勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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後日談② とある戦士に幸せを

世は平和、なべて皆が太陽の下で長閑な世界を作ろと三界が一つとなりて、よりよい世界を共に歩み、いつか自分達はこの惑星に住まう一つの家族だと胸を張って言うのだという情熱を持ち理想を追い求める者が続出する程の平和な世界になった。

 

無論それは人界・魔族界・天界の三界の壮大なスケールレベルの話であって、何処の世界にも盗みや詐欺師、奴隷売買に他種族を迫害する者など個人や中規模レベルでは普通に犯罪は横行している。

 

しかしそれがあるからとて良き世界を作る歩みを止める理由になるわけでもなく、世界が治まれば少なくとも貧しさや逼迫した理由での個人レベルの犯罪は無くなる可能性は高いわけで、各国とも民間で起こる犯罪を座視している訳ではなく、今まで戦の方に向けられていた予算や人材をそちらに回し、-とある元料理人-のアドバイスでスラム街の衛生を改善し、食料を行き渡らせ、貧困問題に目を向け支援したところ劇的に犯罪が減った所もある。

 

理由は単純。スラム街で食べられない者達が犯罪組織の手先に使われていたのだが、食べるに困らず、カールやまだ王族の生き残りは見つけられていないがぽつぽつと国民が帰還するオーザムの復興などで必要な人材に、スラム街の職の無い者達を優先的に働けるようにしたのが功を奏した。

 

誰だって好き好んで後ろ暗い道を歩いて一生を終えたいというアウトローな者はごく少数であり、真っ当に国が食べさせてくれるならそっちを選ぶのが大半であった。

 

このように個人レベルの犯罪が落ち着く中、スラム街と呼ばれたところは徐々に減り、街の何番地という範囲にきちんと組み込まれる中、真っ当に稼げた者達は次なる幸せに目を向けるのもまた常であろうか。

即ちいい子を見つけて結婚してもらって幸せな家庭をである。

 

これまではその日生きるのが精一杯で、かつかつの彼等彼女等にそんな余裕はなく、貧困の中でも結婚して逞しく生活していた者がいるにはいるがそちらは少数で、きちんとした家に安定した収入が出来たのだからと、結婚式があちこちで連日見られるようになった。

 

世界平和も結構だが、個人の幸せも喜ばしい事で、パプニカ国でも街や村のあちこちで教会の鐘が鳴らない日が暫くは無かった。

 

城下町の鐘の音は王城にも届くので、レオナは鐘の音を聞きながら、何時も二年後の自分を夢想する。

 

自分はどんなドレスをその時来ているのだろうか?

きっとその時にはダイ君は私の背なんて抜かしていて、バージンロードをお姫様抱っこして歩いて、そのまま国民全員に自分達が結婚した事をお披露目してくれないだろうかと、実に女の子の夢一杯である。

 

ドレスのデザインを今からダイと共に選び、ダイの方は採寸はせずにデザインだけ決めようと、この程巷で流行りのカタログを大量にダイと共に見ているがなかなか決めかねている。

 

ダイの顔つきは日増しに男らしくなり、最初に選んだのが折角の男前が子供っぽく見えてしまうデザインなので、そこから新しいのを探している。

 

しかしダイもだが自分も学ぶことが多く、服選びだけをしている訳にもいかない。

 

ダイは帝王学とこの国の歴史と文化を学んでもらい、自分はこれまで学んできた事が通用しない世界になったので新たな勉学を習得中。

 

ダイとは学ぶことが違うので合同授業は出来ないが、彼の妹が目覚めて二月後に、パプニカ王城に住む事になった。

 

ダイ曰く、妹に婚約者の側に居て支えてやれと蹴っ飛ばされたとか。

 

自分は将来女王になって責務の多くなる王女を、支えてこその婚約者だろうと。

 

ダイは妹の言葉になる程と、目から鱗を落ち、早速レオナに相談し、勿論王室も王城側も大臣・官僚たちもウェルカム状態で、何なら即日の内に来て欲しいとお祭り騒ぎになったとか。

 

兎も角ダイはデルムリン島から巣立ち、とは言えキメラの翼で往来できるのだからしんみり感はブラス達の方にも余りなく、向こうに迷惑をかけるなと言われただけで送り出され、五日に一度帰郷すると言ってバラン達に行ってきますとパプニカに住居を移した。

 

大戦から散々城に出入りしていたので王城内のコミニケーションを一から築く必要は皆無であり、-出来た妹-に何故か幼少の頃から王の心得だの貴族間の事だの国家予算の基本だのを教わっていたので、初めての授業も難なくついていけのが評判となった。マナーも少し直せばいい程のレベルであり、彼は矢張りアルキード王女の血筋だと評判が立ち、何よりも素直で明るい彼はどこにいても人気だった。

その彼を利用とする者は、レオナが直々に目を光らせているので将来の障害足りえず、そのレオナを愛して甘やかしまくっているダイの姿に、結婚したいな~という若者たちが宮廷内でも続出した。

 

自分達も甘い恋人関係を築いてそして結婚するのだと、結婚に愛をと夢を持つ貴族の子弟子女達があちこちで生まれたのを、この城で古参であるバダックはいい傾向じゃと髭を撫でながら若者たちを見守っている。

 

騎士や兵士達はそうでもないが、貴族は無論の事、騎士団長や兵士長ともなれば国内での政治的バランスや、自分達の派閥を強化する為の結婚が多く、恋して結婚というのがあまり聞かれていなかった。

だからと言って政治的結婚であっても愛を育む者達が多かったので、それほど悲惨な結婚生活は聞かれずにいたのだが、矢張りレオナ姫と勇者のあのいちゃつきを見れば、恋人欲しいと若い者達が奔るのは自明の理。

 

年老いた自分は生涯独身貴族を通してきたが。

 

無論若い頃はそれなりに女性と付き合ってきたが、そちらよりも発明の方に夢中になるきらいがあり、半年家を空ける事がざらであり、戻ってきてみれば相手の女性が他の者と結婚していた。

 

どうにも自分は家庭向きではないと結婚をすっぱりと諦め、其れなりの女性と浮名を流しながら発明の日々に勤しんでこの年になったが・・・・・大戦で出来た友人には家庭を持って欲しいものだ。

 

 

「という訳でこのお見合いパーティーを企画したんじゃ。」

「・・・・・・・爺さん、どうしたらという訳でとこの話が済まされようとしているのか俺にはさっぱりと分からんのだが・・・」

 

バダックは古参であり、大戦初日に聖水に油を混ぜた聖油を作って、攻めて来たアンデットの群れと、絨毯爆撃程の威力のある爆弾攻撃でこれまた攻めて来た軍団長を撃退した功績もあり、あちこちに顔が利く身分になった。

 

その身分を駆使し、空いている王城の会議室を借り受け、婦女子の好む飲食物をその時の報奨金を当てて自前で用意し、そして目の前にいるピンクのリザードマンの武人を好もしく思う婦女子に当たりを付けて招待状を出していいかレオール王の許可をもぎ取り、婦女子の家族にはレオール王とレオナ姫達が根回ししてくれて今回獣王クロコダインのお見合いパーティーが開催できた。

 

当人には何も伝えずパプニカに呼び出して。言ったら来てくれない事請負だからだ。

クロコダインは自分が結婚する気が無いとポツリと言っていたのを聞いたバダックは泣きたくなった。

こんな素晴らしい心を持ったいい男が、そんな寂しい事を言ってくれるなと、思わずクロコダインの胸を叩いてしまった。

 

その自分を優しい目で見ながら、俺みたいな武骨者に結婚は無いだろうと穏やかに言う姿がまた堪らなかった。

 

実際のクロコダインは巷で人気があるだけに切なくなった。

 

戯曲では、勇者一行全員は美化されずにありのままの姿と功績を演じられるのが好まれている。

 

すなわちクロコダイン役をする者はきちんと彼の似姿の着ぐるみをこさえ、彼の親友と呼ばれるバダックにわざわざ見て貰い、改良した上で戯曲に望み、チウ役も同じように着ぐるみをこさえ子役の子が入り、彼等がモンスターであることを包み隠される事無く上映されたのだ。

 

姿形、種族の違いなどどうでもいい程、実際に彼等が成した功績、素晴らしい言葉の数々の前にはそんな事はどうでもいいとなる程であったのだから。

 

それは貴族の三女や四女と、家では少々あぶれ者扱いになる子女達にクロコダインの受けが良かった。

彼女達は素敵な男性はいつも優先して姉たちの方に行かれる身であり、せめて芝居の中だけでもクロコダインに守られている料理人になった自分を夢に見る程のめり込んだ。

 

芝居の中での料理人は、-力-なくとも優しい言葉と信念をもって敵と相対し、その言葉に激昂した敵達の攻撃から一番に料理人を守る役目がクロコダインであり、其れをして彼は盾の君という二つ名を以て人気を博している。

 

元敵でありながらも一番に料理人と勇者達の心意気に改心し、献身的に一行を支えた者として。

 

一行には素晴らしい男性はまだまだいるが、その人達は生憎とお相手がおり、夢想するにも失礼であり、かつ逞しい殿方から一番に守られたいというお姫様を夢見る少女は多いのだ。

 

故に、クロコダインのお見合いパーティーの招待状を貰った子女達は色めき立った。

あの素敵な戦士と直接会える、もしかしたら結婚のお相手に選んでもらえるのではと期待に夢を膨らませて。

 

バダックが選んだのは政治色が薄い、かつ位がそこまで高くなく、そこそこ裕福な子爵・男爵の中層であり、其の子女が-盾の君-をどう思っているかの念入りなリサーチをして選んだ選りすぐり子達ばかり。

 

そんな中に、俺はだなと尻込みするクロコダインを、通りがかって見かねたヒュンケルとアポロの手を借りて押し込んだ。

 

二人も心配していたのだ。この高潔で優しく、しかし己を顧みずに傷だらけで仲間を守ってきた男の将来を。

幸い評判の中ではそこいらの男よりもモテているのだから後は自分が腹を括れと。

 

 

「は!!初めまして!!私はその・・・・ハンナと申します・・・」

「お会いできて光栄です!!セシルと申します!!会えただけでも感激です!」

「イグレットと申します。今日はよろしくお願いします致しますクロコダイン様。」

「クロコダイン様、此方のお飲み物をどうぞ!!」

「其れにはこのお肉料理が合いますわ!!」

「あの・・・・よろしければお話を・・・・」

 

・・・・・なんだ?何故こんな武骨でしかもモンスターの俺をこの女の子達は悲鳴も上げずに・・・・それどころか嬉しそうに話し掛けてくれるのだ?

 

巷で流行りの戯曲など見ていないクロコダインには、自分が慕われている理由がさっぱり分からず、華やいだ雰囲気に気圧され黙っていても、そこは心得ている子女達が上手い事リードしようとまでしてくれている。

この中には相手を蹴落としてクロコダインを射止めようという女狐さんは無論おらず、ファンであり同じ空間に入れるだけで幸せだとクロコダインを喜ばそうと懸命に盛り立てようとしている。

 

つまるところまだまだ夢見る少女達なのだ此処にいる子女達は。

現実の生々しさを感じないファンシーな空間であるが、自分をもてなそうとしてくれている熱意が伝わったクロコダインは戸惑いながらも話し掛けてくれる女性達にきちんと受け答えし始め、手渡してくれた飲み物や料理を笑みを以て頂戴した。

 

後は何を話せばいいのか悩んでいると、どんな料理やお酒が好きか、普段どんな事をして過ごしているのかと、当たり障りのない話を振ってくれたのでそれなりに会話を楽しみ、いつしか大戦の中であっても楽しく過ごさせてくれた料理人と仲間達の話をし始め、子女達は椅子をクロコダインに勧めて自分達もクロコダインを囲む様に座り、話を聞くのに夢中になって夕方を迎えた。

 

「どうじゃ、結婚したいいい子はいたかの?」

「爺さん・・・・・悪いがあれはその・・・・何と言おうか今日来てくれた子達は俺にとっては-保護対象-にしか映らんかったよ。」

「む?」

「良い子達で、良き家庭を誰かと築いていくのを見るのが楽しみな子達だ。」

 

ようは叔父の気分で見合いパーティーを終えてしまったのだと、クロコダインは正直に話し、バダックは心の中で嘆息をした。

 

年齢幅はそれなりに高く、未婚の二十台も幾人かいたのだがそれでも保護対象に映ったかと。

 

貴族の子女で、二十代は些か・・・・かなり行き遅れでありそこまでになればそれなりの結婚で済まされるので見つけられたのが僥倖であったと喜んだのだが・・いっそ後家になった婦女子も宛は有るのでそちらは個人で紹介するかと算段していると、アポロが自分を呼びに来た。

 

結婚式では花火を上げたいという二人の要望があり、その事で至急来て欲しいと。

 

「すまんな、城門迄送れずに。」

「なに、此処は勝手知ったる何とやらだ。今日は愉しかったよ爺さん。」

「そうか・・・・そう言って貰えるとありがたい。またの。」

「ああ。」

 

アポロとバダックが角を曲がって見えなくなるまで見送ったクロコダインは、勝手知ったる城内の城門を目指し、噴水のある庭の小道を横切ろうとした時、噴水に手を入れている薄い銀の髪をたなびかせた少女がいた。

何をしているのかと目を凝らせば、随分と噴水に手を入れていたのか長い袖口とドレスのスカート部分がに濡れており、見過ごせずに声を掛けた。

 

日が暮れてしまってはあれでは体が冷えてしまう

 

「その噴水に何か落とし物をしたのか?」

「!!・・・・どなたかいるのですか?」

「・・・・・・俺が見えぬのか?」

「はい・・・・お恥ずかしながら目は開いても生まれつきに見えませぬ故・・」

「・・・失礼した・・・・俺はクロコダインという。もう一度尋ねるが噴水に何かを落としたのか?」

「これは・・・・名乗りもせずに。エルウィン子爵の次女でティフィールと申します。獣王クロコダイン様に置かれましては武功の数々を拝聴させていただいております。」

 

少女は必死に探しものをしていたであったろうに、其れをいったん中断し優雅にスカートを片手で摘まみ上げクロコダインの方をきちんと向いて挨拶を返した。

その所作は完璧であり、夕暮れの庭を一層華やいだ場に見せてしまうほどの美しさに、クロコダインは思わず見惚れてしまった。

それは今まで生きていた中で感じた事の無い甘い感触を胸に宿らせる程に。

 

「・・・・其方・・・何を探していた?」

 

その甘い感触から逃げる様に、クロコダインは再び少女・ティフィールに尋ね乍らも少女の容姿も見入ってしまった。

 

 

肢体は細く、肩も腕も首も、見えている部分は全て細く脆そうであり、少しの事で壊れてしまいそうな儚さがり、白に近いほどの白銀の髪が一層少女を幻想的に映し出す。

 

その少女が挨拶の形を崩し、そっと自分の質問に答えてくれた。

 

「実は・・・父の形見の髪が入ったモーニングジュエルのペンダントの鎖が切れてしまいその噴水の中に・・・」

 

自分のモンスターの聴覚を以てする場難なく聞こえるが、声音は小さく細く、その肢体と同じくはかなげな声が、クロコダインの胸を一層焦がし、無闇にのどがカラカラになるのを無視し、少し待てと言って、噴水に目を向ける。

 

自分が見れば直ぐに分かったが、ペンダントは噴水の縁の内側に入ってしまい、この少女には見つける事は叶わなかっただろうと思うと、自分が通りがかって良かったと安堵したが、一応確認を取る。違って他の者から指摘されてはがっかりとさせてしまうのを厭うて。

 

「銀の鎖に水色のペンダントがあったがこれだろうか?」

「はい!それで御座います!!!見つけて下さりありがとうございますクロコダイン様。」

 

今にも息弾ませて来ようとするのをクロコダインが制し、手を出すように言ってそっと乗せて渡した。

 

フォークやスプーン以外を持った事のなさそうな柔らかそうな白い手に、クロコダインはどぎまぎしながら。

 

「あの・・・・このお礼をしたいのですが・・・」

「む!!いや大したことは・・・・・それよりも其方一人でここに来たのか?目が見えぬ身で・・」

「いいえ、此処には城の用事がある兄上様と共に。近頃外出をしていなかったので気晴らしにと兄上様がお城の方達に私の入場許可を取ってくださって共に参りました。」

「・・・・侍女たちはつけないのか?」

「はい・・・・我が家はさほど裕福ではなく・・・・付き添いに出られる者は・・」

「そ!!それは立ち入った事を!!!すまん!!」

「あ!!いえ!!!それよりもこのお礼を・・・」

「ティフィール!!・・・これは獣王クロコダイン様!!!」

「・・・・おや・・・お前は・・・」

「覚えていて下さいましたか!!大戦の最中我等が至宝たるレオナ姫様をお救い下された後、マトリフ様の浜辺で開かれた宴の手伝いと共に参加させていただいたロベールで御座います!!」

「そうか、俺に沢山酒を樽ごと渡してくれたのをよく覚えているぞ。」

「それは光栄で御座います!!」

 

俗に、バルジ島の死闘の後、マトリフの海岸でレオナ姫の帰還を祝し、助けてくれた勇者一行を労う宴の最中、クロコダインとヒュンケルが己達の罪業を姫に懺悔しそして裁可が下された後もこの目の前にいるロベールは態度を変えず、宴の始まりと同じ様にせっせと酒を渡して共に飲んだのがつい昨日のように思い出される。

 

貴方方は償うと言ったのですからと、自分達の言葉を信じてくれた気持ちのよい青年の妹を助けるとは・・・・

 

「兄様・・・・この方に私助けて頂いたのです。」

「なんと!それはぜひとも我が家に来てください!!」

「いいや!!そんな・・・」

「我が家は名ばかりの子爵ですが、恩人を饗せないほど落ちぶれてはおりません!!是非に!」

「む・・・・そうか・・・・では招かれよ・・・」

 

これ以上の断りは、ロベールとティフィールへの侮辱になってしまいかねないと、クロコダインは招きを受け子爵邸へと招かれた。

 

他の貴族屋敷が並ぶ中、少しこじんまりとしているが清潔感溢れ、小さな庭には菫や野ばらが可憐に咲き、見た者の目を和ませてくれる。

 

家族は長女は嫁いで久しく、家には年配の執事とメイド長とメイド二人で家を切り盛りしているようだが、急遽来た自分を癒そうにもせず、料理をこさえるのに少し時間がかかると反対に申し訳なさそうに言ってくれる。

 

待つ間に執事がお茶を淹れてくれ、三人で取り留めない話をしている間に料理が出来、食事の間もロベールとクロコダインは武の事を楽しげに話し、合間にティフィールが優しい声で感想を言う和やかな雰囲気で夕餉を終え、なんとロベールは樽酒を持ってこさせ、更に飲もうとなった。

 

ティフィールも十八ではあるが、お酒は苦手であり二人に辞去の挨拶をして部屋へと戻った。

 

その際、クロコダインの腕にそっと触れ、出来れば朝食もと・・・・最後まで言えないながらもされた懇願に、思わず頷いてしまった。

 

ティフィールも、かつてない自分の大胆さに驚いたが、それでも、クロコダインから感じたあの温かい気配をもっと感じていたかったのだと、メイドの手を借り寝巻きに着替えてベットに入り、小さな胸をひっそりと焦がす。

声をかけられる前から感じていたあの温かく優しい気配を・・・

 

初めてだった、自分に優しくしてくれる人達は、どこか自分を可哀想だと言う気配が感じられ、自分は他のものより矢張り劣るのだと知らしめられてきたのに・・・あの人は自分の盲目を知っても気配は変わらずに温かく・・もっと強く包まれたいと願ってしまった・・

 

それはまたクロコダインも同様だであった。

長居するつもりはなかったのに・・・・あの少女と共に摂った食事の楽しさをまた味わいたいと。

儚げで優しいあの声をもっと聞きたい、そして・・・終生を共にし自分で守り抜いてあげたいと・・・

 

その様子をじっと見ていたロベールは、妹が初恋をしたのを知った。

 

生まれてから目は開いておれど、暗闇で過ごし、何事をも我慢をして自分を出さずにいた妹が、恩あれど初対面の者にあんな懇願をした事は無く、頬を赤らめた事も無い。

 

ちらりとクロコダインを見上げれば、彼の頬も赤くなっている・・・・脈はある!

幸いロベールは今日の彼のお見合いパーティーと、選ばれた子女達の内情も知っている。

なにせバダックが張り切り、あのパーティーの手伝いをしたのだから。

 

条件は・・・・裕福ではないが!これから自分が軍内の管理部というエリートコースに行く目途が立ったのでこれから稼げばいい!!

 

両親流行り病で五年前に共に早世してしまったが、幸い家を切り盛りできる執事達が若くして当主になった自分を支えて今日まできたのだ。

生中な事ではへこたれない!!

家の残ると言った姉も、少し格上だか、根回ししてお互い好きあった男爵家の長男に嫁がせた手腕も自分にはあると言う自負もある!

もしも二人が会う内に自然と結婚したいとなったら、あらゆる手を使って結婚までこぎつけさせてみせる!!!

 

そしてロベールは持ち前の酒豪ぶりを発揮しクロコダインをべろんべろんにして、妹をどう思っているかの本音を余すことなく聞き出し、そして翌日クロコダインと妹二人きりの朝食にさせて申し訳ないと二人に詫びて朝一で城に登城しバダックを訪ねて話をした。

 

 

クロコダイン様は昨日妹にあいどうやらお互いひとめぼれの様ですと。

 

この城ではティフィールの事は有名である。ハシバミの色の瞳に何も映らない可哀そうな子として・・・・・そうか、あの男は-生涯をかけて守る者-を選んだか・・

 

あの子もクロコダインもいい子なのだ・・・・・うまくいって欲しい。

 

早速バダックは動いた。

 

クロコダインとティフィールがもしかしたらそうなるかもしれないと昨日パーティーに来てくれた子女達にお詫びと共に報告をした。

 

パーティーにきた子女達もティフィールの事を承知しており、盾の君らしいとからりと笑いながらも、内心で泣いたこは幾人もいた。

 

それでも、一度でも思った相手の幸せを願い、後に挙げられたクロコダインの結婚式で盛大に祝ったのはダイ達仲間に次いで彼女達であったとか・・・・

 

そして結婚をし、娶ったティフィールを終生あらゆる事を守り抜き、彼女の実家に経済的に頼る気はないと各国の兵達の武闘の教師として働いて、結婚記念日の度に彼女の好む物を欠かさず贈り、睦まじい鴛鴦夫婦であったとか




このお話はここまで


クロコダインを独身貴族に仕立てようと思っていましたが、リクエストっぽいのを頂いたので頑張ってお相手を見つけて見ました。

矢張りかの武人は誰かを守るポジが似合うと思い、主人公の名に似ていても、儚げな少女と幸せを願う筆者です・・・・・次はだれを出しましょうやら悩ましい・・・
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