勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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勇者一行のいつもの日常回・中編

・・・どうしよう・・・筒に入れる?無理!こんなにプルプル震えながらも・・

 

「-ティファ・・・・ここどこ?・・・」

 

とか!震えながらも私の事頼りにしてくれるスラリンちゃん達筒に入れるなんてできないよ!!!

本当にこの子達可愛すぎだよ大魔王!!

 

ここは何処だと不安で震えて泣いてティファに縋っている十五匹のスライムをムギュッとしながらティファも大号泣。

 

筒に入れたくなし、されどお迎え来てプリーズとも言えないこの状況どうすればいいのだ!!

 

・・・・・なんだか世界消滅カウントダウン始まってる時よりも深刻に泣いているティファにアバンはこめかみかりこり掻いて困ってしまう。

 

敵の刺客ではどうやらないが、此処にいる時点で魔王軍の関係者(?)をどうすべきだろうか?

 

ここから離れさせてしまってはトラップが待っている。何かの拍子に戦闘で放たれた闘気だの魔力だの魔法だのにあたる可能性もある。

 

しかしティファが筒に入れるのを断固拒否してる。

 

「この子達が怖がること言わないでください!!アバン先生の鬼!!!!」

 

筒に入れてはと言っただけであの剣幕・・・

 

ダイ達としてもスライムが可愛く見えるだけに下手に手が出せない。・・・そもそも何でこんな所にこんなに可愛い子達がいるのか分からない。

 

分からないが、この状況を打開してくれる存在が、ホワイトガーデンの出口の階段から現れた。

 

「見つけましたわよ料理のティファ・・・は?」

「ここより先は・・・・・へ?」

 

真っ赤に燃えたような赤い髪を団子状にして白いメイド帽に入れ、白いフリルのエプロンに黒いメイド服を着た魔王軍の双子の料理人が現れたと同時に、ティファとその周りを囲っている者達を視認して数秒後に絶叫する羽目になった。

 

 

「「・・・・きゃぁぁぁぁぁ!!!」」

「あ!!アンリさん!セシルさん!!いいところに!!!」

「キャぁちょっとティファちゃん!!」

「抱き着いて来てくれるのは大歓迎だけど・・」

「「どうしてあの子達がここにいるんですの!!???」」

 

地獄に仏!!悩み時にアンリさんとセシルさんという仏様の糸が垂れ下がってたら迷わずゲットだぜ!をティファは敢行した。

 

二人揃って双剣を構えていても、安全にスライム達を大魔王の所に送り届けてくれる優しいお姉さんたち逃がしてなるものか!!

 

「この子達安全に大魔王の下に送ってほしいんです!!お礼は美味しいお昼ごはんでお願いします!!!」

「-あ!ご飯美味しいおねいちゃんだ!!-」

「-バーン-の気配がするおねいちゃん達だ!!-」

「「「「「-僕達!私達をバーンの下に連れてって!!!!-」」」」

「「えぇぇぇえぇ!!!!!」」

 

双子の魔族姉妹は其れは其れは魂消た。

バーンの退去命令破ってまで自分達でティファを捕まえに来たらあっという間に自分達が捕まった・・・それもこれもバーン様が命と同じくらい、其れこそティファと同じくらいに愛でているスライム達が全員集合しているのだから、裏事情迄知っている者からすれば驚くなという方が無理である・・・・本当に何故ここに来たんだか・・・

 

 

「俺もその二人に-礼-がしたい。構わないか小娘?」

「へ?」

 

双剣を引っさげた魔族の双子少女はどう見ても敵だろうと、妹を敵から引き離そうとダイが飛び出す前に、ラーハルトの方がいち早く動いてティファの横に降り立ち奇妙な事をのたまい、そして双子の説得をも始めてしまったではないか。

 

「どうせお前達でも俺達には勝てんのは分かっているだろう。無駄な事はしないで小娘の言うこと聞いておけ。どのみち大魔王も好きなタイミングで来いと言ってきているのだから構わんだろう。」

 

物凄く合理的そうでいて不条理な事を淡々と述べたラーハルトの言葉に、双子も観念して提案を受け入れる事になって物語は冒頭に戻る。

 

「・・・・つまり貴方たちは・・」

「バーン様に会いたくて・・」

「「温室を抜け出したと?」」

「「「「「「-・・・・バーンが来なくて・・・・-」」」」

 

食事を並べている間にベほがスライム達から脱走した理由を聞き出し、周りに伝えた結果、スライム達はただただバーン会いたさに脱走したらしい。

 

曰く、最近よく同じ時刻に来るのに今日は来ない。外もなんだか怖い気配がする。

 

ようはいつもと違いすぎる事で何かしら不安を覚えて出て来たらしいのを、アンリとセシルは溜め息を吐く。

 

この子達の勘は全て当たっている。これから間違いなく前代未聞の大激突が起き、その末にスライム達も自分達も大好きなティファか、奇跡が起きてしまいミスト様とバーン様のどちらかが敗れる・・・・のだが、その前に・・

 

 

「貴方確か昔魔界の食堂で」

「大人数のどカス共を相手に大乱闘して」

「「のしていた愉快な三人組の一人よね。」」

「・・・・・・・間違ってはいないのだが・・・」

 

 

・・・・愉快な三人組というのはどんなんだ?

 

二人の言い方にお礼をしたいと言っていたラーハルトは溜息ついてしまった。

 

ラーハルトがお礼を言いたいとはどういう意味かを、ダイ達も気になっていた。

 

このままではいつまでたってもお昼に出来ないと焦れたティファが、用意の手伝いはいいからそっちで話していてと、アンリとセシルの監視も兼ねてラーハルトを二人に押し付け、二人もラーハルトの顔をまともに見て漸く思い至り、ラーハルトの事を思いだした。

 

五年前、軍で子供と女を沢山殺した事を自慢してきた馬鹿に切れ、自分とガルダンディーとボラホーンの三人で一月以上所かまわず喧嘩しまくっていたが、始まりは軍内部の食堂で、その時食事も無駄にした事で咎を食い、一月食事を軍内部の食堂で取ることを禁じられた。

無論新参者であり、バラン様の威光を煙たく思う者達の嫌がらせであるのは直ぐに分かった。

魔界は地上とは違い、三食きちんと食べられるところなど魔王軍しか思い浮かばず、故に自分達を餓死ないし、飢えさせる気だろう。

近くにある街も村も、食料は高値であり、三食どころか一食を食べるのがようやくな者達が大多数の魔界で、軍の食堂禁止は飢えろと放逐されたのに等しい。

 

相手の言い分は兎も角、その貴重な食料を無駄にしてしまったのは事実なのでその件だけは本当に怒るに怒れなかったのを、救ってくれたのがこの双子であった。

 

毎日毎晩、自分達が喧嘩をして勝ったはいいが、お腹がすいて死にそうな頃合いにサンドイッチを持ってきてくれたのだ。

 

この時は、たかだか一介の料理人たちがこんな事をして咎められやしないか、何よりも自分達にこんな事をして何の利があると訳が分からず拒否しようとしたのを、

 

「か弱い女子供を」

「殺して自慢するドカスなど」

「「死んで当然ですわ!!」」

「話聞いて私達も腹ただしく」

「折よくあいつの顔面に綺麗に拳入れてくれた貴方達を見て」

「「スカッとしたのでそのお礼ですわよ」」

 

そう言い残して料理を手に押し付けてきて颯爽と立ち去ったのが、魔王軍の料理人長だとは夢にも思わなかった。

料理人長は文字通り軍の食糧の全てを管理し、何処の拠点ににどれくらい配るかの采配権も持っていると言われている、いわば食糧難の魔界においては絶大な権力を持っているに等しい二人が、ガルダンディーとボラホーンと自分の喧嘩理由を正しいと評価してくれた上にご飯までくれたのだ。

 

評価されたのは嬉しいが、今回自分達の処遇を決定した者は相当な地位にあるらしいのだろうが大丈夫かとボラホーンが聞いたのも鼻で笑っていたな。

 

「ドカスを庇う馬鹿等に」

「私達がどうして」

「「従ってやらなければいけませんの?」」

「ドカスなんていられたら」

「私達の大好きな」

「「ミスト様の大迷惑になるからもっとのしても良いのですわよ。応援してますわよ!!」」

 

悪い顔でニンマリと笑って頼もしく答えてくれたな。

ようは軍の規律乱すにはならないが、ならず者たちがいるのが気にくわんのかこの二人も。独特な思考に我が道を行く姿がよく似た、小娘みたいに面白い者達も居るのだな魔王軍にも。

 

食事の礼を何時か三人できちんと言いたいと思ったその直後、魔界の反乱討伐を半月で片付けたラーハルト達は、地上に本格的に配属になり、双子の姉妹にお礼を言えないままだったのを悔やんでいた。

 

自分達が生きているのは間違いなく一月食べさせてくれたサンドイッチのおかげなのだから。

 

「・・・お礼と言われても・・・」

「あの時言ったのと同じで」

「「ドカスをフルボッコした貴方達を気に入っただけですわよ。」」

 

ラーハルトからの礼を受けたアンリとセシルはぶっきらぼうに返事をかえす。

白い耳は赤くなると相当目立つのだと知らないで。




今宵ここまで

ラーハルトのお礼を入れたら意外と長くなりましたので三部作になりました。

軍でないと三食どころか一食食べるのにも事欠く魔界の過酷さが書かれていればと思います。
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