勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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ダイと主人公が行った先で待っていたのは・・・


最後の悪意

ダイとティファがいない

 

其れに驚いたバーンとキルを見て(ミストは外側では分からないので考慮しない)、ポップ達もこの事態を招いたのはバーン達であれど、二人がいなくなったのには関与していないのが見て取れた。

 

何故だ?キルの魔法陣に失敗は・・・・・・まさか!!よもやあの竜が動いたか⁉過日の意趣返しにこのタイミングで!!!

 

ざわめくポップ達をうち捨て、バーンは二人がいない原因を考えそして先程の赤い魔法陣の一部が黒くひび割れたのを幽かに見えたのを思い出し、この元凶に思い至り冷や汗を流す。

 

自分の考えが間違っていなければ・・・

 

ザァァァァ!!!

 

バーンは光魔の杖の魔力を水鏡に回し、辛うじて映し出す事に成功した。

 

映ったのはダイを背に負ぶって必死の形相で走っているティファと、悠然と足早に歩いて二人を追っている-キルバーン-の姿が映った。

 

 

矢張りか・・・・

 

キルが何故ここまで空間を使うに長けているのか。

其れは元主たる冥竜王ヴェルザー自身が最上位の空間使いであり、その能力の一部を分け与えたからだ。

 

キルの姿が水鏡に映っているのを見たポップ達は混乱をし、此処にいるキルを見てみれば・・・・これまで感じた事の無い死神の殺意を見る事になった。

 

「・・・あの駄竜王が・・・・」

 

暗く冷たい憎しみの声

自身の罠を利用してティファを連れ去ったヴェルザーをズタズタにしたいと気配に言わせて。

 

 

 

 

逃げないと・・・・にぃを無事にここから出さないと!!!

 

ティファはダイを背負って必死に走る。常ならば兄を背負いても小石ほどにも感じないが、此処は-ヴェルザー-が築いた亜空間。

自分の力が感じられない。

 

兄とここに二人だけで来た時は驚いた。パレスの息吹感じられない程の清潔過ぎる空間とは真逆の、命を感じられないところ以外は禍々しい気配に満ちた空間に。

 

だが、-キルバーン-を一目見て確信した。こいつはヴェルザー!駄竜王だ!!絶対に兄と合わせたくない奴だ!!

兄をすぐさま充て落とし、ずっとヴェルザーから逃げている。

ヴェルザーが怖ろしいのではなく、ヴェルザーが言った言葉から逃げる為に必死に。

 

-外-の仲間達がどうなったのかは分からないが、それでも自分達と同じところにいない事は確信が持てる。

居るのであればとっくに捕まって自分に対する人質にするからだ。

 

 

もぅ・・・息が・・・あ!!

 

ドサリ!

 

「・・・ぅつ・・・行かないと・・・ここから出ないと・・・・」

 

ただの女の子並みの力まで落とされたティファは、其れでも眠っているダイを必死に背負い直そうとする。

また負ぶって逃げられる。兄にあの邪悪なる竜の邪悪な言葉を聞かせたくなぞ・・

 

「まだ逃げるのか?どこまでも愚かなものだなお前は。」

「う!!五月蠅い!!誰が・・・誰が諦めるものか!」

 

確かに力は内に封じ込められて発現できない。だからといって消えてしまった訳ではない。

今ヴェルザーから何かしらの攻撃にあっても、表面の皮膚其の物に結界なり闘気なりを張り巡らせれば兄と自分の身くらいは守れる!

 

だが・・・・それだけでは駄目なのをティファも承知している。

 

「いいのか?ここでお前が遊び惚けている間にもバーンの小僧の勝ちが確定するだけだぞ?」

 

キルの姿を模したヴェルザーは転んで身動きが取れなくなったティファの前に立って竜の兄妹を見下ろす。

キルと同じ赤黒い目は、それでも見る者が見れば違うと分かる程に、ドロリとした情念を浮かべた禍々しい色を放っており、ティファは本能的にその色に怯え無意識にダイを背に庇いながらも後ろに下がろうとする。

 

当然ヴェルザーが逃がす筈も無く、くつくつと、魔女の大釜を沸騰させたような禍々しい嗤いを発しながら手を一度叩き、自分諸共ダイとティファを-振出し-に戻した。

 

「ヒッ!!」

 

か細くも心底怯える声を漏らしたのは-どちら-であったか。

 

振出しの地点には数百のヴェルザー軍の下層兵士達が武器も持たされずに-待機-させられていた。

全員がここにいる理由を先程ティファと共に聞かされ、それからというもの始終怯えていた。

ここには-任務-を果たす為と言われて待機させられていたが、其れは任務とは名ばかりの、冥竜王ヴェルザーの残酷な遊戯の駒にされただけと分かったから。

 

そしてヴェルザーが自分を此処に呼びよせた真意を知った時、ティファもまた心の底から恐れ戦き、すぐさま兄を背負って逃げ出したのだ。

 

ヴェルザーの望む事をしたくなくて!!

だが・・・またここに戻され・・・逃げる力ももう残っていない・・・・

 

「ティファ、俺は何も難しい事を言っている訳ではないのだぞ?」

「う!五月蠅い!!黙れ黙れ黙れ!!!!」

 

ダイを庇いながらも、ティファはヴェルザーの言葉を拒絶するが、ヴェルザーは気を悪くした様子はなく矢張り嗤っている。

 

どうしたって、ティファは自分の望み通りに動くしか術がないからだ。

 

 

「ティファ、俺にもバーンと同じ水鏡くらい使えるぞ。あれよりも-よく-見える水鏡が。」

 

ヴェルザーは腕を振るい、数個の水鏡を同時に作り上げ、そこに映っていたのは・・

 

「・・・・ロカさん・・・レイラさん!」

「ふむ、そんな名であったな。お前達の足跡は既に調べさせて俺も把握しているが、羽虫共の名前までは憶えていなかったな。確か先の勇者一行で盾となり剣となりてボロボロになった死に掛けが、今は-回復-の一途をたどっているのであったか?」

「あ・・・・」

「それにあちらに映っているのはリュート村とやらであったか。この国の王は理想とやらで国を傾けたが残りし民達はいずれも信仰深く優しき者達という評判は近隣諸国に鳴り響いているとか。」

「・・・・まれ・・・」

「あぁ、あちらもお前が助けたベンガーナの・・・」

「黙れ!!黙れ黙れ黙れ・・・・・お前が!!!」

「違うぞティファ。あれらは消すのは俺ではない。バーンだ。バーンの若造とあの人形と影達が地上を消すのだ。」

「あ・・・・」

 

水鏡に映ったのは一行というよりも、ティファが優先して守りたい者達ばかりを映した。

ティファの心が地上の事を更に思い、此処から出なければいけない心を乱して焦らせ自分のいう事を聞かせ易くする為に。

 

ヴェルザーは完全にティファを-理解-している。

憎いと心底思ったが故に、一度でさらけ出されたティファの本性からティファの全てを構築し、寝る事も無くこの数日ティファをいかにすれば穢し尽くせるかそれのみを考えていた故に。

 

ティファは八つ当たりを良しとしない。自分は事実を述べているだけなのでティファはその事で自分を非難する言葉を失ってしまう。

自分などはお構いなしに当たるのを、ティファは-いけない事-だと飲み込んでしまう。理不尽さを感じてもだ。

 

飲み込んで苦しそうにするティファに満足し、ヴェルザーは甘い毒を囁く。

 

「俺はなティファ、別に地上を残してもいいのだ。-多少の命-は俺の怒りの矛先として消えようが、-全て-消されるよりはましであろう?」

「黙れ!!そんな事許される訳が・・」

「ではどうする?すべて場消えるその時まで俺とここで遊び続けるか?俺は其れでも構わん。

地上がバーンの小僧に消されようがどうでもいいのだからな。

ただ、-綺麗事-を必死に喚くお前が哀れだと思うから俺は珍しく-慈悲-を働かそうというのに何が気に入らない?」

 

ヴェルザーは話しながら、ちらりと-配下達-を見ると、其れだけで配下‐だった者達-がガタガタと怯えている。

 

情けない事だ。俺様の配下であるのならば、俺様の命令を喜んで受けるべきだろうに。

其れが情けなく震えて真っ青になっているのだから嘆かわしい事だ。

 

「き・・・気に入るもいらないも!!お前は狂ってる!!お前は・・・・自分が何を言っているのか分かっているのか!!!!」

 

ティファも配下達と同じくらいに真っ青になりながらも気丈にも口を開いて一喝する。だが、常の力強さは欠片も無く、言葉の端から恐怖がにじみ出ているのが直ぐに分かる。

 

ティファも怯えている

 

その事実がヴェルザーに満足感を与える。

綺麗事を力強く言ってきた小賢しい娘が、たかがこれしきの事で怯えるとはな~。

 

コツコツとヴェルザーはゆっくりと歩いて配下に近づく。

怯えた配下の一人、ガーゴイルがとんで逃げようとする首根っこを掴み、態々ティファの方に向けにんまりと嗤う。

 

「や・・・やめてヴェルザー!!!!」

 

嗤うヴェルザーが何をしようとしているのか察したティファは、兄に全身の表面にに辛うじて結界を張ってヴェルザーの下に止めようと駆け寄るが遅かった。

 

ゴキリ

 

 

さしては大きくない、それでも静寂が占める空間内に響き渡る鈍い音と共に、ガーゴイルの体はだらんとヴェルザーの手の中でぶら下がり、走って止めようとしたティファは呆然としてその場にへたり込んだ。

 

・・・・間に・・・合わなかった・・・・

 

 

くっくっく、たかだか虫けら一匹が死んだくらいで崩れるとは他愛無い。

 

矢張りこやつは・・

 

「なぁティファ、先程俺の言った通りの事をすればお前と勇者の兄を此処から出してやるぞ。」

「やぁ・・あ・・」

「俺が言った事を-お前-が果たせばそれでいい。其れだけでお前はバーンの小僧の下に行き地上を守る使命を果たす機会が得られるのだぞ。」

「やだ!!!・・・それは・・・それだけは・・・」

 

ヴェルザーの破格ともいえる提言に、ティファは聞きたくないと両耳を塞ぎ錯乱したように幾度も首を横に振る。聞くことは出来ないと拒絶して。

 

その様に、ヴェルザーの嗤いは益々深くなる。

 

間違いない。ティファは、-生命を殺した事-は一度も無い。

ティファからは-血-の匂いが一切しない。だからこそ出会う全ての者達が-ティファ-が力を実際に使うまで、誰一人としてティファから強者としての力を感じ取ることが出来なかった。

 

力を持つ者は大なり小なり血の匂いがする。其れは互いに強ければ強いほどに感じ合うものだが、ティファからは一切しない故に。

 

魔軍司令官ハドラーも、新生六大将軍達も、味方の騎士達も兵達も王達もまたティファからは清らかな気配しかしなかった為に完全に見誤って対処してこようとしてきた。

 

力を持てば必然的に-敵-を倒す事が増え、勇者一行のマァムであっても敵を倒し命を奪ってきた者特有の気配がするが、何故かティファにそれがない。

方法は分からないが、ティファは強くなる過程でもその後でも敵の命を奪っていない事を示唆している。

 

報告にあった、運命の悪戯で知己となった竜騎衆の二人を討ち取ったのも、命を奪ったのではなく、渡されたようなものだと報告を聞いて感じてはいた。

差し出された罪人の首を刎ねる処刑人をさせられたようだと。

そんな者達の頸をいくら刎ねようともティファに血の匂いが付くことは無かろう。所詮は差し出された命を落とさせられた不運でしかないのだから。

 

そうではなく、己の意志を以て命を取った事があるかどうかだ。ティファにはそれを感じず、その辺の女童とティファは中身がさして変わらない。

 

未だ手いらずの花と同じ清げなる魂をその身に宿したティファを、自分の手で穢せるのが嬉しくて堪らない!

柔らかく白い魂を掌中に収めている様な陶酔感に酔いしれそうだ。少しでも匙加減を変えればぐしゃりと壊せそうな危うさが、また堪らない。ティファ其の物を握りしめている愉悦感が自分を酩酊させんとする。

髪を振り乱し取り乱すティファは可愛いものでは無いか。

 

「ティファ、俺は難しい事を言ってはいないのだぞ?」

 

蹲り泣き伏すティファの背後に忍び寄り、自らも座りティファを優しく抱きしめる。

 

「や!放せ・・・」

「おやそれは、そんな酷い事を言われると俺の心が傷つくぞ。その悲しみを紛らわせる為にまた羽虫を握りつぶすか・・」

「やめろ!!!アレはお前の・・」

「そうだ、俺の物を俺がどうしようと俺の勝手だ。強者こそが全ての魔界において、俺の言葉は重いのだぞ?」

「ひぃ・・・ヒィィィイ!!!ヴェルザー様!!お許し・・」

「五月蠅い奴だ・・・」

「ひぎぃいいい!!!」

「・・・喚く声も五月蠅い奴だ・・・」

 

闘気を送って喚いた者の口と鼻を塞げば、其れだけで見苦しく騒ぐ様にはうんざりとする。しかしティファの顔色を更に悪くさせるのだからこれはこれで一興か。

 

「やめて!苦しんでる!!」

「そうか、ならばお前が慈悲深く-終わらせてやる気-になったのかティファ?」

「あ・・・・・・」

 

ティファは自力ではここから出られない。そして外で見ているバーン達にもここから二人を出す術はない。

 

 

「・・・この空間も・・・・・ここも違う!!!バーン様!!」

「・・・余のラド=エイワーズも利かぬ・・・」

 

外にいる二人の空間使いは、持てる力を駆使してティファと・・・・癪だがダイも共に連れ出そうと試みている。

あのヴェルザーの策を見過ごす方が許せないからだ。

しかしどうにもならず、見ている事しか出来ない者達はヴェルザーの行っている出す条件を、条件次第で飲んでくれないかと思ってしまう。

その-条件-を聞くまでは。

 

 

「さぁ、そろそろ決めよティファ。地上を救いたいのであろう?幾千・幾百万の命を救うのに何を躊躇っている。」

「出来ない!!出来る訳ない!!!!」

「何故?あぁ、-力-ならその時返してやるから安心しろ。簡単な算数の問題ではないか。童にも分かる簡単な事だぞ。」

 

ぐしゃぐしゃになったティファの顔の頤に、ヴェルザーは親指を添えて前を向かせる。

ティファの泣いている瞳に映っているのは、自分と同じく泣きながら震えている憐れな者達。

誰もが-死にたくない-と叫んでいる。

 

その双方の様をヴェルザーは嘲笑い謳うようにティファに話し続ける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

まるで部屋の中を掃除すればいいというように、生命を消せというヴェルザーの言葉に、ティファの心は慄きながらも、考えてしまった、思ってしまった。

 

もう・・・・其れしか術がないの?

 

冥竜王ヴェルザーは残酷な者として君臨していただけに、その手の心の機微には敏感に察する。

今、ティファの心の天秤が僅かに傾いた事に

 

あぁもう少しだ、もう少しでこの御綺麗な小娘を血塗れに穢し尽くせる。

血の匂いを漂わせながらも、自らの行いにこの小娘の心が耐えられ切れる筈も無く、血だまりの中で壊れて座るティファの姿が脳裏に浮かび興奮するのを、抑えるに一苦労するではないか。

 

もう一押し、ほんの一押しすればティファの心は坂を転がり落ちる・・

ティファの小さな耳に近づき最後の毒を流し込む。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

楽な道を選び、転がり堕ちるがいい




今宵ここまで
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