ルザー様・・・ヴェルザー様・・・
んん?どうしたお前達?
眠っているのを邪魔されても、ヴェルザーはゆったりとした声で、頭の周りを飛び回る肌が黒い精霊達に何事かと尋ねる。
この声音には、優しさがあるかの様に
お聞きくださいヴェルザー様!ヴェルザー様と我等の働きにより、魔界の瘴気が減少傾向にあるのです!
・・・そうか・・
こいつは何がそんなに嬉しいのやら・・・俺は厄介ごとをさっさと無くしたいだけで・・・
あれ!ヴェルザー様なして赤くなって横向いちまったんだ?
な!俺は別に・・・瘴気が無くなれば-こんな役目-を降りられると安堵しただけだぞクック!!
そうですね、瘴気が無くなれば永遠の輪廻の輪の頸木から放たれ、貴方様は別の何かになれると
そういう約定で俺は死んでも俺の役目を全うしてきただけだ・・・何を落ち込むロビン
・・・貴方様を、苦海に落とした自分を殺したく・・・
そうだす!ヴェルザー様もおら達も!!最初は瘴気の濃度の怖さ知らねぇで何度もヴェルザー様死なせちまって・・
ふん・・・半年後には学習させられて俺になっているのにはうんざりとしたものだがな・・
僕達がもっと強ければ・・
ヴェルザー様の負担だって減らせますのに・・・
このちび達はいつも俺の周りをぶんぶん飛んでは最後にこうやって湿っぽくなるな。
いかんな、もっとこう・・・自分勝手に生きていけばいいものを・・・
ヴェルザー・・・ヴェルザーよ・・・
ゥツ!!・・・なんだ此処は・・・
目が開いたね。必要な知識と情報はもう-君の中-に全て入っている筈だよ。
・・・ふん・・・・・俺に、この腐敗して死ぬ寸前の魔界の子守をしろと?
そうじゃない、瘴気を浄化する装置の力を上げる能力を君に授けたのも知っている筈だ。
いきなり生まれて目が開いたらそこは不毛の大地、魔界だと-知っている-事に、ヴェルザーは驚くような可愛げは無く、代わりに即座に悪態をついた。
・・・天界の竜神とはお節介で愚者と見える。
そうかい?
ああそうだ、お前の与えた知識で、魔界の惨状の元凶はお前達の前神と其の取り巻きどもだ。
・・・・・その通りだ・・
その元凶をどうにもできないお前達が、魔界で俺の様な不死に近い魔物を生んで何がしたい?俺が貴様達の悪行をぶちまけ魔界を煽り、お前達に弓引くのも一興だと思わんか?
・・・・・どうしても、私達を赦せない時はそうおし。
ほう?
ただね・・・・この地を助けてあげて欲しい。君の強制的な不死性は、魔界の瘴気が完全消滅した時に解いてもらうように輪廻の神に頼んである。
それで?
君だって嫌だろう?どんな死に様をしても、同じ人生を永劫歩いていくなんて・・
生まれた瞬間から悟らされた。碌でもない人生を歩かなければならない事を。
死んでも同じ自分など、竜神の言う通りいつか必ずうんざりとしそうだ。
生まれて早々に働き、サポートとして魔界でも生きていける黒妖精の二匹を付けられて。
俺の体に魔界の瘴気を取り込み、集めて浄化装置の所に行って二体の黒妖精が装置の力を高めて一気に浄化した。
俺は瘴気を取り込む器として頑丈に生み出され、黒妖精二体は桁外れの魔力を全て装置の運用に使われる者としてこの世に生じた歪な三体。
この世界を守れと言われても、誰にも祝福される事無く、日の目を見ずに生きていけと呪われた者達。
さっさと瘴気無くすぞお前達!!!
そんなヴェルザー様!!一気に瘴気を・・・・ヴェルザー様?
ああ!!ヴェルザー様!!!!またやっちまって・・・
そんな!!直ぐに装置のお側に・・・
最少は本当に加減知らずのどうしようもない猪突猛進ぶりだった。
一気に極限まで正気を貯めこみ、四方十キロの瘴気を取り込んで、自分は死体になって後はクックとロビンに任せて、次の半年後にまた似たようなことを・・・三度した後二人にボロボロと泣きながら、其れでも無言のジト目に負けてやって・・わざとだ!!わざとだぞ!!俺の狂った運命に付き合わされている二人に免じて!ジト目に負けたふりして以降自爆浄化をしなくなっただけだ!!!
程々に、そして地道に瘴気を浄化していけば・・・いつの間にやら俺を王にするとか言う訳の分からん話をする者達が現れた。
くだらん、俺は俺の人生を全うにするために忙しいんだ。瘴気の無くなった場所に居たいのならば好きにしろ。俺を王にする必要は無いと放って置けば、奴等は自分達の中から王を選んで瘴気の無くなった場所に国を興した。
思った通り、俺が瘴気を消しているのを知って、俺を王に立てればその土地が手に入ると目論んでいたらしい。
・・・ヴェルザー様・・・なして王様になんねがっただ?
クック?
そうです、王になって瘴気の浄化を彼等に手伝わせても・・・
ロビンまで・・・
あの人達も少しならその身に瘴気を取り込んで、浄化装置の前に来てもらう事も・・
あぁそうか、この二人は知らないんだったな。
瘴気を取り込む時の、あの死にも勝るとも劣らない、狂いそうになる程の苦痛を。
瘴気は陰の気が凝縮して生まれたもの。其れは暗く悲しくそして刺すように冷たく、どうしようもなく絶望に心を傾けたくなる程の虚無感を心に覚えさせられる生き地獄。
あれは、-俺-だからこそ出来る俺だけの役目・・・
その苦痛を知らずとも、俺の負担を減らそうとしてくれているのかこのちび達は。
後-ほんの半分-で終わりだ。ざっと二千年かかったが、残りもその位だろう。
・・・そうですね!!後たった二千年位三人で頑張りましょう!!
んだ!!おらも頑張るだよヴェルザー様!!ロビン!!
そう・・・・・俺にも夢を見た時はあったのだ
確かでなく、脆く残酷な希望とやらを目指した時が・・・
ヴェルザー様お逃げを!!!
なして瘴気を浄化してくれるヴェルザー様を!!!
クック!!ロビン!!!
逃げて下さい!!!
おら達此処までだ・・・そんでも・・おらとロビンはずっとヴェルザー様の・・心の中におりますだよ
クック!!!ロビン!!逝くな!!俺を・・・俺を置いてどこに行こうというのだ!許さんぞ!!俺を置いて逝くなぞ許さぬぞ!!!俺の命令だ!!戻って来い二人共!!!!
いくら吠えて叫ぼうとも、二人が戻る事無く・・・輪廻の輪をくぐった瞬間自分には分かった。
自分は冥竜王・・・冥府の動きを即座に知る権限すらもある・・・何の役にもたたない力を持っていて何になる・・・あの-コマドリ-を現世に引き返せない益体も無い力・・
何故だ・・何故待てなかったのだ愚か者共が・・後一歩・・・後一歩だったのだ!瘴気を完全浄化するまで・・・だのに・
大勢の魔族達に襲撃され、二人の黒精霊によって、辛うじて外に出されたが力尽き、横たわりながら燃え盛る己の館の最後を見届ける・・・中には、クックとロビンの亡骸が・・・・まるで葬送の儀式の様に二人を焚き上げていく様に燃え盛る館を。
骸は、元の黒いコマドリに戻ったろうか?
二人は元は黒きコマドリ、どうしてか大量の魔力を有して生まれた珍しき種を、竜神が力を付与して黒き精霊に変えた時、あまりの力の多さに二つに別たれ生まれたのがクック・ロビン・・・・・いつでも俺の周りを五月蠅く・・・そして荒涼とした俺の心を慰めようと囀ってくれた可愛い俺のコマドリを・・・・
館を襲ったのは、力があれどどこの勢力下にも入らなかった自分達の態度に痺れを切らし、第三勢力になる前にと襲撃の為に手を組んだ愚か者達。
瘴気が消えたことで、蘇った大地を己達の手で支配しようと争いだした愚者達・・見やい・・・・折角俺が浄化したはずの瘴気が、俺達を襲った者どもの体から立ち込める光景を。
祓っても祓っても瘴気が無くならなんだのはこのせいか・・・・欲深い愚者がいる限り・・・・・あぁ・・・・本当に・・・こんな者達の為に今まで俺は・・俺達は・・
くだらない・・・あぁくだらないくだらない!!!役目がなんだ!こうして自分達の首を絞める愚か者達の為に!何故俺が助けてやらねばならん?助けてやる義理も無くなった!!義務も無い・・・・・もうどうでもいい・・・・もうどうでもいい!!
呪われるがいい愚かな天界!!真綿で自死するがいい魔界の愚者共!!!呪われた宿業の道を永遠に歩み!ともに倒れればいい!!!!
その日、魔界を浄化した竜は死に、呪いの声を叫びながら暴虐にして残忍な冥竜王が産声を上げ誕生した。
燃え盛る館の中の、可愛いコマドリと共に心を殺された哀れなる竜王が、この世界全てを呪いながら生まれたのだ。
ヴェルザーはかつてコマドリに思い描いたように好き勝手に生きた。自分以外の生命に対して一切の興味も関心も抱かず、配下の所領が瘴気に溢れようとも無策で放って置き、自分の面倒を見させるために気まぐれで眷属にしたのが弱小の者達で、何を勘違いしたのか子孫代々忠誠心高く、自分が何をしなくとも勝手に対処しているので放って置き、気まぐれに戦場に出て暴れるだけで自軍を勝利に導いたと勝手に喜声を上げる愚者達。
その時には敵も味方もヴェルザーには無かった。ヴェルザーの中にあるのは唯一つ、どうでもいい者達しかいなくなっていたのだから。
争えば争うだけ魔界は滅びへの道を加速させているのも知らない愚か者達でしかないのを、ある日たった一人だけ魔界の崩壊の絡繰りに気が付いた奇特な者のがいた。
・・・・五月蠅い奴だ・・・・
魔界を救う為に手を組めだの、出来ないならせめて争うなとこいつもとんだ甘い者よ・・・・まぁいい、以て千年か魔族の寿命は。たった千年位、好き勝手に吠えさせてやろう。
結局は何も出来ずに悔し涙に塗れながら死んでいくのだと高を括っていたら・・・凍れる時の秘法で寿命を延ばし、若い肉体を上手く活用するか・・・
-バーン-とか言ったな・・・・-多少-は面白い。そうか、諦めずに天界を・・俺も退屈なのには飽き飽きしたな。
ふん・・・・ならば俺も遊んでみるか。
魔界を少し纏め上げ、地上を支配したら、あの御綺麗な竜神は驚こう。間抜け面したのを笑ってやるのも一興だ。
バーンの若造、俺と賭けをせんか?
・・・・お前とか・・・
くっくっく、そう嫌そうにするな若造。俺とお前で手を組む事は金輪際あり得ん。俺はこの世界などどうなろうと構わん。しかし退屈な事には飽いた。
ッ!貴様・・・何をする積りだ。
簡単だ、どちらが早く己の目的を達成するか競争だ。
競争とな?
そうだ、お前は壮大な計画で地上を消滅させて天界を滅ぼすのを目的としている。俺は地上とそこに生きている者達はそのままにして天界への足掛かりにし、ゆくゆくは天界を滅ぼす。
・・・・仮に、その賭けをしたとして余に何のメリットがあるのだ?
そうこなくてはなバーン。先に目的を達成した者に二度と逆らわず配下になる事だ。お前が勝てば、俺の配下達はそっくりお前に忠誠を誓わせる。どうだ?そうならば魔界の統一は成ったも同然。俺かお前のどちらかが軍門に下っただけで出来るお手軽な賭けだ。どうだ?やらぬか?
・・・・・その賭けを反故しないと-お前-は言えるのか?
くっく、俺も嫌われたものだ。俺は最終的にどちらが勝ってもいいのだバーン。魔界統一にも、まして救済などどうでもいい。-賭けという目的-の方が俺にとっては重要だからな。
・・・・・・下郎が・・・・
御綺麗なお前もいつかこうなるさ・・・・あと二万年生きてみろ。きっと俺の言った事の正しさを知るさ・・・
救おうとも救おうとも、勝手に自ら死への道をひたすらに歩こうとする愚か者達を、言うかお前も見限ると予言して・・・・遊びの涯に俺は封印された。俺を勝手に生んだ、忌々しい竜神が生み出した竜の騎士とやらによって。
竜の騎士の力の根源があの忌々しい竜神によるものだと知った瞬間、久しく忘れていた頭に血が上る思いに負け、黒の核晶を作り上げ即座にぶつけてやったのに生きていた知性ある生き物とやらはどいつもこいつも薄汚いものだと教えてやったのに、生命とは素晴らしいとほざきおって・・・・・挙句数年後には自信が人間とやらに絶望して闇落ちしたと聞いた時は本気で消滅したくなった。
こんな何も分かっていない、いままでで出会った中で最大の愚か者に封ぜられた自分が恥ずかしくなって本気で死にたいのだが・・・・
そして引きこもっている間に、世界はおかしなことになっていた。
バーンが手筈通り地上を攻めているが・・・捕虜を寵愛しているとはあいつの身に何が起こった!⁉情は有れど冷徹で捕虜など取らない殲滅の大魔王が一体何しているのだ!?
そして・・・・・好奇心に負けて見に行ったが運の尽きだった・・・おかしな娘に怒鳴られ翻弄され振り回され・・・・気が付け場何時の間にか手を貸している様なおかしな事を俺もしている・・・・何だこの娘は・・・・
怒りで本音をぶちまけたちびの声は、自分と同じでこの世界を呪っている怨嗟に満ちた声で・・・なのにそれでも世界を憎めないと泣くおかしな娘・・・・世界を憎んだ俺とは真逆な娘・・・怒鳴った時の感じがクックに似ていたのがいけない・・・兄の方は甘い顔をしながらも思慮深い、ロビンの様な雰囲気を出すのがいけないのだ・・・
世界を助けようと、あの二人と同じ、愚かで優しい歌を懸命に囀る兄妹が俺の思考を狂わせたのがいけない・・・・・気が付けば、俺は兄の方に竜魔人への道を指し示していた。
おそらく力を十全に使える妹の紋章と、敵を殲滅する力を振るう事を躊躇わない兄の紋章を合わせれば、竜魔人化できるだろうと見込んで。
小僧はその通り、竜魔人と化して敵を見据えている。
あの二人であれば・・・・クック・ロビンが遂に果たせなかった、大空と大地の間を気ままに飛べよう。
「この茶番をさっさと終わらせろ小僧。」
魔界が救われるかどうかは興味はないが、もしも助かるのであれば俺もお役御免になれよう・・・・もう生きるのには飽いた・・・
「了解だ、ヴェルザー。」
・・・・あの小僧は何か勘違いしていないか?お前を助けたわけでは決してない。お前が敵を殺し、魔界を救った先に、俺の望んだ死があるから手助け・・・まぁ折角の礼だ、受け取っておいてやらんでもないがな・・・
クック・・・ロビン・・・・お前達は・・・俺を待っていてくれているだろうか?
今宵ここまで
竜王かの望み、あるいはコマドリの話しでした。
矢張り書きましたアフターストーリー
ツンデレな上にセンチメンタル竜王にされたヴェルザー様です。
物凄いどろどろの怨念を抱えて周囲に撒き散らしていても尚しまっておいた心の宝を掘り起こした回となりました。
クックロビン・・誰がコマドリ殺したの?→誰が竜王の良心を殺したの?
魔界の業に喰われた贄の側面をもった者達です。
この先、ヴェルザーに生きて貰うか、望み通りに消滅させるか悩みどころです。
そしてお詫びです。
昨日は予約投稿をミスして途中のものを掲載してしまい申し訳ありません。
手直して再度上げさせていただいたのでよろしければご覧ください。
物語もいよいよ大詰めとなりますので、ポカに気をつけていきたいと思います。