勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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勇者一行の結婚狂騒曲
先代勇者の結婚


長い間待たせてしまった。

 

それは今大戦よりももっと前の、ハドラー大戦の終結後から数えてゆうに十数年も-彼女-を待たせてしまい、そして彼女は待っていてくれた。

 

自分と結ばれる確率は零ではなくとも限りになく低く、おおよそ普通の女性ならば待っている筈もない事で、そもそもが-あの方-のお立場からすれば、待っている間()()()()()が待つ事を許してくれた方が奇跡のようなものかもしれない。

 

それは自分が世界を救ったものだから?

それとも待っていてくれた彼女の政治手腕と王としての指導者としての力で周りを黙らせたのかはわからないが、理由はどうであれ彼女と結ばれる機会を得られたのは僥倖。

それは純粋に彼女を慕っていたのもあるが・・・・-あの子達-が願った心優しい世界を作るのに、自分もそれに参加するための力を欲した打算も確かにあって・・・

 

おそらく彼女も、自分との結婚の理由はそこにもあると気が付くでしょうが受け入れてくれる筈。

彼女自身がこの世界から戦いそのものに退場してもらうと宣していたのと・・・・自惚れかもしれませんが、私のことをまだきっと・・・

 

 

「そのような訳で、フローラ様にプロポーズをしようと思うのですよロカ。」

「・・・・・・大戦終わって半年かかってようやくかよ・・。」

 

アバンの惚気としか取れない報告に、寝床から少しずつ起きられるようになっリビングルームで妻のレイラとともにアバンとお茶を飲んでいたロカはあきれたように溜息をつきながら頭をがりがりと掻いて、呆れている自分をポヤンとした顔で見ているアバンにまた溜息をつきながら内心で嘆息をする。

 

半年前のバーン大戦の最終決戦時にアバンの生存を知り、必ず自分に会いに来いと言ってこさせた時も、こんな風にのんびりとした顔で来たものだから殴る気力が失せたっけ・・・

 

半年前の劇的な再会の時と同じような頭痛をロカは感じ、隣に座っているレイラも同じようにアバンに呆れているのかやれやれと言う様に頬に手を添えながら溜息をついている。

アバンを尊敬もしているが、同時に呆れてもいるのだ。

その気持ちは、アバンとレイラと長く一緒にいたロカにはよく分かる。

 

アバンの奴は昔からそうだ。

頭はいい、実力は隠していたから気が付けなかったが、ハドラー大戦が本格化する前から狂暴化してしまったモンスターたちの討伐の時も仲間を助け、被害を出さない戦い方に長けていた。

性格は物柔らかく、料理もできたので女性たちにも人気があったのに・・・・・恋愛に関してはからっきしなのはなぜなんだ・・・

 

まるで初心な少年のように好きな女の子にどうして良いか分からなくなるようで、何かの理由がないと好きだともいえない臆病のようになってしまう。

ヒュンケルの事があってハドラー大戦後は放浪の旅に出てフローラ様との間の進展が望めなかったのは仕方がなかったとしても、今回は違うだろう。

 

大戦が・・・・-あの子供-を犠牲にして平和的に終結をした。

そう、平和的にだ。

 

魔界の軍勢とその首領を倒したわけでも、地上側がその力に屈したわけでもなく、お伽噺にしか出てこなかった天界とやらも含めて-和平条約-を結び、数日前に故郷のカール・現在住んでいるロモスの西の海に魔界の大陸が浮上した。

 

その数日後に、自分の親友にして大切な仲間のアバンが敬愛する女王陛下にプロポーズしますときたもんだ。

先の大戦と違い、平和的に終わったのだかっら、何故大戦終結後にすぐにフローラ様にプロポーズしなかったのだと溜息交じりに聞いてみれば、

 

「大戦後に魔界が浮上する事はあの時点で確定事項でした。

であるのならば、すべてが落ち着いてからフローラ様に落ち着いてですね・・・」

「アバン。」

「・・・・はい・・」

「お前、フローラ様が好きだっていうこと以外に、自分が王配に相応しいってことを周りに言いきれる為の状況になるのを待ってたんだろう?」

「それは・・・」

 

フローラにプロポーズをするのがどうして半年もかかったのかと問うたアバンの一見理路整然とした答えをロカは遮り、ド直球でアバンの問題を言い当てた。

 

言っては何だが先の大戦後も、ヒュンケルというネックがなくともアバンは放浪の旅に出ていただろうとロカは睨んでいる。

 

それはアバンがフローラに結婚をしてほしいと言える-大義名分-を持てなかったから。

ハドラー大戦の時、現カール国王だった今は亡き先代王は病床に臥せっていたはいたが、平和な時代の王としてはまだまだ申し分なく政治をとれる状況であり、魔王を討った功績から勇者となったとはいえ女王となる事が決定していたフローラ王女と、学者の家系とはいえ身分が中流貴族程のアバンと無理に結ばれなくともよい状況であった。

 

ただ好きだからプロポーズをするという愚直な思いを貫くにはアバンは聡明すぎたのだと、ロカは直感で、ほかの一行メンバーはアバンの為人からそう推測がなされた。

 

平和な時には大きな力と過ぎたる知識は敬遠されるだろうと、宮廷から去ったアバンの心情を察して誰もがフローラとのことを追求することはしなかった。

 

しかし今回は違う。アバンは二度の大戦終結を成し遂げた者の一人としての功績の他に、一国の女王陛下の王配になって力を持つべき大義名分をも手に入れたのだ。

 

それは魔界・天界と地上が和睦した事で起、国家規模から個人レベルで起こりえる変化やそれに伴う混乱を防ぐのに、アバンという男の知識と、最終決戦の大舞台で直接大魔王達との面識を持ったことで得た縁と、彼の弟子達と果ては魔王ハドラーという物凄い人脈はまさに一国女王の王配に相応しいという大義名分を。

天界は無論のこと、海越しとはいえどロモス王国と同じく魔界に隣接することになる国の指導者の一人として相応しい言える。

 

確かに筋としては間違ってはいない。カール王国も騎士団が強く、リンガイアと同じく武人色が強くはあるが、宮廷の魑魅魍魎達がいないわけでもなく、それらを黙らせなおかつ納得させて、心からではなくとも国をともに纏める為にはそれも必要なのが分かるが、分かるのだが

 

「いいかアバン!フローラ様にそんな-邪魔くせえ事-言うんじゃねぞ!!」

「・・・・ロカ・・しかし・・」

「男だったらな!!惚れた女に好きだから結婚してほしいと正面切って言いやがれってんだ!!!分かったかこの臆病もんの大馬鹿野郎が!!!!」

「・・・ロカ・・」

 

大切な幼馴染にして親友のロカからの鋭い物言いに、珍しくアバンはぶつけられた言葉を持て余す。

それが謀略・策略・罵倒であれば軽やかに返せる言葉を、アバンはいつまでも変わらずに愚直ともいえるほどの真っ直ぐなロカのこういった言葉にはいつも弱い。

それは自分が普段は出すことができず、ここぞという時になってようやく出せる胸の内に隠している情熱だから。

アバンはいつもロカのその情熱的な生き様をまぶしく見ていた。

その情熱のせいで短気で、時として短慮過ぎる事で問題になる事も度々あったが、それでもロカに変わってほしいと思ったことは一度として無かった。

自分はその情熱を見せる事で、知識や力を知られる事で、他者とぶつからないかとどこか恐れて、飄々とした態度で人と一歩引いて接していたから。

 

ロカの言う通り、自分は臆病なのかもしれません。

 

そんな自分は、矢張り一国の指導者の一人になるのは果たして良いことなのかと迷いが生じた瞬間、温かい手が、自分の両手をそっと包み込む。

 

俯いていた顔を上げて見てみれば、優しく微笑むレイラが自分の両手を包み込んでくれて、優しい声で言葉をくれた。

 

「アバン様、大丈夫です。女は、好きになった男性から欲しいのはたった一言なんです。」

 

愛しているので結婚してほしい

 

その一言が

 

無論、一国の女王の結婚がそんな単純なもので許される筈も無く、アバンが用意した筋道も正しい。

けれども結婚を申し込まれる当のフローラが欲する言葉はその一言の筈だと、レイラは優しくアバンに教え諭す。

 

「ですからアバン様、ありったけの勇気を込めて頑張ってください。

ロカだって、顔を真っ赤にしながらもきちんと言ってくれたのですよ?」

「おい!!レイラ!!!」

「あら、アバン様に置いてけぼりをくったあの時に、マァムを産む前に言ってくれた言葉を忘れてしまったの?

私のお腹に子供がいてもいなくても、好きだから大戦後には一緒になるつもりだったと言ってくれた言葉は私の宝物なのよ?」

「ぐむ!!」

「一生、ううん、私が亡くなってもその言葉を胸に旅立つつもりよ?貴方は違うのロカ?」

「・・・・違わねぇよ・・・・後、五十年は生きろよ・・」

「あらあら、くしゃくしゃのおばあちゃんになるはね、そしたらロカもよぼよぼのおじいちゃんね。」

「ぬかせ、俺は矍鑠とだな・・・」

「はいはい。」

 

勇者一行の戦士ロカと、僧侶レイラの結婚の決め手の言葉を思いもがけず聞いたアバンは唖然とした。

情熱はあれど、こと色恋を出すのを恥ずかしがっていたあのロカがそこまできちんとレイラに自分の心情を打ち明けたことに対して。

それはいったいどれほどの勇気がいっただろうか?きっと命を賭して戦う以上の勇気がいったはず。

己の赤裸々の心情を、他者に明かしてともに人生を歩んでもらうべく許しを請うのだから。

 

自分も、その勇気を出さねばならない時が来たのだと、アバンは覚悟を決め、それを感じ取ったのかロカがにやりと笑ってくる。

 

「何ですかロカ?」

「覚悟が決まったんだろうアバン。」

「頑張ってくださいねアバン様。」

「まったく、貴方達二人にはかないませんね~。」

 

大勇者と呼ばれようが、きっと自分はロカとレイラ、そして今はここにいないマトリフとブロキーナには頭が上がらない。

それは大戦の頃何度も死線を共に潜り抜け、お互い励ましあい時に意見の層をぶつけ合い、それでも互いの背中を守りあった掛買いのない仲間だからこそ、全員互いの良いところも悪いところも、そして弱さを知っているが故に。

 

フローラ様にあの理路整然としたプロポーズをする前に、ここに来れて本当に良かった。

 

アバンは晴れやかな心持でそう思う。

 

あれとてカール王国女王陛下に対しては決して間違ったことではないかもしれないが、-フローラ-という、いつく訪れるともしれない自分を十数年もの間惚れた気持ちを変えることなく待ち続けてくれていた一人の女性に対しては、酷い事なのかもしれないと気が付かせてくれたのだから。

 

「私、本気で頑張ってきます!!!」

 

その言葉にロカとレイラは微笑みアバンを激励し、励まされ背を押してもらったアバンはありったけの情熱のまま行動を開始した。

即日フローラのプロポーズを申し込んだのだ。

 

それは大勇者アバンにらしからぬ行動であり、彼をよく知るカール王国城内一同と、何よりもフローラ本人をも驚かせた。

 

アバンはフローラが昼食を終わる頃合いを見計らい謁見を申し込み、待つ傍らで馴染みのある文官・武官全員に声をかけ、文官は各部署全ての大臣達を、武官は兵団長と騎士団長両名を謁見の間に来させた。

この国に関わる重要なことを携えてきたというアバンの言葉に集まった一同。

そしてその事を聞かされ何事かと急いで来たフローラが謁見の間に入って来た時、アバンはフローラが玉座に座る前に一足飛びで彼女に近づいて腰を持ち、謁見の中央の間に二人で戻った。

突然の無礼と不敬と言われても仕方がないアバンの行動に一同は唖然としてしまい、いきなり中央に立たせられたフローラも何が起きたのかついていけない中、アバンは片膝をついてフローラの両手を押し抱きながらも、顔はしっかりとフローラに向ける。

その顔は真剣そのものであり、かつて城内に侵入してきたハドラーに対して怒りを見せた時と同じあの表情であり、そしてアバンの口が開かれ発せられた言葉は

 

「愛していますフローラ様。一人の男として、貴女を愛しています。」

「アバン!!・・それは・・・・私を助け、この世界を良くするために・・」

「その気持ちもないと言えば嘘になりましょう。それでも、私は一人の女性としてフローラ様、貴女を慕い愛しています!!」

「アバン・・・・」

「貴女を愛し、生涯を共にし、苦しい時も楽しい時も共に過ごし、傍らで共に老いていく事を、どうか私にお許しください。」

「アバン・・・・あぁ・・・・これは・・・・夢ではないのでしょうか・・・」

「フローラ様・・・・」

「ずっとアバン、貴方に言って欲しいと私が望んでいたことが見せてくれる、夢でも見ているのでしょうか?」

 

それは切ない女王の心情の吐露であった。

 

ハドラー大戦の数年後、先王が病没寸前に大戦の爪痕残るカール王国を継いでからずっと一人で直走ってきた王女の小さな胸に仕舞い続けられ、そろそろ、-国の為の伴侶-を娶らねばならならないと決意した女王の切なる願いが夢を見せてくれたのかと。

 

その言葉にアバンは胸を締め付けられる。

 

いったい自分の臆病さが、どれ程この高貴なる女性の半生を縛り付け苦しめてきてしまったのか。

自分から結婚を面と向かって言い出すことはできず、されど自分を待たないでほしいと言う事もできずに、なんと無責任で惨いことをしてしまったのだろうか。すすり泣く声を聞いて周りを見てみれば、そこには古参の大臣達が、現カール騎士団長のホルキンスが泣いている。

 

彼等はアバン以上に知っている。

女王が、周りから伴侶を持つべきだと問う言葉を出させない為に、それ以前に、彼女が愛するカール王国とその民達をハドラー大戦の爪痕から救い、幸福にするためにどれほど心身を砕いてきたのかを。

敬愛する、愛すべき女王陛下自身に、漸く訪れた幸福に

 

「陛下、よう・・・・ようございましたな・・」

「我等臣下一同、心より陛下の慶事にお慶び申し上げます。」

「「「我等の女王陛下万歳!!!」」」

「「「王国にい祝福を!!幾久しくお幸せに!」」」

 

それはフローラがアバンに諾という前にプロポーズは成功した。

フローラ自身の幸福を、心から望む臣下一同の言葉によって。

フローラが赤子の頃から知る、老臣たちがまだまだ大臣達をしていたのが功を奏したともいえようが。

 

ハドラー大戦が始まる前にはお転婆であれど聡明な王の一粒種として、大戦の最中は幼き王女ながらも国の最前に立ち民達を共に鼓舞し、その後を賢女王となるべく研鑽し、長い道のりを歩いてきた成長を見てきたが故に、臣下に最も愛された女王が、政治的配慮よりも、彼女個人の幸せを優先した結婚を認められたのだ。

 

無論、相手が大戦終結を二度も導いた大勇者アバンだったからというのも最大の理由ではあるがそれを言うのは野暮であろう。

 

フローラは大粒の涙を流してアバンの言葉を受け入れ、そこからは様々な意味で早かった。

カール王国に仕える者達一同で、なんとたったの一月で二人を結婚式に立たせて見せたのだ。

一月でである!

ふつうは女王とその王配の結婚式ともなれば、少なくとも一年前には臣下に知らされ、そこから様々な用意がされる。

式場と立ち会う神官の手配、二人の結婚衣装、それら諸々に掛かる予算を組みながら、各国の王たちに打診して主要人物たちの招待の為の日程調整とそれらにもかかる諸経費と、相手方も当然慶事に相応しいものを用意する時間が必要だというのに、カール家臣達は、その一月内の結婚の為に、文字通り身を粉にした。

式は代々カール王家が使用し、大神官も御用達がおり、予算や諸経費も大戦が落ち着いている今なれば平時の時に組まれた先代の者がそっくり使えたのが良かった。

幸い平時で物価上昇は然程なく、各国の招待客の為の諸経費も同じように問題なくすんなりと組めた。

 

何よりも、この国が亡国の憂き目にあいながらもさしたる被害が出ていなかったのが功を奏した。

ここを攻めてきたバラン率いる超竜軍団は、無人となった王国を腹いせに建物を壊すことなく被害は武器庫のみにとどまり、そして宝物庫は一切顧みられることはなく大戦の最中に宝石一粒・金貨一枚も盗まれることはなく無事だったのもまた良かった。

 

大戦のせいで開かれなかった国の年間祭典・行事の浮いた費用を全て当てて解決された。

しかし衣装はそうも・・・・・いかなくもなかった。

女王としてのウエディングドレスともなれば、一年前から制作されるべきだろうが、先王の一つの遺言がそれを解決して見せた。

 

その内容とは、自分の妻となった先の皇后が来たウエディングドレスを着てほしい。

 

それはフローラを産んだ後産後の肥立ちが悪く、一月後に亡くなった皇后の意志でもあった。

産んで出血が止まらず、即日のうちに亡くなってもおかしくはなかった皇后は、娘の生まれた日を、自分の命日で暗く覆うのは本意ではないと懸命に娘を愛した母の強さが、一月という奇跡のような日々を紡いで見せたのだ。

その間皇后は、残していく最愛の者たちに様々な言葉を残し、そして願った。

 

自分は政治的立場手王の伴侶となりとても幸せだったと。始まりはどうであれ、愛し愛される夫婦関係を築くことができ、そして最愛の娘を見ることができたのだから。

 

「フローラにも、同じように幸せに・・・・愛するものと幸せを共に築けるように・・」

 

弱々しい息の中でも、赤ん坊のフローラの頬を撫でながら、行く末を案じ幸せを望む母親としての願いは、最愛の夫は聞き届けた。

 

真っ白の純白なドレスは、裾が花のように広がる美しいドレスであり、宝物庫の中でも最奥に厳重に管理され、半月に一度色褪せさせない保護結界を更新されることで守られてきたドレスは、父と母の望み通り最愛の娘が着る日が来たのだ。

 

各国の王達には使者達が熱弁を奮い、無礼になる事は承知しているが一月以内の結婚を許してほしい旨を、否やという王家は無かった。

 

それは、彼等が愛する-料理人-が願った幸せな世界築く一条となる事であり、世界は以前よりも優しさを以て治められようとしていたから。

結婚祝いの品も、後日ゆっくりと選ぶことが了承され、かくして一月後にカール王国は慶事に沸いた。

 

よく晴れた青空の下、大聖堂の中で厳かな式が行われ、アバンはフローラ女王の王配となるべく、婚姻の指輪を交換した後にフローラ自らの手で王配の冠を賜る。

プロポーズの時と同じく片膝をついて跪くが、あの時以上に胸がドキドキとする。

それはどんな強敵と戦った時よりも緊張し、逃げ出したくなるような切なくなるような奇妙な気持ちは、頭の上にそっと冠を置かれた時に霧散し、別の気持ちが表に飛び出す。

 

自分こそが、フローラを女性として愛し守り抜くのだと。

 

その思いを胸に、そっと顔を上げれば、プロポーズを受けてくれた時と同じポロポロと泣きながらも、満面の笑みを浮かべた最愛の女性の素敵な顔があり、周りからは祝福の拍手と言葉の嵐で大聖堂内は埋め尽くされた。

 

それは式の参列者の最前にいた、ロカ・レイラ・マトリフと珍しくシーツ無しのブロキーナと、アバンの弟子、ヒュンケル・マァム・ポップ・ダイ達は言うに及ばず、バランと竜騎集三人組、チウ・メルル・クロコダインと、デルムリン島からはブラスト・ゴメちゃんが、魔界からは大魔王バーンと魔王ハドラーが駆け付け、各国の王や随行員達も心の底から彼らを寿いだ。

 

その日から数日、カール王国内はお祭り騒ぎとなり、艱難辛苦の道を歩いてきた女王陛下と大勇者の結婚は祝われた。

 

特に弟子の中でもヒュンケルの喜びはひとしおであったという。

自分という存在が、アバン先生を放浪の旅をさせる事になり、その後も行方不明となった自分探しをさせてしまったのが、二人の結婚の障害となったのではないだろうかと思い立ったが故に。

 

だがしかし、アバンはヒュンケルの喜びをきちんと受け取りながらも、その負い目は違うのだと、ダイ達も呼んできちんと告白をした。

あのロカに指摘された時の反省をそのままに伝えて。

 

「先生でも・・・・逃げることがあったんすね・・」

 

師はずっと間違わずに強いものだと思ってたポップを始めとした皆が、アバンにも臆病なところがあるのを知って驚いたが、すぐに受け入れようとした。

それは、力が・知識がありながらも心優しく弱かった一人の少女の軌跡を知っているから。

完璧な者などこの世界にはいないのだと、神々ですら間違うのだと先の大戦で知っているから。

 

師が、臆病さを乗り越えた事を弟子たちが寿ぎ、師と同じく敬愛する女王陛下の幸せを全員が願ったという。

 

 

幾久しく倖あらんことを




今宵ここまで



お久しぶりです

前回の書きかけの-大戦のあとは大変です-の後編の落としどころがどうしてもうまくいかず、削除して、こちらの章に移行させていただきました。
続きをお待ちしてくださった方にはまことに申し訳ありません。
こちらの章は、以降そのようなことがないようにきちんと完結をさせたいと思います。
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