勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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某作品の似たような言葉を、言った人と内容は真逆の様なタイトルでお送りします


次の世代の為に次の次の世代の為に

さしたる労力は使っていない。

 

ただ、足の筋肉を闘気で強化しながら薬瓶を投げ、敵をすり抜けながら後方に立ちてモンスター筒を発動したに過ぎない。

 

カランカランと、ばら撒きながら使って空中に上げられたモンスター筒が落ちたのをティファはラックを使って手元に回収し、直ぐにリングにしまい込む。

 

ティファにとっては、たったそれだけの事であった。

 

血は一滴も流れず、憎しみの声も怨嗟も上がらずに、穏やかな雰囲気を漂わせたままの・・・戦い方の次元すらが違うのだと突きつけられた。

 

 

 

「・・・・・やっぱり大魔王様の言う通りにしかなんねかったか・・」

 

ティファの異次元的な戦い方に、味方全員がポカンとする中、アークデーモン・ゴムラが頭をバリバリ搔きながらティファに話しかける。

 

まるでティファの対処方法を予め知っていたように。

 

 

・・・大魔王様、嬢ちゃまやっぱりすげでえすだな。

 

地上での攻防を、パレスの一角で見ていたゴムラは、勇者達が突入する寸前に副官のがいこつと共に呼び出された時、思わずぽつりと漏らしてしまった。

 

ティファが尋常一様でないのは出会った時から感じていた。例えミストかキルに抱えられ、自力で動けなくともその小さな体の奥に途轍もない何かを秘めているのを看破する程にゴムラも強かった。

 

だが、強くとも驕るどころか優しいティファに、ゴムラ達は魅かれ、なんとかティファにこちらに来て、魔界の浮上を喜んで欲しかったのに・・・

 

そんな自分の愚痴とも戯言ともいう言葉を、大魔王様は苦笑して、両隣いらっしゃるお二方とも自分を咎める事無く、大魔王様は嬢ちゃまに・・・

 

 

 

「嬢ちゃま!!」

 

ゴムラの顔つきが変わり、真剣な瞳をティファに向けた。

先程までの優し気な気配は一掃され、戦士としての顔を始めてティファに向ける。

 

可愛かった、自分も一度だけ抱かせてもらった時の、温もりを生涯忘れまい。

小さくて軽すぎて、頼りないのに暖かい者に自分こそが包まれている様なあの不思議な幸福感を味わえた事を、敵味方に分かれたくらいで後悔なぞするものか。

 

「どうしましたかゴムラさん。」

 

いまだとて、自分の呼びかけに柔らかく答えてくれるティファに、此方に来て欲しいとまだ未練気に叫び出し王になるのを抑えるのに必死で、それでも伝えなければいけない大切な言葉がある!!

 

「もしも料理のティファが来ない時に、おら達の守備範囲に勇者達が入った時は、おら達の何もかもを使って勇者達の全てを損耗させろというのが大魔王バーン様よりのご命令でしただ!」

 

勇者達は皆若く、本当の戦慣れしている者はヒュンケルを入れてもいない。如何にヒュンケルが戦いの天才であっても、泥臭く血生臭い魔界の戦い方を教えてこなかったとミストが断言している。

 

あれは綺麗な戦い方しか知りませんと。

 

であるならば、守備隊全員の体を、心を、魂を使って勇者達の体力と気力と精神力全てを削る様にとの沙汰に、ゴムラ達は分かりましただと、笑って応えた。

大魔王バーンが、ひいては魔界が勝つ為の礎になる事に何の躊躇いがあろうかと。

 

「・・・・成る程。私達は辛うじて間に合った問い事ですか。」

 

内容もどうしてそのような命が出されたのかも正確に把握しているティファであるが、矢張り不快感が圧倒的に体中を支配した。

 

自分だったら、自分を使ってそのようにする。それが敵を弱らせる為ならば躊躇いも無く。

しかし他者がするのは嫌だと、ティファは物凄く手前勝手な事を思う。自分はいいけど他人逸るなという何とも身勝手な思いを、一行でもバーン達でも知れれば激怒されている。

 

人にやるなというのならばお前はどうなのだ、散々自分を粗末にしてきた者が勝手を言うなと。だがら、これは知らぬが何とやらで、ティファの不機嫌は一行があわやな目に遭った事だろうと全員が良い具合に勘違い・・でもない。

其れもあり不快感を露にしているのだから。

 

不快感が相当なのか、優しいティファしか知らないチウとアバンは、ティファの顔に刷かれた冷たい表情に背筋が凍る思いがするが、其れに相対しているゴムラは泣きだしそうになっている。

 

じょ・・・嬢ちゃま・・・其れはあくまでもそうなった時の事で!おら達は今そんな事せんだよ!!!

 

心で絶叫してうる目になるゴムラの横に、補佐する副官のがいこつが剣を全て地面において、丸腰でやってきた。

 

「私は名も無いがいこつではあります。ごらんのとおり強化されている訳でも秀でた能力もありませぬが、弁を買われてゴムラ様の副官を任ぜられました。」

 

ゴムラは強いのだが、見た通り情に弱い。魔界のモンスターらしくない。

らしくなさの波長がティファやキル、ミスト達と合ったと言えばそこまでだが、兎も角配下達に死地に行けという言葉を言い出すのに半日かかるか、下手すれば自分一人で突っ込んでいきそうなので弁が立ち、淡々と命じられたことを配下にもさせることが出来るがいこつが副官としてこの場の守備隊を纏めており、大魔王バーンからの伝言も、万が一ゴムラがティファの前で泣いて言えない事も想定され、共に授けられた。

 

だからここでゴムラ様が言えないのは大魔王様達の想定内なので、敵に対して弱腰になったという咎は有りますまい。

 

ゴムラの武骨で剛毅な優しさに、がいこつは惚れているので主が困った事にならない算段を付けながら、ティファに発言してもいいかと伺いを立てた。

 

「構いません。まだ大魔王から何か言われているのですか?」

「ございます。」

 

目下にしか見えない自分を相手にも態度を変えないティファに、見せかけではなく心から頭を下げて一礼し、バーンからの言葉の先を続けた。

 

「先程のは勇者達のみが来た時の事ですが、当然貴女様が来た時の事も命じられておりました。」

「・・・・続けて下さい。」

「はい。もしも料理のティファを伴いてパレスに上がってきたその時は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、ガァグランスの守りしゲートを通りて魔界に帰還する様にとの・・・・・ティファ様?」

 

 

がいこつの受けた大魔王の命を聞いて内容を即座に理解したティファは、骸骨の言葉を最後まで聞く事無く、弾かれたように中央の塔の最上階を振り仰ぐ。

 

鳥の頭の更に先におわす魔界の神を。

 

「ティファ様、これよりは大魔王バーン様のお言葉を違えずにお伝えしたく。」

「あ・・・・・ごめんなさい。」

 

話の腰を途中でおった事にティファは恥じて再びがいこつに向き直る。

果たして大魔王は、何を思って全軍撤退命令を・・・

 

「-その方を完全に倒し尽くし殺し尽くせるは最早三界を探しても余のみであろう。であるのならば無駄な血を流すこと能わず。其方の好きなタイミングで勇者達を引き連れ余の下に戻ってまいれ。」

「・・・・は?」

「以上が大魔王バーン様の貴女様に対するご伝言で御座いました。」

「そうか・・・・・大魔王は・・・・そんな事を・・・・」

 

其れは途轍まなく傲岸不遜な言葉に聞こえてもなんら不思議ではない言葉であったが、その言葉を噛みしめながらティファの顔がみるみると嬉しそうな力強い笑みが浮かび始める。

 

「ティファ・・・・怒らないの?」

 

敵の不遜な言葉に怒らないのかと、兄のダイの言葉に、ティファは怒ることなど何もないとからりと笑った。

 

「大魔王は無駄な血を流したくない。私も流したくない。本当に、この戦いは大魔王か勇者達の戦いでしか決着が付く事なんて金輪際ないんだ!あの人は・・・それをしてくれた。」

 

配下達を無駄死にさせない道を、大魔王は選んだのだ。

 

「分かりました大魔王!!兄達を・・・勇者達を引き連れて貴方と魔影参謀ミストバーンと死神キルバーンの前に出ましょう!!全ての事に決着を付ける為に!!!」

 

満面の笑みを以て、ティファはバーンの言葉に応え

 

「・・・・待っておるぞ。」

 

届かぬ呟きでバーンも返した。

 

己の出した最良と思える道を、ティファが本当に理解してなおも挑んでくることを喜ぶように。

 

 

ティファにはもう、自分を倒す力はなく、ハドラーとの決着も永劫つくことは無い。

 

おそらくキルをも倒しきる力はない。

 

だが、自分以外に負ける事も無い。勝つ戦い方ではなく、あれは-負けない-戦い方に長けており、それ故に勇者一行の料理人として、全面支援をこなしてきた。

ティファがいれば、一行の心を損耗させる策は成り立たず、奮い立つ勇者達に守備隊全員を突撃させても意味がない。

 

ティファを逃がさず殺し尽くせるは最早自分のみ。無駄に、配下達を死なせる愚を犯すつもりは無い事を、ティファは理解して喜んでいる。

 

命が無駄に散らない事に喜んで

 

 

「ではこの子達もお返ししますね。」

「い!!!嬢ちゃま、この筒にいる奴等は嬢ちゃまに・・」

「構いません。大魔王の命に逆らった云々はそちらに魔界に帰ってからお願いします。いいよねダイ兄達も。」

 

つい少し前に筒に入れた敵を、ティファはリングごとゴムラに投げ渡し、事後承諾をダイに取る。

 

ダイ達としても、あんな損耗戦はご免であり、しなくていい事にホッとしたので大盤振る舞いなった。

 

「いいよ、捕虜とかっていらないし・・」

「いても困るし、」

「いない方が嬉しいし」

「扱いに困るから連れて帰って頂戴。」

「その方がどちらにとっても良い事ですよね。」

 

ティファ含めたお子様組の勝手な言い分に、アバン達はどうしたものかと考えてしまう。

ティファ達は、大魔王の甘言の罠を考えていないのだろうか?

 

「・・・アバン、大魔王は・・・やろうと思えばおそらくティファをいつでも手元に呼べるぞ。」

 

常識手に悩むアバンに、ハドラーは小声でバーンのハイ=エントの移動能力・ラド=エイワーズを教える。

ティファが相手を移動させるように、バーンにも出来たるのだと。

 

使わなくとも、ティファ達が勝手に来るのを待つだけでいいから使っていないだけだろうとも。

 

「・・・成る程、ちんけな策など施さずとも、勝つ自信があちらにはおありで。」

「・・・・むしろ勝ち筋をこちらが見いだせるかが問題な程だ。」

 

あの巨大な力を持った大魔王バーンが、子供騙しの策をする必要がない。

何せ万全な自分がいてやっと五分になったとしか思えないのだから。

その言葉をクロコダインも力強く頷いて肯定し、聞いていたラーハルト達を青褪めさせる中、ティファ達はゴムラ達を見送っていた。

 

「行ったね。」

「私達も行こうか・・・どこでお昼にしよう?」

「・・・・お昼食べていいのティファ?」

「ここが敵地で・・・」

「ティファ、サンドイッチ位の軽食よね?」

「流石にがっつりは・・・」

「ティファ、どこか場所は当てがあるのですか?」

「あ!あります!!とっておきのいい場所が。」

「私もサンドイッチ位はたくさん用意しましてね。」

 

 

 

ある意味大魔王バーンの巨大な力を担保にして信じているダイ達に、無粋な事を言う事も無いとアバンは腹を括る。

 

これが罠であったれば、自分達が噛み砕けばいい。

 

この子達の綺麗な心を穢した報いを受けさせればいいのだと。

 

 

ゴムラ達を見送ったダイ達も、程なくしてパレスの奥へと歩を進める。

先ずはお昼ごはんを食べて英気を養いに

 

 

 

「なぁティファ。」

「何ポップ兄・・・・・私も走りたいんだけど。」

「あぁ・・・そりゃ先生に行ってくれや。」

 

ミエールの眼鏡をアバンがかけて、クロコダインがアックスの破壊力と新能力を使って罠を悉く砕いていく中、ハドラーは後方を見張り、ラーハルトは走る一行の左側を守って走っており、ティファだけヒュンケルに抱っこされている状態に、本人は不満そうである。チウ君も後方のハドラーに抱っこされてるけどさ・・

 

捕虜の時もそうだし、自分はパレスを歩くことは禁じられているのだろうか?

 

「其れよりもよ・・・・大魔王バーンの戦う原動力ってなんだと思う?」

 

当然ティファ心配の一行がティファ単独で走らせることはしない。いつ疫病神の手が伸びて来ても対処できるように。

 

敵は確かに一人も見かけないが、キルトラップはそのままだった。

そのトラップの一つにティファにあってたとんでもメッセージがあったのだから警戒度はマックス。

 

僕からの愛情たっぷりの罠を堪能して、楽に御成りよ

 

・・・・・あの変態疫病神ぶっ壊す!!!!!

 

アバンまで入った当然の反応に、矢張りティファとチウだけがついていけずビビこくのを、一行は赦さずあいつは絶対壊すぞを叩き込みながらティファとチウは抱っこの移動と相成った。

 

ポップも体力がついて走って警戒しながらも話す余裕があり、ティファに思い切って聞いてみた。

どうして大魔王達はこんな面倒な戦い方をしてくるのかと。

 

言ってはなんだが、魔界のモンスター達を大量投入すれば或いは自分達はと、つい考えてしまう。

 

その問いに対する答えを、ティファは自身を以て答えられる自信があった。

何故なら()()()()()()()同じはずだから。

 

「守り抜く為に戦ってるからだよ。」

「へ?」

 

ティファの答えに、ポップはもとより聞き耳立てているダイ達も戸惑う。

守るなら余計に兵達を使うべきではと。

 

「そうじゃない、たかが-土地-の為に戦ってるんじゃないと思うんだよ。」

 

何もかもを見通すあの透明な笑みを浮かべながら優しくも力強くティファは答える。

 

魔界の死に掛けた土地の為も多少はあるかもしれないがそれよりもあの人はきっと

 

「守って、生の歓喜を何物にも脅かさらることなく無限に味合わせる為に。」

 

きっと自分達の命を代償にしてでも、次の世代の為に次の次の世代の為に彼等は戦い抜くんだろう。




今宵ここまで
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