勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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竜王から贈られしもの

ダイ達と長老達の戦いは完全に逆転してしまった。

 

この空間自体が長老達が幾星霜も掛けて仕掛けた壮大な罠であり、文字通り自分達に不利と分かってから、ダイは最小限の力で長老達を攻撃し、バーンもマホカンタに振る為に攻撃全てを控えている。

 

この空間の攻略方法、或いは活路を見出すまで間は力を温存する為に。無論それでは直ぐに足りなくなるのでマホカンタも極力使わないようにして、ティファを抱き抱えたままトベルーラを使って大魔法を避け、ミナデインの時のみマホカンタを使っている。

 

まるで自分が弱い者の様に逃げ回り、魔界の神たる自分にしては消極的な方法だという考えが脳裏をちらりとよぎったが、活路を見出す為の我慢だとバーンは己に言い聞かせながら避け続け、ダイもまた奮戦しているが遂にバーンが大魔法の群れに囲まれ、逃げ道全てを塞がれてしまった!

 

しまった!!

・・これは・・・

 

迫るイオナズンの群体に、バーンはマホカンタを張らず、体を丸めてその身で受け止めた。

如何に魔法耐性の高い衣であっても、大ダメージは避けられないというのに。

 

「「バーン!!!!」」

 

何故マホカンタを張らないと、駆け付けようとするダイと、腕の中で包まれて守られているティファはバーンの名を叫んだ。

ミナデインすら防げるバーンなれば、マホカンタを張れば済む事なのを知っているだけに、何故張って防ごうとしないのか。

 

「ふぇふぇふぇ、そろそろバーンも魔力が尽きかけておるのか。重畳重畳。」

 

イオナズンの爆炎が納まり、煙がはれて見えたのは、白き衣が煤け腕や顔から血を流すバーンの姿に、翁は嬉しそうに、ダイとティファにとって最悪な知らせを告げる。

如何に膨大な魔力があるとはいえ、無限にも近い回復と補充を受ける長老達と相対してもう四半刻が経とうとしている。

その間に張ったマホカンタも、魔力量の消耗は決して少ないものではなく、ミナデイン以外に回せる余裕が無くなっていることを示唆しているのを、翁は見逃さずに嗤っている。

 

「ふぇふぇふぇ、その化生の者を腕の中から離せば自在にトベルーラで避けられているものを、何故そこまで必死に庇うのか分からんの~。」

「・・・黙れ・・」

「そち一人であれば・・・」

「黙れというのが聞こえぬか!!!」

「・・・ほんに無礼者が!!!」

「バーン!!!」

 

忌々しげに翁を見ながら怒鳴り上げるバーンに、駄天使達は仕置きとばかりに動けないバーンに向けてバギクロスを浴びせ、魔法耐性の高いバーンの衣をズタズタに引き裂き、継いでメラゾーマを合わせてバーンとティファに向けて放った。

槍剣を持った長老達にダイは足止めをされ、二人を守りに行くことが出来ずに、弱ったバーンは成す術無く諸に受けてしまった。

 

ズタズタに引き裂かれた衣の間を、合わされ大火球になったメラゾーマの炎がバーンの肌を舐める様に焼き尽くして行く。

其れでも、腕の中に居るテイファに炎が行かないようにと、バーンは全身を丸めて必死にティファの小さな体を袖の衣に包み込む。

何もかもからティファを守る為に。

痴天使どもの愚かしい言葉から、理不尽なる暴力全てから。

 

だか当のティファが、それをよしとは出来なかった。

守ってくれているバーンの悲惨な姿に耐えられずに懇願をしてきた。

 

「バーン!!もう私を離して!!!」

「・・・ティファ・・・言うな・・」

「私も空飛ぶ靴がある!だから私をはな・・・」

「黙らぬかティファ!!」

 

メラゾーマの炎に苦痛で顔を歪めても、呻き声一つ上げなかったバーンの怒声に、向けられたティファはその声の強さに怯えてびくりと体を揺らすのを、バーンは直ぐに優しい言葉を紡いで、自分の言葉で怯えさせてしまったティファを宥める。

 

本当は、今日の処刑演目の時とても手元から離したくはなかった。

あの翁の言う通り、自分こそがティファに囚われし者。

二度と手放す気はない。

 

「二度と其方を放さぬ。その方の口から二度と余から離れると言うてくれるなティファ。」

「・・・・大魔王・・・・」

 

優しい瞳で告げられるその言葉に、ティファは泣きたくなる。

こんなに大怪我をしているのに・・・守ってもらう事が申し訳なくて・・

 

「バーン!!ティファとそのまま此処でじっとしてて!!!」

 

漸く長老達の包囲網を突破したダイが、バーンと妹の前に立ち、繰り出される攻撃全てを薙ぎ払う。

バーンは体力的に、妹は精神的に限界まで追い詰められたのを悟り、最後の切り札をポシェットから素早く取り出す。

ダイはまだ魔力様も闘気用も万能薬を二本しか飲んでおらず、取り出した三本目を飲み下しながら次々に来る攻撃全てを捌いていく。

 

その姿に、ティファは自分にもできる事は無いかと必死に思考を張り巡らせる。

最早ジ=アザーズを使う魔力も、防げる闘気も残っていない・・・・兄とバーンの力もじきに底を尽く・・・例えば自分と兄の闘気量がマックスであったれば、ヴェルザーの空間の様に内部崩壊をさせられる。

しかし無いものは無く、実現不可能であり、さしものティファもここ迄なのかと諦めたその時

 

 

       「何をしているのだ愚かなる竜騎士の小僧!!!!」

 

 

割れ鐘の様なヴェルザーの怒声が降ってきた。

 

ヴェルザーとしては実に不本意ではある。ダイとバーンをティファのもとに送り込んだ後は、本当に今度こそ高みの見物を決め込むはずであったのに、余力の無くなったバーンは兎も角、ダイの戦い方の未熟さに対して苛々としてつい声を上げてしまったではないかと八つ当たりも込めて。

 

「小僧貴様それでも竜の騎士の末裔か⁉」

「ヴェルザー!?・・俺だって必死に戦っているんだぞ!!なのに何だよいきなり・・」

「黙れ!剣一つ壊すのに闘気を込めすぎだ!!相手が回復するのであれば最小限のダメージで制圧しながら活路を探す事もできんのかお前は!!目を潰せ!首を切れ!!最小限の動きをしろ!!!」

「な!!!そんな事できる訳・・」

「甘ったれるな小僧!!かつてのバランはそうやって戦っていたぞ!俺の大軍勢を相手取る為に、最小限の動きで勝つ為にあらゆる手を使っていたというにお前のその様はなんだ!!御綺麗で無駄の多い動きは見ているだけでむかつくわ!!!」

 

血生臭いほどの実践の戦い方を聞かせられたダイは青褪め、ティファとバーンは、ヴェルザーの言う事が正しいと分かるが、ダイにそれは出来ないだろうと理解している。

ダイは本当に-正々堂々-とした戦いしか出来ないからだ。

二人のその考えを、ヴェルザーも分かっているだけに溜め息を吐く。

 

助言しても、正々堂々と戦って長老達を制圧しようとしているダイの姿を見れば一目瞭然であるからだ。

その様には呆れるしかないと、ヴェルザーも匙を投げたくなる。

 

「・・・お前の父は戦いとなれば非情であった。地上を守る為に血でも泥でも汚名でも被る覚悟を持っていた・・・・実に竜・魔の名に相応しかったぞ。」

 

竜の騎士は本来は三界の調停者たる者であり、人の心を持ち、天と竜・魔族の力を兼ね備えた者を指す。

しかしバランが持っていたのは天と竜・魔の力を操る術と、竜・魔の心を持っていたが、バランは欠けた者であったと、バランのその後を見て思った。

 

「貴様の父は、人の心は持っておらず、竜・魔族に近かった。人の世の常識も良識も無く、どこか己の力のみを頼りにしていた様は人とは縁遠かったな。

その点お前達は人の心も知識も持っている。天と竜・魔の力も持っている。だが、お前達もまた欠けた者どもだ。小僧は敵を倒す気概を持ちながらも力を十全に使う技量は無く、ちび助は力を使う技量を持ちながらも敵を倒す気概が全くないのだからな。」

「・・・・何が言いたいのさヴェルザー!!!」

「回りくどい事言わないでさっさと言いたい事をきちんと言いなさいよヴェルザー!!」

「・・・・年寄りの繰り言なれば他所で言うがよい・・」

 

攻防しながらヴェルザーの言葉を聞かされるダイと、ダイを援護すべく式で鳥の群れを作って駄天使たちの視界を邪魔しているティファと、最小限の攻撃魔法で援護しているバーンから抗議の声が上がる。

こんな時に回りくどい事を言うなと。

 

その言葉にヴェルザーもぶちぎれた。

こいつ等を助けてやる義理など本来は無い自分が!!せっかくヒントを出しているというのに!!!

 

「馬鹿か貴様等は!力を持った妹から貴様の左手は何を受け取ったのだ小僧!!貴様等の父親はどのような時が一番の力を発揮していたかすらも!ちび助も小僧も忘れたか!!!!」

 

びりびりと吠え上げられた言葉に、ダイの中のーナニカーであるティファの記憶が即座に反応しダイに教えた。

この状況をひっくり返す活路を!!

 

その瞬間、ダイの中で力が溢れ、青白い竜闘気が空間を雷が奔りさる様に轟き唸り、嵐の如き力が吹き上がる中でーそれーは姿を現した。

 

空間の中央に、ダイが威風堂々と佇んでいた。

 

髪の全てが逆立つ程に力を溢れさせ、額の真ん中に竜の騎士の紋章を輝かせたダイが、駄天使達を見下ろして。

自分でも持て余す肌の力を暴発させない様に、己の中のティファの記憶に力の抑え方を教わりながら。

 

「・・手間のかかる小僧だ・・・。」

「ヴェルザー・・」

「何か文句があるのか小僧?」

 

冥竜王たる俺様が折角ヒントを出している時に、短気に噛み付く愚か者がと罵る前に、その言葉をダイから掛けられた。

 

「ありがとうヴェルザー。」

「な!!!勘違いするなよ!!!そいつ等を殺させる為にだな・・」

 

ダイの礼に、ヴェルザーは何か言おうとしたが途中で止める。

なんだか言うのが馬鹿らしくなり、代わりの言葉を吐き捨てる。

 

「この茶番をさっさと終わらせろ小僧。」

「了解だ、ヴェルザー。」

 

その言葉を、ダイは気分を害した様子は無く微笑みを浮かべて応えて眼下を見下ろす。

ヴェルザーの言葉の通り竜の騎士最強形態たる竜魔人となり、全ての事に決着をつけるべく。




今宵ここまで・・
すみません!途中執筆を出して読んでしまった方、大変申し訳ありませんでした。
自動予約をして、予約時間前に完成させて出す状態にしようとしたのを操作ミスしてしまい、書きかけを出してしまいました。
以降気をつけます。

本編ですが、ヴェルザーがお節介おじさん化してる様です。
次回は幕間挟みます。
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