十万年経った今この時も、天界全てがヴァルガブル様の結界に覆われているのを見て私はゾッとした。
-当時-であれば、それがヴァルガブル様のお力の強さの表れとして、私の全てを掛けても勝てない方だと自然に首を垂れていよし、悠久の時の流れを経ても、結界が維持されていたという事実に私は背筋が寒くなったんだ。
十万年もの間、結界をヴァルガブル様ただお1人で維持できる筈も無い。自然エネルギーを取り入れたとしても、維持しようと結界を維持する者がいない限り、出来るはずが無いからだ。
其れはきっと、ヴァルガブル様が時折目覚め、-外-の状態を知りたいと情報収集しようとしても、きっと嘘の情報しか教えていないのだと確信が持てるだけに、そいつらの事を考えるだけでも胸がむかむかとしてくる。
先程話していたヴァルガブル様は、憎まれ恨まれ、ご自身も魔界の人達に猜疑心を以て警戒しようとも、お心の奥底ではずっと彼等を愛し、百万が一魔界の人達がまたヴァルガブル様と共に生きて行きたいと言えば即座の応じる程の愛情を、しまっていたのを知った。
そんな方が魔界が滅びに瀕するのを知っていれば、彼等が何を言おうとも、周りが何と思おうとお構いなしに、魔界を強引にでも救おうとしていたのが分かった。
なのにヴァルガブル様はそうしなかったのは何故か?
このイオナズンの嵐で分かったわ!こいつ等か!!ヴァルガブル様の結界維持しつつも、魔界の惨状をきちんとお伝えしなかったのは!!
イオナズンの嵐を全て躱して上空から天界を見れば、背に羽が付いた天族の者と思しき者達が、憎々しげに自分を見れば嫌でも分かった。
先程ヴァルガヴル神が自分を危ぶんでくれたのは、天界を鎖国から解き放ちたくないものがいた事を示唆していたのだと。
見るからに自分を攻撃する気で、両手どころか全身に魔力と闘気を満ち溢れさせている数百以上の天族の男女は、年齢はばらついている。。
最長そうなのは精霊王達の最長と言われいる、十五万年年世界にいると言われた地の精霊王程の者が数名で、後は年若い者達が後ろに付き従っている様に見え、魔界の現状を放置する様に誘導したのは最年長の者達が先導したのかと見てとれる。
自分を一番憎々し気に見ているのだから。
ティファの考えは、悲しい事に全てが当たっていた。
彼等は元々が、自分達とは姿も力の質も違いすぎる魔族と其の眷属等を気味の悪いものだと疎んじて来た。
だがそれは、生命を等しく愛していたヴァルガブル神の手前大人しくしていたが、あの大騒動の後、自らの首を絞めるような魔族達の言動を聞いた時、彼等と完全に縁が切れると喜び宴を開いた程であった。
清らかなるは自分達天族であり、力の弱い地上を見守り-適度に管理-する使命を持つ定めにあったのだと。
ヴァルガヴル神が結界となり、時折起きては外の様子を知りたがり、魔界の事も気に掛けられていたが、いつも同じ答えを返していた。
彼等は何も変わらないと
嘘は言ってはいない。瘴気が発生し始めた事は聞かれておらず、そう成ったとしても天界に助けを求めない魔界の現状は変わっていないのだと-本当の事-を言ったまでであり、どうとるかはヴァルガヴル神が決める事。
-偽り-を言ってなかったが故に、ヴァルガブルの嘘を見抜く力に触れる事無く今日まで来れたが、三神の若造たちが、此処十数年こそこそと何かをしていたのは知って不愉快であった。
自分達正しき天族達と、何故か精霊王達は仲が悪く、はっきりと言えば疎遠になっていた。
奴等はヴァルガヴル様に、本当の事を言わないと自分達を詰ってくるのが悪いのだ。
言い掛かりをつけてくる者達と疎遠になろうともどうでもいいと思っていたが、まさか三神の若造達と共に、あのような事を企んでいたとは!!
魔の六芒星が地上に出現した時は、ヴァルガヴル神を起こし、元凶たるものに天罰を落としてもらうように要請しようとしたが、起こった事を見るうちに、それ以上の事が起きているのだと悟った彼等は、自分達の考えに賛同する者達をすぐに集め、天界に侵入しようとやって来る者に厳罰を下すつもりであった。
待って来た者が少女一人で驚いたが、身に大魔王の魂などという汚らわしい物を宿した醜き者だとは先刻承知している!!
「貴様の様な薄汚れた大魔王の魂等という穢れを内に持つ者が!高貴なるヴァルガヴル神様をどう誑かし・・」
「この愚か者達が!!!!!」
年嵩の老人の風体をした天族の罵倒に、ティファは瞬時にぶちぎれた。
こいつ等は私の事をきちんと知っている!そうであれば・・・魔界のあの悲惨さも知っているだろうに・・・・ヴァルガヴル神様を誑かしたなどと!!お前達の方こそが!彼の方の御心に反した事をしていたのを棚に上げて!!
自分も三神様達も、そしてヴァルガヴル神様も魔界の現状に心を痛めているというのに・・・・
「愚か者だと!!下賤なるものが高貴なる我等に向かってなんという事を!!」
「たかだか魔界が滅ぶなどという些事で、ヴァルガヴル神様を消滅に追いやった無知蒙昧なるものが何たる言い草を!!」
「お前の悪行はここまでぞ!!」
「見やい!!これ程の天族達が集結したのは、悪しき貴様を滅ぼす為ぞ!!」
数に物を言わせた天族達は、たった一人出来たティファに対して勝ち誇り驕り高ぶるが、ティファはそんな事はどうでもよく、怒りで胸を焦がしていた。
・・・・些事と言ったあいつ等は!!生命が消え果る事を些事と言ったのか!!!!
たかだか、こんなに小さな入れ物・・・どうして!!!
わなわなと震えるティファを、怖気づいたと勘違いした天族達が一斉攻撃しようとしたその時、ティファの大音声が身に落とされた。
「この馬鹿者達が!!!!!!」
怒りに眩み、目を真っ赤にし泣きながら言葉を紡ぐティファの言葉が。
「お前達天族は知識として知っている筈だ!!この世界は、お前達が広大だと思っているこの世界は-宇宙-の中の!たった一つの小さな惑星の中での出来事でしかない事を!!!
広大な宇宙で、寄る辺なく肩を寄せ合うべき命同士である事を知って教え導くべきいる者達が!!知らない者達と同じ様な振る舞いをするとはどういう積りだ!!!
些事だと?広大な宇宙の中にて、青きこの星にて無事に生まれ育まれている事が!どれ程奇跡的な事であるか知っている者達が些事だというのか!!!!」
天界は、ひいては天界の上層部は知っている。この世界の仕組み全てを。
この世界は-宇宙の中の一惑星の中での出来事である-事を、そして近隣、其れこそ百光年先を見通しても、赤茶けた星しかない事を。
この惑星がどれほどの奇跡の上にて生命が育まれている事を彼等が知っているのは三神様達と精霊王様達からの情報で知っている!
文明が中世以前であり識字率すらが低い地上界に、天族を憎み切っている魔界に、同じ天族であっても鎖国のせいで満足に-外-の事も知らない天界にそれを教えても意味がない。
だが天界の上層部は知っている!!それを基礎に、命の大切さを説く事は十分に可能であったはずであり、それ以前に!自分の言った事を全て知っている者達が!!命を些事だと言った事自体が許せなかった!!
「知識も視界も広く持てる天族が!狭い惑星内で生命を蔑むなどという愚を犯すなこの馬鹿垂れ共が!!!!」
その雷喝とも言えるティファの本気の怒気に当てられた天族達は、一様に腰砕けとなり、今度は彼等がティファを振るえて見上げた。
それ程の凄まじい怒気をティファから感じ、其の双眸は怒りの為に金色の炎が燃え上がったが如くであり、その瞳に睨まてるだけでまるで往年のヴァルガヴル神に叱られたように感じた彼等の顔からは生気が剥がれ落ち、ティファを見上げる事しか出来ず言葉も出なくなった。
そして、ティファを見守っていた者達からも言葉が消え果た。
パレスで見ていたダイ達は、ティファがなした事全てを見ていた。
何故天界の場所をああも簡単に割り出してみせた?
魔界全軍を以て、侵入した蒼天の空の結界をくまなく探すつもりであったバーン達はそこから声なく見ていたが、ティファが一喝した言葉のどれも理解が及ばない。
宇宙とはなんだ?惑星とは何の事を言っている!!この広大なる世界の事を指しているのだとすれば、狭いという言葉すらが理解不能であった。
そんな中、ダイだけが頭の中の-ナニカ-に導かれ、ティファが言葉を発するたびに、脳に直接的にイメージが送られていた。
宇宙と言われれば銀河系までもを見通し、惑星と言われた時、自分達が住んでいる大地を乗せた-星-を、ティファと共に外側から見ていた。
そうか・・・・俺達が広いと思っていた物は、こんなにも広い、広大すぎる世界の中にある小さな・・・・
「ティ・・・ファ・・・お願い!!!魔界を助けて!!!!」
この小さな星に生まれた俺達は、姿形・能力が違うだけで、小さな惑星に住まう同じ生命という家族ではないかと、その時にダイは理解した。ティファが何を思い、どうして彼等を助けようとしたのかを本当の意味で知りそして願った。
家族でも仲間でも、言葉はどうでもいい!同じ生命である彼等を救って欲しいと
果たしてその願いは通じたのか
「私は行く!!彼等を助ける為に!!!」
自分の言葉に彼等が大人しくしている間に、三神様達の下へとティファは浮遊大陸の中心にある神殿を一路目指し始めた。
この世界中の明日の為に
今宵ここまで
漸く転生者たる主人公の本領発揮でした。
宇宙だのの概念すらない者達にとっては、目の前や自分達が知る世界こそが全てと思うのは当然だと考えていますが、宇宙の事を知る天族達の視野と心根の狭さにとうとう転生者の本領を発揮っし、其れに導かれるように、ダイ君もまた世界の本当の広さを知った瞬間であり、妹の願いの意味を本当の意味で知れました。
まだ三神様達と願った事への道のりは残っていますが、最後までお読みいただければ嬉しく思います・
今しばし彼等の物語にお付き合いの程をどうかよしなに。