ。」
そしてなぜ自分が戻ってきた事自体に驚いていないティファの事もきちんとフォロー説明する。
「・・・・・確かに・・・あの時の先生は小物のハドラーにも負けてたし・・」
「・・先生と居たら俺達あそこまで必死に戦えていたか分からないや・・」
「おや?あっさりと納得しますか?」
自分で言っておいてはなんだが、ポップ辺りが癇癪起こすかと思っていたのだが、妙に納得をしている。
それはダイ達も一緒で、些か拍子抜けしそうになる程だ。
「いやさ、ティファ強いのにさ、前半ほとんど力使ってなくって・・・・使われてたら魔王軍総攻撃来ただろうし、何より俺達ずっとティファに負んぶに抱っこしてたと思うんすよ。」
「そうだね。俺もそう思う。」
「ティファが後ろでドンと構えてくれてたから前に行けたのよね・・・ティファが前に出てたら私達はその後を追うだけしかしてないかも・・・」
ポップ、ダイ、マァムの目を瞠る成長ぶりに、思わず微笑む。罪と知りながらもそれでもティファに託したのは間違いではなかったのだと。
ヒュンケルも幼い頃の闇を抱えていたのが嘘のように消え去り、いの一番に自分に抱き着き何度も御免なさいと悔恨の言葉を繰り返す中、自分の事を、心の奥底では慕っていたのだと言ってくれたあの言葉だけでもティファに感謝したい。
自分では取り払うことが出来なかった彼の闇に、ひびを入れてくれたのは間違いなくティファであり、そしてダイ達が溶かしてくれたのが容易に想像がつく。
周りを見回せば、クロコダインとチウとメルルもティファの事を抱きしめたいと、そわそわしているのが丸分かりで。
砦の外からずっと彼等も見ていた。皆素晴らしい、自分の時とは違うが、同じくらい素敵な一行を築いてくれた弟子達が誇らしくなる。
だが、どうしても言わないといけないことがある。
「さて、私に関する事は此処迄ですがティファさん、あなたはもっと自重する事を覚えなさい。」
静かで、そして重い言葉がティファに降りかかる。
「破邪の洞窟を出て数日、砦の外からダイ君達を見ながら貴女の足跡を追ってみました。
素晴らしいの一言では片付かない程の善行を積んでいる傍らで、貴女が引き起こした騒動も耳にしています。」
敵の使者と気軽に話すは、敵の魔王と意思疎通して気心知れている様にし、そして先程も似たような事をしている。
「貴女が敵の事であっても苦境を思い悩む程、優しい心を持っているのは私も知っています。
しかしだからと言ってそれを表に出し過ぎるのです。味方から見れば、敵を思いすぎる貴方は裏切り者としか見られない。仮に上に立つ者がそうでないと分かっていても、全体の士気を下げるか不和を生み出す者であれば処断せざるを得なくなります。
貴女の言動が、味方に不和を生み出す程の影響力があるのをもっと知って行動すべきなのです!」
ただの子供のいう事であれば、戯言とに苦い顔をされて終わる事でも、ティファにはそれでは許されない。
敵味方双方に多大な影響を及ぼし、彼女の一挙手一投足が注目の的である中での、敵との内通を疑わせるような言動はなされるべきではないのだ。
その言葉はダイ達全員の耳に痛い。如何にティファの言葉に救われて来たからとは言え、だからと言ってあまりにもティファを好き勝手にさせ過ぎたきらいがあるのは自覚していた。
だがそれも自分達がフォローすればいいのだという甘い考えが、今日の不和を生み出したのだ。
「・・・・・すまねぇアバン・・」
じっと聞いていたマトリフが弱々しく謝罪する。
本来アバンが言った言葉は、自分が言わなければならなかった。如何にティファが優しいとはいえ、もっと自重と責任ある言動を促す様に諭すべきだったのだと。
アバンが生きていたのを知ってもさして驚かなかった。世の裏表全て知っている身としては、死人が生き返ったくらいでは驚かない。
驚かなかったがぶん殴ろうとはしたが。
心の弱い嬢ちゃんに負担を強いてきた事だけは許せなくて。それはロン・ベルクも同様であったが、察したティファが、泣きそうな顔でアバンにしがみついて守ろうとしたので、ロン・ベルクはアバンを馬鹿野郎と面罵した後戦場でミストを相手に戦っている。
まるで憂さ晴らしのようだが。
そしてマトリフは重症患者はノヴァの部隊が守っているのでダイ達共々アバンの話を聞いて色々と納得をし、そして自己嫌悪に陥る。
嬢ちゃんに・・・・ティファに厳しい事が言えなかった自分に。
「アバン!そんなバケモノに道理は通じんぞ!!」
「・・・・・セイン・・・貴方の非人間族に対する嫌悪は否定しませんが今の言葉は赦しませんよ?」
落ち込むティファとダイ達の姿を見てもどうとも思わない元・同僚の態度に、アバンは溜め息を吐く。
カール騎士団の中堅セイン。
彼は先の大戦で一族郎党をモンスター達によって滅ぼされているという経緯があり、彼がここまでの態度をとるのかを自分も知っている。
だが、ティファをバケモノ呼ばわりして赦しておけるかどうかはまた別問題である。
確かに今のティファの姿は-ちぐはぐ-としている。
肌も瞳の色も魔族だが、耳は丸いままで半魔とも言えない奇妙な容姿に。
だが、中身は心優しい子供である彼女をバケモノ呼びは赦さない。
フローラ様が止めて下さると期待したのですか・・・・・・この局面に来るまでのティファさんのアレコレですっかり自体がややこしくなりましたか。
今フローラ様が押さえつけても、効果はないでしょうし、何よりも彼女自身がすっかりティファさんを持て余して、どうしていいのか分からないのでしょう。
アバンとしても、ティファがフローラ達に頼んだ事やしてきた事に頭を痛める。
確かにティアの支援でカールにも恩はあろうが、いきなり宿敵も助けて下さいは無さすぎる・・・・・そんな事を理路整然に考え、正しい事であればと平然と受け入られる者など数名しか思い浮かばない。
一人はマトリフ、もう一人はブロキーナ老師、そしてティファだけ。
それについては後で説教するとして、カール騎士団にも言わなければならない事がある。
「我等ファブニールの竜を討ちし大英雄の末裔足るフローラ様の・・・」
「いい加減にしなさいセイン。」
カール騎士団達の不満を一身に背負い、何も言い返せないダイ達に向けて更に言い募ろうとするセインにアバンが止める。
「なんだと!お前迄・・・・いい加減にその悪竜を降ろせ!自分達で討てないのであれば俺達が・・・」
「そもそもが間違っているのですよセイン。」
「・・・・・なんだと?」
アバンの言葉を受けたセインは、抜剣しながらアバンに迫り問いただす。
「・・・俺の・・・・俺達の何が間違っているのだアバン?」
「ティファさんの言動の酷さを赦せとは言いません。それだけの事を彼女はしてきてしまったのですから。」
アバンもティファの悪いところは容赦なく突く。
それに気をよくしたセインは次の言葉に凍り付いた。
「貴方方が言っている-悍ましいファブニールの竜殺し-を理由に、ティファさんを処断しようとしているのが間違っていると言っているのです。」
今宵ここまで
オリキャラ出しましたが活躍の芽はありません。あくまでも前後編のみのオリキャラです。
余談ですがカール隠し砦でのお話で、こっそりと先生が出演していますので見つけてもらえたら嬉しい筆者です。