余は・・・どうすればいい?罪の償いかたなぞ一つしか知らない道をずっと歩いてきたというに、突然全く違う道を指し示され行くように背中を大勢の者達に押されて・・・・余は・・・・
其れは本当に戸惑いと、未知なる事への戸惑いで、バーンは今生において初めて頭の中が真っ白になっている。
其れこそ大勢の精霊達をいきなり紹介しだし、この世の摂理の運行を滔々と語り出したティファの姿を見た時だとて怖れをなしても排除しようという思考が確かにされていて、今は全く何も浮かばない。
道を示す多くの光に、全ての事を焼き尽くされたが如くの主を、ミストもキルも、ハドラーも静かに見守っている。
此処まで来たのならば、全ては主の決める事。どうしても己の命で償うと言われれば・・・どうすべきかその時決めればいいと。
この流れではティファがまたもや泣いて、もしかしたらこの様子だとダイもポップもチウも泣き出しそうな気配に満ちている。
・・・・というよりはもう四人の目は早々に潤んでいる・・・主の返答を待ってこれなら、提案蹴った時にはもしかしたらもうひと戦起こりそうな気すらする。
主を反意させるべく、バランの時の様にボコって捕まえて説教だとか三人が大絶叫しながら主を縛り上げそうな気しかしない。
何なら負けたから言うこと聞いて大人しく助けられろとか、ティファ辺りが訳の分からない謎理論を主に押し付けるという案もありそうで怖い。
敗けたんだから勝った側のいう事全部聞くんだよとか大無茶言いそうだ。
ティファにはそういう無茶理論の下行動している所が多々あり、振り回されて来たキルとハドラーとミストはティファのひっどい一面をようく知っている。
私が勝ったんだから言うこと聞けという無茶ぶりな所を・・・・そこまでしても慕う者が多いのは、言うこと聞けの中身は生きろとか、仲良くして都下の類だからだ。
された方としてはなんだそれはと唖然とさせれら、人生で培ってきたこと全てをひっくり返されるという傍迷惑さを伴う・・・・非常に複雑な優しさであるのが困る所だ。
バーン様も色々と引っくりかえされれば混乱もしたくなるだろうと、三人の忠臣から心底心配されていバーンは、漸く思考が動き出し、第一声がこれであった。
「ミストよ、余は・・・・いかにすればよいと思う?」
・・・・・私にそれを問うのですかバーン様!!!
出会って最早六千年以上が経つ主から!人生初の相談を!!それもご自身どころか魔界ともしかしたら地上界と天界の明日をも決めるかもしれないバーン様御身の処遇を私に相談されてどうしろというのだ!!!
バーンとミストは何処か一心同体な所が多々あるが、よもや人生初に頭が真っ白になり思考が止まる経験をする日も同じとは何の因果であろうか。
キルは親友の受ける重圧がとっても良く分かる。これなら大戦している方が遥かにましであろう。
ただ魔界の為だけに戦う事を考えていれば・・・いけない!僕まで脳筋になってどうするとキルは浮かんだ思考を振り払うように首を振り、どう答えてもバーン様なら怒らないとアドバイスをしようとした矢先に、親友と自分の間に割り込んできたいけ図々しい者がいた!
「ミスト様!!」
「私達魔界の者一同は!!!」
「「バーン様の死など望みませんわよ!!!」」
其れはキルの天敵たるミスト大好きの双子、アンリとセシリの声であり、続くように大勢の濁声が聞こえて来た!!
魔法陣の効力で、先程の人生初のお悩み相談が筒抜けになっていたのかとようやく思い至ったバーンは、我知らず赤くなり、物凄く狼狽したくなったが周りはそんな事お構いなしに話してる。
「バーン様!!あっしも!ゴロアも!!魔王軍一同は貴方様に生きていて欲しいんですぜ!!」
「嬢ちゃま!!どうかバーン様を説得して下され!!おら達の声聞いてくんなくとも嬢ちゃまならきっと聞いてくださるだよ!!!」
「武器捨てろって言うんなら今から魔界の火口に全部捨ててくる!!!」
「魔界から一生出るなってんならそうする!!」
「だから!!!!」
生きて下さい大魔王バーン様!!!!
魔界側の大勢は決していた。何があっても、何をしてでもバーンに生きて欲しいと願う事で。
そしてその想いは、確かにバーンの心にまで届いた。
ずっと、自分が全てを守らなければいけないと思っていた。自分よりも弱く、寿命のある彼等を何世代にも渡って守り通し、日の光に当たる道を歩かせてやるとひたすら前だけを見て歩いてきたがいつの間に・・
後ろを振り返れば、不毛の道は消え果て自分を慕う大勢の者達の姿がそこにはあった。
その大勢の者達が自分の生を願ってくれている。
そして自分を憎むはずの見知らぬ地上の者達が、助けたいと手を差し伸べてくれている。
このような事が赦されるのだろうか?赦されて・・良いのだろうか?
もしも赦されるならば・・・
不安に、心押しつぶされそうになりながらバーンは助けを求める手を伸ばそうとした。
誰かに助けられた事のないバーンが、初めて手を伸ばすのだから不安は無理からな事なのかもしれない。
未知なることは、誰にとっても恐れるのだから。
それでも、恐れを超えてバーンは手を伸ばし、その手を取ろうとしたその時、落雷のような音が何かに弾かれる音共に世界中に鳴り響いた。
バーンが周りを見回せば、空気が帯電し発光している。そして抱き上げているティファに怪我はないかと見れば、ティファが怒りの瞳を天井に向け冷たい言葉を吐き捨てた。
「・・・・あの老害駄天使どもが・・・」
「ティファ!・・・・これはもしや・・」
「ええ!前神ヴァルガブル神様が魔界を地に沈めた後も!彼の方は魔界を案じていた!!もしも手を携えていけるならばと幾千年も言葉を掛け続けられ!!魔界から拒絶されても尚魔界の地に異変はないかと側近達に問うていたのを、其の者共は魔界が死に瀕しても何もないと嘘を以てヴァルガブル神様を謀っていた不忠の者ども!!
魔界が助かるのがかほどに憎いか老害駄天使ども!!!」
バーンが心の底から助けを求めんとしたのを邪魔した事がティファには赦せず、天界・ひいては三神達の心情を慮って天界の真の責任の所在を秘っする積りであったが、三界の明日を邪魔するものなぞ・・・
しかし、ティファが天界最長老達を嫌うように、最長老達はティファの事を大魔王バーン以上に蛇蝎の如く憎んでもいた。
魔界が助かってしまうはここまで来てはやむなしであるが!自分達以上の力を持つ者など天界の、ひいては世界の調和を乱すに決まっていると決めつけ、周囲が止める前に、最長老達の力を纏め上げ、デイン系の中でも最高峰であるミナデインを彼等は大魔王バーンと共にティファ諸共にせんと放った。
この異常で許す事の出来ない事態を作った元凶を諸共に。
人を、生物たちを正しく導くのは天界の!自分達天族の役目を穢す不逞の輩は力だけはあるようで、忌々しいハイ=エント、ジ=アザーズでミナデインを阻んだ!!
何故正しき我等の罰を受けないと苛立ち、-余計な事-をペラペラというのだと叱責しようとした声はかき消された。
「天界が・・・」
「神様達は良い人達なのに・・・」
「あいつらが本当の元凶なの?」
「お前達が魔界を助けなかったからこんな事になったのか!!」
-全て-を知った、怒れる地上と魔界の民達の声によって掻き消されたのだ
今宵ここまで・・・・・
どうしようもない者達ですが、一応は天族の中でも最高峰の者達なので、ミナデインを使用できる設定にしました。
世界は主人公が思うほど美しくも単純でもなく、勝手な想いや妬み嫉みもあるかと。
全てを知った二界はどう判断を下すのか・・・