バーンの不意の攻撃は、流石のティファも避けれるものでは無く当たったはずが、爆炎と煙が消え果てそこにいたのは、掠り傷一つなく佇んで座っているティファの姿があった。
結界を張った気配も、闘気で防いだ気配もない筈なのに、衣服にすらダメージが無いのはおかしすぎ、ダイ達も何故と目を凝らして見ていると、不意に水鏡の一つから声がした。
それは金の髪を長く伸ばした光の精霊王からであった。
「無駄ぞ小僧。お前では其の者には毛筋の傷すらつけられん。無駄な事はよせ。」
「左様、今のティファは我等六大精霊王の加護がある。其方では無理ぞ。」
光りの精霊王の言葉を、白髪と白髭を波打たせた水の精霊王が補足する。
三神よりも遥か昔よりこの世界に存在する彼等にとって、人間以前にバーン迄すらもが小僧・若者の部類に入り、諭すように優しく話し掛ける彼等にティファはにこりと笑って頭を下げる。
「お久しぶりございます皆々様。」
「わぁいちびちゃん久しぶり!!ようやく舞台も整って僕等の悲願が果たせるね!!」
「お久しぶりです闇の精霊王様。」
「久しぶりじゃのう吾子よ。其方はちっとも大きくならんの~。」
「少しは大きくなれた積りですよ風の精霊王様・・・・漸く約束が果たせます・・」
「なに!儂等の力でドカンと一発じゃわい!!」
「変わらずお元気そうでなによりです土の精霊王様。」
「ドカンなどと品の無い。野火のように素早く力で覆い尽くし一気に事を進めれば良いではないか。」
「火の精霊王様、お久しぶりで御座います。」
それぞれ個性豊かな王達と挨拶を終えたティファは、未だに事態についてこれない兄達と大魔王達に向けて説明を始める。
これから何が起ころうとしているのかを。
「大魔王、先程なぜ私が柱の中に黒の核晶があるのを知っていたのかと言いましたね。」
「・・・・その通りぞ。」
「そちらは今は言えません。しかしこれから何をするのか聞いてください!精霊王様達と精霊達と眷属の方々の力を借りて柱の力と六芒星の陣の力全て乗っ取らせていただきました。もう貴方が何をしても、更に言えば誰が何をしようとも黒の核晶が爆発させる事は出来ません。あの駄竜王が手を出そうともです。」
「其方は、其方達は何をしようというのだ!!あの力を以て魔界を一気に滅ぼすつもりか⁉」
ティファの言葉に、自分の力が及ばない事を知ったバーンは慄きながらもそれでも問いただす。
広大な魔界の地とて、荒廃し最早大陸基盤の端から崩れそうな魔界の現状であれば、あの力を使えば一気に終わらせる事もまた可能なのを知っているから。
天界と地上の為に、ティファは忌まわしき負の遺産として天界の使いたる精霊王達手を組み我等を・・
「違います!!そうではないのです!!!・・・何をするか、見ていてください!魔界が苦しんだように、その事で苦しんでいた者達が数多いた事を!その苦しみを終わらせる為に貴方以上に長い時を掛けて今日この日を迎えた人達がいる事を!!」
言葉ではいくらでも言い繕えよう。言い繕っているのでは無い、本気で魔界と住民たちを救うのだと、言葉よりも行動で示すべきだと、ティファは毅然と顔を上げ長い間懸けて教えられた妖精歌を力強く歌いだす。
この世界の争いの、少なくとも魔界と地上界の争いの根の一つを断てると信じて。
ティファの透明な歌声に共鳴する様に、精霊王達を筆頭に柱のそば近くいる全ての者達もまた天を仰いで歌いだす。
その声だけでも空気が震え、少しずつ歌っている者達の全身が光り輝きだし、遂には柱すらが光に包まれ、そしてその光が大地に達した時、光は線を描きながら大地を奔り、瞬く間に柱同士の線が繋がった。
其れは大地だけではなく、河を、湖を、そして海の上すらも光の線は途切れる事無く、結ばれ文字通り光の六芒星が完成した瞬間、-世界-が繋がった。
・・・なにこれ・・
一体何が起きている!!
何だこの光と・・・声?大勢の声が聞こえるのは!!!
戦ってる?誰が?
今日で世界の命運が決まるってなんの事⁉
魔王軍の仕業か!!!
ざわざわざわざわと大勢の声がする。男の声・女の声・老人から子供の声まで千差万別の大勢の声が、ダイ達の耳に飛び込み、耳を押さえても声がする事態に、ダイは咄嗟に父を思い浮かべた。
父さんなら、この異常事態を何か知っているのではないかと思い浮かべたその瞬間
「・・ディーノ?ディーノか!!」
「あ!父さんなの!!父さん!何が起きているの⁉この声はなんなのさ!!」
父の声にダイは縋りつき一気にまくしたてるが生憎バランも何が起きているのかが全く分からず、息子と同じくこの事態を呆然としてみていた。
精霊王達が自ら顕現するまで柱にいる事すら分からず、聞こえてきた妖精歌と、光が輝いた時自分では計り知れない何かが起こっている事だけは辛うじて分かった程度。
そこに突然大勢の声が聞こえたが、直ぐに息子の声がして返事をかえせば息子の声以外聞こえなくなっている。
その様子を、ティファがダイ達に優しく説明をする。
「今世界を繋いで世界中の声が一斉に聞こえる様になってます。けれど本人が話したいと頭に浮かべ、見たいと思うところを明確に思い浮かべれば見れるようになりました。
大魔王・・・宝玉失礼を!!」
説明をしながらティファは左手を一閃し、宝玉を破壊し全員を表に出した。
いまだかつて破られた事の無い宝玉を易々と破壊された事に衝撃を受けたバーンの下に、ミストがすかさず駆け寄りキルもまた主を支えに戻る中、ティファはその場から動かず出て来た者達に優しい笑みを向ける。
「お帰りなさい皆さん。少しばかりお付き合いいただきます。」
「ティファ!一体・・・これから何が起こるの?」
「マァムさん・・・その問いに答える前に、一つ試していただきたい事が。」
「・・・・何をするの?」
「はい、ロカさんとレイラさんと話したいと、頭の中で話し掛けてみてください。私は今出来ない事なのでお願いします。」
「・・・・・頭の中でいいのかしら?」
「はい、お願いします。」
ティファは滅多に自分達にお願いをしない。そのティファがして欲しいと言っている。ならば、どれ程理解しがたい事でも叶えて上げたいと、マァムな胸の前で手を組み、祈るように両親に声を伝えれば果たして
「マァム!!マァムなのか!!!」
「父さん⁉」
「マァムなのね!一体何が起きているの!!」
「かぁさんも・・・・私にもまだ何が起きようとしてるのか分からないの!でもね、ティファが知っているの。」
「ティファ・・・・またあいつか・・・・あいつはこの後どうするって言ってやがる?」
「ロカ・・よろしいでしょうか?」
「その声は・・・お前!!!生きてたのかアバン!!!!!」
「アバン様⁉」
「その話は後程、ロカ、レイラ、ティファはこの世界を助けたいと言っていました。この現象もその一環であると。声はどうやら話したい者同士を繋げてくれるようです。パニックにならない内に、急ぎ私達の知っている者達にこの事を知らせるべきでしょう。フローラ様達にはすでに私が話しています。かつての勇者一行の名はまだ廃れていない筈です。出来得る限り大勢の人達に!」
「・・・分かった、この現象は本当に害はないんだな。」
「ティファのする事が害になる事は無いと私が保証しましょう。」
「け!!そのティファに色々と縋って死んだふりしておいて・・・後で必ず俺の前に来い!一発ぶん殴るからよ!!!」
「ええ、必ず。」
かつての勇者と戦士が物騒な約束を結んだ後、二人はすぐさま世界中の知り合いや冒険家達、アバンに至っては王侯貴族総てと繋がり同時に説明するという神がかり的な事をしてのけた。
原理は分からずとも、水晶を複数使って同時に大勢と話せるものだとイメージすればいいという、この現象を引き起こしている精霊王達とティファですらが思いもつかなかった方法を使って。
彼は伊達に-原作唯一のチート-と言われていた訳ではないのが証明された瞬間でもあった。
「そうです!この現象はティファと魔法を使う時に力を貸すあの精霊の王達が・・」
「今のところ魔王軍は倒しきれていませんが彼等にも戦う力は残っておらず現状を見定めていて・・」
「はい、一行全員無事です。」
「世界各国この様な事態になっていますが今の所目に見える被害は・・」
「その通りです。話したいと特定の物を思い浮かべれば距離は関係なく話せると。」
「今世界がどうなっているのかを見たいと念じれば其れで見られるそうです。」
アバンはマァムがロカとレイラと繋がったのを知ってすぐさま行動を起こしていた。
手始めにフローラに話をし、彼女にやり方と伝えるべき内容を教えて直ぐに各国にこの現象を落ち着かせる手立てを話し、自分を知る知り合い全てに話を通した後、あれ程ざわめき雑音に満ちていた世界が落ち着きを取り戻すのにそう時間はかからなかった。
方法を知った者達はそれぞれの者達と繋がり合い、そしてこの世界の様を見始め、未だに大勢の声がするものの、先程よりも落ち着きを取り戻したのだ。
無論それはアバンのみならず、パレスではポップも急ぎ両親にアバンが言った事と同じ事を伝え、少なくとも近隣住民の顔見知りに落ち着くように話して欲しいと頼み込み、地上でもフローラやバウスン、アキームを筆頭に伝達をしているおかげでもある。
「ニーナ!!みんな無事か?」
「ガルダンディー⁉・・・ついさっきラーハルトさんからも同じ事言われたけど大丈夫よ・・・・そっちは?」
「バウスン様!王も我等も無事なれば!柱の方も大勢の精霊様方達と光が見えますが大地に異状はなく!」
「アキームよ!その方達は・・」
「は!勇者様方もご無事で・・・・我等も何が起きているのか・・」
「大丈夫、今はこの現象で地上に害が起こることは無いって。」
世界の声が、落ち着いて話をしだしている。
もっと混乱が起きながら、徐々に声が繋がるのに気が付いて時間がかかっても落ち着くだろうと見込んでいたのが・・・瞬く間に落ち着いた・・・・
・・・・・・拝啓三神様、私をわざわざ転生させなくとも、アバン先生を幼少の頃からスカウトしていればいいだけだったのでは?
そう思う程にアバンは有能だった。
前世で言えば、同時テレワークを概念すらも知らずに、それでも各国の王達と要職についている者達と話し、遂には言った事のある村々の村長にまで話を通しすのをそつなくこなしているアバン先生に、この事態を作ったティファすらが度肝を抜かれた瞬間であった。
其れでも、これで-第二段階-に移行できる。
この作戦の肝ともいうべき事を・・・・・この平和であった地上の者達に、地獄を見せる事を赦して欲しい・・・
今宵ここまで
第一段階は無事に終われました。