勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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・・・・相も変わらず戦闘描写にセンス無し(他はセンスあるとは言っていない)


とっておきをくれてやる

・・・・・あれはもう放って置こう。死ぬも死なないももう知らん。

 

珍しい事だけど、ザボエラの事はもう運命という奴に任せよう・・・それよりもだ、上空で待機しているガルヴァスと、その周りに集まった五人が私の事見下してるみたいに見ているのがむかつく。

 

本当に珍しい事だが、ティファはザボエラに対する怒り全てが霧散していた。許さないと一度敵視すれば、滅多な事では気持ちが変わらない程のしつこさがあるティファだが、それよりも自分の事をニヤニヤとしながら見ている六大将軍の方が今は最優先だ。

 

・・・何を勝ち誇った顔してるんだあの五人?

 

ガルヴァスは相変わらず自分を警戒し見ている分には分かる。私敵で大魔王の邪魔ものだし。

 

それに比べて、特にあの青いガーゴイルが特ににやけている理由分かんないし・・

 

「お前は豪魔軍師ガルヴァス!!」

「お前達影の軍団が何故表に出て来た!!!」

 

無論元魔王軍のヒュンケルとクロコダインはその存在を知っている。自分達の手の届かない地区を担当すると一度だけ顔合わせし、そして二度とは交わらない筈の影達が・・

 

 

「はん!裏切り者たちが随分と馴れ馴れしく口を利くじゃないか!!」

 

空中でぴしりと茨の鞭を振るって小気味よい音を立てながら、妖魔将軍メネロがヒュンケル達を嘲笑い、ザングレイたちも似たように冷笑を浮かべ、常に感情を表に出さないデスカーレですらがはなで笑っている。

 

ガルヴァス以外の全員が浮かれているせいで。

 

超魔生物としての力の一端を移植された彼等は、飛躍的に力が向上し、何よりも防御力が高まった事でハドラーの親衛隊達に勝ったことが彼等の増長に拍車を掛けている。

 

クィーンアルビナスの相手をしたメネロは、アルビナスの最終形態前の必殺技・ニードルサウザンドの猛攻の中をいとも容易く突破しながら、攻撃の為動きを止めているアルビナスを、茨の鞭で地面を叩いて発生させる茨の弦で雁字搦めにして捕えた。

 

シグマの起動力も、ランスで突いたダブルドーラが分裂した事に驚いたところを二つに分かれた手で足と腕を捩じり切られ挟み込まれ、ベグロムの剣が迫り、全身刃で捉えられないフェンブレンを、強化された暗黒闘気の糸でデスカーレが捕えブレーガンが止めを刺す寸前であった。

 

格闘タイプを自負していたヒムもまた、ブレーガンの三節根相手に苦戦し、自分の最大限の力を込めて放ったヒートナックルもヒートシュートも相手に当てられたがさしたるダメージにはならず、逆に威力を利用されたカウンター攻撃で体にヒビを入れられ右腕が切れ掛けている。

 

表の六団長達にも匹敵するとうわさが流れたヒム達に圧勝した事が、彼等の長年の鬱積を晴らすには十分であり、口を軽くするにも十分であった。

 

 

「噂の魔軍司令官様の親衛隊達も大したことなかったな!」

 

一番鬱積が溜まっているベグロムが口火を切った。

長い間、どこにあの凄き男バランの要素があるのだと味方から言い続けられていた彼にも言い分がある。

 

自分であいつの影の志願をした訳ではない!ただガルヴァス様と大魔王様に命を受けたからそうなったのだと。

しかし日陰者であり、功も何もない彼の言葉を聞く者がいる筈も無く、鬱積と不満だけが溜まり、今日という日をずっと待ち続けて来た!!自分だとて強いのだと!!力があるのだと誇示する日をずっと!!

 

「・・・・ヒム達が弱いと?」

 

その言いざまに、一番にカチンときたのがティファであった。

ティファは、特にヒムに一目置いている。そのハドラーに対する熱い忠誠心を、純粋に主を慕う熱い思いを、間違った事をすれば敵にだとて謝罪できる清き心を。

其れが一度勝ったくらいで浮かれ騒ぐ者達が鬱陶しい事この上なく、そして不愉快だ!!

 

「へ、大魔王様のお慈悲で生かされただけの弱っちいちんちくりんがなんか文句あんのかよ?」

「・・・・・」

「お前みたいに弱い奴に尻尾振ってるヒュンケルだのと言う奴もたかが知れてんだろ?」

「・・・・ベグロム・・」

「そんでお前如きに敗れた竜騎衆のガルダンディーとボラホーンてやつも大したこと・・・」

「ベグロム!!!」

「何ですかガルヴァス様!俺達がもっと早く表に出てれば!あんなちび達に好き勝手させなかったでしょうに!!」

 

流石にベグロムの言葉が過ぎる止めたガルヴァスに、ベグロムは不満の声を上げる。

陰にいる中、特にベグロムは情報収集を苦手とし、弱っている時のティファしか知らない為に、吐かれた大言壮語に、ダイ達は怒りに震え、ティファを侮るなと怒鳴る前に笑い声が響き渡った。

 

「クックック・・・ハッハッハッハッハッ!!!!」

 

腹を抱える様にして笑うは、誰でもない、侮られ馬鹿にされたティファ本人であった。

 

涙迄流して笑い転げる様に、怒りを覚えた者達はポカンとし、言葉を吐いたベグロムはわなわなと震え怒鳴り上げた。

 

「何がおかしいんだよガキが!!弱いお前迄俺を馬鹿にしてんのか⁉」

 

自分が偉そうを言っていると嘲笑しているのか!!

 

その言葉に、ティファは益々おかしくなるが、なんとか深呼吸をして笑いを一旦収める。

 

気が付いていないのかあの馬鹿は?私の目が笑っていない事を?そしてお前の言葉でお前の味方であるはずの者が不機嫌を通り越して不快になっているのを?

 

「おかしいさ浮かれたお前が。」

「何だと⁉弱いお前が・・」

「弱いとお前は私の事をそう評するが、その根拠はなんだ?たかだか一度弱った私に遭った位で、私の-戦歴-を知らない無知蒙昧のお前が、勘違い端ただしい事を叫んでいる様が滑稽だと言ってるんだよ。」

「なん!!」

「お前気が付いていないのか?」

「な・・・何がだよ!!」

 

雰囲気が一変したティファの、笑っていない瞳から溢れる闘志に睨みつけられたベグロムは、ティファの全身から立ち昇る闘気にも気が付き、此処に至って漸くティファの本当の実力に気が付いたが、何もかもが遅すぎた。

 

ベグロムは怒らせすぎたのだ、あらゆる者達を。

 

「私を弱いと言い、その私を慕ってくれているヒュンケル達も弱いと?」

「そ・・・そうだ!!!お前達と戦って無事だった親衛隊達は現に俺達に敗れたんだだからな!!」

 

事ここに至っても虚勢を張るベグロムを、ガルヴァスが黙らせようとしたが思う遅く、ニンマリと笑ったティファが先に言葉を発した。

 

「では弱い私によって、勇者一行と魔王ハドラー達を取り逃がす羽目になった大魔王も弱いと言いたいのだなお前は。」

「・・・・・・・は?」

「黙れティファ!!バーン様このベグロムのおろ・・・」

「周りを見てみろベグロムとやら!!ミストが先程の言葉でお前が不快だと気配が言っているぞ!!

成る程確かに私は弱い!大地を割る力も、巨大な城を割る力とてなく、魔王にも勝てなかった者だが自負はある!!

今日この決戦の中核の担い手たる勇者一行全員を丸ごと無傷で逃がした自負が!!

そして弱い私にまんまと出し抜かれた大魔王達は!お前の言葉を借りるのならば弱く大したことは無いのであろうよ!!!

そう言い放ったお前を!大魔王の忠臣たる影の参謀殿が果たして許してくれると思うのか?」

 

ガルヴァスの言葉を大音声で遮り、口角を吊り上げ冷笑を浮かべながらティファはベグロムの処刑宣言書を読み上げていく。

 

影の参謀が愚か者の軽率な発言を赦すかなど、答えは否と決まっている。

 

先程ティファが言った通り、この最終決戦での敵の戦力増強は忌々しい事にティファのせい。

だが、そのティファを貶める事は即ち、ティファに出し抜かれてしまった主と自分達を貶めている事に他ならない。

 

仮にその事に気が付かずにした発言であったのならば、それはそれで軽率で無能なる者をミストは何よりも嫌う。そんな者は主の害悪にしかならないと。

 

ティファの言葉で自分を見てくるベグロムに、冷たい一瞥をもって対応する。

今は戦の最中なのを考慮し、この戦終われば、あの愚者を抹殺する。

・・・・いや、この魔王軍の中で、ティファを貶す者などあそこにいる六人しかおらず、敵に奔られてもなおティファを慕う残りの者達が大半のこの状況であれば・・ガルヴァスの戦力が抜けるのは痛いので我慢しよう。

 

いずれにしても、ベグロムの運命は確定した。

 

遥か上空のパレスの玉座に座る人物の胸三寸で。

 

「・・・・あの愚か者の首を・・・」

「今刎ねますかバーン様?」

「・・・・・戦後に灰も残さず消せ。」

「御意に。」

 

大魔王と死神の言葉で決定された。

 

バーンは自分の事はいいが、忠臣二人を知らず貶めたベグロムなぞ、生かしてやる価値はなく、其れは影と死神にとっても同じで、主を貶めた愚者など味方でも何でもないのだから。

 

 

 

 

 

 

ガルヴァスは苦い顔をし、他の者達にはもう余計な事を言うなと釘を刺し掛けた時、矢張りティファが動いた。

 

ティファは静かに怒っていた。自身が弱いと言われるのはどうでもいい。先に述べた通りだからだ。

 

しかし!!ヒュンケル達を巻き込み!あまつガルダンディーとボラホーンを貶したことは許さない!!!

そして!自分が弱いと言われ馬鹿にさせるは、ひいては自分と戦う事を望んでくれたハドラーをも遠回しに馬鹿にされたのだと思い至り、ティファの心が静かに怒りに震えていた。

 

「・・・・ダイ兄、ポップ兄、技一つ、それ以上はしないからあのベグロムっていう奴と、他に付いてくる奴に技放っていい?」

 

静かに静かに尋ねるティファに、ポップは素早く算段する。

 

ティファは約束を守る。技一つであれば、それが成功しようとも失敗しようとも追撃はしまい。

 

後詰めにダイとヒュンケルを・・・・

 

「ダイ達いいか?」

「うん、ポップが良いなら俺もいいよ。」

「良いわよ。」

「へ、サンキューな。」

 

自分に何か考えがあると察してくれるダイ達に感謝しながら、ポップがはティファの頭をわしゃわしゃと撫でて許可をする。

 

「お前達が弱いと言った料理人のティファが!そこのベグロムに用があるってよ!!まさかとは思うが弱いこいつ相手に逃げねえよな?」

 

ポップもマトリフ譲りの悪党が己にやりとした笑みで、ベグロムの逃げ道を潰していく。

此処で逃げるは恥ではないが・・・・

 

「誰が逃げるか!!俺の剣で真っ二つにしてやるよ!!!」

 

案の定プライドが高いベグロムはポップの挑発に怒り、ガルヴァスのそばを離れてティファの直線状の上空に移動する。

この防御力であればどのような技が来ようと死ぬ事はあるまい!ダメージを食っても翼で一気に加速し、技を撃ち終えたあいつを真っ二つにしてやる・・・なんだあいつのあの出で立ちは!!

 

いつの間にか、ティファの周りには人が居らず、ぽっかりと戦いの為の場所が作られていたが、ベグロムが訝しげにしたのはそこではない!

 

ティファが先程まではいていたのは白い布靴であったはずだ。ティファの肉体の何処に傷がついても、青い血が目に付くようにと白一色の衣装であったがはずが・・そもそもあれは靴なのか

 

 

()()()()()()()()()()()()()()・・サンダルのようにも見えなくもない。

靴もどきは足を覆いつくさずかかと部分も無く、縄が人差し指と親指の間を通っり、その他は足首に何度か縄が巻き付いて固定されている奇妙な靴もどき。

 

何時の間に履き替えたとベグロムも他の者達も驚くが、履き替えたのではなく、ティファの式能力で白い布靴を変えただけが、知らない者達からすれば、何事かと思わせ戸惑わせるには十分であった。

 

そしてもう一つ。

 

ティファは本来左利きなのを、流石のベグロムも知っている。

だのにティファは、衣装についているサッシュベルトの()()に雪白を落とし込み、姿勢を低くし構えを取ったではないか。

 

何を考えている?

 

あれでは利き腕でない方の右腕で雪白を掴む事になるではないか!!

 

アバンも初見の靴もどきとその構えに戸惑い、ティファになんと声を掛ければいいのか分からない。

先程無茶をしない事、敵と一人で対峙しない事を言ったばかりだが、これにはティファとその仲間の名誉もかかっている為に、とめるべきではないのかもしれな・・

 

 

周りの戸惑いを、ティファの声が斬り裂く。

 

「私が弱いかどうか、その身で私を測ればいい。」

 

 

ハドラーにもやらなかった()()()()()をくれてやる




今宵ここまで

竜の娘の逆鱗に触れた愚か者たちは果たして・・・
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