勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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下された裁定

物凄い大歓声もそうだけど、同じくらいえらい状況になっちゃてる。

 

空間をダイ兄が斬って出てきた先がロロイの谷の真ん中で、出てきた瞬間から大歓声起きて、直ぐに私とダイ兄は、何とバーンも一緒にトベルーラですっ飛んで来たポップ兄に抱きしめられてるって・・・ちょっと前なら味方一同どころか、敵からもどんな状況だって突っ込み受けそうけど、本当なんだよ。

 

一番に私達の出迎えをトベルーラの突撃で来てくれたポップ兄は、バーンの目の前でフルブレーキして止まる事無く、バーンごと私達を抱きしめてくれてわんわん泣いて、同じくトベルーラで出迎えに来てくれた父さんも、抱きつくことはないけれど泣きながら私達の無事を喜んでくれてる。

地上を見れば、いつの間にかパレスから降りていたマァムさん達・・・・ううん、私が大好きで、私の事が大好きな人達全員が泣いて喜んでくれてる。

ノヴァ達リンガイア兵の皆さんと小父様も、私達と一緒に空間から出てきた駄天使達を見張りながらも、薄っすらと涙を流しながら喜んでくれているのがわかる。

おじさんも、疲れてるだろうにトベルーラで来てくれて、無言で泣きながら、私の頭を何度も撫でてくれてる・・・・・皆、私が生きて帰ってたのを嬉しいって喜んでくれてるんだ。

 

その様子を、ポップ兄達と違ってバーンの後ろに来て直ぐに控えに回ったキルとミストが、黙って見てる。バーン様に気安いと怒る事も無く、気配でみんなと同じように喜んでいるのが分かる。

どうしてここまで兄達と魔王軍が打ち解けられたのかな?。

そんな関係になってくれたら嬉しいなと思っていたのに、言ってはなんだがそんな関係になるのには最低でも十年以上かかるかもって思っていたのに・・・私が攫われた後になんかあったのかな?

 

あれかな?ピンチの時こそ全員で事に当たって仲良くなるっていうのは夢物語だって冷めた事言う奴いるけど、案外そんな事は無く上手くいくんだ。雨降ってって奴かな?

私も攫われた甲斐があったのかな。

 

 

等と極楽とんぼが脳内に飛んでいるかの如く、お花畑思考になっているティファは知る由もない。

彼等が結束を固められたのはそんなホンワカとした綺麗事だけでは済まされないあれやこれやの会話が世界中に飛び回ったのを。

 

三神達が寿命のエネルギーと魂の力を半分ヴェルザーに譲渡する事で、ティファを助けに行けると分かってからが凄かった。

 

あるものは老害どもを殲滅し、首を晒しながら彼等のシンパも血祭りに上げに行こうだの、地上と魔界の二界が手を携える事になっても天界は永久的にはぶろうだの、実に物騒な言葉の数々が地上と魔界から多数上がり、天界も自分達の身内の不始末で肩身が狭く何も言い返せないのに待ったをかけたのが矢張り大勢の子供達、それもリュート村のニーナが火を噴いた。

 

もうそれは筆舌に尽くせぬ程の、怒鳴りつけて叱る事に一家言あると言えそうなティファが聞いてもドン引きそうな毒舌交じりのいい加減にしろの説教は、二界の大人達を深~く反省させ、地上と魔界を反天界にしてみるのもいいかなと煽っていたヴェルザーの口すらも噤ませた大騒動の果てに、ニーナ達はティファお姉ちゃん助けて欲しいと純粋な願いをダイとバーンに託し、-色々-と思う事が多々ある大人達も、一番は矢張りそれなのだと思い知る。

 

天界が老害達がどうとか言う前に、三界を深く思って愛してくれている少女の無事を祈る事で世界が纏まったのだと知った日には、ティファは様々な思いで埋まりたくなるだろうから知らぬが何とやらであろう。

 

その後は世界中が見守っていた。駄天使達の空間に囚われたティファの下に、大魔王バーンと勇者ダイが乗り込んだ事で、ヴェルザーの力が干渉可能となり、主要都市のみならず天界の三神と六大精霊王達に要請という名の超上から目線で、映像結んでやるからさっさと魔界も含めた知的生命たちがいる所全部に映像送れと。

 

あの痴天使共なれば、戦って頭に血が昇っていくうちに滔々と自分達の悪事を恥じとも思わず口の端に上らせるだろうと見込んで、案の定悍ましく唾棄すべき歪んだ理想もどきを偉そうに講釈してきたのを、ヴェルザーは口と瞳を歪ませた嗤いを浮かべた。

冥竜王の面目躍如ともいうべき悪辣さを十二分に発揮して。

 

これでもう、老害駄天使達をどう扱おうと文句を言うものとておるまい。おそらく三神達も、何も知らなかった一般天族共も、身内にして自分達を導く者と思っていた長老達であっても庇おうという者は出ないだろうと。

 

庇う声は聞こえず、石打つ者は出よう。怨嗟に塗れ、憎悪の捌け口として生かされる事こそが、本当の意味での醜悪なる者の末路に相応しい・・・・生き地獄を、クックとロビンが味わったであろう痛みと恐怖を終生味わって生きていけばいい。

 

ヴェルザーの思惑は兎も角として、ティファとダイの仲間達が、地に降り立ち二人を名残惜しそうに腕から出したバーンの事も囲んで三人を揉みくちゃにした。

ダイとティファはそういう事に慣れているので身近にいる人に抱き返して応えられるが、今生でそんな事は初めてのバーンは、あらゆる困難から、絶望から、強敵にも立ち向かった大魔王が、人生初に逃げたいと思ってしまった。

 

自分は罪人で、一歩違っていれば地上を消していた敵の首領であるだろうに・・誰も気にもせず、ダイとティファだけではなく自分の生還をも喜んでくれている事に気恥ずかしく、優しい思いに対してどう応えればいいのか分からなくて・・・バーンの顔が赤くなるのを見てしまったダイとティファは、どちらが言うともなく顔を見合わせ、そして-ニンマリ-と笑ってバーンに向かって突撃をした。

 

「大魔王!!助けてくれたありがとう!!!」

「バーン!沢山沢山守ってくれてありがとう!!!」

 

遠き空間迄助けに来てくれたとティファは叫び、大魔法から空間の崩壊から守ってくれた事をダイが叫びながら満面の笑みで二人揃ってバーンにとびかかって抱き着き、そして押し倒してしまった。

 

地面にぺたりと座るなどと言う目に遭ったことは幼少の頃にもないバーンは、ふいに抱き着かれた事よりもそちらの方に驚き目をぱちくりとしたのが、またなんとも言えず、ダイは我慢できずに本音を叫んでしまう。

 

「うん!バーンはやっぱりうっかりとしてる事もある可愛い人だ!!!」

 

そのあまりにも不敬で、それでいて何の含みも無い物言いに、ダイの言葉に驚いて静まった直ぐ後、爆笑の渦が世界を覆い尽くす。

 

魔界の神様は近寄りがたいものでは無い。慈悲深く強く、そしてうっかり屋の可愛い人なのだと知れた事が嬉しくて、彼の人に何もかもを背負わせず、自分達が今度は頑張る番だと魔界の者達は誓いを立てながら、憎しみの怨嗟を笑う事で見の内から追い出そうと力強く笑う者もいる。

憎しみも戦いももういらないとばかりに。

 

 

一方ではバーンの様子を見ているヴェルザーは、ダイとティファに受けている仕打ちの全ての事に狼狽え赤くなっているバーンの態度を見て留飲を下げている。

自分をふいの言葉で狼狽えさせたのだから、其の千倍は恥ずかしい思いをしろとニヤニヤしながら。

 

そしてもう一方では、老害駄天使達を冷たい目で見つめ、おもむろに空間を開け世界に通告を出す。

 

「勇者の小僧、-ちび助-もういいだろう。時間だ、そこな老害駄天使達を貰うぞ。」

「「ヴェルザー⁉」」

「ふん、言っておくがな、そこの者達の処遇は俺と三神達でもう取り決めがされている。」

「・・・いつの間に・・」

「お前の囚われた空間に、勇者の小僧とバーンの若造を送り込むときにいくつかの約定をさせてな。

もしも小僧と若造がそ奴等を殺さずに連れ帰ったなら、終生魔界の最深部で瘴気の浄化をさせる事になるとな。」

「なん!!」

「我ら高貴なるものが何故そんな事を!!!」

「その役目はお前の・・・・」

「喧しいわ!!!!!」

 

ヴェルザーの通告に青褪め喚き出そうとする長老達を、ヴェルザーが憤怒の怒りを吐き散らし黙らせた。

 

「喚こうが騒ごうがこれは決定事項だ!魔界が浮上し瘴気が一時全て浄化されようとも、負の心が無くなる事は永劫なく、魔界の深部に転送される忌々しいシステムが無くなることは無いんでな。俺はもう浄化をする気はない。お前達、自らやるか、それとも意識だけ残し、残りは瘴気を浄化するだけの-器-にされるか選ぶがいい・意識が疲れを感じようともボロボロになっても瘴気の浄化の為に動こうとする人形にな・・・言っておくが三神達も天族達も其れで合意している。足掻くだけ無駄だ。

この世界に、お前達の味方なぞいない!疾く俺の下に来い!!!」

 

今後世界が良き方向に向かおうとも瘴気が無くならない事実と共に、ヴェルザーは無慈悲ともとれる裁定を長老達に下し、異論を聞く前に自らの領地に招き寄せる。

口答えするのであれば、即座に瘴気を浄化するだけの-人形-にするべく。




今宵ここまで・・・・


老害駄天使達の出荷先が決まりました。
終生魔界にて瘴気を浄化する労働の刑です。
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