こんな・・・・戦いって・・・・どうしてここまで・・・・
「ダイ!お前はまだ前に出るな!!姫さん!マァム!近接近戦はすんな!ヒュンケルに任せておと姫さんは-回収-の方に・・・ちぃ!ギラ!!!」
パレスでは序盤どころか入り口において戦いは熾烈さを極めた。
地上と同じく、魔王軍全軍が死兵と化し、斬られようが吹き飛ばされようが大挙してくる上に、キルトラップがここぞという時で発揮されダイ達を肉体的にも精神的にも追い込んでいく。
其れもトラップは敵味方を問わず、そして相手もトラップの中であっても飛び込んでくる異常さに、マァムがその様に耐え切れず吐瀉し、ヒュンケルに抱えられポップと同じ後方に下げられ暫くはヒュンケルが前衛を受け持ちダイはストラッシュ系で応戦し、トラップはミエールの眼鏡をかけたポップが受け持ち、指示出ししながらトラップの対応に苦慮し始める。
なんなんだよ本当にこいつらは!!死ぬの怖くねぇのか?手足千切れてんのに何で向かってこれんだよ!!
少し前の自分ならば恐慌状態に陥りそうな異常な戦い方に、竦みそうになるのを敵を心の中で面罵する事で辛うじて精神の均衡を保っているが、限界が近づくのが分かる。
「魔界の為に・・・」
「我等とバーン様の悲願の為ならば!!!」
「もう止せ!!足がないのにどう・・・」
「ヒュンケル!!イルイル!!!」
足が無くなり立ち向かえなくなったアークデーモンは内に力を貯めこみ自己犠牲呪文を躊躇いも無く発動させる寸前にマァムが間に合い辛うじて筒に入れられた。
「こ・・・・こんな戦い・・・・戦いじゃない!!こんなのおかしいわよ!!」
敵もトラップも一段落したのがいけなかったのか、マァムは耐え切れずにボロボロと泣き崩れる。
戦いとは、いつも自分達が不利な中でも強敵に立ち向かうものであり、消耗戦をしたのは初めてなのだから無理はないと、アバンの弟子の中でもそれなりの修羅場をくぐってきた唯一のヒュンケルは、泣いて動けなくなったマァムを横抱きに抱えてダイとポップのもとに向かう。
キルトラップを粗方片付けると豪語しておいて、まだ入り口でしかない此処で心身共に消耗させられているが仕方がない。
ダイもポップもレオナ姫も顔色が悪い・・・・マァムは言わずもがなで・・・本当に無理もない。
この四人は大戦が始まる本の数か月前まで太陽の下を遊びまわるただの子供だった。
レオナ姫は王女として薫陶の下、厳しい教育も受けてていたと言ってもたかが知れている。
命の遣り取りなど論外であろうしまして死兵相手なぞ誰が想定するというのだ。ポップはあのアバン先生であれば可愛い弟子を綿で包む様に守って来られただろうし、ダイに至っては、力も心も強いが、こんな血生臭い事に出会ったことが無いと断言できる。
ティファが常にダイの傍らに在り、そういう事に目を光らせ陰日向なく守ってきたであろう事が容易に想像がつく。
自分達をそうして守って来てくれたのだから。
「マァム!!」
「ヒュンケル!マァムをそっと下ろして・・・マァム、もう敵はいないわ・・」
「・・レオナ・・・まだ、入口なのに・・・・まだ半分も何にもしてないのに・・」
「少しずつ攻略していこうぜ。陣形は今のままで、ダイとヒュンケルは交代で前衛してくれ。とにかく相手にダメージ与えたらすぐに筒に入れて行けばいいさ。
ほれ、まだこんなにあるんだぜ。」
レオナと話して幾分落ち着いたマァムに、ポップは最後の台詞をおどけながら言って、預かった袋の中身を見せればまだまだ多数のモンスター筒がある。
沢山作ったからバンバン使ってね。
ティファが渡してくれた筒・・・でも、入れても入れても敵が途切れず・・・フォン!!!
しま・・・
ゴォウ!!!!!
「チィ!!メドローア!!!」
下からのマグマ系のトラップに、ポップは床目掛けて極大消滅呪文を躊躇いも無く放ち、相殺している間に一行全員をバシルーラの要領で吹き飛ばし、自身もすぐさま空中に飛び出した。
些か手荒い脱出方法であったろうが、死ぬよりは・・・
「チェックメイトだよ魔法使い君。」
何処からともなく聞こえた冷たく甘い声に、ポップの全身に悪寒が奔る・・・しまった!!!
気が付けば全方位から多数の剣戟が襲ってきた。
「ポップ!!!アバンストラッシュ!!」
「ブラッディースクライド!!」
二人が誇る放出系の闘気技は、一時しのぎになったが、ポップを逃がさないとばかりに、上から降り注ぐように降ってくる溶岩の嵐を避ける術がなかった。
マグマの動きが、いやに遅く感じる。
呆然と上空から迫る溶岩に対し、ポップは呆然としていまい動きを止めてしまった。
広範囲であり、何よりもルーラで逃げようにも周りをまた剣の嵐が再開された。
二の矢三の矢に対処するには手が足りなさ過ぎた。
・・・・俺の・・・冒険はここまでなのか?
バーンが目の前にいるというのに・・・ここで・・・・
我は守り人・・・
・・・・この声は!!
「守りの担い手!我が加護の下、愛し児達全てを揺り籠に入れるが如く守り抜け!!」
ジ=アザーズ!!!
グワァシャァン!!!!!
「「「ポップ!!!」」」
其れは本当に間一髪であった。首の皮一枚よりも薄き寸でのところで、結界が間に合い、マグマはそのまま結界の上を滑り落ち、剣も全てマグマによって溶かされたが、結界内のポップは中で座り込んでいるが呆然としているだけで怪我は一つも無かった。
今の詠唱の声を頼りに、自分達が先程まで居た地点を振り向けば、手を上空に翳しながらゆったりと黒髪を揺らし、水色の上下の詰襟スカートにシルクの白ズボンと、空飛ぶ靴を履いたている者が歩いてくる。
「遅くなって申し訳ありません。」
眼鏡は掛けていなくとも、後ろにラーハルト・ハドラー・アバンを従えるように歩きながらも、何時のも様にゆったりと笑い、優しい声を発しながら威風堂々と歩いてくるティファの姿に、上空のポップのみならず、ダイ・マァム・ヒュンケル・レオナは心の底から安堵した。
料理人のティファが来てくれたのだと。
今宵ここまで・・・・・
戦いの過酷さを知っていても、戦いの血生臭を初体験した一行の良い子達の精神はガリガリに削ら、そんな中、キルトラップはいい仕事しすぎです。
お陰で一行は精神も体力もガリガリに削られましたが、間一髪のところでいつもの如く間に合いました。
次回怒涛の反撃になるか?