此方は本編のヴェルザーを追い払った後のお話となります。
・・・・俺達に一体どうしろってんだよまったく・・
「めんなさい・・・ごめんなさい・・」
ったくさっきからこればっかりだよこの娘っ子は。
二人ほど殺されたが残った者達は無事にあの残虐な空間から出られたと大喜びしたのも束の間で、先程からずっと謝られ通しでいい加減にうんざりとしてきた。
曰く俺達の事を、自分の都合で殺そうとした事が悪いとさっきから泣いてるは、兄と呼ばれた小僧っ子も申し訳なさそうな顔して俺達の事を見ながら娘っ子を抱きしめて慰めて忙しいわで・・・本当になんだろな~。
悪いのは全部あのくそ大トカゲのせいだろうに。
大方あいつのもろ趣味にこの娘っ子が合致しちまったせいで目を付けられちまって・・俺達は単にそのとばっちりの遊びの駒にされただけだろうによ~。
魔界ではそんな理不尽は日常茶飯事に転がっている。誰かの気まぐれで弄ばれ駒にされ命が藁束の様に投げ売られているのがヴェルザー支配下では当たり前。
自分も腐るほどそんな目に遭う者達を横目で見てきたが、今度は自分たちの番かと半ば諦めていたのに・・・・生きているだけで御の字という言葉をこの娘っ子は知らないのか?
魔界の住人の死生観は実は物凄くドライだったりするのだが、バーンの領地、其れも直轄地やおひざ元ではそんな事した者の方が地獄を見るので誰もやらないので双子は甘くなっていたりするがあれこそ例外。
生きていればそれでいいのに・・何を泣いて謝って来るのか生き残り組はさっぱりでありお手上げ状態である。
もう仲間達にも爺ちゃんにも申し訳が立たない!!生命は尊くて、大切にしなさいっていう爺ちゃんの教えを自分の都合で無視しかけて・・・ダイ兄起きてくれなかったら私はこの人達を・・
「ごめんなさい・・・怖い思いさせて・・・殺そうとして・・・・」
幾度謝っても謝りきれない・・・それに・・・
「貴方達の事どうすれば・・・・」
ある程度落ち着いたティファは、兄の腕から出てヴェルザー配下にこの後どうするのかえぐえぐと泣きながらではあるが尋ねる。
・・・・・そうだよ、俺達どうすりゃいいんだ?
問われた者達も本気で悩む。
ここが何処なのかは分かる。話に聞いた地上とやらだ。天蓋が青いのは空で、温かいのが太陽で、あれらを手に入れる為に魔界の神様は戦ってくれてるそんな中を、横槍入れて邪魔したヴェルザーの野郎の配下だった俺達の処遇はどうなんだ?
「あの・・・・大魔王に、貴方達を魔界に戻せないか聞いてみましょうか?あの中央の塔に居るので、一っ走りして・・・あ、もう水鏡で私達の事分かって・・」
「その通りだよティファ。バーン様はちゃ~んと見ておられんだよ。余計な事気にせずとっととそいつらこっちに渡してくんな。」
とんでも提案と怖い事をさらさらと言うティファに一体のガーゴイルが飛来して話しかける。
「ガァちゃん!!!」
・・・・・・こいつは・・・まぁいいか、どうしたってこいつはこうなんだから。
ティファは決してふざけている訳ではない。本気で俺達の事を知ろうとして好きになってくれたんだろうとは思うのだが、アンリとセシルをあそこ迄泣かせたのは赦せないので少しつんけんしてや無視してやる。
それに・・・ゴロアも泣かせたし・・・・
動力炉の面倒を見る為に遺されているが、ティファと会ってしまった時どうしようとも悩みながら泣いていたのだから、ティファにこれくらいしても罰は当たるまい。
「お前達ヴェルザーの奴の配下だろう。バーン様はお前達の領地迄通知したはずだぞ。」
「お!俺達だってここに来る気は・・そもそも魔界の神様に逆らう積りなんて端からないんだ!!」
「信じてくれよ!俺達本当にあいつに・・」
「ふん!腐れ外道のオオトカゲに使えてる事自体が不幸って奴か。バーン様のお言葉だ。お前達を速やかにパレスから魔界の領地に帰せとのお達しだ。
行先はバーン様の領地だが、そこに留まるも戻るも他に行くのも好きにしろとの恩情だ。
ただしそこで無法働いたら死んだ方がましな目に遭うからその積りで・・・」
「ガァちゃん!!!」
「うお!!!」
「この人達殺されないの⁉罰せられないの⁉」
「ティファおめぇ・・・・」
「良かった・・・本当に良かった。」
無視されても、バーンの言葉を携えて来たガァグランスの言葉に喜んだのは誰でもないティファであった。
ここはバーンの居城であり、先日ヴェルザーに送り込まれてしまった者達は言い分すら聞いて貰えず皆殺しの憂き目に遭ったのが忘れられず、どうにかとりなせないかと提案までしてみせた。
生命が、誰かの思惑の駒となり玩具になっていい筈がない
最悪は全員を筒に入れて、ベグロムとデスカールの様に自分の体内で守る算段迄つけた時に時の神が仲裁に降りてきてくれたとティファの目には映り、たまらずガァグランスに抱き着き面食らわせている。
あぁもう仕方がなえぇなこのお嬢様は・・・・自分も弱いのだ。素直に感情のままに動き、大半は優しき事を行うティファに。
「バーン様に会ったらきちんと感謝しろ。この件ではミストバーン様もキルバーン様も反対されてねぇんだから同じようにちゃんと言うんだぞ。」
「はい!」
「おし・・・・さっさとバーン様の下に行って、とっとと捕まってまた捕虜になって来い。」
「え・・・・・え~・・・?」
其れはちょっと・・・
ガァグランスに頭を撫でられながら、ティファは思考のフリーズを起こし困り果てる。
ガァグランスは冗談を言っているようには見えない。この言葉はきっと魔王軍ご一同様が願っているのだろうか?
「ガァちゃん・・・・」
「あぁ困らせちまったか。どうしたってうちのバーン様は強いんだから、無駄な抵抗すんな。
痛いの嫌だろう?」
・・・・私の周りの人達ってどうして痛いのを基準にして怖い事勧めてくんだろう?
主に即死させてやるとか捕虜にしてやるからとか訳分らない。
それにしても・・・・自分が一応敵であるガァちゃんに抱き着いても怒らない兄の方が怖く感じるのは何故だろう?
「おら行くぞお前達!!」
あ・・・・
ティファがダイの方を気にしてそろりと振り返ると直ぐにガァグランスはヴェルザーの元配下達を引き連れてパレスのゲートに向かわせる。
「本当にごめんね!!怖い思いさせて!!!もう怖い事に遭わないように気を付けてね!!!!」
去り行く彼等の背中に、ティファは大声で気を付けてと何度も届ける。その姿が見えなくなるまで。
その声に、元ヴェルザー配下は戸惑いガァグランスをちらりと見る。このガーゴイルはあのおかしな娘っ子の事を知っているのだろうか?
「・・・・あの子は本気でお前さん達を心配しているだけだ。」
「は⁉」
「それ以上でもそれ以下でもねぇから悩むだけ馬鹿らしくなるぞ。」
「悩むなって・・・・だって俺達は赤の他人だぞ!!それもさっき会った・・・」
「知るか、あの子にとって、-生命-ってのはそんなもんなんだろうよ。」
会った時間の長さでも何もなく、生命に比重がない・・・・夢物足りに出てくる狂人の戯言と・・・・何故か全員が笑うことは出来なかった・・・あの真剣な声が耳から離れなくて・・・
「バーン様、彼等は行きましたが竜の兄妹は動きませんね~。僕がお迎えに行きましょうか?」
全てを静かに見届けている一行とバーン達は、キルの発言にチウ以外の全員が眉を顰める。
お前今行ったらヴェルザーと間違われて討たれても文句言えんのだぞ?とのバーン達と
変態疫病神が二人に近づくなの勇者一行の見解に相違はあれど
「構わん、大人しく待っておけ。」
バーンの鶴の一言で決着した。大人しく待て
「行っちゃたね・・・・ダイ兄・・・巻き込んで・・」
「ティファ・・・」
「あいつの恨み買ったの私なのに・・・」
「ティファ。」
妹の謝罪を、ダイは優しく抱きしめて遮る。
「あいつは放って置いたらいけない奴だ。バーンの前にどうにかできた良かったよ。」
「にぃ・・・」
「さあティファ、行こう!皆もきっと先で待っている気がする。大魔王バーンを討ちに行こう。」
「にぃ・・・うん、そうだね!止めに行こう。」
「捕まってティファ!」
・・・来る、余の最大の邪魔者にして愛おしい者が・・・・
トベルーラ!!
ダイの宣言を聞いてバーンは玉座から立ち上がり光魔の杖を手に持ち出迎えの準備をする。
最後に、この広間にいる全員の顔を見渡しながら。
ポップ達も備える様に構える前に
「遅くなって申し訳ありません!!」
「勇者ダイと料理人のティファが大魔王バーン!お前を討つために来たぞ!!!」
「ダイ!ティファ!!!」
ポップ達の真ん前に着地した二人が勢いよくバーンに口上を堂々述べる。
「大魔王!ヴェルザーの元配下の方達に対する温情有難く!!ミストもキルも反対しないで下さりありがとうございます!!」
「ふ、捕らわれまたあの者達に会った時が楽しみであろう?」
「生憎兄達も私も負ける気はありませんよ!!」
「バーン!!二度と俺も皆も負けない!!負ける者か!!!!」
礼を述べながらの宣戦布告に、バーンもミストもキルも嫌な気にはならない・・・不思議な事だ、構えている後ろの者達にも好意すら持てるのだから。
これから大激突をする者達相手に、勇者達に好感を持つとは何の皮肉であろうか?
魔界の現状を見せ、天界の非道を話せば共に天に弓引いてはくれぬだろうか?
・・・・無理であったな・・現に優しいティファも、此方には来てはくれなんだ・・
惜しい者達よ・・・
「では、始めよう。」
たった一言、バーンが言葉を発しただけで玉座の間の空気が冷たく重苦しいものへと変貌し、筆頭のダイとティファも身が地面に押さえつけられそうになるのを堪えた時、バーンの額が輝き白い光が部屋を満たした。
何かの攻撃かとダイは即座に剣を抜いて身構えたが何事もなく、その事に返って驚いた。
目晦ましにしては光は直ぐに収まり、本当に何事もなく驚いていると、地面に何かがあたり反響する、カツ―ンカツ―ンという音が響くだけであった。
今宵ここまで
ifとの差異が書けていれあいいのですが、大魔王と冥竜王の魔界での敬愛の念の差もかければ幸いです。
物語も終盤にようやく突入しました・・・・足掛け三年・・・プロットではこれ程長編になる予定では無かったですが、筆者なりに出てくる者達の心情や、幸せへの道筋をつけていれば、長々となってしまいましたが悔いはありません。
(決着を読みたい読者の皆様の身にもなれという話も・・)
三百五十二話でようやく三十五巻辺りになりました。
(・・・・ここまで来るのに十倍って・・どれだけ回り道したのやら・・)
もうしばしお付き合いの程を、よろしくお願いいたします