勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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世界中の明日の為に⑤

どうして助けてあげられないの⁉

 

かつても今も、私が悩み苦しんでいる事を、同じように苦しみ嘆いてくれる人達が現れてくれた。

其れは、どれ程感謝してもし足りない。別世界の事だと放り捨てるのでは無く、同じ命が消えてしまうという痛みを感じて嘆いてくれる人達がいてくれた事が。

 

ティファの目の前にいるダイ達もまた、助けられないのかと叫んでいる者達の一人。

世界は知ったのだ、何故魔界が執拗なまでに地上を攻めて来ていたのかを。

 

だからと言って世界全てが助けたいと思う者達ばかりでは無い事を、残念な事にティファ自身良く分かっている。

そちらも、ある意味人として当然の感情だと分かっている分、否定の言葉を聞くのが辛い。

 

「魔族だぞ⁉散々俺達を攻めて来た奴らを助けるだなんてとんでも無い!!」

「このまま滅んでもいいじゃないの!!!」

 

因果応報、数千年間積み上げられてきてしまった因果が、助けたいと思う者達の道の邪魔をする。

魔界の現状でやむを得ず豊かな地上を責めたのだという言い分は、残念な事に地上の者達の大半にとっては所詮は他人事であり、辛いのであればいっその事滅んでしまえばいいのだというものたちが一定数いるのもまた事実であり、其れは魔界の者体の心をいたく傷つける。

 

救いを求めても届かないのであれば、大魔王様の言う通り地上を!

 

深部の凄惨さを知らなかったとはいえ、魔界の者達は何処かで魔界の地が危うい事を薄々気が付いてはいた。

長命であるが故に、百年前と五十年前と一年前と、段々と少しずつ、大気に澱みが増え飲める水が少しずつ減り始め、なのに食料が足りているというおかしさに。

本当であれば地が荒れれば食べられなくなるものが増え、暴動になってもおかしくない筈が、食べられない者達が一向に増えなかったのは、それ以上に深部の者達から死んでいたから。

亡くなった者達は食べる事は無く、大地の恵みが減るよりも死者の方が増加していたからだと知った今、滅んでしまえばいいという地上の者達の言葉に絶望した心が黒く染め上げられかけたその時、一筋の光が差し込む。

 

 

         「嫌よ!!私は見捨てたくない!!!!」

 

一人の少女の叫び声が、負の心を薙ぎ払うかの如く

 

「助けが必要な人を助ける事の何がいけないってのよ!!!確かに、魔界は今まで私達のご先祖様を沢山襲ったって!!私の国にもそのせいで大勢の人達が死んで今は五十人もいない国になっちゃったけど!!けどね!だからって命があんな風に消えていい訳ないじゃないのよ!!命を見捨てていい理由にならない!魔界の今死に掛けている人達が!!!私達になにしたっていうのよ!この世界になにしたっていうのよ!何もしてないじゃない!!なにも、生きる事も出来ないで死んでいく人達を見捨てるなんて私はまっぴらごめんよ!!!!!」

 

怒りと悲しみと、それ以上の優しさがない混ぜられた声で叫び上げたのは

 

「私はニーナ!!テラン国・リュウ-ト村のニーナ!!私は、私はあの人達を、死んでしまうあの人達を助けたい!!」

 

かつて人を憎んでいた鳥人・海獣人・半魔の青年達の心の中に住まった子供の一人、リュウ―ト村のニーナだった。

 

少女は命の儚さ、生きる事の難しさを齢十の内から知っている。

五年前、自分で卵から孵し妹とも呼んだ子竜のミーナが瀕死の態になった時、偶然出会った薬学知識のある少し年上の少女・ティファに助けを求めた。

その時は必死に妹を助けて欲しいと縋ったが、無情にも妹たるミーナに助かる方法は最早なく、出来る事は安らかに死なせてあげる事しか出来なかった。

救って欲しい、そう言ったのに死なせる事しか出来ないと言われた時、瞬間怒りで頭が一杯になり、親切にミーナを診てくれたティファに怒鳴って追い出して・・・それでも両親の話を聞いて、ミーナをただ苦しませる為だけに命を永らえさせたらいけないと、幼いながらも悟ってしまった。

 

ミーナは、息をしているのすらがもう苦しいのだと。

 

その日の夜は月が綺麗だった。ミーナを送るのはこんな綺麗な夜が良いだろうと、両親も泣きながらミーナに薬を飲ませようとしたのを止めて、自分がミーナに薬を飲ませた。ミーナは、自分の妹だから

 

御免ねミーナ・・・こんなになる前に助けれ上げられなくて・・・悪いおねいちゃんで、役立たずのおねいちゃんで・・・

 

飲ませながらミーナに申し訳なくて、眠るように逝くまでミーナを抱きしめ何度詫びたか知れない。

それでも役立たずの姉の自分の頬を、ミーナは最後に舐めてくれた。悲しむ自分を労わって・・・・・あんなことは二度と御免だ!!!

ガルダンディーとの出会いは最悪だったが、それでも、共にいる子竜のルード君の体を労わって歯磨きを不器用ながらも手ずから作ろうとしたガルダンディーを好きになり、周りで泣いている人達がいないようにしたいと願って育ってきた。

そして今!目の前に助けを叫んでいる人達がいるのだ!!!

 

魔界がミーナのように手遅れになってしまったら、本当に滅ぶしかない!そんなのは嫌だ!!

 

「命を見捨てる何てこと二度としたくない!!するもんか!!!」

 

その言葉に呼応するかのように

 

「僕も嫌だ!!僕も、ニーナと同じリュート村のディアッカだ!!大人はいつも言っているじゃないか!困っている人達がいたら手を差し伸べて助けるもんだって!!」

「私も嫌!どうして・・・・死んでいく人達を捨てないのいけないの⁉」

「酷い事されたら酷い事をし返していいの⁉」

「そうだよ・・・そしたら、どっちがが全部いなくなるまでそうしないといけないの?」

「酷い事されても、相手に仕返しをしたらいけないって言ったの嘘なのかよ母ちゃん!!」

 

 

リュート村の子が、そして世界中の子供達が声を上げる。

 

其れは、大戦のせいで帰らぬ人となった者達の家族・恋人・友人・知り合い達からすれば、現実を知らない子供の綺麗事だと、ロロイの谷で、ティファに負の感情を抱き暴走したカール騎士達のように心が荒れる者達が確かにいた。

しかし、その彼等・彼女等にもニーナ達の純粋なる思いに、魔界の者達を、敵である彼等を憎み切ることが出来なくなっていった。

自分達の痛みを、そのまま・・それ以上の事で返せば憎しみは癒されるのか…そんなはずはない!知ってしまったから!!魔界の未来を!!数百年後には命が消え果る、そんな過酷な世界を救う為に戦っていると言われては何も言えないではないか!!

誰が、こんな酷い事を知らしめて欲しいと言ったのか⁉知らなければ、憎み戦うだけで、そんな単純な思いだけで生きていけたというのにだ!!

 

 

「助ける術などあるものか!!あれば魔界はとっくにその方法を試みここまでの事になっている筈が無い!!!第一!魔界がこのようになっているのは神の思し召しだ!!!!」

「その通りだ!」

「助けるってじゃあどうやるのよ!!」

「そんな方法があったとして、今まで魔界が助けられなかったって事は、神様達から見放された証拠じゃないか!!!」

 

それは最早恨みではない、知らされた事の重みに耐えかねた痛みの叫びであった。

知りたくもない、痛みを知らされ、知らなければただ相手を恨んでいればそれで済んでいた現実を打ち壊した者への戸惑いと、怒りと新たなる憎しみに心を染めた者達の声であった。

魔界は少しずつ滅ぶ。其れは自分達が味合わされた痛みを、彼等が味わうのを是として。

 

その声が助けたいと思う、子供や純真な人達の思いと同様に、世界各地に瞬く間に野火の如く広まっていき、聞いていたダイ達の顔を青褪めさせ、矢張り魔界を助ける者など地上と天界にいないのだとバーン達側の心冷え込んだ時、

 

「違う!!!神様達はこんなこと望んでない!!!望んでなんかいるもんか!!」

 

静かに推移を見守っていたティファが、顔を真っ赤にして、涙をぼろぼろと流して怒鳴り上げた。

 

三神様達は、こんな事を決して望んではいない!助けたいって泣いているのに!!




今宵ここまで・・・

リュート村自体が主人公と同じ、同族に追われるかもしれない立場になるかもしれないと思いつつも、ニーナを筆頭に叫んでもらいました。
憎しみも怨嗟もあっても、それでも、命を見捨てたくはないと

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