勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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よろしくお願いします


ーアバンーの全てを預かります。

なんだか初っ端から不味い状況・・アバン先生ボロボロ過ぎです。

鈍っているとは感じたけどここまでとは。

相手は人がきちんと挨拶をして名乗ったのに、処理能力遅く状況呑み込めずにポカンと人の事を見て隙だらけになっている三流魔王相手にだ。

今すぐあの首落としたら駄目かな?

・・駄目か・・凄いのいるって思われて、魔王軍の総攻撃か父さん送られたら今の皆じゃ対処できん・・原作道理にしてもらうほかなしか・・。

 

 

挨拶と出ていけを言った後、ティファという少女は静かに自分を見ているだけで動かない。

・・突然の事で動かないのではない!動けないのだ!!何なのだあのガキは!!!!

アバンよりも底の知れない強さを瞳の奥から感じて・・動けない・・。

 

ティファは静かにハドラーを見ているつもりであっても、実際は激怒をしてハドラーに闘志を向けていた。

原作通りや世界の為と割り切っている積りであっても、やはり三日間共に過ごし同じご飯を食べたアバンを、心の奥底では家族同然とみなしている。

家族を傷つけたハドラーは本来ならば許しがたく倒している。

しかしそれでは世界を救える道が閉ざされかねないと、常の優しき心を封印し無理をしてアバンへの情を断ち切ろうとしているが・・やはり漏れ出し、それがハドラーの動きを封じて一見ポカンとしている隙だらけの三流魔王に見せているだけで、ハドラーが弱いのではなく現時点のこの場ではティファが強すぎるだけの話だった。

「あれは魔王だよ!ティファ!!!」

その場の沈黙を破ったのはダイの返答だった。

ハドラーがティファの強い闘志を感じても、ティファの背にいるダイ達はまるで感じずにティファの強さが全く伝わっておらず、

「何でこんなやばいとこ来たんだよ!!」

兄二人は-弱い妹-をひたすらに守ろうと前に出ようとした。

守らねば!!

しかしその思いは「・・あれが・・魔王ですか・・。」

ティファの一言に立ち止まる。

「そうだ!!俺がかつて大戦を起こし!今大戦では偉大なる魔界の神大魔王バーン様の

軍を統括する、魔軍司令官ハドラーだ!!!」

ティファの闘志を振り切るように、自身の闘気を乗せて名乗りを上げた。

「小娘!!魔王に命乞いをするか?」

ビリビリとしたハドラーの声は凄まじく、ダイ・ポップ・ブラスは腰が抜けてへたり込みアバンとても腹に力を籠めねばひざを折りかけた。

・・しかし・・「・・全然全く魔王に見えません!!」

命乞いを勧告された当の本人は動じずに、鋼の剣を左肩に担いで平然と自分をしっかり見上げ、・・何かとんでもない返答言ってきたー!!!!

「小娘!!!」

「・・確かに実力は御有りのようですが・・。」

「ならば!!」

 

   「気配が酒場の外で喧嘩してるおっちゃん達並の気配しかしません!!」

 

なんじゃそりゃ⁉酒場の外で喧嘩してるって・・管巻いた酔っ払いといいたいのか!!

酔った勢いで凄み出してる不良と言いたいのかあの小娘は⁉

「力があっても精神と中身が伴わなければ魔王とは言えません!!」

・・あんの小娘が!!何を人に魔王道を説教している!!太々しい!!

自分を見ても、ボロボロになっているアバンを見ても、闘気で脅しをかけても怯んだ様子は全くなく・・たんに怖いもの知らずの馬鹿かあれは?

アバン諸共に全員始末してくれる!!その前に、

「昔のよしみだアバン!!世界を半分くれてやる!俺の部下になれ!!」

 

・・出た~魔王ロープレ・・本当にやったよあの小物さん。

ティファは原作後期のハドラーは大好きで、今の小物ハドラーは消去したいほど嫌いだ。

なのでとっとと一流魔王に育ってもらうべく王道を説いていくことにした。

一流の将は無駄な戦いも陰湿な罠もせず、後期ハドラーも正々堂々と戦っていたので、

そっちの方が闘いやすいと算段をしている。

何よりもあの男前ハドラーを見たいという欲もある!!

さて、アバン先生は何と答えるか。

「断る!仮に私がその申し出を受けても残虐なお前が約束を守るとは思わん!!」

「ほう、弟子の命が惜しくはないのか。」

「それに!」・・おっ出るか!あの大魔王の使い魔云々が!!

「この娘の言う通り!中身の伴わない今の貴様に!魔王の問いは相応しくはない!!」

・・・はいー⁉何言っちゃってくれてんのアバン先生!!魔王メッチャこっち見てますよー!!

「・・小娘・・」

「・・なんでしょ」

「貴様もそう思うか?」

・・何でそんな重要事を初対面の一介の幼気な女の子に聞くのよ!!大人同士で話し合いなさいよ!!

・・けど仕方ない!巻き込まれるように作為的に仕掛けたのは私だ!!

「はい!力があっても中身が伴わなくって、現時点では残念な人で勿体ないです!!」

責任もって全部言ってやった!!

「・・そうか。」

・・あれ?ハドラーの気配が妙に静かになった。

血走っていた眼は落ち着きを取り戻して・・呪力練ってるこれって!!

 

            「アストロン!!」

 

 

ティファの危惧をアバンも感じ自分以外にアストロンを掛ける。

これから自分が放つ呪文から全員を守るために。

「ポップ、ダイ君、少し早いですがこちらを渡しておきます。」-チャリ-

アバンは懐より、自分の卒業記念の証の輝聖石を二つ取り出し、

「ダイ君、このままいけば君はきっと誰よりも強く優しい勇者になれます。

たゆまずに努力をしてくださいね。」「そんな・・!!」

「ポップ、」

「嫌ですよ!!先生!それいつか言っていた卒業記念の石でしょ⁉

俺はそんなもんまだいらねえ!!まだまだ未熟で・・この呪文今すぐ解いてください!!

俺も戦う!!」

「・・ポップ、貴方は兄弟子になったのです。

ダイ君の事を頼みましたよ。」「先生!」

「ブラスさん、ゴメちゃん、三日間お世話になりました。」

「・・アバン殿・・。」「ピイ~・・」

「二人共、これは仮免なので精進してください。それとティファさん。」

アバンはそれぞれに挨拶と残すべき言葉を愛弟子達に伝え、最後にティファに声掛けをする。

「ハドラーの注意を貴方に向けましたがあれでよろしかったでしょうか?」

ティファにだけ伝わるようにひそりと話しかける。

ダイ達と違い、自分はティファの強さがよく分かった。

今の自分ではこのティファには全く勝てず、あのハドラーよりも強いと。

しかし戦う気配が全くなく、ハドラーを倒すのではなく教え説こうとしているように見えた。

た。

強者のティファの思惑は分からないが、何か意図してしているのであればと考えて、あえてティファの思惑に乗ってみたのだ。

 

・・小声で言ってきたって事は、あらかたの事はバレましたか・・この人は本物の天才だ。

今のハドラーとアバン先生はコインの裏と表だ。

ハドラーは力があれど中身が無い。

アバン先生は中身があれども力が無い・・両者ともこの時点ではその地位には不足している。

「やり過ぎですよ・・」思惑見抜かれたのは癪なので少しムッとして返した。

「あなたにはこれを。」

いたずら子供に対してする苦笑顔で-カールのお守り-を渡そうとしてきた・・。

「それよりも眼鏡ください。その眼鏡伊達ですよね。」

「・・これをですか?」

砂地まみれだけどそれがいい。

「これでよろしければ・・」先生手ずからかけてくれた。

「私に似合いますか?」

「・・あまり・・」

「預かります。」

「ティファさん?」

 

「ティファさん、預かりますとは・・」

自分はこれからハドラーを倒すべく、-あの呪文-をしようとしている。

命を懸ける自分に眼鏡を預かるとティファは・・無駄であると言おうとしたが、

「私にはこの眼鏡は大きくて全く似合っていませんよね。」ティファが話しかけてきた。

「はあ・・まあ」

知っていて・・なぜそれがいいと。

「だから一時だけです。この伊達眼鏡と-その理由-も全部預かります。」

「ティファさん⁉・・あなたは一体・・」

本当に・・この子供は何をどこまで知って、見通しているのか。

伊達眼鏡は自分の実力を隠し、平和を願う証。

これを掛けている今は教師をして平和の芽を育ててきた。

その理由を・・この子供はきちんと知っているのだろうか?

「守り抜いてみせます。様々な苦難や立ちはだかる者達から。」それはつまりダイ達を・・。

「返してほしければ相応の対価が必要です。

なので、頑張ってください、足りなければ返しません。」

「・・返してもらえますかね・・」・・今から自分は・・

「カールのお守り」

ティファに小声で言われ、胸元のお守りを改めてみて思い出した。

 

   -これは王家に伝わるお守りです、必ずやあなたの命を守ってくれます-

 

先の大戦の旅立ちの日に-フローラ王女-が渡してくれた時に言ってくれた言葉を思い出した。

・・何故そんな大事な人から貰った大切な言葉を今まで忘れていたのか・・時の中に埋もれた大切に渡された思いを、ティファが掘り起こし、

「死の淵にいってもあがいてください。みっともなくてもじたばたと。」

また新たな大切な言葉を贈ってくれた。

自分よりも並外れて強くとも、心根の優しい少女なのだティファは・・ならば!!

「ティファさん!」

「はい!!」

いい返事だ、みんなに聞こえるようにきちんと宣言をしよう!

「-眼鏡-を預かってください。必ず返していただきます。・・大切に守ってあげてください。」

眼鏡に託した思いと、平和の芽をまもってほしい。

「先生・・?」「ティファ?」ポップとダイはきょとんとしている。

まだ分かりませんよね。でもいつかは必ず気が付いてくれるはずです。

自分達二人が何を預け、約束をしたのかを。果たしてティファに返事は、

「はい、必ず守り抜きます。」

ふわりと笑い、目を見てきちんと返事をしてくれた。

しかしだ、「名前を呼んではくれないのですか?」「・・先生⁉」

我が儘を言ったら、素っ頓狂な返事が来た。

実はこの三日間、ティファは意識的に自分を避け徹底して名前を呼んではくれなかった。

ポップとはすぐに兄と呼んで仲良くなっていたのに・・実力隠しと分かってもさみしく思う。

「・・っつう・・頑張ってくださいアバン先生!!」

ティファが、顔を真っ赤にしてエール付きで名を呼んでくれた!!

「ありがとう、ティファさん。」「・・はい」

 

 「もういいか、弟子との別れはその辺で良かろう。どうせ後を追わすのだからな。」

 

 

あの残虐非道で・・暴君だったあのハドラーが・・呪力を溜めたまま待っていてくれた。

ティファが来る前のハドラーだったらいきなり撃ってきそうだったのが。

ティファが他者に与える影響は本当に凄い。

弱かったポップの心に勇気を与え、挫けかけ死なば諸共にと思っていた自分の心に希望を灯し、

・・ハドラーの心にも何かしらが響いたようだ。

おそらくは実力が高いと認めたティファの言葉に、感じるところがあったようだ。

それは-力のみ-ではハドラーもまた一流と言えよう・・それに中身が伴ってしまってはティファの思惑は何かは分からないが!今この場で確実にハドラーを倒す!!

「勝負ですハドラー!!!」

 

・・始まった・・・アストロンも全身に掛かって動けない。見守るしかない。

生きてまた再び会うことを・・信じて待ってますアバン先生!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公は世界守るためなら割り切って考えて動けると自分の事を思っていますが、
実際の主人公の心の在り様は優しさに満ちていて-割り切っている振り-をしているにすぎません。
物語りの中盤で、その無理がたたる予定です。

ハドラーに対しては、バラン戦後の卑劣な罠防止も見越して正々堂々な魔王になって、
立派な魔王を自分の手で倒したいと、物凄くずれた考えを持っています。
出来ればハドラーは救済する方面で筆者は頑張ります。

次回はデルムリン島編完結です。
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