勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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鄙いな者【ひな・都から離れた文化の至らない地から来た者・卑しいもの】
    【下品である・洗練されていない者】   国語辞典抜粋



後日談⑨ 帰りましょう 後半

今日は王様の他に会う人がいるって門番の人達言ってたけれど誰だろう?

 

参内した時に門の兵士達はいつでもチウ達を笑顔で出迎え、兵舎に預けられる獣王遊撃隊のモンスター達も快適に過ごせる様にと常に果物を用意して待ってもらっている。

 

なんとなれば彼等は最終戦の決戦と地で命懸けで戦った英雄達であり、尊敬に値するというのが-兵士・騎士達-の間では常識化しており、他国でも同様で隊長・騎士団長達が時間が会えばチウとクロコダインを出迎える時もあった。

 

-現場-の者達は命を懸ける事がどれほどの事かを知っており、間違っても彼等を粗略に扱う者はいなかった。

 

そう、戦場を知る者なれば・・・・・

 

 

 

 

 

 

「何故我等も-あの鄙者(ひなもの)-と共に王の御前に呼ばれたのだろうな?」

「左様、本当に重大な件であれば、我等だけを呼び、あのネズミが参内してきても門前で追い返されればよいものを。」

「あの卑しいネズミはいつまで勘違いしておるのか・・・私達が折角-優しい言葉-でやんわりと-立場-を教えてやっているというのにの~。」

 

チウの参内に合わせて呼ばれた者達は一様に不満そうな顔をし、王の謁見に行く道すがらチウを悪し様に貶している。

 

大戦の英雄と言われているだろうが、どうせ戦場の端で-少しばかり-敵を攻撃していたのを大袈裟にに言って王に取り入るだけの口先だけのものだろうと蔑んで。

 

「確かあのネズミは勇者殿の剣を作った魔族から武器を授けられていたとか。」

「ああ~確かオリハルコン製だとか言っていたの。」

「あんな-ドブネズミ-には宝の持ち腐れよ。儂の甥が近々騎士団に入ろうとしていての。その武器を-有用-に使ってやるか。」

「ふっふっふ、あの大ネズミなれば武器を研究させて欲しいとでも言えばころりと渡すだろう。」

「返さないのですか?」

「いやいや、研究には時間がかかるからな~。」

「その通りですな。」

 

その通りだと嗤っている者達をじっと見ている-目玉-がある事に気が付かず、広い王宮をチウの事を悪し様に言い続ける愚か者達は、流石に謁見の間にが近づき衛兵達の前では大人しく歩き、謁見の間の扉を叩き中に入れば・・・・そこに待っていたのは-今後の世界-には不要なる者達の一斉大掃除であり、愚か者達は直ぐに取り押さえられ呆然とさせられた。

 

しかし直ぐに気を取り直し、何事かを喚き出す。

 

「王よ!我等が何故捕えられなければならないのですか!!」

「しかもそこにいる-道化-は何者です!!」

「何故我等を!!!」

 

謁見の間には王とチウがいるだけと思って入った男達は、道化師の恰好をした者が王の座る玉座の隣に立っており、入ってきた自分達を見下すように見たかと思えば

 

 

「この者達で間違いありませんねシナナ王。全員捕縛してください。」

 

自分達を虫けらか何かの様に見ていた瞳と同じ、聞いた者達の心胆を寒からしめる声で自分達を捕縛する様に王に要請し、同時に潜んでいた衛兵たちに瞬時に縛られ上げられた。

 

捕まったもの達は当然何事かと喚きたてるのを、道化の男は喚く男に近づきそして手の甲で男達の一人の頬を打ち据える。

加減なく打ち据えられた初老の男は痛みで呻いてうずまり、口から衝撃で抜けた歯が二・三本出て来てもシナナ王の表情は変わらず、道化の男と同じ位に怒りの表情を浮かべ男達を見据えている。

 

「初めまして愚か者達。僕は魔界の大魔王バーン様にお仕えしているキルバーン。

今回は僕達魔界の恩人の一人に-随分-な事をしてくれたみたいだね。そのお礼をしに来させてもらったんだよ。」

「あのネズミの・・・・ぐぁぁぁ!!」

 

愚かしくもこの状況でチウをまだネズミ呼ばわりした男もまた、先の男と同じ様に、キルに足蹴にされ這い蹲った背中を思い切り踏まれる。

 

「チウ君はね、あの大戦時敵の僕達を助けたいと真っ先に手を差し伸べてくれた優しい良い子なんだよ・・・・薄汚れたお前達があの子の名前を呼ぶ事も、まして悪し様に言った日には本当に殺してやりたくなるよ。」

 

他国であってもキルは加減なく、シナナ王も周りの衛兵達も止めずに黙って見ている。

 

一週間前、このキルからもたらされた報に、シナナ王達も烈火のごとく怒りに燃えていた。

 

今後空間使いのキルが、バーンのお使いをする為に各国の王達とすぐに会える権利を、各国とバーン達で協議しあい権利を有している。

 

そのキルが、怒り心頭に発しながらも、一度チウが実際どのような目に遭っているのかを悪魔の目玉で見た。

 

そこには顔こそ笑っている者の、悪意ある言葉をチウがそれと分からないように難しい言葉で嬲り者にしているのを、すぐさま首を跳ねたくなる衝動を押し殺して目玉に記録させ、無言でシナナ王に見せたのだ。

 

本当はその場で人知れず殺したかったのだが、-今後-を考えればそれではいけない。しかし愚か者達の-人生-を殺してやりたくシナナ王に知らしめた。

シナナ王は心の底から嘆き悲しんだ。

大戦の立役者である以前に、彼のような純粋な若人を笑い者にする者がこの国の中枢にいる事に、そしてその事に気が付かず彼を招き、知識を得ながらも楽しんでいた愚かな自分を。

 

しかしシナナもまた王を長年しており、そこからすぐさま巻き返しを図った。

愚か者達はきっとこの国だけではなく各国にもいるだろうと、キルに使い番を頼みこみ、自国の恥になる事を各王家に直ぐに情報を開示し、これからその愚か者達を厳罰にする旨も合わせ伝えて貰い、この光景は今まさに各王宮の王達と重鎮達も目玉の映像でしっかりと見ている。

 

だが、捕らえられた者達は各分野の大臣ではなくともその補佐役や調整役という重責を担っており、これだけで自分達を拘束するのは不当だと懲りずに騒ぎ始めた。

 

チウをこき下ろした事は心から詫びる、自分達の心得違いを反省するが、此処までの目に遭う事はしていないと。

その言葉に、衛兵達が動揺する。確かに目の前の者達に罪はあるが、此処まで重き罪だろうかと。

 

その心根を改めればよいのであって、魔界の神の死神が出張ってくるほどの事であろうかと・・・

 

しかしキルは当然その喚き声が上がる事を予想しており、擁護の声が上がる前にシナナ王に目配せし、目を向けられたシナナ王は一つ咳払いをし、注目を集めたところで-罪状-を述べ始める。

 

「この者達は儂が定めんとした新たなる法を穢さんとしたばかりではない!見よ!この-不正- の数々を!!!」

 

シナナ王の言葉と共に、謁見の間の扉が開かれ大勢の官僚たちが何かの本を持って入って来るのを、縛り上げられた男達は目にした途端一様に顔を青褪めさせる。

入ってきたのは男達の上司である各部門の大臣達であり、その手に持っているのは

 

「王よ!これが魔界の神たるバーン様の配下の方達が尽力して下さり見つけましたこの者達の不正を記した裏帳簿で御座います!」

「またこの者達と長年癒着していた者達もお力を借りて全て捕縛し、現在取り調べを。」

「うむ!その罪の重さはどれ程だと、其の方達は考えておる。」

 

キルは本気で愚か者達を-根切り-にする気で来た。命を取らないまでも、宮廷人として、-その人生を殺す-方法を、親友にして長きに渡り魔界の神を政治面でも支えて来た影の宰相・ミストバーンにこの件を相談した。

彼もまた、あのロロイの谷でチウを評価し認めている。

そのチウを穢したからには報いをと、采配の下シャドー達に隠された二重帳簿を探り出させ、悪魔の目玉を総動員する勢いで日常を徹底して見張り癒着している者達を記録し、見つけ出した商人達の帳簿までもを調べ、文字通りしらみつぶしをして彼等の罪をつまびらかにし、彼等を文字通り殺しにかかったのだ。

 

そして、刑罰が下った

 

「長年王とこの国の者達を欺き文字通り獅子身中の虫たるこの者達は宮廷よりの追放を、そしてこの者達の親族もまた関わっていることも明らかとなっているので関わった者達もまた同罪に。」

「ふむ・・・・これまではその類の罪は連座としてきたのだが・・・どうすべきかのチウ君?」

 

王の最後の言葉に、キルと王以外の全員がざわついき、当然這い蹲って罪を謝して逃れようとした者達は顔を即座に上げ、何を言っているのだという表情で王を見、その視線の先を見れば

 

「・・・・連座とは、罪のない人達も罰せられる事があると、キルバーンさんが教えてくださいました。

連座は・・・それにそれ以上は僕には分かりません。

連座をせずに済んで、本当に悪い事をした人達以外が困らない方法はないでしょうか・・」

 

優しい人達の本性を知り、悄然としてもチウは厳罰を望まなかった。

この一件、当事者であるチウはまだ幼いと、彼の知らないところで処理しようとしたのをーポップーが待ったを掛けた。

この一件をただの種族虐めとして終わらせる気の無いキルが、シナナが各国に声をかけた様に、勇者仲間全員を抱き込みアイディアを出させた。

どうすればチウが受けた痛みを完全に晴らし、かつ国の蛆虫どもまで掃除し尽くせるか。

その知恵の大半は、まだ政治まで手が回らないポップ達ではなく、アバンとマトリフが遺憾なくー謀略ー戦を仕掛けた。

ミストのシャドー軍団にモシャスをさせ、癒着していた商人に化けさせ接待の場を設け、高級ワインで口を軽くし余罪を聞き出させるだけ聞いた端から目玉に映像ごと記録させ、言い逃れできない証拠として提出した。

 

キルとミスト同様、彼らもまた深く怒りを沸かした。

自分達の大切な仲間をいたぶった者に善き者なぞ居るはずもなく、案の定叩いた以上の埃が出てきた。

 

それをチウに知らせずにとなるのを、あいつもきちんとこの事を知っておくべきですとポップが大人達に進言をしたのだ。

自分も入れて、いつまでも子供でいれるわけでもなく、チウなれば傷ついても今後の糧に出来る強さを持っている。

 

「あいつは凄い奴なんです!低く見ないでやって下さい!!」

 

その言葉に、大人達は庇護するだけを考えていた事を撤回し、チウを謁見の間のカーテンの隅に隠し、全てを見せたのだ。

 

大人達の予想通り、チウの心は深く傷付いた。

優しいと思っていた、共に良い世界をと・・その裏で自分を蔑み笑っていたのを知らないでいた自分が情けなくそれでも・・・

 

そのチウの言葉にシナナは力強く頷き、後日判決を出すと罪人達を引っ立てさせた。

 

 

・・・やっぱり僕じゃ駄目だったんだ・・・

 

後に残り、悄然としたチウをキルが優しく抱き上げる。

ボロボロと、様々な痛みで泣くチウの涙を受け止めるべく。

その二人の側に、シナナは近づき無言でチウに頭を下げる。

言葉にしては、チウがそれだけで気に病み、なれば行動でチウに詫びると決意して。

 

 

数日後、チウは参内の日なのにキルに連れられ、魔界でバーンとお茶を飲んでいた。

 

「あの・・・・僕は今日ロモスのシナナ王様と会うお約束が・・」

「ふむ、-余-と会うのは不満かチウ?余も同じ王であるが・・・・」

「え!いえ違います!!その・・・シナナ王様とのお約束が先だと・・」

「ふふ、其の方は律義者よな。安心するがよい、シナナ王には話はついている。余もその方から見た人の世がどういう者か知りたくて呼んだのだ。」

「あ、もしかしてキルバーンさんが言っていた人と交流する為の勉強の一環でしょうか?」

「其の方は幼いながらも聡く賢い。その賢き者から見た人間の世界はどうだ?」

「そんな・・・僕なんて-言葉-一つで躓いている駄目駄目です・・・ティファさんだったら・・」

「チウよ、其の方は其の方であり、幼な子は幼な子。其の方は自分を誰かと比べているが、例えばキルが自分なぞ大したことは無く、他の者を上げた時どう思う?」

「・・・それは嫌です・・・」

「であろう。」

「・・・・・分かってるんです・・でもつい考えてしまうんです・・・・僕以外の人ならもっと上手くいくんじゃないかって・・・」

「そこまでに達するまでに、幼な子はきっと努力したのであろう。其の方が今まさに頑張ろうとしている様に。」

「・・・大魔王さん・・」

「焦らずともよい、其方の人生はこれからぞ。分からない時は己で調べ、人に教えを請い、研鑽をたゆまず積めばよいのだ。」

「・・・たゆまず・・・・・僕・・僕!頑張ります!!」

「うむ、良い返事ぞ。頑張るには美味なるものを食べるのも励みになろう。今日は余と話しながらゆるりとしていくが良い。」

「はい!!」

 

チウの表情が来た時よりも格段に明るくなり、自分に人界の出来事を話しながらミスト特製のお茶菓子を食べお茶を飲む姿がなんとも微笑ましいと、バーンは優しい笑顔でチウを見つめる。

 

今頃はロモス王城で、キルが仕掛けた久方ぶりの-大掃除-の大詰めをしている頃だろうと冷たい思考をしながら。

内政干渉になるだろうが、チウの一件を聞いて他国でも起こりえる事を考慮し、バーンもこの件に介入して人界の六王家全ても大掃除する様にシナナに要請したのだ。

 

そしてそろそろ判決が下っている。

 

終生出仕を赦さず、強制的に隠居させ半ば幽閉となり、一族の跡取りは身分の半降格からのやり直し。

通常であれば恩恵であろうとも、チウの目から見れば重きものに映ろうし、そこまでは知らせる気がないとこれだけは大人達が譲らずにチウはお茶会になった。

 

罪人達は、その後の世界の糧に、見せしめにした事は知らずにいれればその方が良いと。

 

以降、異種族に不満がある者達は面と向かって王や重役達に意見する事をかまわずとなり、罰しないから不平をきちんと意見として出す様になった。

以降も異種族との間の軋轢や諍いがあり、悪徳な者達が絶えるなぞ奇跡が起きるなど無いが、それでも陰で迫害する者は白眼視する風潮は出来た。

 

そしてチウは、世の中の悪意を経験し傷付き、暫くは表面はともかく鬱々としたある日、ふらりとパピィに乗ってデルムリン島に行き、ダイ達に挨拶をして眠っているティファに会った。

 

暫く二人で居たいと言うチウの言葉を、ダイ達は快く頷いて部屋を出た。

チウの一件はダイ達の耳にも届いている。チウが何かしらの癒しを、ティファに求めにきたのだと察して。

 

スヤスヤと穏やかに眠るティファ、自分以上に様々な酷い目に遭い、それでも世界の為に己を使い切ろうとしたティファをチウは無言で見続ける。

日が傾く頃にダイが声を掛けに来た時、チウの顔は来た時とは違い晴々として、ブラスの勧めで夕食も共にとり、元気よく挨拶をして帰って行った。

 

何を決意したのかはチウは周りには一切明かさず、数年が経ったある日

 

 

「チウ隊長よ!!崩落した岩全部どけたがもう怪我人は見当たらなかったぞ!!」

「ありがとうございますゴメスさん!!クマチャ!他の子達にも撤収の準備をさせて!!ロモスの皆様もお疲れ様でした。王城に帰りましょう!」

 

ロモスの山間部で長雨の影響で起こった土砂崩れの現場に、ロモスの兵站部とチウ率いる獣王隊と有志達の手で救出活動が行われた。

 

今でも自分達の扱いが重すぎると、面と向かってではあるが言う者がいる。

それでもチウは腐らなかった。

 

言われないほどの者になろうと、眠るティファの前で誓ったのだから。

 

どの様な目に遭おうとも歩みを止めなかったあの人の様に、苦難の道を歩いてきた魔界の神や先達の様に、その列に自分も後を追うのだと。

 

必ず良き世界を皆んなで作れると信じて

 

いつかを夢見て歩いて行こうと

 

「帰りましょう皆さん!!」




この話ここまで

長々としましたがようやく決着となりました。

罪人達は今後の世界の為に、ああはなるなと言う見せしめとなり、チウ君の成長の糧となって頂きました。
後の世界も良い世界になれればと思います。

タイトルの方は、帰りたいという後ろ向きから、前に進もうとするチウ君を表されていればと思います。

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