勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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世界中の明日の為に⑨

・・どうしよう、私この事に対してなんて答えればいいの?

 

触手の繭に包まれたままのティファは、本気で苦悩する。もしかしたら先程の駄竜王にさせられそうになった事と同じくらいの、自分の半生を賭けるくらいの考えをしなければいけないのだろうかと、ティファは本気で悩みだす。

 

自分の者になれ、そうでなくば死んで仕えよとか言う大魔王

大好きだし捕まって僕の者になってという死神

痛いの嫌だろうからさっさと捕まって捕虜に戻れっていう魔王軍の皆様ご一同とか、私が答え辛い事はまぁそれなりにあったにはあったけど・・・・まさか前神様とはいえ、神様の人生相談受ける羽目になるなんて予想した事ない。この世界にどこぞの社説よろしく、専門家さん達による本気のお悩み相談室は無いだろうし・・・・本気で困っな。

 

言われた事が壮大過ぎて思考が追いつかないティファは一旦存在云々は置いといて、此処までの道筋を思い起こして思考を纏めてみる。

 

そしたらなんだか超微妙な考えが浮かんでしまった・・・これってあれかな?病弱な弟妹の存在にお父さん・お母さん取られてぐれてしまった出来る長子達のお話なのかな?小説ではよくあったお話の一つ。

 

喘息や心臓病、或いは他の疾患理由で心配され両親の愛情を一身に受けたのが今の地上界で、健康で何でもオールマイティーにこなしてしまえるが故に、この子なら-多少ー放って置いても大丈夫と、勝手に期待されて放って置かれたのが魔界と・・・いう事は結論、浄化に対する労りの言葉もこれまで苦労かけたとの謝罪も無しに、いきなり魔界を沈めたヴァルガブル様が悪い。

 

ティファの記憶全てがヴァルガブルに見られたように、ヴァルガブルの記憶もまたティファの中に流れ込んできてしまった。

見る積りは無くとも見えてしまったので、どうしてここまでの大騒動に発展してしまったのかヒントは無いと見ていたら、ヒントも何もどうでもよくなってしまった。

 

はっきりと言えば、このヴァルガブル神様はコミュ障と言えば早いのだろうか?とにかく言葉が全くもって足りてなかった。

この世界で命が生まれた時に発生したエネルギーは正しい光のエネルギーだけではなく、陰陽とある通り陰の闇のエネルギーも生じ、凝ってそれが瘴気になってしまった。

それらは最初こそ少なくヴァルガブル神様一人で対処できてたけど、生命が増えれば増える程、今の世界の様に生命エネルギーを循環させる事の出来る精霊達や天族たちの数は圧倒的に足らず、溢れて不安定なエネルギーが、凝ってさらに瘴気になっての悪循環になっていた。

生命は誕生するだけで大なり小なりエネルギーを発しながらこの世界に生じて、今はそのエネルギーを光の粒子に変えてこの世界の自然を循環させるエネルギーになってるとか。

十数万年前には無かったシステムだと、六大精霊王様達から教わった。

循環システムを支えるのには、沢山の精霊達と眷属達の力が必要な事も。

なのに、当時はヴァルガブル神様が一人でやろうとして、結局できず、世界に生じて数百年経った魔族と、同じくらいに強い子達に協力を仰いだのはいいんだけど、なんというか労りの言葉が足りてなかった。寧ろ何時労わったのかという程に言葉を掛けてなかった。

 

辛い事を共にさせなければいけないのが申し訳ないとか、他の生命は弱すぎて片方に負担を強いるとか、情けない自分を手伝ってもらい嬉しく思うとか。全部ヴァルガブル神様の頭の中で考えて終わって、結局その事を伝えていない事に呆れたよ。

これは本当にあれだ、頑固で不器用超えた、言葉足らずの父親のせいで一家が不仲になった様なものだろうか?

この-惑星-を家としての一単位で考えればそうなるし・・・・でもそれって・・

 

「そうか・・・・私は情けない父親なのだな・・・・」

「あ・・・・・」

「ティファ、そのせいでお前達に苦労を掛けてしまい・・・私は何と情けない神であったろうか・・・」

「あ・・いっやあああ!!ごめんなさいヴァルガヴル神様!!!!」

 

落ち込むヴァルガブルの声に、考えすぎていたティファは何事かをすぐに悟ってしまい、瞬時に顔から血の気が引き、ついで埋まりたくなって大絶叫をして蹲ってしまった。

 

ヴァルガブルと繋がっている今、心に浮かぶ心情すら筒抜けであったのをすかんと忘れてた!!!・・・・・死にたい!

あまりの無礼な事を考えすぎてしまった罪で死にたくなった!!

マジものの超不敬罪に、自分を断罪して首斬り落としてこの世とおさらばして地獄の底で埋まっていたい程に恥ずかしすぎる!!!!

 

「良い。」

「・・・・ふぇ?」

「お前が思った事は新鮮に感じる・・・ふむそうか、出来る子を放って置いて、弱い子ばかりを贔屓した駄目父か私は。」

「あう・・・・・でも、当時はそうするしかなかったのですよね?」

「どうであろうな。他にやりようはあったのだろうが、当時の私は・・・今もだが他者に頼みをせず、してもらう事に慣れていない。そして快く手伝ってくれたあの子達に、心で感謝していても口に出したかどうか怪しいものだ。」

 

ヴァルガブルもまた、当時を振り返ると自分を殺して埋めたくなった。

何故手伝ってくれていたあの子達にお礼の言葉を言わなかったのか。更に言えば、今の様な生命エネルギー循環システムを作れば、全員が楽になるのだと教えて上げなかったのか・・・・後から後から悔いが出てくる。-後悔-とはよく言ったものだと感心する程に。

思っていれば相手に伝わるものだと思っていた自分を本当にズタボロにしたくなってくるものだ。

 

ティファが立ち直り、今度はヴァルガブルの方が沈んでしまい、ティファは思わず苦笑してしまう。

本当に第一印象の通りで、不器用で頑固な人だった。

今も、こんな駄目父はいらないだろうと落ち込んでグシグシトしてる。

 

要る要らないか・・・・

 

ティファは意を決してヴァルガブルに声を掛けた。

 

「ヴァルガブル神様、ヴァルガブル様はこの後の世界を見て長生きした方が良いと思いますよ?」

「・・・何故だ、もしかしたら私の行いが、今日この日の大混乱を生み出したのかもしれないだろうに。」

「いえ、そうであれば責任以て、この後に続く世界を三神様達や天族の方達、精霊王様達と共に大混乱をした世界を助けないとですよ。」

 

ティファの言葉にヴァルガブルは驚く。罪の所在が明らかになったかもしれないのに、元凶に名が息しろというティファが理解負の名者に戻ってしまった。

思わず触手で真意を探ろうとすれば、今度はぺしりと叩き落とされた!

 

「駄目でしょう。そうやって言葉を削って知ろうとして知った気になって、心で伝えた気になったのが、もしかしたらいけなかったかもしれないと分かったばかりなのに。」

 

言葉を惜しむなとティファに叱られたヴァルガブルは、目をぱちくりとさせ、大人しくティファの言葉を聞いてみる事にした。

 

「いいですか、私が先程の例えを考えた時、貴方様の事を頑固で不器用な父親だと思いましたでしょう。」

「・・・・その通りだ。」

「私からしても、貴方様を自然と父と思えるほどなのです。文字通りヴァルガブル様は、この世界に初めて生じた生命を見守って来てくださった父母神様です。

人であっても中には年老いた父母を邪険にし・・・・・まぁそういう事もありますが、少なくとも私達は父母様を大切にしたいです。父母が老いた分、子が育つのは当たり前なのです。子供の成長を喜んで、好い事も悪い事も逞しく育った子供に任せて、ご自身は孫やひ孫の面倒でも見るかくらいの気軽なお気持ちで長生きしても罰当たらないと思いますよ。」

 

今日この日の因果を生んだかもしれないのも事実だが、己の身を賭して瘴気の大半を浄化させ、誤解からとはいえ天界を十万年もの間守ろうとした思いは本物で、ヴァルガブル様はヴァルガブル様はなりに懸命に生きてこられたのだから。

 

始まりは、確かに言葉足らず地上界を贔屓しいたような誤解を与えてしまい、自分達は使い捨ての駒にされたのだと魔界側の心を冷え込ませてしまった事が元凶と言えるのかも知れない。

それでも、ヴァルガブル様が抱えた苦悩と悲しみもまた本物で、魔界が強者こそすべてとなって弱者を食い物にする道を選んだのも彼等だ。繋がりを再び求められた時、怒り嘆きの言葉をぶつけても、手を取る道は数千年もあったのを蹴ってしまった彼等にも一端がないとも言えまい。ヴァルガブル様だけの罪では決してない筈だ。

片方だけが悪い事だとはどうしても思えなくて・・・

 

 

「そうか・・」

「はい。」

 

ティファの言葉を、ヴァルガブルはとっくりと考えそして決断をした。

 

「私は結界から元の姿に戻ろうと思う。」

「ヴァルガブル様・・・・大丈夫なのですか?」

「お前は・・・・本当に優しい子だ。」

 

ヴァルガブルの決心にティファは危ぶみ、それをヴァルガブルは優しいと褒めティファの頬を触手で軽く叩いて宥める。

結界から元の体に戻る。言うは易く行うは難しとはまさにこの事で、戻ろうとした瞬間に、結界で全て力を使い果たしている場合は生命循環システムによって光の粒子となり輪廻の輪をくぐる事になる。

 

其れよりはいっその事、結界として残りながらも天界と魔界・地上界を行き来できる結界となればいいのではないかとティファは考えてくれている。

しかしそれではけじめにならない。己だけ安全な道を選び、生き永らえる事をどうしても良しとは出来ない。

己の言動で振り回してしまい、この世界に憎悪を溢れさせ幾多の命が消え果てしまった事を思えば、身をもって罪を償うべきだ。

戻れる可能性は一割にも満たないかもしれない。それでももしも戻れたのであれば・・・そう、夢を見せてくれた少女に愛おしさを感じ放し難いがもう行かせねば。

 

「触手の繭を解こう。行って、己達の願いを成就させるがいい。」

「はい・・・・随分と時間が経ってしまいましたが・・」

「ほぅ知らぬのか?」

「?」

 

ヴァルガブルの言葉に、随分と話し込んでしまい時間が経ってしまったと言った言葉に投げかけれら言葉にティファは首を傾げる。知らないとはなんの事だろうかと。

その答えは意外なようでいて、-自分-の様なものからすればおなじみの答えであった。

 

「繭の中の時間と外の時間は全く違う。今くらいであれば外では一分にも満たなかろうよ。」

「・・・・其れって精神世界と現実空間の時間の流れは違いますよという?」

「何だ知っておったのか。」

「いえ・・・・・初めて体験しました・・」

 

私の大好きな読み物で散々出て来た奴を、まさか実際に味わうとは・・・・転生自体がそうだった。

 

「お前は面白い子だ。」

「・・・・」

「そしてとても変わっている。」

「どうも・・・・・」

 

物凄く久々な変わっている子という評価にティファは憮然としながらも、やはり最後は笑ってしまう。

ヴァルガブル様こそ優しくて不器用過ぎて面白い方だと。

 

名残惜しいがヴァルガブルは眉を解き、そして自身の結界を解いていく。

巨大な魔法陣の文様が、上方から光の粒子に変換されほどけて行く様に、ティファは泣きそうになりながら見守る。

叶う事であれば、ヴァルガブル様にも生きていて欲しくて。

 

「優しい子よ。」

「・・・・・・」

「泣くな、其れよりも備えなさい。-天界の中-は、其方が思うよりも・・・いや、あの子達の情報で知っているか。最後まで気を抜かずに道を走りなさい。自由に走る事を-私-が許す。」

「・・・・ヴァルガブル様!根性でこの世界にしがみ付いてください!!じたばたと足掻いて!!!」

「そう・・・・しよう・・・・私の可愛いま・・ご・・・・」

 

その言葉を最後に声はふつりと消え、代わりに巨大な浮き島が目の前に現れた。

浮遊する浮き島は大小合わせて八つある。

どれも緑豊かで森が見え、滝が浮き島より流れでて空に落ちていく様は圧巻で、その美しさに息を呑んだ瞬間、イオナズンと思われる魔法の球体が数え切れないほど自分目掛けて迫ってくる。

 

いよいよだ、地上と魔界を-本当の意味-で追い詰めた元凶達にやっと会える!!

 

ティファの双眸に強い意志の炎が灯り、敵愾心に煌めかせなら上空に身を躍らせイオナズンの嵐を悉く躱していきながら決して天界から目を離さなかった。

 

元凶達を見逃さない為に




今宵ここまで

もう一話でこの章の終わりとなります。
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