其れは本当にきりきりで間に合った。
後ほんの少しでも遅ければ、彼等の誰かは死んでいた。
巨大な緑の陣から出て来て者達を一瞥したティファは、ダブル・エンチャントをえいしょうする。
これはいわば片手づつで別の魔法を同時に発動させると同じ原理だが、似て非なるもの。
本来高位のハイ=エントを権能させるのは一つずつ。やれば肉体が持たないが、そんな事を言っている場合ではない!!
「我は守り人!守りの担い手!!我が加護の下、愛し児達全てを揺り籠の淹れるが如く守り抜け!!」
ジ=アザーズ!!!!
陣から出て来てたヒム達はボロボロであった。
アルビナスは茨の蔓に全身を縛られ首を堕とされる寸前であり、フェンブレンは闘魔傀儡掌の糸で絡めとられ、ザンバーアックスで核を刺し貫かれる寸前であり、シグマもまた左腕と右足をに捩じり取られ、そして・・・
「ハドラー!!!!」
最後に陣から出現をしたハドラーもまた酷い火傷を負って陣から抜け出ても受け身を取らずに、何故か-ビースト君-に抱えられ墜落している。
超魔生物として耐火性が飛躍的に上がったハドラーがあそこまで!!
陣から出てきたのはハドラーと親衛隊の他に、彼等をここまで追い込んだ者達も追撃してきた。
メローネがアルビナスを、ダブルドーラとベグロムがシグマを、デスカーレとザングレイがフェンブレンを、ブレーガンがヒムを追撃し止めを刺そうとした瞬間に、ティファの結界が親衛隊全員を守り、ティファは落ちゆくハドラーの下に直走った。
「ハドラー!!!!」
ダン!ダン!!!」
結界を多重で使うリスクで皮膚が破け血が出るのも構わず、雪白を顕現させ
「ガルヴァス!!!!」
暗黒衝撃波を繰り出そうとしたガルヴァスに斬りかかる。
当然いとも簡単に避けられるのを承知で。斬りかかりすれ違いながらハドラーを救出する事こそが最大の目的。意識喪失しているハドラーを助けること以外頭にない。
其れはガルヴァスも見越した事であり、すれ違いざまにティファに耳打ちをした。
「銀の髪に金の瞳がよくお似合いですぞ-ティファ様-」
「ッ!!!!」
揶揄するようなその声の気配で全てを察した。
此処にいる魔王軍全員が自分の本性を全て知っていた事を・・・でも!それでも!!
それでもいい!なんだって!その力がハドラーを助けられるならば!!!
心を決め動揺しないティファに、ガルヴァスは一瞬目を見開き、そして追撃をせず見送った。
動揺しないのであれば今技を放っても結界とやらで守られるだけだと。
事態を察したダイ達も、それぞれ駆け出し技を放ちながら落ちてくるヒム達の救出に向かう。
その技で敵の一人でも倒せればと目論んだが、ヒュンケルのブラッディ―スクライドを受けたダブルドーラは分裂しすり抜けさせ、ダイの大地斬をデスカーレの暗黒衝撃波が威力を殺し、他の地上軍の援護が始まる前にメローネの鞭が振るわれる打ち据えられた地面から茨の弦が伸び、混乱したところをブレーガンの氷炎の三節根が猛威を振るい、そしてポップ最大の得意技のメラゾーマが・・・
「き~ひっひっひっひっひっひひ!!魔法など、我が糧でしかないわ!!」
「あの野郎!!!」
ガルヴァスに向かって撃った自身の魔法が、割り込んできた敵を中心に収束されていくのもさる事ながら!ダイ達一行の中で中身が腐りはて真っ先に倒すべき敵の一人、ザボエラである事にポップが反応する。
だが、ザボエラ自身に構う余裕がないとポップはすぐさま思い知る。
「喰らえ!マホプラウス!!」
其れは本来大人数に自分に魔法を撃たせ、威力を収束させた魔法を自身の魔法も上乗せして放つザボエラだけのオリジナル技。
これをしハドラーはガルヴァスとザボエラのタッグに敗北したのだ。
奥の手を如何なる時も最後までとっておくザボエラの用心深さで、ハドラーもその技を知らず渾身のベギラゴンをガルヴァスに向けて放ち、収束され返されたのを直撃していまったが故に。
放つ人数が多ければ多いほど威力が増すが、大魔導士の後継者たるポップの一撃であれば充分である!
「ポップ!!!」
「オオオオオ!!!!」
ヒィィィインン!!!
ズガァァァァン!!!
大魔王バーンのカイザーフェニックスにも届くメラゾーマがポップに直撃する前に、バランは素早く魔法とポップの間に滑り込み、左腕でポップを包み込みながら額の紋章を全開にした。
「バラン!!・・・・・助かった・・」
「怪我は・・・ないか。」
「父さん!!ポップ!!!」
片腕が無いとはいえバランの竜闘気は健在であり、魔法であればその威力を殺すことが出来る。
バランは躊躇いも無く、我が子達を守る時と同じ様にポップを守った。
この場にいる味方全員を守り抜く事を誓ったのだから。
「チぃ!命冥加な・・・・」
ガルヴァスが側に居るという安心感で、ザボエラは敵から注目されても平然としている。
バーンからはガルヴァスのアシストを命じられ、取り入るチャンスとここ一番の働きを・・・
「ハドラー様!!!ティファさん!!早くこちらにハドラー様を!!!!」
・・・・・・ザムザ?
「ザムザ!!!!」
「・・・・父上・・・」
ボロボロのハドラーを見た時、ザムザの心臓は早鐘を打ちながらも頭の中で素早くハドラーに最適解の治療を模索しながらティファに早く来るように促した矢先、父に身釣りバツの悪い思いがした。
だが、不思議な事にそれ以上の感情を父に持つことは無かった。それよりもハドラー様の治療が優先・・・・いつの間にか本当に、自分は父に対する愛情は消えた薄情な息子になったのだろうか?
手柄を頭に描いていたザボエラは混乱をした。あれは死んだ・・・
「ティファ!!どういう事じゃ!!!!」
息子にハドラーを託し、雪白を肩に担いで自分達を睨みつけるティファに詰問する。
息子は・・・・ザムザはあの時!!
「・・・・私はザムザさんが死んだとは一言も貴方に言ってない。」
「嘘をつけ!お前は儂にザムザの言葉を!!」
「私は-超魔生物として灰になる前-のザムザさんの言葉だと言った。ザムザさんの今際の際(いまわのきわ)の言葉とは一言も言っていない。」
「あ!!・・・この!貴様は詐欺師か何かか!!!舌先三寸で他を丸め込み!!儂と同じ様な同類・・・」
「おやめください父上!!」
「ザムザ!!・・・・お前はどうして生きている!!生きているならばなぜ儂の・・」
「私はダイ君達の光の心に救われたのです!!争い他者を蹴落とし生きて行くしかないのだと思っていた私の心を彼等が救ってくれたのです!!その時より父上・・いえ!ザボエラの息子ザムザは確かに死んだのです!!今ここにいるは勇者一行を助ける変わり者の魔族が居るのみ!!!」
悲しみに震え、其れでもはっきりとザムザはザボエラに訣別宣言をした。
其れは以降は親とも事も思わず戦い合うと宣言した悲痛なる言葉であり、あのザボエラを愕然とさせるには十分であった。
あれは・・・・儂の、-儂だけ-の駒・・・・
自分を嘲笑う者が多い中で、唯一自分のいう事だけを聞く-便利な駒-・・・たかが駒が離れただけ・・・・なのに・・・・
そのままだと貴方は一人ボッチで死ぬ羽目になる
死ぬ瞬間誰も思い浮かばなくなるよ、それでいいの?
・・・るさい!五月蠅い五月蠅い五月蠅い!!!!!
「この愚か者が!!!大勢も決しようとする事も分からぬ愚か者の駒など!!こちらから願い下げじゃ!!!
ズタボロになって死に掛けようとも助けるものか!!!!」
「何という事を!!」
「貴様!!!実の息子に向かって言う言葉かそれは!!!」
「き~ひっひっひっひっひっひひ!!甘い奴等じゃ!敵であったものを庇う愚か者たちが何を言おうが痛くも痒くもないわ!!」
悪口雑言を吐き散らし、地上軍の罵声にも痛痒を感じないザボエラを、ザムザは最早父の魂を救う術はないと嘆き、怒れるダイ達をアバンと共に宥めながらハドラーを治療し、ひょこひょこと近づいてきた-ビースト君-にも誰にも見られないように飲む様にと-ビースト君-こと老師に回復万能薬を手渡す。
柱をどうにかした方が良いのではないかと、決戦前夜に話し合われ、老師とハドラーがタッグを組み、他の四本は親衛隊達がそれぞれ言ったのだが、柱を守護していた六大将軍たちに返り討ちに遭い、ブロキーナ老師は己の技がもう通じないと悄然としている。
「・・・老師様、きっと出番は来ます。気を落とさずに。」
「うん・・・そうだね・・・・もうひと頑張りしないとね。」
今まさに父親と訣別し、苦しむザムザに慰められたブロキーナは、己を奮い立たせ、ザムザもまたブロキーナの気遣いを感じて微笑む。
その光景すらがザボエラを苛つかせる。
そんな中でティファだけが、自分に憐みの眼差しを向けているのに微塵も気がつかずに
今宵ここまで
着々と進むザボエラ破滅フラグ
そして強化された六大将軍の前に、ハドラー達は惨敗しました。