大魔王とダイ兄に助けられた時、私は助けに来てくれたと喜ぶことが出来なかった。
其れよりもどうしてこの二人が、どうやってこの空間に入り込むことが出来たのか、その事で頭が一杯になったからだ。
この空間を強引に入り込むには、余程のエネルギーがいる筈だ。仮に大魔王が私を目印にしてキルに開けさせるにも、膨大な力を誰かが払わなければいけない。
もしも大魔王が戦う前のマックス状態であったら、大魔王の魔力で来たのだと思える。
でも現実はそうじゃない、大魔王も全体の三分の一残っていればいい方で、ダイ兄達も三度、万能薬を飲んでいるからそれ以上の摂取はしていない筈だ。
いざとなったら全員勝つ為に無茶するのを見越して、三本しか渡していないし、持っている本数を全員チェックしているから其れは無いと断言できる。
では誰が膨大なエネルギーを支払ったのか
魔王軍でも勇者一行でもなく、地上側に助けを求めたにしては間に合った位だからそれは無く、残る可能性を考えた時、心臓を冷たい手で握られたようにゾッとした!
ティファが、思い当たる中で一番最悪な事が脳裏を浮かび血の気が引いた時、空間全体に声が響き渡った。
「「「ティファ!!」」」
「遅くなって済まぬ!」
「ごめんね!!僕達が不甲斐無いせいで君に最後までこんな目に遭わせて・・」
「我等は本当に・・お前になんと詫びれば。」
泣きそうな、頼りなげでボロボロに打ちのめされた声であったが、その声を聞いたティファは、三神以上にボロボロと泣き始め、大丈夫だとつっかえつっかえながらも声に応えた。
三神様達無事だ・・・・良かった・・・良かったよ・・・
ティファもまた、ブラスたちがティファを案ずるようにずっと怖かった。
三神様達も、責任を取って自分達の全てを使って償おうとする事を。長老駄天使達の責任の一切を、自分達の命を持って償おうとしているのではないかと。
だが違った。三神様達は無事なようで・・・・そしたら・・
「大魔王・・・ダイ兄、どうやってここに・・・」
「貴様等!代償払わずどうやってここに来れた⁉」
「数多の精霊達も、地上の者達も減った様子がない!!誰を贄としてここに来れた!!」
ティファの思う疑問は当然空間を作った長老達にも発生する事であった。
言ってはなんだが余力のない三神達が入ろうとすれば、其れこそ魂の力をも使わない限り入ることが出来ない空間である筈を、地上・天界を隈なく見てみたが犠牲になった思しき者達が全員無事である。それこそ今代の精霊の愛し子たる、氷の精霊王ハイ=キングの加護を得たノヴァとても無事。
該当する者達が誰一人欠けていないのは何故だと、駄天使達が苛立ちを募らる中、ティファはまさかゴメちゃんが自分の危機を察知してしまい、原作の様に自分を犠牲にして神の涙としてのアイテム的な役割を果たしてしまったのかと再び青褪める。
駄天使達もティファも、なんの代価も無く奇跡が起こる筈がないと思ったたその時
「お前達の死を俺様が望んだからだ。羽虫・・・いや、害虫共が。」
途轍もなく重々しい、其れこそ地獄の底から這い出たような怨嗟に塗れ、ひび割れたような声が駄天使達の耳をうつ。
遡った少し前
ティファを空間から助け出すのは容易ではない。其れでも自分達の全てを使えばティファを助け出せる事を、人神が優しく柔らかく話した時、割って入った者がいた。
其れはとても傲岸不遜な声で、とてもふてぶてしい声が
「お前達が安っぽく命を使って消えたとしても、俺は何の面白味も無いな。」
三神達の覚悟を嘲笑い、面白味も無いと断言してきた。
その声の主は己の言葉で唖然とする者達を尻目に、言いたい事だけを話し続けた。
「お前達罪人は生きてこそ価値がある。十数万年の魔界の怨念の言葉を思いを全て一身にその身に浴びてのたうち回れ!死んで楽になれるなどと思うな、時折俺の怨嗟の毒を!其の身で受けて死ぬよりも辛い目に遭うのが精々似合いだ。」
地獄の底からの怨念に満ちた声の主に、バーンは声を掛けた。
「どういう風の吹き回しぞヴェルザー。お前は高みの見物に回るのではなかったのか?」
自分の言葉に不貞腐れて以降出てこないと思っていた者が、ティファの窮地に声を掛けてくるとはどういう積りかと。
「ふん・・・・あの-ちび助-に情が湧いたなどと思うなよバーン!!俺は・・俺をこんな風にこの世界に生まれさせた元凶が!!自分達の思い通りになる事が死ぬほど嫌なだけだ!!!!そこのところを勘違いするなよ⁉あの-ちび-が死のうが生きようがどうでもいい事だ!!!分かったな!!!!!」
・・・・・・語るに落ちるとはどういうものかの見本を目の当たりにしたダイ達は目をパチクリとしてしまい、バーンはこんな大変な状況下で失礼だと思ったが大笑いしてしまう。
「何がおかしいか!!!」
「分かった分かったヴェルザー。-そういう事-にしておこうぞ。」
「な!!!だから誤解を・・」
「余もここにいる勇者達も、あの老害どもを赦すつもりが毛頭ない。消える寸前のティファも同じことを申していたが、三神達よ、我等がティファを助けに行くという事は、そ奴等を殲滅しに行く事に他ならないが良いのか?」
笑っていても、最後は冷たい声でバーンは確認を取る。自分達がティファを助けに行くとい事はそういう事だと。
己達の同胞を殺す事になる事を。
その問いに、竜・魔神が苦しそうに息を呑みながら答える。
「本来であれば、我等の力で彼の者達に神罰の雷を落とし、肉体と魂を塩の塊にすべきなのだ。」
神の権能たる神罰の雷は、罪人の魂を肉体事塩の塊にすることが出来、文字通り全てを滅する雷。
三神の力を合わせて発動することが出来れば、何処の空間に居ようと、数も無視して全てを滅することが出来るのだが、力が足りないと唇を噛みながら反対にバーン達に詫びている。
「被害を受けし其方達に頼むは心苦しいが、どうかティファを・・」
「ヴェルザーよ、我等に何を望む?」
「僕達はどうすればいい?」
おそらくヴェルザーもティファを助ける秘策があってこの会話に割って入ってきたのだろう。
「お前達の残りの寿命の半分ずつをエネルギーに変換してあれのいる空間の座標と共に俺に渡せば、-二人-だけ空間に潜り込ませられるがどうする?」
伊達にヴェルザーは冥竜王を名乗っていない。冥府の番人の様に、他者の寿命を算出する事も出来、三神達の姿を捉え算出したところ、三人の寿命半分ずつのエネルギーで足りると踏み、割って入ったのだ。
その提案は三神達が直ぐに受け入れ、行く人選も彼等が指名した。
地上界の勇者と魔界の神に、この世界の命運を託して。
そして世界中が見守る中、二人はティファのいる空間へと送り出す。
「決まったようだな。勇者の小僧、バーンの若造、行って元凶全てを殺し尽くしてこい。」
自分達を送りこんでくれた冥竜王の言葉を胸に、ダイは剣の切先をそのままに、バーンは倒れ伏したティファを抱き上げながらダイの横に並び立ち、共に前を見据える。
あらゆる意味で自分達、そして世界の逆鱗に触れた愚か者どもに怒りを込めた瞳を向けて。
「うぬらだけは赦さぬ・・・」
「世界もティファも!俺達が全て守りきる!!」
今宵ここまで
例の竜王様がツンデレ(?)になった件について
そして冥竜王様の名前をお借りして、様々に設定を盛らせていただきました。
神様達の権能は、ソドムとゴモラを参考にしましたが、今回は使えないので披露することが出来ず残念です。
宣戦布告も成され、次回いよいよこの世界の行く末を賭けた最後の戦いの始まりです。