勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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元魔剣戦士の結婚:後日談後編

ヒュンケルとエイミの子供が生まれて十日が経った。

その場で手伝ったティファは、ママデビューとパパデビューを果たしたエイミとヒュンケルをサポートすべく、そのまま十日間付きっきりで二人のサポートをして双子の面倒を見た。

初産のエイミの健康面は全く心配していなかった。ティファがおらずともそちら方面の経験豊富な産婆と女医さんが、産まれた後にママさんがしてはいけない事気を付けなければならない事をばっちりと指導してメモまで作って置いて行ってくれたので大丈夫。

いざとなったお城にいるロムス様もついている。

問題は、双子という事はお世話も二倍・・・相乗効果でもっと上がるかもしれないとティファたちは危惧したら案の定、どちらかがお腹がすいたと泣けば一方も目を覚まして泣き始める。

万事がその調子なので、近衛騎士として働きに行かねばならないヒュンケルには寝てもらうべく、ティファは防音結界を駆使して十日間を乗り切った。

まさかジ=アザーズをこんな風に使う日がこようとはと、双子を寝かしつけてへたばったティファは若干現実逃避をしながらも、エイミに良いお乳を出してもらうべく三食ばっちりと作ったりもした。

幸いエイミのお乳で足りるようで、乳母さん雇うか貰い乳するか、もう少し育ったら乳児も飲めるヤギ乳確保のためにヤギ飼うかを本気で考えていたティファはほっとした。

 

赤ちゃん達のご飯とママ・エイミのご飯確保の次はお締めであった。

幸い兄ポップが大量に贈ってくれたので在庫の心配はいらず、お締め洗い専用の式を作ったのでそちらも負担なく過ごす事に成功。

 

順調に体重も増え、そろそろ免疫力もついただろうからお披露目してもいいのではなかろうかと産婆さんからも了解を得られたのを、-首を長くしてその時を待ちわびた人々-からは歓声の声が上がった。

 

エイミの出産祝いにまずはパプニカに王城一同を代表してアポロ・マリンは言うに及ばず、バダックを伴ったレオナとダイがすぐさま駆け付け、全員が双子のかわいらしさに膝崩れを起こした。

男の子は少々ほっそりとしているが、笑うとえくぼができる愛嬌があり、女の子の方は丸くて福福としており、そしてどちらも誰が抱っこをしてもキャッキャと笑ってくれるのだ!

 

「・・・ダイ君・・・私も早く子供欲しい・・」

「レオナ・・・・沢山産んでくれる?」

「・・・・二人共、そういう事は他所でやってね?」

 

あんまりにも可愛い赤ちゃん達に、レオナとダイがまず最初に崩れたのを、ティファは呆れて帰ってやれと言わんばかりにイチャイチャし始めた二人を追い出した。

 

それは双子が生まれてから三日目の話。

赤ん坊はとかく弱く、抗生物質などないこの世界ではちょっとした事で亡くなってしまう。万全を期して、まずは国内にいる者達を招き、本格的なお披露目は赤ん坊も両親も落ち着き始めた十日くらいが望ましかろうと-全員-に通達しようやくその日がやって来た時・・・・・エイミは色々とついていけなくなってしまった

 

なぜ自分の子供達のお披露目が自宅ではなくパプニカ王城の広間なのだろう・・・・

 

エイミの考えはこうであった。

遠方からチウ君やクロコダイン、ノヴァさんやロン・ベルク、デルムリン島からも竜騎衆とバランとそしてアバン様は必ず来るだろう。

この家は一般的な家よりも広いのでまぁ何とかなるだろうと思っていたのが甘かった・・

 

余も行くが気にせずにいてくれ

 

魔界の神様の一言が、-パプニカと書いて不運な国と読ませる-を発動させてしまったのがいけないのだ!!

 

そんな超大物ゲストが一般家庭よりもランクが上とは言え、市井の家にお招きなんて出来っこない!たとえ当人と周りの側近達が気にしないと言おうとも!常識的にさせられるかそんな事!!!

最悪はアバン王がお忍びで来るくらいに考えていたのはなにもエイミだけではなくレオナ達もそう想定していたのを、お披露目を聞きつけた魔界の神様が新書を死神様に持たせて行く旨を伝えてきたからさぁ大変、受け取ったエイミは目を剝いて、即効ヒュンケルに頼んでレオナに知らせてもらって、城は上を下をの大騒動。

 

「こうとなれば城に招くほかあるまい。」

 

単なる子供達のお披露目の筈が・・・・・

 

とは言え彼の貴人を迎えるのは二度目でありその時のノウハウを活かせばいい!

今回はそう大ごとになる筈がない!!・・・・・そう思った当日迎え入れたパプニカ宮廷人は涙を流した。

 

あちこちからばらばらに来るのも迎える方も大変だろうと、魔界の神様の優しさから-全員-で城の中央にキルが空間を開けて通ってくるというので出迎えてみれば・・・

 

「ようやくヒュンケルとエイミさんの赤ちゃん達に会えるのね。」

「昨日は嬉しくてよく眠れませんでした。」

「お土産気に入ってくれますかね?」

「フカフカの手作りぬいぐるみなら大丈夫だろう。」

 

先頭はマァム、メルル、チウにクロコダイン、この辺は順当であった。

 

「この年になっても赤ん坊を見れるってのは嬉しいもんだな~。」

「俺は初めて人間の赤ん坊を見るな。」

「僕も・・・新生児の子を見るのは初めてですね。」

「ノヴァ君の周りは大人が多かったようですね~。」

「俺の人間の子供ってったらガキンチョやニーナ位の年齢だったな。」

「・・・そもそも子供に会う機会があったこと自体驚きだろう。」

「私も・・・ディーノとティファの二人だな。」

 

マトリフ大魔導士にロン・ベルク、ノヴァにアバン王とバランと竜騎衆は想定済みで

 

「余は初めてだ。」

 

・・・・・・元凶様がやって来た・・・それもいつものお供・キルとミストに加えた傍らに何故か魔王ハドラーも従えて!!

一体これから何が起きるのか!?

自分たちの子供のお披露目ではないのかと泣きたくなったエイミはきっと悪くない。

のほほんと側近達とのんきな会話をしている大魔王様が全部悪いだろう!

しかも質が悪いのが非公式だから礼はいいとか言ってるところが微妙にイラっと来たのも悪くないはずだ!

その証拠に、バーンが何かを言う度に常識人・魔王ハドラーが胃を抑えている。

 

とは言え来てしまったものはしょうがないとレオール王は早々に割り切り、赤ん坊を寿ぎに来てくれた一行をきちんと出迎えた。

 

「遠路より我が国のヒュンケルとエイミの子を寿ぎに来てくださり嬉しく思う。」

「息災そうで何よりだレオール王、過日あった時よりも顔色が良いようで何よりぞ。」

 

思いがけずの訪問とは言えそこは矢張り王族同士の挨拶をして迎え入れ、少ししてからティファと一緒に待つ双子がいる部屋へと向かった。

 

陽光のさす部屋の中に、ベビーベッドを柔らかく揺らしているティファは、やって来た一行を座ったまま笑って迎え入れる。

気分は双子を守る乳母である。

双子は眠っているようで、一行が部屋の扉を開けた時、人差し指で口を閉じる仕草をしたので全員物音を立てずに部屋へと入った。

 

人間の赤ん坊を初めてみたロン・ベルク、竜騎衆、チウとクロコダインは相好を崩し、赤ん坊を久方ぶりに見たバランは在りし日を思い出して泣き崩れそうになるのをぐっと堪える。

マァムが生まれた時に立ち会ったマトリフも笑顔の大盤振る舞いをして、ノヴァも眠っている双子を優しい笑顔で見続ける。

眠っているのならばこのままにしておいてあげようと、引き続きティファに見てもらって全員部屋を出ようとしたところ、バーンがそっと男の子の頭を撫でた時、何かを感じたのかパチッと目が覚め、そしてバーンを見て笑ったのだ。

 

その様はまさしく無垢であり無邪気に笑い声に、バーンは胸が熱くなるのを感じるままに

 

「其方達が生まれてきてくれた事を嬉しく思う。ここに集った者達全員が、其方達に会えるのをとても楽しみにしていたのだ。

約束しよう、其方達が大きくなる頃までに、世界の者達が仲良く暮らしているのが当たり前な世界にする事を。」

 

まだ頑是なく、言葉も世界も知らない赤子達に寿ぎだけではなく誓いを述べ上げたのだ。

 

未だに戦火の爪痕を残し、地上界側には最愛の者を喪って怨嗟の声をあげる者達が数多くいる。

命を失わなかったとはいえ柱の落下のせいで故郷を失い、再建がままならず恨む声もまたしかりで・・・・・それらから逃げることなく、誹りや罵倒を受けようとも償う道を歩き、三界の共生の道を確固たるものとすることをバーンは目もまだ見えていない赤子等に誓い、それを聞いた他の者達も踵返してベビーベッドに近づき、赤子等とバーンを囲むようにして胸中で誓った。

バーンの誓いを自分達もまた果たすのだと。

 

後にそれは-新生児への誓い-と後世には伝えられた伝説的な一幕であった

 

この日を起点として、大魔王バーンは言うに及ばず魔王ハドラーとカール国王アバンとパプニカ王レオールが音頭を取って様々な融和政策を次々に押し進め、たった十年で魔族と人間の互いの往来を認め合い、盛んなる交流発展を遂げさせるきっかけとなった日であった。

 

 

 

 

「双子は男の子はポラリス、女の子はスピカだ。」

 

どちらも明け方の星から取ったと、別室でヒュンケルが双子の名前を発表した。

 

「意外だな・・・俺はてっきり男児にはバルトスとつけるかと思ったのだがな・・」

「・・・俺もひと時はそう考えたが、あの子には何の思惑もない道を歩いたほうが良いのではないかと思ってな。」

 

男の子の名前も明け方の星の名にしたのが意外であると述べたハドラーに対し、ヒュンケルは命名の意味を語りだす。

 

確かに言っときはハドラーの言ったように、最愛の父にして尊敬している騎士の名を贈ろうと思ったが、世界は今戦う以外の道を歩もうとしている。

だからと言って別に騎士も戦士も否定はしない、否定はしないが将来子供に名前の由来を聞かれた時、バルトスの由来が枷になってしまっては・・・ただ尊敬している父の名前だったというだけが、この子の選ぶ道幅を狭めてしまうのではないのだろうかと今から思うのは取り越し苦労だろうか?

しかしエイミにも相談した時、少しでも心配になるのであればやめておこうと笑って賛同を得られた為、ああでもない、こうでもないと言っている間に双子は生まれ、ならば双子が生まれた夜空で輝いていた星から名を貰った。

 

「・・・・月と太陽ではスケールが大きすぎるだろう・・」

 

ルナとムーンでは意味が大きくなりすぎるが同じように夜空を照らす星の名を。

どちらも旅人の目印であり、双子が何を目指そうとも迷うことなくその道を歩いていけるように願ったのだと、普段は寡黙で優しいヒュンケルが一生懸命に考えたのだと幸せそうな父親の顔をして笑う姿に、その場にいる全員は得心して祝いの言葉が部屋を満たし、祝いの品が贈られ一旦解散となった。

 

祝いの品はおむつや子供の玩具が圧倒的に多く、もう少し大きくなってから衣類やにおい袋などを贈ることとなっている・・・・らしい。

その内木馬のおもちゃも作ってみるかとは魔界の名工様の言葉だったとか・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スピカ~、ポラリス~・・・・あら!ミストバーン・・・・・いつもごめんなさい・・」

 

新生児への誓いから三年の月日が流れ、双子は順調に育ってエイミの手を焼かせ始めている。

ハイハイもできない頃は双子は宮廷内で面倒を見てもらっていた。

主に手が空いたインス・フォス・ワイズの三人の魔導書解析のお爺ちゃん達が。

何故この三人のお爺ちゃんたちの手が空いているかと言えば、これも融和政策の一環で上級魔族が三名パプニカ城で働き始め、魔導書の解析の跡取りを得られた三兄弟は、とは言え引退はまだしたくないので城で働きたいと言ったところ双子の面倒を見ることになったのだ。

無論実際にお世話をするものも待機しているが、なんとこのお爺ちゃん達は以外に子だくさんであり家に帰ればひ孫までいる育児のプロで、そんじょそこらの駆け出しママ以上のスペックがあったのは驚きで、安心してお任せできるのだが・・・

 

「お爺ちゃん達こんにちは、あの三人きちんと働いてる?僕も魔導書解析手伝おうか?」

「おおキルバーン殿こんにちは。あの子らが良く働いているのでこうやってエイミ殿の子等と遊んでおりますよ。」

「ほんにこの子達は可愛いですの~。あまり泣かずに熱も出さずに本当にいい子達ですじゃぞ。」

「誰が来ても笑っておる子等じゃ~。」

 

時折キルが来るのが困ってしまう・・・・・

 

キルからすればその三人のお爺ちゃん達の方が可愛いだろうと眼福ものであるのは内緒にして、ポラリスとスピカにもぬいぐるみやら評判のおしゃぶりやらをお土産に持ってきては両親を困らせている。

これがほかの人達からなら嬉しいだけで済むのだが・・・・ティファとチウとメルル以外からは変態疫病神と言われたキルからもらうのが微妙である。

とは言えきちんとお礼を言って受け取り、双子も喜んで使っているので贈っているキルも笑って良い反応が双子からもらえるので大分双子には甘くなっている。

その内双子が可愛い顔してキルおじちゃんと呼んでくれないかな~とも目論んでいたりする・・・・・ヒュンケルが知れば瞬殺者だが知らぬが何とかである。

 

バーンなどは双子が五歳くらいになったら魔界の土地で思いっきり遊べるように遊具も置いた広場を贈ろうかと目論んでいるので似た者主従であったりする。

 

周りから大切にされ可愛がられ、すくすくと大きくなった双子を探しに来たエイミが見た者は、家の中庭のベンチに座っているミストに優しく抱かれて眠っているポラリスとスピカの姿であった。

 

双子が離乳食を食べ始めるころ、この家は実に賑やかであった。

ティファは言うに及ばず、アバン王も時間を見つけてはつくりに来ようとし、目論みあるキルもミストを連れて日参してきた。

 

そんな中、双子はティファではなくアバンでもなく、キルでも当然なくミストに懐いた。

機嫌が悪かろうともミストが姿を見せれば瞳を輝かせ側にダッシュし、キルの嫉妬っがメラメラであった。

その事態に当然ミストは困惑した。

言っては何だが双子に愛想を振りまいた筈も無く、何が気に入られ野たのかさっぱりと分からないが、無邪気に笑う子等にいつしか絆され

 

「構わん、好きにさせているだけだ・・」

 

こうして双子を甘えさせている

 

その様にエイミはクスリと笑い、しばらく頼みますと家事の続きに戻っていった。

すやすやと眠る双子、この子等に誓われた主の言葉を自分も叶えるべく・・・・いや、あの場にいた全員が邁進している。

 

ポラリスとスピカの星を目印として。

 

穏やかな日々が続く世界、今日のこの穏やかな日が当たり前の世の中を・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミストおじちゃん大好き!」

「スピカね!ミストおじちゃんのお嫁さんになるの!!」

 

 

双子が言葉を発するようになってから、自分に向けて言ってくれた嬉しい言葉をミストは胸の中で反芻する。

 

 

 

そんな賑やかで嬉しい言葉が途絶えることのない日々が続くことを願って。

 

 

それから二百年、パプニカのとある騎士の家には-ミスト-という料理が得意な超絶強い男の出入りが絶える事無く、いつの時代であってもその家の子等に慕われたという不思議な男であったとか




今宵ここまで
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