三神達は必死に、あらゆる空間を索敵してティファを探している。
この世界には亜空間から空間のひずみ、特殊な空間が数多く存在しており、その数ざっと千
其れこそヴェルザーの様に、独自の空間を作る空間異能者が長老格の中に居るかもしれないのを考慮して。
三神達が常の状態であればティファの気配を辿って即座に見つけられているのだが、バーンの落としたピラァと、其れが描く魔の六芒星を乗っ取る為に力の大半を使い切ってしまい儘ならず苛立ちが先立つ。
自分達にとってもティファは愛おしい存在。其れは自分達の手伝いをさせる役に立つ子だからでは決して無い。
始めはそうだったかもしれないが、どんなに辛い目に遭っても優しい笑顔を人に向けようと頑張る健気で優しいあの子だからこそ。
辛い世界を見続けても頑張るあの子が愛おしいのだ。
自分達の因果に巻き込んで酷い目に遭わせてばかりいた!
今度は自分達がどんな目に遭ってでもあの子を地上に帰す!!
地上と魔界の者達が心から慕っている、愛おしいあの子を必ずや彼等の下へと
sideデルムリン島
「ダイや!!ティファが・・・ティファが一体どうしたの言うのじゃ!!」
「じいちゃん!!!・・・ティファが・・・ティファが天族の酷い奴等に何処かに攫われたんだ!!・・・折角・・魔界が助かって地上ともう争わないっていうこんな時に・・・」
「そんな・・・」
南海の海の果てにポツンと浮かんでいる孤島は、普段は静かで多くのモンスター達が生息しているとは外から見ただけでは分からないほど静かな島である。
住んでいるモンスター達は皆大人しく、心優しい穏やかな者ばかり。
その彼等が、島を全て守ってきた長老格たる鬼面道士・ブラスの狼狽が伝わり、大好きなダイとティファに何か異変が起きたのだと分かり騒ぎになっている。
ブラスはずっと心配していた。それはダイよりもティファの方を特に。
女の子だからではない。ティファは隠している積りであっただろうが、実践と死線を経験してきた自分には分かっていた。
何かしらの力を地に秘めている事を。動きの端々から、思考の速さからそこは窺い知れていた。
それでも、優しい子であった。時折ふらりと表情の抜けた顔で帰ってきた時、-外-で何か嫌な事や酷い目に遭ってきたのが自分には分かっていた。
それでも、ダイや自分には決して言わず、親切にされた事や嬉しかった事だけを話す、人を気遣いすぎて己の心の傷を決して見せまいとしていたあの子を。
いつか、傷が増えすぎ抱えられなくなりその果てに消えてしまいそうで怖かった。
笑いながら次の瞬間に消えてしまいそうな、そんな危うさを秘めていたティファがずっとずっと心配だったのが!こんな大事に巻き込まれて!
「神様とやら・・・儂の・・・儂等の愛い子をお返しくだされ・・・あの子は穢れを知らない無垢で優しい子なのですじゃ・・・どうか・・・どうか・・・」
浜辺に出て中天にさす満月に向けて、ブラスは涙を流して祈る。魔物たる自分が、神に祈るのがどうかしていると分かっていながら。
どうか、デルムリン島に住む全ての者達が愛しているティファとダイが、無事にこの島に戻れることを心の底から祈っている。
そのブラスの周りを、一匹また一匹、そして一体と増えていく。ゴーレムはブラスと同じ様に膝を折って祈り、サーべウルフや一角ウサギ、踊るほうせき達は頭を垂れている。
海辺では、ぐんたいガニの群れが、空にあってはキメラの群れとゴースト達が、島中が愛し子達の無事を祈る。
三界が繋がった時からの話はブラスや島に滞在している人間達以外には難しくて分からなかったが、其れでも戦いがもう終わるのは何となく分かった最中にティファが連れて行かれたという。
デルムリン島は騒がしく、そして静寂なる奇妙な気配に包まれている。
其れは数か月ほど島に滞在しながら、再びブラスの身を悪用されないように護衛としているロモスの者達もまた同じ思いであり、双子の身を案じて神に祈る。
大戦が終わりそうなこの時、世界を守らんとしている少年少女達が健やかにこの島に、そしてブラスの下に帰れるように。
sideリュート村
地上界のそこかしこで、祈る者達が続出する。
ダイとブラスの遣り取りでティファが本当に危害を加えられる者達に攫われた事を知り、テランのリュート村は誰が言うでもなくマザードラゴンの神体のある湖の浮島に集い、ニーナを筆頭に祈りを捧げる。
自分達の大好きなティファお姉ちゃんが・・・・親しくなっても敵味方に分かれて戦わないといけなかった大好きなお姉ちゃんが、これ以上酷い目に遭って欲しくないから!
お願いです竜の神様!!どうかお姉ちゃんをお返しください!間違った天族達こそをどうか正して欲しいと願いながら、村人達は一身に祈りを捧げる。
きっとまた会おうねと約束した優しいティファを思い浮かべて
side各王家
「神官達に祈りを捧げさせよ・・・・城門前に来ている者達全て城の大聖堂に入る許可を出す。」
「かしこまりました。」
クルテマッカは、バルコニーに立って神官たちに命じながら眼下の景色をじっと見つめる。
多くの者達が不安な中、たった一人の少女の無事を祈りたいと押し寄せて来ている光景を。
神が告げた事により慈悲深き思いを知った民達。先のハドラー大戦の時も今大戦でも奇跡は起きず、神などいないと思っていた自分達が、この国の最大の恩人たる料理人のティファの為に、無事に帰って来られる様に神に祈りたいと。
城下町は経済を優先する為にデパートを筆頭とした商業区画が多いが、教会は少なく、大勢が入れるのはこの城の大聖堂のみ。
それでも中に入れない者達は、大聖堂の庭先で膝を付き祈りを捧げている。
そして自分もまた・・
「神とやら・・・いるのであれば、あの子を地上に・・・・」
胸が苦しくなり最後まで言えず、クルテマッカもまた悲しみに暮れバルコニーに縋りつきながら膝を付きながらも祈りを止めなかった。
どうかティファを地上に帰して欲しい
ベンガーナは王は悲しみに暮れ、テランのフォルケン王とロモスのシナナも玉座にて顔を覆い泣き尽くし、リンガイアのアーデルハイド王とパプニカのレオール王は駄天使共に怒り心頭に発し、人目を憚る事無く駄天使達を罵りティファを無事に返せと天界にも怒鳴りつけている。
此処まで下の暴走を納められない三神の不甲斐なさを詰りながら。
其れはロロイの谷のバラン達とノヴァもまた同じであった。
ティファを助けられもしない三神達が神に相応しいかどうか以前に、ティファを死に追いやった日には天界だろうが何だろうが殲滅させる気であり、冷気を帯びた殺気に、さしものマトリフもロン・ベルクも声すらかけられなかったが内心はノヴァと一致している。其れこそ純粋な天の使者にして三界の調停者たるバランとても同じ思いが胸の中を焼き尽くそうとしている。
もしもティファに何かあれば・・・其れはティファを愛している-全ての者達-が一致している考えだからだ。
地上界がそうであるように、ティファを知る魔界の者達もまたティファの無事を祈りつつ、天界を罵り何かあれば即座に弓引くと叫ぶ者が続出している。
そして、あの篩の篩でティファに助けられた元・尖兵モンスター達も、自分達を案じてくれていた小さき子を思い出し、無事に帰れるようにと頭を垂れている。
小さき子が無事に帰ってきたという朗報が入るまで頭を上げないと誓って。
世界中の祈りが通じたかのように、ぽつりとした一言が文字通り天から降ってきた
「・・・・見つけた・・」
其れはどこか頼りなげな優しい声で、人神の声であり、その声が落ちて間もなく世界が沸き立ち蜂の巣をつついた騒ぎになった。
見つけたのはティファの事か、今無事なのかと様々な疑問・質問の嵐が巻き起こる中、直ぐにティファを返せという声が圧倒的に多かった。
神であるのならば、見つけた少女一人、返すのは易き事であろうと。
だが残念な事に神は万能とは程遠く、だからこそこんな事態を招いてしまっている。
魔の六芒星乗っ取りで力の大半を取られ、ティファの居所を知った時彼等は絶望しかけた。
そこは長老格達が張った強固な空間であり、今の自分達では長老格達と袂を別った天族達と力を合わせても破壊する事は出来ずにティファを連れ出す事も出来ない!
自分達は何と無力だと、三神達は嘆きそうになるのをぐっと押し止め、そして三人は何かを決意し、それぞれの顔を見合わせ一つ頷き合い、そして三界に発信をする。
「この声が聞こえているかい?聞こえていたら返事をして欲しい。」
優しい人神が、柔らかい声で全ての者達に自分達の声が届くかと確認をする。
その問いに対して直ぐに、何事だという声と、声かけてくる暇があれば早くティファを助けろという罵倒も聞こえるのが人神にとって嬉しい。
これで自分達の言葉を邪魔される事なく伝えられると。
ずっと、あの長老格達に押さえつけら、気付かれないようにティファをこの世界に転生させることが出来たあの時以上の喜びが、三神達を包み込む。どうやら長老格達は天界の毛会は解いたままにしているようで、全世界と繋がれることを喜んで。自分達と共に苦楽を共にしたティファを助ける為の言葉を伝えられることが嬉しくて。
「ティファを見つける事が出来たが、その場所に行くのもティファを取り戻すのも困難な場所なのじゃ。」
三神達の言葉、神にも困難と言われた者達の心が絶望に覆いかけられる前に、希望の言葉も直ぐに告げられた。
「しかし案ずるな、方法はある。」
「儂等の三神の力を使えばティファを地上に帰せる。」
その言葉に世界が喜びで沸き立とうとした時、意外な言葉もまたすぐに告げられ、世界は直ぐに絶句する事になった。
「僕達三神がいなくなっても、魔界と地上とそして天界で仲良くできるね。これから僕等が・・・・・」
その言葉に、三界の怒りに満ちた気配が沈静化されていった。
三神達の覚悟の重さに対して。
三界の騒ぎを知らないティファと長老格達の戦いもとうとう終わりが見えて来てしまった。
空間の中で蹲っているのは駄天使達ではなくティファの方であった。
今の情けない状況を、ティファは蹲りながら苦笑する。
まさか自分がここまで弱い者であったと事実を告げられた気がして、強くなれたと思ったのは錯覚であったかと。
ティファは、作戦通り逃げ回りながら体力を回復させると同時に敵に向かって撃って出た。
飛ぶスピードが速く、突出している者を一体ずつ撃破するつもりで反転して駄天使達達を素手で殴りつけた時、後ほんの少しで首が砕ける音が聞こえる程加減が全くできな攻撃を放ってしまってからは、ティファはずっと逃げ回った。
加減が出来ずに制圧ではなく殺してしまう事を怖れて。
こんな老害駄天使共なぞ滅ぼしていい筈なのに、素手で殴り殺す事も出来るのに、自分が本気で殺そうと思えばできるのを、強烈な吐き気に襲われた。きっと体が殺す事を拒絶したのだ。
其れはガルダンディーとボラホーンをこの手にかけた時からだっただろうか?
屑であっても同じ命を殺せず、逃げ回る事で体力と精神も磨耗した隙を天族が見逃す筈も無く、俯いたティファの背にイオラをぶつけ、大魔法でティファを言葉と共に打ち据える。
「三神の若造に作られた人形如きが!!!!」
「敵も倒せぬ役立たずであったとは・・・新しい調停者の末裔と思えぬほどの惰弱さよ!!」
「敵も倒せずどうして生命を守れようか!力だけの半端者が!!ようも世界の安寧を崩したものだ!」
長老格達もまた、大魔王達と同じ結論に達し、憎々し気にティファを罵る。
神に選ばれた者のくせに、敵を庇い立て倒す事も出来ない半端な人形と幾度も罵りながら。
その言葉に、ティファは痛みを覚える。こんな屑すらも殺せない自分は本当に役に立たない。
自分に優しくしてくれた世界に恩返しをしたいのに、最後の敵を倒せず、反対に倒れ伏している自分が嫌で・・・其れでも殺せないと嘆きたくなる。
私はどうして・・・
蹲り、顔を上げれば煌煌とした光が見えた。駄天使達が爆裂上級呪文を一斉に放とうとしている姿だと分かった。
私の旅はここ迄か・・・・
最早結界も張れず、仮に張れても防げない・・・・・ダイ兄達・・・ごめんね・・
生きると約束したのに守れずにと、ティファは目を瞑り愛しい者達を思い浮かべながら詫びる。
死ぬ事をどうか嘆かないで欲しいと願いながら
駄天使達から呪文を唱える声を聞いて思わず身体を固くしその時を覚悟したが、イオナズン特有の破裂音が鳴り響いたが・・・・不思議な事に痛みも熱さも・・・爆風すらも感じず、それどころか聞き違え出なければ耳になじんでいるあの甲高い音が聞こえる。其れはここでは決して聞こえるはずが無いと思いながらも、おそるおそる目を開けてみれば
「大魔王・・・・ダイ兄・・」
自分の目の前に大魔王の背が、そして大魔王の前には兄であるダイの背中が見えた。
愛しい妹の間一髪のところを間に合ったダイは、直ぐに妹と敵の間に割って入り、双竜紋を全開にし、イオナズンの爆撃を全て竜闘気で防ぎ、目の前の敵達に宣戦布告をする。
「お前達を全員倒す。」
静かにダイの剣を抜き放ち、切っ先を長老格達全員に向けながら
今宵ここまで・・・・・
駄天使達には今作品の中で最も醜悪な敵として登場させています。
三神達は何を決意し、どうしてダイ君とバーン様が来れたのかはまた次回にて