勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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ラック=バイ=ラック

-眼鏡-は無事に先生に返せた。あるべきものがある所にあるのはとっても落ち着く。

 

「どうしましたティファ?」

「ん?・・・・やっぱり眼鏡のある先生素敵だなって・・・」

「・・・・おや・・・」

 

・・・何でしょうか?はにかむティファにドキッとするとは・・・・はぁ、私もこんなかわいい娘が欲しいですね~。

朝起きればおはようございますと言って、おやすみなさいのキスをしてくれる・・・将来はお父さんのお嫁さんになるのと言ってくれる可愛い娘が!!

 

・・・・全てが終わったら・・・・・フローラ様は私の事を待っていてくれているでしょう・・・

 

 

「先生!!先生ってば!!」

「・・・ポップ?」

「何ぼうぅっとしてるんすか?」

「ああ・・・いや失敬失敬・・・はぁはは・・」

 

勝ちましょう、是が非でも

 

良くも悪くもティファは味方の士気を上げまくる。アバンも絶対の目標に向かってダッシュする事を決意する・・・・なんじゃそりゃとはご愛敬。

 

 

ちなみに士気上げまくりのティファは先程からそわそわし、何か問たげにポップを見つめる。

さっきまでの雰囲気では聞けなかったが、今なら聞いても怒られないかな?

 

「どうしたよティファ?・・・・パレスに侵入するメンバーなら今決めたぞ?」

「ふぇ!・・・そっちじゃないけどそれも気になる・・・・最初からメルルさん以外の一行全員?」

 

ベほちゃんも担当した人達の治療終えて、ヒュンケルの肩に帰ってきている。

 

「-ヤッホーティファ。今度は皆で帰るよ-」

 

ベほちゃんてどこかドライなんだよね。感動の再会とかよりも合理主義一貫してるって感じでそこが好きだ。

 

「ベほも入れて、ダイ・俺・ヒュンケル・マァムとラーハルトであの疫病神のトラップ粗方壊して、お前が貸してくれた通信鏡使って、頃合いに呼ぶよ。」

「え~!!・・・・ティファもトラップ壊したい。先生はキルに相当目つけられたから分かるけどどうして私もお残り?」

「・・・・トップ狙いはお前だろうが・・」

「・・・・・分かった、けど半分行ったら知らせてね。」

「おう、分かった。」

 

何時になく聞き分けの良いティファの頭をポップはわしゃわしゃと撫でまわす。

銀の髪だろうが、黒髪だろうが中身は可愛いティファであってそれ以外の何物でもないとばかりに。

 

ただ一つ、そろそろ着替えさせたい。

白い服は、ティファの青い血をことさら強調させる為の演出の服で、さっさと着替えさせたいのだが・・・

 

「あのねポップ兄、聞きたいことがあるの。」

「ん?どうした?」

「ハドラー達どこにいるの?」

 

その言葉に、アバン以外の全員がぴしりと固まり、ティファもそこから察してしまったと顔から冷や汗を流す。

先生に魔王ハドラー助けてますを言ってなかった!!!

 

「こほん、ティファ、其れと皆さんも・・・実は私ここ数日カールの隠し砦の隅っこでお世話になっていました。」

 

・・・・・ええええええ!!!!!!

 

まさかのアバンのカミングアウトに、ティファまでも凍り付いている隙に、アバンは全部説明した。

 

奇妙な服を着たブロキーナ老師とハドラーに見つかり、ハドラーには本気でボコられて説教をされた事を。

 

大方の察しはつく!!弱いお前があの冒険に付いて行ってもダイ達は中途半端な成長しかしなかっただろう!!だがな!全ての責任の重しをティファに背負わせるとは貴様最低だぞ!!!!

 

デルムリン島で再会したアバンの弱さにがっかりとしたが、死に掛けが生き返って後も弟子達のフォローを何もせず、全てティファに丸投げした事が一番許せなかった。

ブロキーナの様にふざけた格好とまでは言わんが、モシャスでそれとなく一行のフォローをする事くらいは出来た筈だ。

己の修行も大事なのは分かる。何せ本当にあの時のアバンは鈍ら以下だったが、だからと言えやり方が酷すぎた。

如何に強かろうが所詮は・・・否!それ以上に心も精神も幼く、世間の何たるかも知らないティファに、アバンの代わりにダイ達を託した事が罪だと断じられた。

 

お前は弱くなった事でその目すらも曇ったのだと言われた時、アバンはどれ程後悔しても尽くせぬ思いに打ちのめされた。

弱い事は罪だと、弱ければ何も守れないと散々偉そうに弟子達に言ってきた者がこの体たらくで、弟子達にもティファにも合わす顔が無いと。

 

打ちのめされた自分を、ハドラーは溜め息を吐きながら手を取って立たせてくれた。

 

二度と-アレ-を見誤るなと。

 

「・・・・・そんな事が・・」

「はい、そして私はティファの足跡と評判を全て各国を回って調べ尽くしてきたのです。」

 

二度とティファを見誤らず、足りない所を教え導けるように・・・・足りないものだらけで驚いたが、ティファはそれ以上の素晴らしさがある。

追々と教えて行けばいい。

 

「・・・・其れで、先生にそれ言った後はハドラーどうしたんですか?」

「こほん、私が言いましょうティファさん。」

「あ、フローラ様。」

「ふふふ、間近にいたのに挨拶も出来ない薄情者は放って置いて、きちんと説明しますね。」

「み!!!」

 

・・・・・怖い!フローラ様夜叉になった!!!・・・・・先生頑張れ・・

 

あらゆる意味でアバンに切れたフローラ様、夜叉になろうともティファには優しく教える。

凍りつき、別の意味で沈んだアバンをうっちゃって。

 

「各地に巨大な柱が落とされたのです。」

 

フローラはティファが知っているかどうかは確認せず、話を進める方向で説明を始める。

 

遣り取りの時間も惜しく、早くダイ達をパレスに突入させる為だが、ティファにとってはありがたかった。

 

地霊がいないので柱が落とされてもいつも通りにしていたが、それを言ったら角が立つ事請負い。

 

黙って聞こうとしたその瞬間、悲鳴がティファの耳に届いた。

 

 

神子様助けて!!!

神子様!!死んじゃう!!!!銀色の金属の人達と銀色の髪の魔族が死んじゃうよ!

赤い髪の魔族と物凄く嫌な気配出したちびの魔族が銀髪の魔族の人殺しちゃうよ!!

赤い髪の魔族が銀色の金属の人を茨で雁字搦めにして!!

他の銀色の金属の人達も!!

 

 

・・・・この声!!!

 

死んじゃう!!!助けて!皆柱を守っている奴らに殺されちゃうよ!!

 

 

 

「あ・・・・・アル・・・シル・・」

「・・・ティファさん?」

「どうして柱に!!!」

「ティファさん!!」

「おいティファ!!!」

 

寸前まで大人しく笑っていた娘が、突如として厳しい顔になれば誰でも驚く。

だがティファは掛けられる声を全て無視し、戦場の一番端を目指して直走った。

 

あの声は!今の声は柱に張り付いている精霊王達の従者の声だ!!死んじゃうって!不味い!!広い場所・・・・あそこがいい!!!

 

「ノヴァ!!!今から私がする事-誰-にも邪魔させないで!!!!」

「・・・ティファ・・・・了・・解!!!!」

 

バキィン!!

 

氷の勇者の氷の吹雪が敵の一軍を凍り付かせ、ティファと敵の間に降り立つ。

 

「邪魔などさせない!!ティファのしたい事して!!!」

「うん!!!!!」

 

突然の事に、敵味方双方が何事かと訝しむ。それはパレスの玉座の間にいるバーンと、罠補強を全て終えて戻ってきたキルもまた何事かと注視する。

 

それ程までにティファの顔に焦り待見てとれる。そして思わぬことをティファがした事で誰もがティファに釘付けになった。

 

ズシャァ!!!

 

何とティファは。己の両腕に爪を立て、青い血を大量に流し出す。

 

「ティファ!!」

「あいつ!!何を・・・・」

 

「繋がりし道よ!」

 

ダイ達がティファの行動に目を瞠り、飛び出す矢先に詠唱が聞こえた。

 

それに合わせ、ティファの青い血がゆらゆらと宙に漂い、其れは徐々に形を成してきた

 

「此方と彼方を結べ!!!」

 

青い血が空中に魔法陣を描きだす。其の魔方陣にマトリフ達は見覚えがあった。ダイ達を逃がしたあの魔法陣が、あの時とは日にもならない程の巨大さで空中に描かれて行く!!

 

「緑の蔦よ!茨の弦よ!!我の虜となりし全てのものを!我が眼前へと引き連れよ!」

 

ラック=バイ=ラックには二つの使い方がある。

 

一つは対象者をどこかに送る事

そしてもう一つが、対象者を自分の下に連れて来る事。

 

其れはバーンのラド=エイワーズと同じ性質だが、距離が違う。ティファのラック=バイ=ラックが、ミストが言った禁術に近いと言わしめるその理由は、術者の力量次第では無制限の人数と距離を移動させられるバグにも近い技。

言ってしまえばマーキングしてある対象者を天界から魔界へと行き来させられる程の、まさに無制限の技。

ただそれだけに、術者にかかるリスクも高い。

 

身の丈以上の力は身を亡ぼす

 

まさにそれを地で行く究極ともいえる転移方法を、ティファは全力で行っている。

 

己の血を媒介にする事で術の底上げをし、-全員-を一気に呼び戻す!!

 

「ラック=バイ=ラック!!!!」

 

物がつながる轟音と共に陣は完成したが、呼び寄せた者達は直ぐには陣から現れなかった。

 

当然か、一番遠いのはパプニカのバルジ島。だからといって!!

 

「おおおお!!」

 

手繰り寄せんとティファが両の腕に魔力を注いだ時、反動で体の皮膚が裂け始める。

 

「ティファ!!」

 

全てが尋常でないティファの下に、ダイ達が駆け寄りために行こうと走りだす。

あんな事をしてはティファが死んでしまう!!

 

しかし、彼らの前に氷の壁が立ちはだかり邪魔をした!

 

「ノヴァ!!」

「誰にも邪魔はさせない!!ティファの邪魔はさせない!!」

「ノヴァ!!」

 

ダイの叫びにもノヴァは動じずに黙ってティファとその他のもの達の間に立ち続ける。

 

ティファの言う事こそが、己にとって何よりも優勢すべき事だから。

 

バチ!!バシィ!!

 

・・血が溢れ出るな・・コンチクショウが!!

 

「散々私を翻弄した大魔王の魂とやらはこの程度か!!こんな事も成し遂げられないほどにか弱いものか!!!私の肉体と魂でありたいのならば!!この程度の事で音をあげるな!!!!」

 

まさしく無茶苦茶な言葉で、道理なぞ無視した言葉を己の肉体に対して怒鳴り叱咤する。

 

散々自分と周りを振り回しておいて、術の一つも成就させられないとは情けないと、それに見合った働きをしろと叱咤し、血が噴き出るのもお構いなく魔力を陣に注ぎ込むティファの顔は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「禁術とまで名を上げしラック=バイ=ラックよ!!偽りなきその力私に示してみせろ!!!!」




今宵ここまで
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