勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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守り抜いて・・・・

竜の娘の咆哮は様々な者達に響き渡った。

 

「あ・・・・ああああああ!!!!」

 

魔王軍のメネロは、ティファの異常性に恐れ戦き我武者羅に茨の鞭を振るって攻勢に打って出た。

 

何だあの化け物は・・・なんなのあいつの異常性は!!

 

 

分からない!敵で殺し合った者達を、その手にかけたのも達を称賛するティファの思考が全く理解できない!!

 

天晴な敵である

 

そんな綺麗事を、ガルヴァスをはじめ自分達は嘲笑いそして勝ってきた!策謀の果てに、謀略を仕掛けた果てに得た勝利しか知らないガルヴァス達にとって、ティファは本当に化け物と化した。

先程のカール騎士団がティファに抱いた思いを今度は彼等の番となる。

 

分からない事は真に怖ろしい事だと

 

 

茨の鞭はティファに届きこそしないがティファの周りの地面を討ち据え、即座に蔓が生え、食人種の如くバックりと口を開ける変形種もあり、幾多もの奇形モンスターと化した蔓達が襲い掛かる中、ティファは雪白を仕舞った・・・・仕舞ったのだ。

 

「あの馬鹿!!!」

 

メッラゾーマ!!!!!

 

ゴオォォォォウ!!!!!

 

その日のポップにとっての一番の火力が、ブラックロッドから火を噴き、それでも幾重にもまかれた蔓を消し去るには程遠く、ダイ達の闘気技で斬ろうにも間に合わない中、上空よりの津波のような猛攻が、ティファに迫る蔓をズタズタに引き裂き、奇形モンスター達も瞬殺されて行き、技を放った者がティファとメネロの間に立ち、殺気をむき出しにして槍をメネロに突きつける。

 

 

「お前達の事は噂で聞き及んでいる・・・・薄汚い者達が小娘に刃を向けるなぞ笑止千万!!!」

「賛成だな、ガキンチョに攻撃して生きて帰れると思うなよ。」

 

同僚を上空に連れて行き、ラーハルト自慢の超火力技・ラウシースピアでティファと自分達の安全を確保し、ガルダンディーも殺気を隠そうとせずレイピアを取り出す中、突然蔓が凍りつき、鋼鉄の錨が残りの蔓を粉々にし、舞い散る氷の欠片の中をボラホーンがのそのそと近づき、ティファの横に立つ。

 

「娘に手を出す事、我等竜騎衆が許すと思うな木っ端が。」

 

近頃は竜騎衆の重鎮となりつつあるボラホーンの一睨みは、まだ虚勢を張ろうとするメネロを精神的にも打ち据えた。

 

「何なのだお前らは!!殺し合ったんだろ?殺されたんだろ?恨みがないのかお前達!!!」

「笑止!その程度の見識の低さしか持てぬ者が、小娘を推し量ろうなどと片腹痛いわ!!」

 

 

遂に堪え切れなくなり叫び出すメネロを、ラーハルト達は鼻で笑った。

あんな小物が-ティファ様-を殺そうなぞと、増長甚だしい!!

 

主の娘だからでという理由だけはない、自分達はそんな事を知る前から小娘が・ガキンチョが・娘が好きだった。

 

ハチャメチャで口が悪く無謀が過ぎ、そして分け隔てなく優しく笑いかけてくれるティファが好きなのだ。

 

ラーハルト達は構えを解かないまでも左手でティファの黒髪を優しく撫で笑っている。

 

「小娘が俺達は弱くないと言ってくれたのだ。」

「ガキンチョの思いに応えない奴なんて俺達の中にはいないんでな。」

「娘が信じた我等の力、お前達がその身をもって知ればいい!!!」

 

ティファが信じてくれている、三人にとって命を懸て戦うには十分すぎる理由であった。

 

其れは敵を嘲笑う笑いでも、強者の笑みでもなく、メネロ達が見た事の無い、嬉しそうで、それでいて力強い笑みを三人は一様に浮かべている。

其れすらがメネロ、ダブルドーラ、ザングレイにとっては腹ただしく感じる。

 

かつては竜騎衆だとて、闇の中を共にいた者達ではないか!!なのに!その澄んだ瞳はなんだ?何故我等と共に汚れ墜ちていないのだ!!!

 

理解できない事と、嫉妬心が三人の中を黒く染め上げていく。

 

 

そんな中、ティファは困ったような顔をして一つ溜め息を吐き、ラーハルトがどうしたと問う前にモンスター筒を二本作りだし、ベグロムとデスカールを入れ、そしてその筒をマジックリングに入れ・・・・・あまつ其のマジックリングを飲み込んだのだ!!

 

「・・・・・・小娘!!!吐き出せ!今すぐ吐き出せ!!さっさと吐き出せ!!」

「ガキンチョ逆さに振って吐き出させるぞボラホーン!!」

「さっさと自分で・・・いや!ラックとやらでマジックリングを今すぐ出すのだ娘よ!!!」

 

当然この反応が当たり前で、三人はティファを諤々とゆすぶるが、ティファは吐き出すというはしたない事はもとより、ラックで出す気も無い。

 

「・・・人質でも取った積りかティファ?」

 

それまでずっと黙って成り行きを見ていたガルヴァスが遂に口を開き問いただすが、矢張りティファはどこか困った顔をして答えた。

 

「・・・・・もう少しあの二人を放って置いたら死神の大鎌が振るわれていたと思いますよ?」

 

キルがとどめ刺しに来る・・・・この戦場では、変な血生臭い事されたくないと。

 

・・・・・あのガキは!まだそんな甘い事・・・

 

 

「クックック」

「ギャッハッハッハッ!!」

「ダァ~ハッハッ八!!!」

 

ティファの思惑は分かったが、其れに不快感を示すガルヴァスの言葉を前に、本当に戦場には似つかわしくない大爆笑の声が鳴り響いた。

 

「お前らしいぞ小娘!!」

「それでこそガキンチョだ!!」

「よくやったぞ娘よ!!」

 

敵が倒すのではなく、味方の粛清というのは見ていて双方気持ちの良いものでは無い。

 

ティファの綺麗な考えが大好きな三人は、警戒を解かないまでも愉快気に笑ってティファをティファの頭を好き勝手ぐしゃぐしゃにかき回しながら、一頻り大笑いする。

 

「もう!ティファの頭!!ぐしゃぐしゃ・・・・あれ?」

「ん?どうした?・・・今頃気が付いたのか?」

「あ・・・・うん・・・」

 

自分の頭何だと思っているのだと抗議しようとしたティファは、見えている髪の色が黒に戻っているのに気が付いたのを、今更かとラーハルトに呆れられた。

 

・・・・・もしかして雪白の覚醒と同じで、暗黒闘気の奔流無くなれば自分は母譲りの髪でいられる・・・・・力の制御方法直ぐに覚えよう!!!

 

「やっぱお前はこの髪の色が似合うなガキンチョ。」

「落ち着いた良い色だぞ娘よ。」

「へへ・・・そうかな?」

「「「あぁそうだ」」」

 

幼い頃の姿とあまり変わらず、中身もいいのか悪いのか変化しないティファを、三人は愛してやまない。

そのティファから、思いがけない言葉をラーハルトがかけられた。

 

「ラーハルト、マァムさんお願いね。」

「・・・・は⁉」

「ポップ兄が教えてくれたよ。結婚する許可をロカさん達から貰ったのも。」

「・・・・・あのお喋りが。」

「ふふ、マァムさんは良い子だから、幸せにして上げてね。」

 

慈愛に満ちたティファの笑みと言葉に、ラーハルトは照れ隠しの怒りすらも霧散し、視線を斜め上げにしながらも当然だともごもごという。

 

その様は、槍の魔装を纏っているというのに普段は竜騎衆を纏め上げる戦鬼ラーハルトの姿は何処にも見えず、ガルダンディーがいっしっし笑いするのをラーハルトが見逃す筈も無かった。

 

「お前だとて!!ニーナから逆プロポーズされただろうが!!!」

「なん!!!!」

 

人を笑わば道連れだ!!!

 

思わぬ暴露にガルダンディーは絶句し、真っ赤になり、顔を茹蛸にしながら本気でラーハルトに食って掛かった。

 

「お前なんでそこでそれ言うんだよ!!デリカシーの欠片も無いのか!!」

「お前にだけはそんな事言われたくないぞ!!!」

 

本気の喧嘩になった・・・・・・あれ止めないとだねボラホーン。

 

ツイツイ

 

「・・・・どうした?今すぐ二人止めるから待って・・・ろ!!!」

 

 

ゴチィィィン!!!!

 

「あう!」

「た!!!!」

「お前達!!気を張りながらも余力を持つ事と、馬鹿みたいな諍いの区別もつかんのか!!幸い相手が呆気にとられていたからいいものを!!!」

「・・・すまん・・」

「悪かった・・・」

「まったくだ。」

 

・・・・・ボラホーンってこんなんだったかな?出来る若者たちを諫める親父殿みたいだ。

 

「悪いな娘よ、二人とも浮かれているのだ。カールの隠し砦にリュート村の子等が来て、ニーナはガルダンディーを婿にすると、そしてディアッカが言ってくれたのだ。大戦終わったのちに、娘もいれてリュート村に来て欲しいと。」

 

いつでも鋼鉄の錨を放てるように構えながら、ラーハルトとガルダンディーも直ぐに戦士の顔になりながら、手短にあの時の事をティファに伝えた。

 

どうしても伝えたくて。自分達三人を赦してくれている者達がある事を、受け入れ愛してくれていると言ってくれている者がいる事を。

 

自分達を変えるきっかけを作ってくれた子供達が、変わらずに自分達に優しく、そして帰りを待ってくれているのだと。

 

「・・・・ニーナが・・・そう・・・ニーナが・・ディアッカ達が・・・待って・・。」

 

 

十日前に会いに行ったあの子達は、その時も同じ事を言ってくれていた。大戦が終わってからでいい!竜騎衆だけでなく、ティファの仲間全員を連れてリュート村に来て欲しいと。

 

「ふふふふふ、はははははは。」

 

吠え上げてではない、嘲笑うでもない、敵に対する威嚇でもない、本当に子供らしい伸びやかな子供の笑い声を、ティファは自然と発していた。

 

あぁそうだよ、そうだねニーナ、ディアッカ、カイ、ハル・・・・皆も、大好きでいてくれたんだよね。

 

異種族の三人の、見てくれでなく中身を見てくれた稀有な村・・・・・奇跡の島デルムリン島と対になる様なあの村を、滅ぼさせるわけにはいかない。

 

「・・・・馬鹿な・・・・リュート村とは-人間-の村だぞ!!その村は一村ごと気が触れているのか⁉」

 

ガルヴァスも、表の事を把握しようと情報収集していた為、篩の篩の事も、其れを引き起こした原因も顛末も知っている。

 

故にリュート村と竜騎衆とティファの因縁を知っている。

 

そのガルヴァスの言葉はある意味で正しい。竜騎衆が魔王軍とはもうあの過疎村だとて知っている筈だ!!

なのに何故受け入れれる。

 

「好きだからです。」

 

その混乱したような問いにも、ティファは笑みをもって応える。

 

「三人が本当に大好きで、ガルダンディーもその身を賭して迄あの村を守ろうとした。お互いに好きなんです。」

 

ただ、其れだけの単純で純粋な、簡単な事だと笑って言う。

 

「この地上軍もそう。ロン・ベルクさんが疲れればカール騎士団の人が直ぐに薬草類を手渡す。チウ君達遊撃隊の子達を周りが自然と助けている。ボロボロになった親衛隊達を、ダイ兄達以外の人達も飛び出して直ぐに安全な場所まで連れて行った。

種族じゃない。中身なんだよきっと。」

 

付き合った時間の長さでもなく、その者の本当に良きところを互いに見つけ合えればきっと・・・

 

ティファの言葉が、分からないバケモノだと言っていたカール騎士団にも沁み通る。

気が付けばセインも魔王の部下達を必死に戦場端まで連れて来ていた。-味方-を討たせまいとして。

 

「ラーハルト」

「あぁ」

「ガルダンディー」

「おう」

「ボラホーン」

「どうした?」

「守ろう。守って、守り抜いて皆でリュート村に行こう。こんなに大勢で行ったらみんな驚くかな?」

「・・・クックック、料理が足らんとニーナが怒りそうだな。」

「・・・村人よりも多い客っておかしかないか?」

「・・・・迷惑だから、土産がうんといるな。」

 

その遣り取りに、全員が分かった。ティファはここにいる味方全員をリュート村に連れて行く気なのだと。

話しにだけ聞く、ティファの様に自由な心を持った村に、聞いた者達は知らず畏敬の念を持っていただけに、是非行きたいと、敵の策略に嵌りかけていたと冷え込んだ心に火が灯るのを感じる。

 

守ろう

 

勝ではなく、守ろうというティファらしい温かい言葉と、まだ見ぬリュート村の子等に温もりを貰って。

 

 

「我等も行きたいですな!」

「カール特産品をうんと持っていきましょう!!」

「我等はパプニカさんの布地でも持っていくとしよう。」

「リンガイア名物の焼き菓子も持参しよう!!!」

 

 

「「「「守り抜き!!大切な者達の下へと帰るぞ!!!!!」」」」

 

顔を俯けるものは最早なく、初戦と同じ、精悍な顔をした戦士達が蘇った。

 

知らずリュート村はまたこの世界に奇跡を齎した。

五年前には魔王軍の下部組織を壊滅し、上層部とても打撃を喰らった。

 

そして今この時、ただ戦う為だと魔族・モンスター達と共闘する事を妥協して受け入れていた者達、ティファをまだ怖れていた者達のわだかまりを完全に溶かし、地上軍を本当の意味での一つに成さしめた。

 

 

それは好きな人達の無事を祈る、何処までも純粋な思いを持つ、当たり前の思いが起こした奇跡の様な-普通-の出来事であったのかもしれない




今宵ここまで


リュート村と書いて・・・・・・何と読むかは読者ん皆様にお任せします。

ちなみに筆者は・・・やっぱり内緒です(* ´艸`)

地上は広く、この様な村が一つくらいあってもいいのではないかと、当初は軽い気持ちで作ったのですが、何時の間にか物語の中で重要な位置に来たのには書いていくうちに筆者自身も驚いています。

物語も佳境に迫り、そろそろ勇者達にパレスに突入してもらおうかと思います。
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