帰りたい・・・僕は帰りたいんだ・・・・
大戦が終わって-色々-と起こり過ぎだよ、僕みたいな大ネズミモンスターに何をさせたいんだ皆は・・・・
大戦が終わった。
それは戦い合った地上が勝った訳でも、まして魔界側が勝利したのでもなく、後の世の史書家達がこの出来事で大賑わいするような終わり方で。
魔界の悲惨さを知った、神々の原罪を知った、其れが故に地上は双方に手を差し伸べ、ゆくゆくは魔界を浮上させ助ける事で終わった大戦を史書家達が見逃すはずが無い。
後の世に綺羅星の如く名が挙がる勇者サイドの彼もまた、悲惨な魔界を救いたいと心の底から思い、以て魔界と戦をしなければ世の中は須らく平穏が訪れるのだと考えていた。
確かに自分達モンスターは人に嫌われやすいが、それでもパプニカ城の人達、サババ砦の人達、そしてカールの隠し砦の人達も自分に優しくしてくれた。
最後の大戦場で弱い自分と部下達を、命を懸けて守ってくれもした。
そして共に駆け抜けた・・・・・戦場で傷ついた人達ともに救うべく、僕達が悔過人を見つけ知らせ、その場に大勢の騎士・兵士やロモス大会で苦難を乗り越えたゴメスさんやフォブスターさん達も一緒に。
だから思ったんだ
人とモンスターもきっときちんと話し合ったら仲良くなることが出来るんだって。
魔界を助けたいと思う人達が大勢いるんだから・・・・
僕が・・・・いけないのだろうか?
「は!初めまして!!僕は勇者ダイ一行で戦士見習のチウです!!!」
大戦後、終了と同時にその報告をクロコダイン自らがロモス王国・シナナ王にする為の約定により、クロコダインはかつて攻め込んだ城に参内をした。
その時にチウを伴って。
何で自分がとチウの頭の中で物凄い疑問符の記号が浮かんだ。
此処に共に来る前に分かれた仲間達ではなく、どうして戦士見習の自分と自分の部下の獣王遊撃隊の皆を引き連れてお城参内になったのかがさっぱりと分からない。
ロロイの谷でティファがバーンの魂と命を半分だけ分け与えられた事で一命を取り留めたあの後、大魔王達は名残惜しそうにしながらも魔界全土を慰撫すべく魔界へと帰り、自分達もそれぞれの場所で頑張り、目を覚ましたティファが笑っていられるようにするのだと故郷へと。
チウはクロコダインとマァムに付いていき、マァムは先にネイル村の両親の下に行った後-老師-に報告をすると言っていたので、チウもそちらに付いていこうとしたのをクロコダインに連れてこられた。
「お前は俺の後継者としてロモス王に引き合わせる。」
・・・・・はい?
「その後幾日か掛けてライリンバー大陸全土のモンスター達を訪ねていくからその積りでいてくれ。」
・・・・・・・はい⁉
チウとしては何がなんだか訳が分からなかった。
いきなり天下の獣王の跡継ぎにすると言われて、はいそうですかといえる人なんて、ティファさんだって無い!!
そう言って抗議しようと口を開きかける前にチウは本当に王城に参内せられ、物凄いお偉いさんだと分かる衣装の人達の前に連れてこられてチウはガチガチに緊張をした。
別にお偉いさんに緊張したのではない。何せ魔界の一番のお偉いさんの大幹部の服を平気で握りしめるチウにとって、目の前の人達はシナナ王と宰相さんらしき人以外はあまり大した気配を感じられず、ならば何に緊張しているかといえば!今までは大勢の前で話すのは専らティファであり仲間達であり、自分は聴いているだけでいたのをいきなり前に出されて挨拶しろって緊張するなというのが無茶だ!
挨拶の時の声が裏返ってしまったのを、シナナ王は優しい瞳で見守り一言大義であると言った後のクロコダインの大戦終了宣言の報を受けた。
その遣り取りを見てチウは不思議に思った。
どうして世界中が大戦終了を知っているのにわざわざクロコダインさんは王様に報告しているんだろう?
チウが不思議に思ったのが伝わったのか、シナナ王はふんわりと嗤ってチウに話しかけて来た。
「チウ君や。」
「・・・・へ?あ!!はい!」
・・・・忘れていたが、シナナ王はティファをティファちゃん呼びした強者であった。そして今回自分はチウ君と呼ばれるらしいと分かったチウは、間の抜けた返事をしてしまった後、すぐさまきちんと返事をしてシナナ王を感心させた。
まだ幼なさを残している中でも、礼儀を弁えようとしているのが見事だと。
「チウ君も聞いていたと思うが、大戦終了後にロモスではそこな獣王クロコダインの罪を永遠に許す宣言を出す約束をティファちゃんを中心として其方達にした事を。」
「・・・あ!しました!!・・・・そしたら・・・」
「うむ!二人共!バルコニーに行くがいい!!!」
何かを宣言する様に高らかに言い放つロモス王の指さす方には、謁見の間用のバルコニーに繋がる窓が開け放たれており、二人が言って見た物は、自分達を見て歓声に沸く群衆の姿がそこにあった。
「見ろ!あれが勇者様達をお助けした獣王クロコダインと武闘家ネズミのチウだ!」
「俺知ってんぞ!!戦いの中で敵から改心して勇者様達の味方になったって!!」
後の世に-世界の繋がり-と呼ばれたあの現象時、文字通り数多の知識や情報が氾濫し、興味のあった者同士が繋がり合い、その中にはヒュンケルとクロコダインの事も-詳しく-知られてしまったのはやぶさかではない。
しかし、世界はそれ以上の者を赦している。大戦の元凶すら許されたのだからと、個人は兎も角国家や市井レベルでは彼等は勇敢に様々な意味で戦い抜いた者として迎えられるに至った。
それは無論、彼等の命懸けの行動の果てに待っていた褒美である事は言うに及ばずだが。
シナナ王は果たしてあの時の約束を守り、大戦終了の宣言と共に獣王クロコダインの罪とその償いの道を明確にし、そして彼を赦す宣言を発してロモス城下を湧かせに湧かせた。
新たな英雄達の一人が、このロモスから誕生したのだという好意的な感性をもって。
「・・・・・凄い人でしたね。」
「そうだな・・・シナナ王よ、この短時間でどうやってあれ程の国民達を招集出来たのだ?」
ようやくバルコニーから離れ、お茶に誘われた二人はぐったりとしながら、王様業務に慣れてい元気にお茶を飲んでいるシナナ王に聞いてみる。
大戦終了からまだ二時間も経っていないのに、あれだけの国民が一堂に会しているのが分からない。
「ほっほ、クロコダインは律義者の熱き漢だと専らの評判じゃ。であるのならあば仲間達と分かれたその足で、少なくともクロコダイン位は直ぐに来るじゃろうと予測して触れ回らせたのじゃよ。」
大戦終了宣言とそれと同じくらいの重要宣言を出すと。
「・・・・・俺が来なければその徒労に終わっていたのでは?」
「なに、その時は終了宣言だけしてお主の事は後日にすればいいのじゃよ。」
「成る程・・・」
好々爺然としていながらも、外れた時の事も当然用意している王が頼もしく見えた二人であった。
全ての宣言が終わってお茶に誘われた二人であったが、チウの方はソワソワとし始める。
自分はクロコダインとの入城と謁見の間迄通して貰えたが、隊員達は近くの兵舎でデルムリン島にも行った魔法使い達と共に待機している。
如何に大戦の立役者の一人の身内であっても、アリクイだのスライム等が城内に早々は入れる訳が無いのだが、チウは其れが落ち着かない。
僕だけ良くしてもらっているようで嫌だな・・・
そわつくチウに察したシナナ王は、その日はそのまま開放し、三日に一度は参内して話を聞かせて欲しいとチウに命じて。
シナナ王の言葉に、流石に周りがざわめく。
何故モンスターの、其れもまだ幼年のチウがそんなに特別視されるのかと。
無理もない話で、たったの数か月前までモンスターなどこの城の高官達にとって塵芥も同義語であり、いないも同然であったのを三日に一度の参内を許されたのだから。
「ほっほ、これからは魔界と手を携えてゆく時代になったのじゃ。そんな壮大な事にいきなりついていける筈も無いじゃろう。じゃからの、まずは手近なモンスター達との交流から始めてみようかと思うての。
幸いチウ君とクロコダインは人語を解し、そして人柄も知れている。
それにダイ君達のデルムリン島とも交流してみたい所じゃが、まずは-近所-から始めてみるとしようかのとな。
チウ君は嫌かね?」
王の気紛れかと思われたその真意に、-大半-の臣下達は納得した。
何時か浮上する魔界とも、もしかしたら天界や精霊達とも交流するかもしれないよが来る前に、身近な-異種族-、すなわちモンスター達と交流をもって慣れさせようとしているのだと。
チウもクロコダインも何となくだがシナナ王の意図が伝わり、自分達でよければ手伝わせて頂きますと丁寧に引き受け、後日また来る事になってチウ達は兵舎に向かった。
彼の不幸の始まりは、王の意図を納得したのが-大半-であり、-全員-でなかった事。
「へぇ~、二人共そんな凄い事引き受けちゃったの・・・・・大丈夫?」
ネイル村の場所を知っているクロコダインの案内でやってきたネイル村で再会したマァムに早速心配された。
兵舎で隊員たちを全員回収した二人はそのままでぞろぞろと行くのはどうなんだろうと思い、キメラの翼でかつてクロコダインが根城にしていた洞窟に隊員達にのんびりしていていいと許可を出し、-ビースト君-を臨時取り纏め隊長に任じてネイル村にやってきた。
そろそろ二人が来る頃だろうと、村の入り口でマァムが手ぐすねを引いて待っており、マァムに村の人達と引き合わせて貰いながらマァムの家に着き、ロカとレイラに挨拶をした直後の話。
「・・・・王宮か・・・大丈夫かよ・・・」
「・・・貴方・・」
「う!・・・んむ・・・」
マァムよりも、王宮に参内する話をロカとレイラの方が心配しているが、チウは明るく答える。
「大丈夫です!王様は-僕達-と仲良くなりたいと言ってくれたんですから!!
僕達の悪いところもきちんとお伝えした上で、其れでも良いところが沢山あるんだってお話します。」
チウの力強い笑顔に、ならば自分達はこれ以上口を出す事ではないと判断したロカとレイラは、その日は泊っていくように二人に勧め、夕食のときに-拳聖-は放浪の旅に出て行った事を伝え、聞いたチウとクロコダインをがっかりとさせ、マァムを微妙な顔にしたのであった。
それから数日間、チウはクロコダインの宣言通り、-あちこちのモンスター達-に会わせられた。
ライオンヘッドの群れには心底驚いた。あれに比べればリリパットの集落発見なぞ可愛いもので、人が行かない洞窟の奥にアンクルホーンやドラゴンソルジャー根城にしているのを見て本気でびっくりして、ブラウニーに癒されたのは秘密である。
兎も角様々な森のモンスター達とその上位種達と会ったチウは、クロコダインが見守る中礼儀正しく彼等とあいさつを交わし、次いで自分達の隊員をも紹介して仲良くなって概ね良好な関係を築くに至れてホッとした。
そして街中でもチウは子供たちの人気者になった。
「チウ君だ!!」
「今日も来たんだ!俺達と遊ぼうぜ!!」
「いいよ、今日は何して遊ぶ?」
ティファから贈られたトリートメントで全身を洗っているチウの毛なみはモフモフとしており、胴着も二日に一度は洗っているので清潔感があって可愛いチウは、柔らかい雰囲気も相まってすでに勇者一行のマスコットキャラクターとして認知度を広めた。
共に来ている数体のモンスター達も顔ぶれは変わるが全員お行儀がいい。
ビースト君は来ることは少ないが、クマチャは大体来ており、チウの次に人気があって広場で子供達を抱っこするだけで喜ばれている。
最早城下町の子供達にとって、モンスター=チウ達であり、遊ぶたびにチウがモンスター達を怒らせる事をきちんと子供達に伝え、其れさえしなければ、もっと言えば野生のモンスター達に不用意に近づかなければ害は無いとキチン教え、必然子供を見ている大人達も自然とチウの話を聞く事になり、むやみやたらにモンスターを怖れるのはナンセンスになりつつあるのだと思い始め、少なくともロモスの一部とモンスターが交流できそうな良い土壌が出来始めた。
城下で一通り遊んだチウは、少しだけ足取りが重くなる・・・・城に行くのが少しだけ憂鬱なのだ。
始めの数回は王様と話をする事に一生懸命になって、周りを見る余裕が無かった。
モンスター達の住んでいる縄張りや、種族によっては入った途端に戦闘になってしまう事等を話、食料が少ない冬にはどうしても畑に被害が出てしまう事もきちんと話す。
其の度に王は其れならばこうしてみようかの~と笑って諍わなくていい方法を考え、人が増えた時は何処なればモンスター達の場所を奪わずにすむかなど真剣に聞かれ、答えるのに必死だった。
それも流石に十回も過ぎた頃、そろそろ自分一人でも城に行けるだろうから言って見ろというクロコダインの無茶ぶりに、おそるおそる一人で参内した時、門番の兵士達は心得たように親切に話しかけてくれ、行っておいでと頭を撫でられたのに勇気を貰い、いつもの様に兵舎にクマチャ達を預けて王に会っても楽しいひと時を過ごせ、クロコダインもライリンバー大陸のモンスター達に、これからは今まで以上に人と争わないように触れて回るのに忙しいのを知っており、出来るだけ自分一人で行ってみますと提案をした。
モンスター達が近づかなくとも人間が近づきすぎた場合、今までならば襲って討伐されてしまったのを未然に防ぐ為であり、シナナ王もそこは民達に触れを早急に出すと言ってくれている。
これからはモンスター達の縄張りマップを作り、人間が無闇に入らない注意喚起をし、村づくりや開墾をする際もまずは国に届け出をしてモンスター達の縄張りを侵害しすぎていないかを調査しての許可制となる法整備を急がせると。
それと共に、モンスターの群れがある一定数を超えて暴走するモンスター達は討伐するとはっきり言われ、其れは仕方がないと二人は割り切る。
種族が増えすぎ群れが飢えれば理性を失い、その瞬間から自分達以外を-餌-として襲いかかって来て-間引き-をしなければ納まりがつかないのを知っているからだ。
実際にクロコダインも自分の住処をそれで脅かされたのでやむを得ず、チウもまた老師の下で同じような依頼を聞いて知っている。
チウはその時留守番を命じられたが、戻ってきた時の老師の悲しそうな顔から何となく察した。
襲ってきたモンスターを-全て-殺さざるを得なかったのだと。
だからそれは仕方がない。飢えがおさまるほど食べても、狂気に陥ったモンスターは二度と理性を取り戻せないのだから。
だからといって、それを口実にモンスター達を狩る不逞の輩も防ぐ旨を伝えられた時、クロコダインは喜んだがチウはいまいち分からない顔になった。
そんな噓を言う人がいるのだろうかと。
良くも悪くもチウはティファに似ている。
違いはティファはきちんと世の中には悪党がいる事を知っており、チウはその類には無知であり、ティファ以上に純粋であったのだ
そして城に半年参内し、チウは城に入るたびに心細くなっていった
帰りたい・・・・老師様のいたあの優しい洞窟に・・・・ティファさん達と過ごしたあの愉しい時間に・・・・僕は帰りたいんだ・・・
この話は続きます
これはチウ君にスポットを当てましたが、異種族間で起こりえる諍いや紛争、迫害の種の話になるので、前後編に分けさせていただきました。