勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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元魔剣戦士の結婚:番外編・前編

・・・・これは本当に・・・どうしたものであろうか・・・・・

 

ヒュンケルとエイミが結婚をし、暫くしてエイミは身ごもり双子を産んで、ポラリスとスピカが十五歳の誕生部を迎えて一月後の夜にヒュンケルは頭を抱えている。

 

夕餉も摂り終え夜も更けたヒュンケル宅の居間には今ヒュンケルとエイミとテーブルをはさんだ正面にいるのはこの家の愛娘スピカと、隣にいるのはミストであった!

ちなみに二人の愛息子ポラリスは、三年前にロン・ベルクに剣と鍛冶を教わりたいときちんと両親と本人の許可を得て弟子入りしているので不在である。

一方のスピカは、エイミに似たのか魔法のセンスはそこそこあって、特に回復魔法に長けているので将来は賢者かと有望視されている。

 

ポラリスは黒いくせっ毛の髪を長く伸ばし、少し細身の筋肉質の美少年に育って娘さん達からの熱い視線をどこであっても受けている。

受けているのだが当人にとっては喜ばしい事ではなく、五月蠅くてかなわず煩わしいことこの上ないようで

 

「・・・・・うるさい・・」

 

娘さん達の熱い言葉や視線ををぼそりとバッサリ切る。

普通そう対応されれば悲しいやショックを受けるのだろうが娘さん達も強かなのか、そんなポラリスの対応がまた男らしいと大人気で・・・・ある意味ロン・ベルクを本気で師として慕っているのだが非難も兼ねている側面があったりもするが、ロン・ベルクとして大切な戦友の息子にして生まれた時からずっと知っている可愛がってきた双子の子が、ある日突然自分も自分で使う武器を作って戦える鍛冶戦士になりたい取って来た時は嬉しかった。

あんまりにも嬉しくなって、その場で自分の弟子にして自宅に引っ張り込もうとしてしまったくらいに大喜びをした。

しかしそこはそこで、弟子となったからにはと厳しく教えるのを、ポラリスはそれが当然とばかりにへこたれずに教えを請い、鍛冶も剣の技も自分の血肉としていくのに然程の時間は要さなかった。

そこは戦士として天才の名を欲しいままにした父・ヒュンケルの子なのだろうと、時折様子を見に来る両親達に近況報告として伝えてやれば、二人共に照れ笑いをして息子を頼むとロン・ベルクに頭を下げている中、ポラリスは師から教わっている事を黙々とこなしている。

どうもポラリスはヒュンケルの寡黙なところを色濃く受け継ぎ、幼少の頃はキャッキャとしていたのが長ずるにつれ言葉少なく、思いや両親・妹に対する愛情表現も全て行動で表していた。

両親の結婚記念日となればスピカと共に野原で花を摘み、アバン王に教わったケーキを焼いて、十の頃には一月前から市場で物売りの手伝いを両親に内緒でして温泉旅行をプレゼントもした。

その際いつもきまって、おめでとうございますと、にこりとはせず生真面目な顔をして贈っている。

 

自分達の誕生日の時は祝いに来てくれる-数々の人々-を前にしてもそれは同じで、ありがとうございますと真剣にお礼を言うさまが、とある魔界の神様には可愛く見えるらしくて相好を崩していたがそれはともかく、ポラリスは普段寡黙で表情筋はそうそう崩れないが、愛情豊かで両親と妹、そして数々の人々もしっかりと大切にしている良い子であった。

 

二人が自分の様子見の為に師の下を訪れても顔には出さずに黙々と修練をするが、二人が帰る時どんな場面であってもは必ず手を止め見送る。

 

「父さんと母さんもお体に気をつけて。スピカにもよろしくお伝えください。」

 

生真面目な顔ながらも優しい声で家族を思ってくれるのだから。

 

そんな時はいつもきまって横にいるロン・ベルクがポラリスの頭を優しく撫でる。

背はまだ自分の肩までしかなポラリスを、ロン・ベルクは愛おしいと思い込めて撫でるのを、ポラリスは邪険には決してせずに、嫌がる気配もなく黙って受ける。

根っこは幼いころと変わらないポラリスであるのだ。

 

そして双子の妹スピカは、銀の髪は父から受け継いだが、少しふんわりとしたねこっ毛は母に似ており、奇麗でふんわりとした銀の髪を腰まで伸ばしいる。

美しい銀の髪にこれまた父譲りの紫の瞳の美少女に育ってさぁ大変!!・・・・にはならなかった。

スピカの周りには常に男たちが控えている!兄は言うに及ばず、父だったり父の親友ラーハルトやロン・ベルクだったり、クロコダインだったりノヴァだったりバダックやアポロ、ときたまダイ王太子がレオナ王女とお忍びで来ていたりと鉄壁のガードが組まれているので、幼い男児も何かを感じ取って突撃できなかった!!

とは言えそんな男たちが四六時中スピカの側にいるはずがないだろうと隙を狙った者達はがっくりとする羽目になった。

チウもいれば魔法を教えに来るマトリフ様やら、何とモシャスもしないで素の姿で堂々と遊びに来る死神キルバーンやら、それに引っ張られて来た影の大参謀ミストバーンやらが立ちふさがった!!・・・・・エイミは諦めて二人の子供を取り込もうとしたパプニカ宮廷人達は一斉に手を引いた・・・・何が恐ろしいと言えばキルとミストの上司を思えば推して知るべし!魔界の神様を敵に回すバカはいないのであるので餓狼の餌食に双子はならずに済んだのだがそれは別のお話。

 

ポラリスもスピカも基本キルは嫌いではない。風変わりなおじさんであり-キルおじちゃん-と呼べば喜んでくれる愉快な大人。

自分達と遊んでくれて、それでも子ども扱いではなく一人前の者の様にきちんと接してくれる。

両親の結婚祝いを何にしようか悩んだポラリスは-贈り物の天才キルおじちゃん-に相談し、都度適切なアドバイスをしてくれる頼もしいお人にランクアップしているのは双子とキルの三人の秘密である。

キルはどうも両親に嫌われているようなのでとは双子の思いで、キルも内緒で双子を助けるかっこいいおじさんポジが気に入ったので内緒なのだ。

翳に日向に双子を守る死神も良かろうと

 

そしてミストもまた双子を見守り、キル同様に双子からミストおじちゃんと呼ばれて悪い気はせず、ヒュンケルの頃は確かに情あれど思惑を以て接していたのを双子と接するときはひたすらに愛情を注ぐことだけを考えていたのだが・・・十五になったスピカの宣言でミストの人生がひっくり返された。

 

「私絶対にミストおじちゃんと結婚する。」




今宵ここまで
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