勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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引きこもり生活だけではいけません


後日談➄ かつての料理人の日常その一

会議とは長くなる、其れも重要会議となればなおさらで、出た案の取り纏めだのその後に意見続出しては目も当てられないのだが、今日の会議はより一層白熱している。

広い議場の筈なのに、各街や村からの代表者がひしめいており、全員の顔つきが真剣である。

 

 

魔界が浮上してからは魔界で行われる会議はバーンパレスで行われる事が通例となり、幾多の重要案件がここで決められて行く。

本日の議題は魔界の食糧自給率を如何に上げるか。

 

これまでは食えない者は死ぬだけで済まされて来た・・・・訳でもないが。

 

魔界だとてそれなりの土壌とそこそこの植物は根付き、農耕だとてそれなりにはやってきている。

それの味に目をつぶればな者が多いが兎に角、魔界では本気で働いて生きようとすればそこそこは食べていかれ、今までのような瘴気問題が無ければそれなりの生活をそこそこ営んでこれたのだ魔界は。

 

しかしこれからはそうもいかない。瘴気問題が解決したのなれば、安定的に魔族・ドラゴン・モンスター達の生存率が上がって近い将来人口加増で-そこそこ-の食料自給率では追い付かない試算が出されている。

 

地上に浮上し、目の前に広がる海の資源で海産物があるとはいえ、そこを取りつくすような真似をして良いはずが無く、そもそも人界との約束で漁業範囲もお互いで取り決めており、なれば矢張り自分達の土地を農耕し家畜を増やし、安定した食料自給を目指していくのが今後の課題である。

 

土壌がそこそこの所を増やしつつ、水の少ない地でも育つ!それが!!

 

「いいですか!!じゃがいもとは!!とっても優秀なお野菜なのです!!!お水が少なくとも文句を言わずに育って!頑張れば沢山の美味しい物を私達に与えて下さるこれこそ神が作った救世主的お野菜なのです!!!!」

 

芋一つを掲げて会議場の中央壇上で吠え上げているのは、長く豊かで艶のある黒髪を本日はポニーテールに結わえ、左右に一房たらし髪にしている、かつての勇者一行の料理人で、モンスターアイランド・デルムリン島に畑を作った・・

 

「私の故郷たるデルムリン島でも、かつては自然で採れる食料に依存して、収穫が無くてお腹を空かせたモンスター達もいたそうですが、私が-偶然-にも海岸で拾った書物に書かれていた畑の作り方を読めたお陰で、流れ着いてきた芋袋からいくつか取りお気をして、芽が出る迄・・・・」

 

ティファであった。

この第一回・魔界農業フォーラムとも言えそうな会議の栄えある一人目の講師にとして、バーンに呼ばれて何だろうとのこのこと出掛けてきた。

 

魔界のご飯事情をティファもそれなりに知っている。

人質生活で仲良くなった双子の料理人から、地上と魔界の農耕からして差がありすぎるのだと嘆かれ、魔界の食材はさほど質も量も良くないのだと。

 

それを助ける為のお手伝いが出来るとあって、ティファは急遽引きこもり生活を引退し、祖父と父に行ってきますと言って、壇上で芋愛について滾々と語っている。

 

先ずは土が痩せているのならば腐葉土を人界から貰い受ければいい。今季節は秋なので、人界の落葉樹が見頃となり、その後に落ちた大量の葉を集めて各家庭で出る生ゴミを調達して、広い土地、例えばテランのアイテル広大な土地にを借り受けて腐葉土を作り、魔界のやせた土地を耕して腐葉土も混ぜ込んでふかふかになった良い畑にじゃがいもの芋種を植えて、少ない水で後は大丈夫!!

 

じゃがいもは本当に魔界に適していると、ティファは熱く芋愛を語りながらしみじみと思う。

まず地上に出られても、魔界は全体的に降水量が少ない。分厚い雨雲でない限り高い山脈を雨雲が越えられないので、無いとは言わないまでも少ない。

しかし昔からある地下水脈で生活できていたのだから水問題はさほど重要ではなく、少ない水で育てられるものがあればいいので白羽の矢が立ったのがじゃがいもさんである。

 

そしてジャガイモの育てやすさと生産量などのメリットを挙げていくティファの姿を、会議場の一番奥で聞いているバーン御一行は楽し気に聞いている。

周りは自分達の土地はこうだが育てられるだろうかや、枯れた時や病気になった時の対処法や、何時頃から本格的に植え付けが出来るかと周りの真剣さとは雲泥の差がある。

 

別にバーンはふざけている訳ではなく、食料の大切さも、地上から・・当時は屈辱を感じながらも買い付けて軍に配給している程食の大切さは知っているいるのだがそこはティファのあの生き生きとした様子を見れてご満悦状態である。

 

芋一つにあそこ迄情熱を傾ける様がなんとも可愛く、芋の育て方は今日の会議書類に目を通せばいいので幼な子の晴れ舞台を見守っている好々爺の気分で見守っている・・・・・この会議で食料自給率上げと、その為の土壌改善の為の腐葉土づくりの為の土地をテランに借り受けるリース料の最高値も決めて後日話を持っていく為の素案作りもうっちゃられ、これは絶対に俺が取りまとめるのだろうなと、バーンの右隣にいるハドラーは天を仰いで嘆息する。

 

まぁティファが絡んでいる案件であれば、人界の各王室も諸手を上げてとは言わなくとも、せっせと力を貸してくれることは請負ではあるし、なんならカールにも落葉樹の森が広大にあり、土地的にも魔界に近いからうちでやりませんかとかアバン辺りが割って入ってきそうだ。

 

今回腐葉土の件をテランに持ち込む事にしたのは、かの国の底上げの為でもあるからそれは無いだろうが・・・さて。

 

あの国はこれから平和を守る事を国策として掲げんとする国であり、ならば魔界側もテランの恩恵有り食料が安定したのだと魔界側に良い印象で知れ渡ってほしい国である。

 

この会議は、食料だけではなくそこから人界の何処とどう繋がりと友好を深めていくかも絡んでいるのだが・・・・・

 

「バーン様、この後お嬢ちゃんが沢山の芋料理を用意しているとか。」

「先程ともに作りましたがバーン様が好まれそうな物が多々ありまして・・」

 

・・・・・魔界のトップの側近達の会話がこれで、受けている主のバーン様も相好崩していいのかこれでと、本日何度目かの溜め息を心の中でそっと吐く・・・・

持ってくれよ俺様の胃袋よ・・・

 

二時間枠の筈の会議を一時間も超過した後、会議出席者全員がティファ考案の芋料理を振舞われてご満悦となった。

 

「この-コロッケ-とはなんとサクサクとして美味しい事か!!」

「細切りのはフライドポテト・・・いくらでもいけそうだ!」

「私はこの皮付きの方が良いですな~。」

「其れよりもこの-ポテトサラダ-が良いぞ!」

「なんと!この白いのは・・・何?マヨネーズというソースを混ぜているのか?」

 

出された芋料理は実に多く-ダイの大冒険の世界-では未知なるものがほとんどであった。

 

フライドポテト・ハッシュドポテト・コロッケ・ポテトのパンケーキ、言わずと知れた前世のポテト料理をティファはフル活用している。

 

この世界にも芋は有るのだが食べ方は実にバリエーションが少なく、皮付きのまま茹でて塩をふるか、潰して塩を混ぜてパンの上に塗るかくらいで芋を主体とした料理自体が無い。

 

それに不満を持ったティファが、料理を覚えてからは頑張って再現し、この程転生あるある内政チートの代表格たる-マヨネーズ様-をもとうとう作り出して今回の試作品で前世での一番の大好物・ポテトサラダにふんだんに使ったのだ。

 

程の良い酸味と芋の甘さが無限に食べられそうな美味しさを生む、自分にとって完全栄養食に入れても良いよねと叫びたくなる一品。

 

芋と野菜とベーコンを塩コショウで混ぜて下味を作った所にカロリーの高いマヨネーズを入れれば少量でも栄養が取れるのだ!!

 

「大魔王~、ポテトサラダのお代わりいかがですか?。」

「うむ、沢山貰おう。其方もここで食べてゆけ。」

「はい、ではお言葉に甘えて。ハドラーはポテトサラダいかがですか?」

「・・・(これであれば)沢山食えそうだな。」

「そうですか!!嬉しいです!もっとどうぞ!!!」

「・・・いただこう・・」

 

最早会議なんだか試食会だか分からなくなった場に頭を痛めるハドラーも、マヨネーズの酸味と芋の甘さで痛んできた胃が優しく宥められ、其れを食べながらポテトケーキとジャガイモのポタージュに癒される・・・・毎日ティファが作ってくれんかと思いながらゆっくりと味わいつつ、ちらりとバーン様御一行を横目に見る。

 

相変わらず主はティファを膝に乗せ、もう周りは慣れたので芋の作り方と今日の料理のレシピと、マヨネーズは人界で売っている物なのかとの問い合わせが殺到し始めており、食べながらティファもニコニコと慣れた様子で返答している。

 

 

・・・・ティファも楽しんでいるのだからまぁいいだろうと、ハドラーも毒された考えで最後は納得して癒された胃袋はコロッケにも食欲をそそられ食べ始める。

 

第一回・魔界農業フォーラムはこうして無事(?)に閉幕し、魔界の食料自給率上げと限られた食材で美味しい物を作る、勇者一行の料理人のレシピ本が魔界で無料配布されて食料自給率上げと各家庭の食事事情のレベルアップもしたとか。

 

そして予定通りテランと魔界は腐葉土の土地の貸し借りから、ギルドメイン大陸の丁度中央なので、この大陸の交易拠点としても土地を借りられないかも打診して許可を得た。

 

以降交易の拠点としてもテランは栄え、貸す条件としては天幕などを使ってなるべく自然を傷つけない事を条件としたので緑豊かな自然と平和を愛する国として魔界と深く友好関係を築いたとか。

 

芋一つとソース一つで魔界を喜ばせ、後日人界でも爆発的な人気を生み出した当の本人は、慣れない大勢の前でのプレゼンに疲れて大魔王の膝の上で午睡を貪ったのはご愛敬であろうか・・・

 

しかしそこは矢張りティファの日常、ドタバタは避けられなかった・・

一匹のーミニ竜王ーなせいで

 

「なぜお前が料理を端から食べるのだヴェルザー!!」

「ふん!ー小型化ーには魔力消費が激しいのも知らんのか若造!!」

 

この程自身の身体を小型化させる呪法の復活に成功したヴェルザーは、堂々とティファの頭や肩に乗って共にあちこちお出掛けし、なんならバーンの夕食も強制的に相伴に預かっているという太々しさに、ティファが寝ているこの機を逃さず、ティファをキルの腕に預けて幼な子の周りに防音結界をきっちりと張り廻らし、日頃のヴェルザーに対する不満をぶちまける。

 

この迷竜王が!!隠居した途端ティファに甘えて質が悪くなる一方ではないか!!

 

「そもそもがティファにベタベタしすぎだぞヴェルザー!!」

「あれは嬉しそうに俺様の事を撫でて喜んでるぞ?それが気に食わんのか若造が。」

「き・・様!!決闘申し込むぞ!!余が勝った暁には二度とティファの頭や肩に乗るでないぞ!」

「ふん!ならば俺が勝ったら二度とくだらん事で吠えるなよ若造が!」

 

・・・もう嫌だ、何故魔界の二台巨頭が、一人の少女の些細な事で魔界を揺るがし引いては人界・天界も揺るがしかねない決闘騒動起こすのだ?

 

泣きたくなったハドラーは悪くない。

 

流石にそれはまずいと、魔界全土の為にやめてくださいとその場にいたミスト・キル・ハドラー以外の魔界の者達が泣きながら土下座する勢いで頼み込み、あわや魔界の大惨事を回避され、そんな中ティファ一人が平和そうにクゥクゥ寝ている。

 

ティファを独り占めできて喜んでいる死神の腕の中で




このお話はここまで

主人公がデルムリン島で最初に行ったのは芋畑作りなので、ある意味初期に書いたフラグの回収でもあります。


ようやく出ました、転生者特権・内政チートアイテムマヨネーズ様!
筆者も食欲なくともポテトサラダはいける口です!(だからどうした⁉)

どれだけ美味しいかを、某やらかし系の大魔王様のせいで胃が痛んでしまった超一流魔王様に突撃インタビューしてみましょう


筆「お味はいかがでしょうか?」
ハ「・・・・癒される・・・この料理と同じ優しさを誰か俺にくれ・・」
筆「・・・美味しいそうです!何か雑音が混じりましたが現場からは以上でした!」
ハ「逃げるな!!俺の胃を壊して愉しむ元凶・・・・・」

え~、彼にはこれからも-様々に-頑張ってもらいましょう。
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