「あら」
「あらあら」
「これ美味しいですわね!」」
「・・・・そうか・・」
「本当に美味しいわラーハルト。」
「・・・マァム、たかだか切った具材をパンにはさんで適当に辛子やら胡椒を振って挟んだサンドイッチに・・」
「その香辛料の加減が絶妙なのですよラーハルトさん。」
「・・・アバン殿迄・・」
双子さんへのお礼は、ラーハルトが自分からサンドイッチ作って渡したいと言ってきたので好きにさせた。
なんだかんだで私と五年越しの再会する以前から、父さんとガルダンディーとボラホーンの衣食住全般の面倒見て他のラーハルトだって言ってたし、器用にサンドイッチ作ってたらみんなの目がね~。
「・・どうしたマァム?」
「え!その・・・私もラーハルトのサンドイッチあったら嬉しいな・・」
「・・・・構わん。」
「あ!俺も食ってみてえ!」
「俺も!俺も食べてみたい!父さんたちがどんなの食べてたのか知りたい!!」
「私も欲しいな~。」
「おや、其れなるついでに私も・・」
「・・・・・分かった。」
恋人マァムのも追加したら次から次へと追加注文が入ったのを、ラーハルトは色々と諦めた感じで引き受け注文出さなかったハドラーの分まで作って出した。
ここまでくれば一つ二つも変わらんとか。
そして得たのがこの大絶賛。ハドラーも黙々と食べているからご満足のようだ。
腹が減っては何とやら
私の右隣にアンリさんとセシルさんとその横にラーハルト、左からダイ兄が座ってみんな思い思いに食べてる。
あっという間にベーコンステーキなくなって、ピクルスがかりこりという音共に消え去って、ごくごくと水筒に入ってたレモン水がからになった・・・アバン先生御手製のサンドイッチも瞬殺されてた・・・・もっと用意しとけばよかったか?
美味しいのに口中は苦く、灰が入った様な不快さ・・・これは一体なんですの?
先程まで私達の存在を疎ましそうにしていた眼鏡の男までもが、どうして美味しそうに楽しそうに食事をしているの?
「アバンさん!レモン水のお代わり要りますか?」
「チウ君、お気遣いは嬉しいですが、貴方も食べるのを楽しみましょう。ね?」
「はい、美味しくいただいてます。」
・・・・魔軍司令官ハドラーも、気にせず黙々と・・・でも味わって食べてる・・
桃色の髪の女の子も、蜂蜜ブロンドの女の子も
「レオナ、紅茶淹れるわね。」
「ティファに先に出してあげましょう。ティファ~、お砂糖は?」
「ストレートでいただきます。」
黒髪の坊やたち不死騎団長も百獣軍団長も
「・・・・ヒュンケル、アメがないからといって果物を独り占めしようとするな。」
「・・分かった・・」
敵の私達がいるのに・・・・其れなのに・・
「アンリさん?セシルさん?」
「「どうしてあなたたちが敵ですの!!!!」」
飢えない食事は知っていても、温かい食卓を知らず、人と繋がっても、温もりを知らない二人は限界に達した。
ここ数日でティファに与えられたものは毒にも等しいものばかり!温かい笑顔を言葉を惜しみなく与えてくるティファを捕らえんと来たのに!!何故ティファの周りの者達も暖かさを持っている!
持っているだけなのはまだいい!それを・・・自分達の前で出して欲しくはなかった・・敵として扱われた方が!!こんなに胸が苦しまずに済んだのに!!
「ティファちゃんでも貴方達でも大魔王様と」
「ミスト様に勝てるわけがない!!
「「今から降伏して命だけでも!!!」」
・・・・これは・・・
「御免、出来ないよ其れは。」
双子の気持ちの変化に、戸惑い返答できなかったティファの代わりにダイが優しく答える。
この人達も妹の優しさに・・・
誰よりも、妹の優しさに包まれていたダイは二人の思いがよく分かる。
自分だとて、ティファを助ける為ならばどんな手でも・・
そして二人も優しい。ティファと一緒に俺達の命も心配してくれた。
「俺にも、俺達にも守りたいものがあるから行けないよ。でもね、ありがとうお姉さん達。」
ダイの言葉に二人は更に泣きたくなる。基本二人は-男-が嫌いだ。
魔界で双子は珍しく、其れも赤い髪に赤い瞳をした美形に生まれてしまった二人は成長してすぐに男達の慰み者にされ、地獄から這い出て魔王軍の台所に潜り込んだところをミストに見つかり、ボロボロだった自分達に黙ってパンをくれたのをきっかけに、二人は何度もミストに懇願して側仕えでなくともなんでもすると言って料理人長にまで上り詰めた。
それでも、女子供に敵意は一切なく、こんな良い子達を死なせたくないという情の深さまでも持って魔界という過酷な地に生まれたのが二人にとっては不幸であったのかもしれない。
「ティファちゃんの!!!」
「貴方達の!!」
「「頑固者で馬鹿ばっかりです!!!!」」
ダイの言葉に、力強く頷く一行の者達を見て、ティファの申し訳さなそうにしている顔を見て、二人は堰切ったように泣き出した。
どうしたって魔界の神に勝てる訳も無いのに!死にに行くだけなのに!!なぜそんなに優しい顔をしていられる!どうして笑っていられる!!!何故魔王軍を憎んでくれないのだ!!!!
泣くアンリとセシルの側に、何時しかスライム達が寄り添った。
知っている優しい人達が泣いているのを慰めたくて。
全部のスライムが二人に寄り添った時
ラド=エイワーズ
赤い魔法陣が二人とスライム達を包み込み、数瞬後に双子もスライム達も消失していた。
「・・・・バーン様・・」
「文句は聞かぬぞミスト。」
「・・・・はっ。」
二人の為にバーンは力の消耗を躊躇う事なく呼び寄せた。
「バーン様!!」
「どうして・・・何で・・」
「「あんなに良い人達が敵なんですの!!!」」
常日頃の大人びた言動も、冷徹な料理人長の威厳もかなぐり捨て、二人は魔界の神の膝に縋って泣き伏す。
「アンリ・・・セシル・・・」
「戦わなくとも!」
「地上だけ消せば!!」
「「あの人達を殺さなくても!!」」
「・・・・・すまん、その義だけは聴けんのだ。」
この二人の容姿でつい騙される者が大勢いるが、二人はまだレオナ姫とマァムと同じ子供なのだ。
子供なりに背伸びをし、周りに必死に張っていた虚勢をティファが崩してしまったか・・ティファの甘い毒が、二人の壁をも・・・
二人の頭を優しく撫でながら、そっとラリホーマを掛け深く眠らせガァグランスを呼ぶ。
「魔界の余の居城に、スライム達も。」
あそこは瘴気を遮断する。
「そこで其方も待機せよ。」
「畏まりました。」
バーンの命を受けたガァグランスは、すぐその場でゲートを起動し双子とスライムと共に魔界のバーンの居城に向かう。
水鏡のティファを見ながら
ティファ・・・俺はお前さんを恨めしく思う・・・
自分達を虜にしてなお大魔王、引いては魔界の悲願成就を阻もうとするティファが。
「・・・・行ったね・・」
「俺達もそろそろ・・・」
双子もスライム達も戻る気配もなく、腹ごしらえも終わったのだからとダイ達もここを片づけて行こうと立ち上がる。
自分達は憎くて大魔王を倒しに行くわけではない。そうしなければ地上が消えてしまうから・・・どうしようもない理由故に戦う事をやめるわけにはいかない。
行かないと・・・
「ティファ‼?」
あれ?
ふらりと倒れたティファを、ダイがすぐさま抱き留める。
「ティファ!!どこか痛いの?どこか悪いなら言って!!」
「ダイ落ち着いて。ティファはおそらく極度の疲労で疲れているのです。」
慌てるダイ達に、アバンがすぐさまティファの脈を測りながら目視によるチェックの結果、疲労だと伝えると全員がホッとした。
「・・・・先生・・・にぃも・・・眠い・・・よ・・・」
今宵ここまで